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歴史的な200万人デモと苦すぎる現実|周庭
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歴史的な200万人デモと苦すぎる現実|周庭

2019-07-18 07:00
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。逃亡犯条例に端を発する巨大な運動の中にある周庭さん。来日中に史上最大規模となる200万人を動員するデモを実現し、条約改訂を封じ込めることには成功したものの、その心にあるのは苦い思いのようです。(翻訳:伯川星矢)

    御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
    第28回 歴史的な200万人デモと苦すぎる現実

     この原稿を執筆し終えた時点で、Facebookを通して悲しい情報が入りました。4人目の仲間が自分の命を絶ちました。そう、4人目です。反逃亡犯条例改定の運動の中、すでに4人の尊い命が未来に絶望して自死したのです。これは香港の主権移譲後の社会運動ではじめての出来事でもあります。

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     ここ一ヶ月は香港人にとってとても長い一ヶ月でした。日本の皆さんもメディアを通じて香港の状態を知っていると思いますが、香港人はさまざまな方法で改定案の撤回、警察の暴力行為の追求、民主主義を求める決心を表明しました。例えば署名活動、全世界の新聞広告(朝日新聞にも載りました。皆さんご覧になりましたか?)、100万人デモや200万人デモ、あの手この手で活動していました。
     しかし、例え香港人が香港史上最大規模の民主化活動を成し遂げても、やはり、わたしたちが求めていた要求を叶えることはできませんでした(行政長官の林鄭月娥は記者会見で「条例改定は死んだも同然」と言いましたが、「撤回」という言葉を使うことはありませんでした)。

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     香港の主権移譲以降、はじめて100万人を超えるデモが起こった6月9日は、わたしもデモに参加していました。私は2012年から社会運動に参加していて、いろんな規模のデモに参加してきましたが、それでもその日、目にした数え切れないほど数の人と、街を覆い尽くす白衣の集団(その日は白服推奨でした)には、本当に驚きました。当日は銅鑼湾のヴィクトリア公園からの出発で、わたしたちデモシストは、そこで3時間待った後にやっと出発できました。どれほどの人数だったか想像できますでしょうか?
     わたしは日本での記者会見を控えていたため、デモを完走せずに空港に行きました。普段だったら2時間ほどで完走するはずが、今回はなんと深夜2時になってようやく全員がゴールに到達しました。
     香港史上初となる100万人規模のデモは、1989年の北京の民主化運動応援デモでした、そして2回目と3回目は今回の条例改定反対デモでした。香港人はまさに再び新しい歴史を作り上げたのです。

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     その後に起きた、警察による発砲を含む暴力での鎮圧と200万人デモは、日本に滞在していたためその場にはいませんでした。でも、一番注目される時期に日本にいたことで、日本のメディアに香港の状態を即時、伝えることができました。今回の条例改定については日本での注目度がとても高く、国際ニュースとして大きく取り上げてもらいました。日本の首相である安倍晋三氏には、G20で香港の問題を取り上げていただきました。日本のメディアと政府の関心に、香港人として本当に感謝しています。

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     7月1日、この日はまた忘れられない一日になりました。香港では毎年この日(返還記念日)に大きなデモ行進があります。今年も例外ではなく、約55万人がデモに参加しました。そして当日の夜、一部の参加者が立法会に突入し、一時的に立法会を占拠しました。この突入行為は多く外国メディアで議論され、日本メディアでは「暴徒化」と報道されました。
     実際、参加者は暴徒ではありません、彼らは香港を憂い愛し、民主改革を心から望む普通の市民です。本当の暴力とはガラスを何枚割ったとかではなく、香港人の声が力ずくで押さえつけられていることにあります。香港の制度は日本と異なり、立法会議員の過半数が民主的な選挙で選出されておらず、よって香港の議会は必ずしも民意を反映しているとは限りません。
     近年、立法会議員と候補者が資格剥奪となり、行政長官も民主的な選挙で選出されておらず、制度上、香港人は声を上げる術がないのです。さらにここ十数年の間に増えた政治弾圧と政治的逮捕に対して、立法会の占拠は香港人の怒りを表すのにとても象徴的な行動になったと思います。
     多くの日本人とメディアには、香港人が暴力行為を行ったように映ったかもしれません、でも、皆さんには香港人の怒りと絶望を理解して欲しいのです。既にもう4人の自殺者を出し、立法会に突入した参加者も、絶望と死の覚悟を持って行動していました。
     公権力を持つ政権に優しく、弾圧を受けている権力なき人々に厳しい人にはならないでください。

    (続く)

    ▼プロフィール
    周 庭(Agnes CHOW)
    1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政治組織「香港衆志」に所属している。

    『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』これまでの連載はこちらのリンクから。

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