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記事 32件
  • 2020年、押し寄せる大量の中国人観光客にどう対応するか?6年後の東京に迫られる課題――社会学者・張彧暋(チョー・イクマン)インタビュー(PLANETSアーカイブス)

    2019-05-10 07:00  
    550pt

    今朝のPLANETSアーカイブスは、香港出身の社会学者・張彧暋(チョー・イクマン)氏のインタビューをお届けします。2020年の東京オリンピックの課題は、「外国人にどう東京の・日本の魅力をアピールするか」ではなく、押し寄せる中国人観光客にどう対応するかであるという張氏。そして、日本ポップカルチャーの東アジアでの「実際の受け取られ方」とは――!?(聞き手・構成:中野慧)※本記事は2014年7月29日に配信された記事の再配信です
    ■2020年、東京には大量の中国人観光客が押し寄せる
     
    ーー張さんは、2020年の東京オリンピックの開催についてどのようなことを考えていますか。
    張 私は香港人なので、やっぱり観光客としての目線で捉えていますね。2008年に北京オリンピックがあって、2012年にロンドン、その次に2016年にリオ・デ・ジャネイロがあって、その後が東京オリンピックなわけですよね。たとえば2008年の北京オリンピックって、かつて1964年に開かれた東京オリンピックと性格が似ていたと思うんです。チャン・イーモウさんの劇場型の開会式に見られるように、工業化と経済発展のさなかの中国にとっては、ナショナリズムが盛り上がるクライマックスの時期でした。
    それに対して2020年の東京って、すでに工業化自体は完了しているわけですよね。宇野さんが「PLANETS vol.9」でやろうとしているプロジェクトも、工業化社会ではなくサービス・エコノミーやクリエイティブ・エコノミーの側面を打ち出していこうというものだと思います。
    ▲『PLANETS vol.9 東京2020 オルタナティブ・オリンピック・プロジェクト』
    その一方で面白いのは、2013年に日本に来た観光客の数は年間1000万人ぐらいで、一番多いのは韓国で、次に台湾、中国、香港で、やっぱり東アジアの国々が大半なわけです。そして東アジアのなかでも、韓国・台湾・香港と日本の経済構造は近似性が高い。すでに製造業が衰退し、新しいサービス、新しい体験が発展している。経済構造が近いということは観光に求めるものも近いということで、これらの国から来る観光客は、たとえば秋葉原に代表されるようなサブカルチャーであったり、いろんな温泉体験であったり、美味しい食事であったり、カフェ巡りだとか、ファッションだとか、美術館に行くことを目的にしていたりする。香港の例を出すと、5-10年前までは東京に来ても日用品などを買っていたわけですが、今は韓国や台湾からの観光客と同じように、消費だけではなく文化体験のほうにゆっくりと方向性が変わっていっています。
    ですが中国からの観光客はまだ工業化時代のメンタリティが強く、ナショナリズムと経済の成長と国の誇りを一緒に考えています。たとえば香港には去年、年間5000万人の観光客があのちっぽけな島に来て、大半が中国大陸からの観光客でした。彼らが求めているのはサービスではなく、ブランド品と日常用品の買い物です。そしてその5000万人の観光客はそろそろ香港には飽きてきて、今は台湾に進撃中です。そして台湾ではたくさんの中国人観光客が溢れて、マナーが悪いということで非常に問題になっている。
    で、2020年の東京オリンピックを考えるとやはり、韓国・台湾・香港やヨーロッパ人、アメリカ人はともかくとして、そういう中国の観光客に対してどう対応するかが課題になってくると思います。たとえば、彼らが求めているのは必ずしも秋葉原のサブカルチャーだけではなくて、薬品を買いに来たりとか……。
    ーーえっ。薬品って、何のことですか……?
    張 香港でいま一番多い店は薬局なんです。観光客がいろんな美容品とかサプリメント、もしくは赤ちゃんのための粉ミルクを求めるからですね。中国はとにかく社会に対する信任(Trust)があまりにも低くて、信頼性の高い、体に良い製品を買い求めるんです。
    ーー「外国人にどうやって興味を持ってもらうか」ということだけではく、むしろ中国の人たちがたくさん押し寄せるのはもう確実だから、どうやって対応するかを考えないといけないということですね。
    張 そう。対応といってもホテルの数のようなインフラの話や、サービスをどう充実させればよいかという問題ではなく、とにかくすごい人数が来るから、そこにどうやって対応するかということですね。
    年間数千万の観光客が東京に溢れて薬局で薬を買ったり粉ミルクを買ったりとか、もしかするとホテルでダブルベッドに10人が寝ているとかそういう光景も繰り広げられたりするかもしれない。おそらく東京の生活リズムを破壊されていくし、都市の景観自体もすっかり変わってしまいます。
    ■PLANETSチャンネルの月額会員になると…・入会月以降の記事を読むことができるようになります。・PLANETSチャンネルの生放送や動画アーカイブが視聴できます。
     
  • 卒論の季節と大学生になるということ|周庭

    2019-04-18 07:21  


    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。この3月は卒論に取り組んでいたという周庭さん。高校時代から学生運動に参加していた彼女にとって、日本よりもはるかに狭き門である香港の大学に合格することは、自身の活動を大人たちに認めさせるという意味でとても重要なことでした。(翻訳:伯川星矢)

    御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記第26回 卒論の季節と大学生になるということ
    忙しかった3月がやっと終わりました。
    忙しいと言ってもやるべきことはたった一つ、卒論を完成させることだけです。 もともとは去年のこの時期に終わらせている予定だったのですが、立法会選挙の出馬で1学期休学したので、卒業計画もそのまま一年遅らせることになりました。わたしの同期はほとんどが去年卒業したので、正直ちょっと寂しいです。
  • 香港の罪が中国で裁かれる「逃亡犯条例」|周庭

    2019-03-14 07:00  


    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。今、香港を騒がせているのが「逃亡犯条例」の改定。香港・マカオ・台湾の犯罪者を、中国に引き渡し可能にするという条例です。香港の法的な自立性が脅かされつつある背景について語ります。(翻訳:伯川星矢)

    御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記第25回 香港の罪が中国で裁かれる「逃亡犯条例」
    ここ1ヶ月の間、香港で最も議論されている議題は、政府が提案した「逃亡犯条例」の改定です。
    事の発端は、香港の男性が台湾で彼女を殺害し、香港へ戻ってきた事件です。 香港と台湾は刑事共助条例(いわゆる引き渡し協定)を結んでいないため、香港政府は被疑者を台湾政府に引き渡すことができませんでした。香港政府はこの件に便乗し、逃亡犯条例と刑事共助条例を改定を提案しました。内容
  • 香港の春節と日本の大晦日|周庭

    2019-02-20 07:00  


    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。日本の正月にあたる春節(旧正月)を迎えた香港。周庭さんたち香港衆志は歳の市に出店し、干支にちなんだイノシシのデザインのグッズを販売することで、政党の理念のPRに努めたようです。(翻訳:伯川星矢)

    御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記第24回 香港の春節と日本の大晦日
    春節おめでとうございます!
    日本の新年と同じように、春節は香港最大の祝日でもあります。 わたしたちはいつも通り、香港最大の歳の市ーーヴィクトリアパーク歳の市で出店をし、イノシシ年のグッズ販売しながら、わたしたちへの応援を呼びかけました。

    今年は、布バック、ハンカチ、Tシャツ、デコテープと、わたしたちの理念がプリントされている旗を販売し、とても良い売り上でした。 特に布バックは
  • 37時間の誕生日と巨大化する人工島|周庭

    2018-12-19 07:00  

    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。アメリカの旅の途中に22歳の誕生日を迎えた周庭さん。前回に引き続いて、ランタオ島の埋め立て計画の続報をお届けします。政府と利権団体の緊密な関係によって、開発計画は無責任かつ杜撰に拡張され、ここでも香港議会はあからさまに軽視されているようです。(翻訳:伯川星矢)
    【告知】 周庭さんが〈HANGOUT PLUS〉にやってきます。 周庭×宇野常寛 「香港で民主化運動している女子大生は今何を考えているか」 1月7日(月)21:00より放送予定。ぜひご視聴ください!
    御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記第23回 37時間の誕生日と巨大化する人工島
    わたし、22歳になりました!
    約一週間前の12月3日は、わたしの22歳の誕生日です! 正直、わたしはまだ自分
  • 香港の利権を独占しているのは……?|周庭

    2018-11-14 07:00  

    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。再び民主派の議員が立候補資格が取り消され、政府と民主派との対立が深まる香港。政府による土地の独占、造成予定の人工島の危険性など、現在の香港が抱えている問題について語ります。(翻訳:伯川星矢)
    御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記第22回 香港の利権を独占しているのは……?
    また一人、立法会選挙の候補者が立候補無効となりました。
    去年、6人の立法会議員が資格剥奪となり、その補欠選挙を行うこととなりました。そのうちの4回は今年の三月に行われました(私が立候補無効となった回)。 今年の11月25日、前回議員資格剥奪となった劉小麗(ラウ・シィウライ)氏の代わりに、九龍西区に補欠選挙が予定されています。本来それは劉氏の議席であり、彼女自身も続投を希望して
  • 【特別寄稿】倉田徹「香港民主化問題:経済都市の変貌史」

    2018-02-28 07:00  
    550pt

    来る2018年3月11日に、香港では立法会の補欠選挙が予定されています。香港衆志の周庭氏も立候補を予定していましたが、基本法に反することを理由に出馬無効を言い渡されました。なぜ香港の若者が活発に民主運動を行うことになったのか、なぜ政府は民主派を弾圧するのかーー。現在の状況に至るまでに香港が辿った歴史について、立教大学法学部政治学科の倉田徹教授に解説していただきました。
     香港と聞いて、日本人がイメージするものは何か。グルメ天国、買い物天国、目もくらむような看板のネオンサインの洪水、あるいは林立する高層ビル、アジアの金融センター、はたまたブルース・リーやジャッキー・チェンのカンフー映画……。観光や文化、経済についての様々なキーワードが浮かんできそうだが、その一方で香港の政治は、従来注目されることが非常に少なかった。「香港人は金儲けにしか興味がない」が、自他共に認める香港人に対するお決まりの評価であった。
     ところが2014年、その香港が国際政治の焦点になってしまう。「真の普通選挙」を求めて集会に殺到した人々が、79日間も道路を占拠して民主化運動を展開したのである。警察の催涙スプレーから、手持ちの傘でとっさ身を守ろうとする人々の姿から名付けられた「雨傘運動」は、「エコノミック・アニマル」とは全く異なる新たな香港人の像を世界に示したのである。
     一体なぜ、このような大きな変化が生じたのか。
     重要なのは若い世代の台頭であった。「雨傘運動」で活躍したのは、当時わずか17歳の黄之鋒(ジョシュア・ウォン)や周庭(アグネス・チョウ)などの若者であった。上の世代と全く異なる価値観を持つ世代の登場によって、香港の民主化運動は空前の盛り上がりを見せた。一方、巨大な運動は、北京の中央政府からの強力な弾圧も引き込むこととなった。そういう情勢の中で、香港の民主化運動は現在どういう状況にあり、将来どのような展開が見通せるであろうか。
     現在を知り、将来を考えるため、ここでは香港の民主化問題を過去から遡って考えてみよう。
    植民地期・「金儲けにしか興味を持てなかった」時代
     香港は1842年にアヘン戦争によってイギリスの植民地となり、1997年に中国に返還された。その150年を超えるイギリス統治の歴史のうち、1980年代までの約140年の間、香港にはほとんど全くまともな民主主義はなかった。政治権力はほぼイギリス人の総督が独占し、反政府的な社会運動には厳しい弾圧もあった。しかし、香港市民の間では、強い民主化運動は起きなかった。これが香港市民は「政治に無関心」と評された主な理由である。
     なぜ香港に民主化要求は起きなかったのか。イギリスの統治の巧みさや、政治を汚いものとして嫌う中国人の政治文化などが理由とされてきたが、近年言われているのは、政治に興味を持つことを許されなかったという、香港市民の置かれた環境条件である。選挙がほぼ存在せず、異民族支配の環境では、そもそも一般市民には議員や政府の高官や長になる手段がなく、政治家を職業とすることは不可能である。
     もっとも、イギリス当局への批判は弾圧の対象であったが、中国を批判することは自由であり、政府に動員されたり、忠誠を誓わされたりする類いのこともなかった。その点では政治の面でも、毛沢東の中国や、蒋介石の台湾といった周辺の独裁体制よりもましでもあった。少なくとも、社会主義体制とは異なり、金儲けは自由にできた。特に戦後の香港は飛躍的な経済成長を実現したから、裸一貫から大富豪になる者もいたし、そこまでは無理でも、努力によって暮らしを改善させてゆくことは、多くの者にとって可能であった。香港市民の多数派は、こういう条件の香港という地を選んで、大陸から逃げてきた難民とその子孫たちなのである。当然ながら、彼らは政治に背を向けて、自身の生活のために日々努力を重ねる以外に生きる術がない。「金儲けにしか興味がない」というより、「金儲けにしか興味を持てなかった」のである。
    ■PLANETSチャンネルの月額会員になると…・入会月以降の記事を読むことができるようになります。・PLANETSチャンネルの生放送や動画アーカイブが視聴できます。
     
  • 議員資格剥奪・収監・反権威主義運動|周庭

    2017-10-18 07:00  

    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。香港では民主派議員の議員資格が剥奪され、著名な若手活動家たちに禁固刑が言い渡されるなど、大きな変化が起こっています。民主を目指し活動する周庭さんが、改めて香港の未来について考えます。(翻訳:伯川星矢)
    御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記第11回 議員資格剥奪・収監・反権威主義運動
     わたしが書いた文章を掲載するのはとても久しぶりとなってしまいました。前回はブラック・バウヒニア行動と返還記念日デモのお話をしました。7月1日の返還記念日から今日までの間で、香港の政治情勢はまた大きく変わってしまいました(恐らく日本でも同じですが)。今回は、この変化についてお話をしたいと思います。
    民主派議員の議員資格剥奪
     まず7月14日、香港の最高裁判所は香港衆
  • ジョシュア・ウォン×周庭「香港返還20周年・民主のゆくえ」後編

    2017-09-20 07:00  


    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。今回は2017年6月14日に東京大学駒場キャンパスで行われた講演「香港返還20周年・民主のゆくえ」の内容をお届けします。香港で民主活動をしているジョシュア・ウォンさんと周庭さんが、雨傘運動後の活動について語りました。(構成・翻訳:伯川星矢)
    ※文中の役職は、講演当時のものです。
    ※この記事の前編はこちら

    雨傘運動を終えての失望と、民主活動の危険性
    ジョシュア ここからは雨傘運動が終わった後のお話をしたいと思います。雨傘が終わったあと、香港人の間には失望感がありました。民主を実現するのは非常に難しいことなのではないか、という疑問も出始めていました。  ご存知の方も多いかとは思いますが、中国政府を批判する本を販売したとして銅鑼湾書店の店主さんや関係者の方たちが、昨年相次
  • ジョシュア・ウォン×周庭「香港返還20周年・民主のゆくえ」前編

    2017-08-23 07:00  


    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。今回は2017年6月14日に東京大学駒場キャンパスで行われた講演「香港返還20周年・民主のゆくえ」の内容をお届けします。立教大学の倉田徹教授の解説のもと、ジョシュア・ウォンさんと周庭さんが、民主を求める香港の学生によるここ5年間の活動について語りました。(構成・翻訳:伯川星矢)
    ※文中の役職は、講演当時のものです。

    倉田 本日は多数のご来場ありがとうございます。こんなに人の入った講演会でお話をすることは滅多にありませんが、もちろん皆様のお目当ては私でないことは、よく承知しています。

    会場 (笑)。
    倉田 こちらにいらっしゃるのは黄之鋒(ジョシュア・ウォン)さんと周庭(アグネス・チョウ)さんです。香港衆志という政治団体で幹部を務めていらっしゃいますが、ジョシュアくん