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  • 長谷川リョー『考えるを考える』 第7回 デザインエンジニア・ 緒方壽人が説く“越境性×専門性”の仕事論

    2018-05-30 07:00  
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    編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。前回は「インナーテクノロジー(人間の内的変容に関する理論)」を探求する三好大助さんに“自らの全体性を祝福する技術”の可能性を語っていただきました。今回はデザイン・イノベーション・ファーム「Takram」のデザインエンジニア・緒方壽人さんにお話を伺います。デザインエンジニアとして重視している“越境性”や、目まぐるしく変わるテクノロジートレンドのなかにあっても不変の専門性に関する考え方。「クライアントワークも“世界の見方”を呈示する意味で、本質的にアートと変わらない」という緒方さんにデザインエンジニアリングの要諦と今後の展望を聞いていきます。
    ビジネス・テクノロジー・クリエイティブを貫く“越境性”
    長谷川 今年2月頃、これまでの社名「takram design engineering」から「design engineering」を取り去り、「Takram」と名称を改められました。どんな背景で社名変更に至ったのでしょうか?
    緒方 端的にいえば、今後新しい領域にチャレンジしていく意思表明です。約10年前から「takram design engineering」としてやってきたわけですが、今ではある程度「デザインエンジニアリング」が浸透しました。産業全体にとって大きな要素にBTC(ビジネス、テクノロジー、クリエイティブ)と三つの領域がありますが、今後は会社としてビジネス領域を伸ばしていこうと考えているのです。
    長谷川 「Takram」はおそらく日本語の「企む」からきていると思うのですが、他に込められている意味はありますか?
    緒方 「企む」という言葉自体が「企業」の「企」であり、「企」自体がプランニングやプロジェクト、デザインの意味を持っていますよね。「企てる」といった別の読み方からは、新しい領域を開拓していくニュアンスもあり、さらには意匠の「匠(たくみ/たくむ)」とも語源として繋がる。デザイン全体の領域を俯瞰的に捉えつつ、デザインの本質を表すいい言葉だと思いながら使っています。
    長谷川 緒方さんは肩書きに「ディレクター/デザインエンジニア」を名乗られています。今回の社名変更も踏まえ、改めて「デザインエンジニア」はどんな存在だとお考えですか。
    緒方 もともと英語の「design(デザイン)」には、「設計」と「スタイリング」の両方が含まれていると思います。しかし、日本語の「デザイン」はどちらかといえば、外見をカッコよく、あるいは美しくするといったスタイリングのイメージが強い。その意味で、「デザイン」だけだとどうしてもファッションデザイナーのようなイメージが先行し、やっていることを伝えきれません。「デザイナー」という言葉に本来含まれる「エンジニアリング」と「スタイリング」の両方を伝えるため、あえて「デザインエンジニアリング」と言っているところもあります。
    長谷川 社名から取り払われたように、今後「デザインエンジニアリング」が何か一つの名前や概念に統合していく見通しなのでしょうか?
    緒方 何か一つに集約されるというイメージよりは、個々の専門性は大事にしていきたいと思っています。そうした個々が集まったとき、全体として広い領域をカバーしている組織になればいいのではないか。そのなかで、今までになかった領域で仕事をする人はこれからも育てていきたいです。たとえば、一つの領域に閉じるのではなく、ビジネスとデザインを扱う「ビジネスデザイナー」など越境性のある肩書きはあり得えます。
    長谷川 先ほど「BTC」と言った言葉を挙げられましたが、それらを通貫する思考の核はどこにあるでしょうか。
    緒方 「越境性」と言えるかもしれません。Takramにいる人たちは自身の専門性以外にも、新しい領域に対する越境マインドを持っていると思います。好奇心旺盛で新しいことにチャレンジしていくことにポジティブであることが、核になる思想です。
    長谷川 大学院では(東京大学大学院)学際情報学府で研究を行っていたのですが、文理の壁を超えた学際研究に難しさを覚えることもしばしばありました。まったく異なる専門性を持った人がスムーズにコラボレイトするためのコツなどはありますか?
    緒方 コラボレーションというよりは、個人のなかに“越境性”を持つイメージです。デザインエンジニアであれば、エンジニアリング的に理に適った設計がある一方、感覚的な美しさで形を作っていく場合もある。どちらかを否定するのではなく、両方を行ったり来たりしながら、交わるところを探る作業を自分のなかでやっていく。
    両方の言葉が分かるからこそ、触媒のような形でプロジェクトを成功に導けるのではないかと思います。越境マインドは抽象思考によって身につけられると思いますし、ある一定の深みがある思考は他分野にも翻訳可能だと考えています。その意味で、スキルとしても越境性が重要なのではないでしょうか。
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