
現役官僚である橘宏樹さんが、「中の人」ならではの視点で日米の行政・社会構造を比較分析していく連載「現役官僚のニューヨーク駐在日記」。
今回は本連載のテーマに掲げたニューヨークの「力強さ」について、これまでの連載を振り返りながらまとめます。
橘宏樹 現役官僚のニューヨーク駐在日記
第17回 ニューヨークとは何か-街を動かす3つのプリンシプル-|橘宏樹
こんにちは。橘宏樹です。連載もどうにかこうにか最終章にたどり着きました。滞英日記同様、時事的な報告にとどまらず、NYの「強さ」の本質を多角的に考察してきた本連載ですが、これまでの連載をじっくりと振り返りながら、今号と次号で締めくくっていきたいと思います。
NYに赴任したのは2020年末。思い返せば、コロナ禍のまっただ中。タイムズスクエアで燦々と照り輝く巨大広告たちを見上げるのは、文字通り、僕だけ。ワクチンはまだ影も形もなく、セントラルパークに敷き詰められる犠牲者の遺体…NYは未曾有の危機に瀕していました。しかし、ほどなく、NYの経済社会は「反転攻勢」に転じ、みるみる復活していきました。僕がそこで目の当たりにしたのは、「経済を守ることが命を守る」というリアリズムでした。公衆衛生至上主義に偏らず、生活の糧も同時に獲りにいく意思決定。仕事を失えば家賃も医療も連鎖的に失う貧しい人が大勢住む街だからこそ、感染者が多少出ようとも経済活動を再起動する判断が支持される。怯えたり萎縮したりしない。切り替えの速さと割り切り。――なんとも「力強い」。それが僕の見たNYの第一印象でした。
そこから、僕の連載のテーマは、「NYの力強さの秘密を解き明かしたい」と決まりました。パンデミックであそこまで消沈していたにもかかわらず、なぜ怯えを敢然と振り切れるのか。そして、なぜこんなに速く日常を取り戻せたのか。NYという街の根底にある「気質」や「作法」に理由があるならば、それを僕なりに見定めたい。そして、NYから日本が学べること、日本とNYが共栄するための方法を持ち帰りたい、と考えました。今回は、前段の、NYをNYたらしめている本質について洞察の成果を、連載を振り返りながらまとめたいと思います。次回最終回では、後段の日本がNYから学べること、日本とNYの共栄方法について述べることとします。