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平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。今回はずばり、髪の話。
薄毛の話から、美容院、床屋にまつわるエピソードを綴ります。
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脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第62回
男 と 髪     井上敏樹 

五十過ぎの男が何人か集まると、大体ふたつの事柄が話題に登る。インポテンツとハゲである。『最近おれの王子は自律神経失調症だ』『それはそれで楽でいいではないか』だの『お前、最近額が後退して来たな』『そう言うお前は天辺が寂しいぞ』だのとお決まりの会話が繰り返される。頭と股間では位置が遠いが、この両者の関係は実に深い。たとえば飲む育毛剤なるものがあって、これを服用すると股間がショゲる。頭髪は立つが珍宝はうなだれるわけだ。飲む育毛剤が男性ホルモンを抑制するせいである。男性ホルモンは頭髪の大敵なのだ。胸毛となると逆に男性ホルモンが栄養になる。胸毛のある男にハゲが多いのはそのためだ。頭髪と胸毛では、ホルモンが逆の作用を及ぼすのが面白い。

王子の問題はさておき、私も頭髪の方が最近あやしい。ハゲというのではないが、髪の毛が細くなって力がない。透けている。若い頃は思ってもみなかった事である。父や祖父も死ぬまでハゲる事はなかったので、安心していたのだが、数カ月前に美容院に行ったら、『少し薄くなって来ましたね』と美容師に言われた。不快である。


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