• 【批評】エースコンバット7に欲しかったもの

    2019-08-19 12:00





    前回、

    【考察】エースコンバット7は「状況識失調」の物語である

    というエントリを書きました。
    内容はまあ上記リンクから見ていただくとして、概ね肯定的な意見でまとめてあります。


    それに対し、今回は『批評』ということで、
    エスコン7(のキャンペーンモード)に欲しかった要素、
    というかプレイしてて歯がゆく思った点などを、やや辛口気味に述べてみたいと思います。


    ※一部ネタバレ要素を含みます。
     エスコン7のネタバレを避けたい方は注意です。




    前回のエントリにて、「難しい、理不尽に感じる」という要素のほとんどは、
    ある一定のテーマに基づいて設計されたものじゃないか? というお話をしました。
    そして、エースコンバットシリーズの進化の方向性という意味でも、
    「7」は一つの形を示したと思います。


    ですが、有り体に言えば「荒削り」な部分が多かった、とも感じています。
    その内訳を、以下に述べてみましょう。


    ちなみに当方、「7」以外のエスコンシリーズの既プレイ歴は
    「04」「5」「ZERO」の3作のみで、
    ほとんどのシリーズで難易度ACEまではクリアしていません。
    「7」に関しては、現在難易度HARDまでプレイ済み。
    また「6」は動画で見たことがあるものの、プレイ経験は無し。
    その他のシリーズに関しては全くの未見という、
    要はかなりのへっぽこパイロットです。
    その前提の元、読み進めていただけると幸いです。



    ■僚機が空気


    今までのシリーズでも決して大活躍していたわけではないのですが……


    本作の僚機は04同様、基本的にただ後ろにくっついて飛んできて、
    たまーに思い出したように敵に攻撃を加えます。
    そして火力設定が低いのか、ミサイルが当たっても敵は大して弱ってくれません。
    主人公(以下『トリガー』)の支援をする、というよりは、
    こっちの撃墜に茶々を入れてくる、みたいな印象を受けることが多いです。


    過去シリーズでも似たようなところがありました。
    僚機に直接指示を出せる「5」や「ZERO」でも、自機と僚機のキルカウントを見比べると、
    だいぶ……いや圧倒的な差が生まれることになります。
    でも、それ自体はゲームなので、べつに大きな問題ではないのです。



    稼ぎどころのミッション11
    ハンバーガー量産するよ~٩( 'ω',,)و



    一番キツイと感じるのは、「7」では大量の無人機(UAV)を相手取ることが多く、
    しょっちゅう後ろからミサイルを撃たれたりするのに、
    僚機がカバーに回ってくれるシーンがほぼ全く存在しないこと


    「トリガー! 敵が後ろについたぞ!」
    「ミサイル! ブレイクブレイク!!」


    うっせえ! わかってんだよアラート鳴りまくってるし!!


    みたいなことが、全編を通じて頻繁に起こります。


    もっとも、後方に居た敵機が急にいなくなることも時々あるので、
    僚機がコッソリ始末してくれてるのかも知れない。
    そういう時は「ケツに居た敵は引っ剥がしておいたぜ、トリガー!」とか言ってくれると、
    「ああ助けられたんだ、ありがてぇ……」とか思えたかも知れません。


    次回作以降では、どうやって僚機の(でしゃばり過ぎない)存在感をアピールするか、
    というところにも意識を向けてみて欲しいな、と感じる次第です。
    というのも、「7」をやっていて時々感じるのが、
    『何もしない味方にやいのやいの持ち上げられて、エースに仕立てられるトリガー』
    みたいな、こう何とも言えない薄気味悪さなんですね。


    「守れ!トリガー!!」
    「時間内に駆け抜けろ、トリガー!!」
    「全て殲滅しろ、トリガー!!」
    「雷雲に飛び込め、トリガー!!」




    飛び込んだ結果がコレだよ!!




    みたいなシチュエーションがずぅーーーっと続く。
    そして上手くできればしこたま褒められる。
    「すげえ、さすがトリガーだ!」


    しかし一方で、上手くいかない時はしこたま責められます。

    「今回はなんとかなったが、次はもう少し早く頼む」
    「○○が攻撃に晒されているぞ! 何やってんだトリガー!!」


    こっちゃ必死に空と格闘しながら任務遂行してんだよ!!!
    ガタガタ抜かすならお前がひとっ走り飛んで片付けてこいよ!!



    ……なんて言いたくもなるシーンがちらほら。
    不思議なことに、ついこないだもプレイした「04」とかなら一つも沸かない気持ちです。
    味方の物言いにトゲを感じると言いますか、この状況でそこまで言わんでも、と
    愚痴のひとつもこぼしたくなるような扱いを受けることが、ままあるんですよね……。


    「6」なんかを見ますと、僚機指示はもはや戦術レベルの規模にまでなった感があって、
    あれはあれでエースというよりリーダー、つまり作戦全体を統括する立場の人、
    という感を受けるものでした。
    そこからすれば「7」はまだエース的ではあるのですが、
    それにしても優秀な仲間に囲まれつつも群を抜いている、という印象が生まれにくい。


    せめて僚機指示や僚機の機体選択システムが残っていれば……と思わずにはおれません。


    (この項、本当は僚機である「カウント」と「ワイズマン」の関係性についても
     少し踏み込んだことを言いたかったのですが、
     若干ポイントがボヤける上にエントリとしても冗長になってしまうので……
     また別の機会に書けたらいいなって思います)




    ■時間に追われながらのフライト



    これも過去作と比べて必ずしも多いとは断じられないですが、
    「7」って結構、時間制限がシビアなことが多くないですか


    例えばミッション13、「バンカーバスター作戦」。
    前半は航空爆撃を誘導してIRBMサイロを破壊して回るミッションであり、
    後半は実際に射出されたミサイルを撃墜するのがお仕事になります。





    この後半が、とにかくキツイ。
    IRBMはあっという間に高度限界(約40,000フィート)を突き抜けていっちゃいます。
    それも複数発射されるミサイルは各々の射出地点が離れており、
    そこそこ足の速い機体で全力ダッシュをかけないと、撃墜に間に合いません。


    後半ミッション自体の時間制限は8分ぐらいあるのですが、
    実際のところミサイルが射出されてから高度限界に達するまで1分少々というところなので、
    もはや左上のタイムリミットなんてガン無視するほかありません。




    急げ急げ


    おかげで、ゆっくり周りを見る暇もない。
    空域を飛ぶ5~6機ほどの敵機にかまける余裕もない。
    せいぜい、一定の条件を満たした時に出てくるネームドを全速力で撃墜し、
    返す刀でIRBMに全速突撃→撃墜ということぐらいしか出来ません。
    (このネームドについても言いたいことがある。後述します)


    顕著な例として挙げた「バンカーバスター」でしたが、
    他にも唐突なタイムカウントが始まったり、
    ちょっと目を離した隙に護衛対象がやられてしまったりと、
    いくつか似たような例があります。



    アーセナルバードへのサプライシップが打ち上げられたぞ、
    急げ急げ(猶予、およそ2分)




    撃墜!! ……ヒギャアアアァァァ(チーン)


    また「7」では各ミッションのクリアランクに
    「撃破スコア」と「クリアタイムスコア」が関係することになるため、
    全てのミッションでSランクを取ろうと思うなら時間効率の良い稼ぎを追求する他、
    1機で高いスコアを有するネームド機は意欲的に墜としたいところ。
    ですが、このネームドの出現条件にも(ものによってですが)
    「一定時間内に○○しろ」的なものが、けっこう絡んでいます。


    もう一度言いますが、左上に示されたタイムカウントが本作ではほぼ形骸化しており、
    のほほんと飛んでると「味方が墜とされた!」だの「○○が××になった!」だの、
    様々な理由でミッション失敗となってしまうことが体感的にとても多いです。
    話の展開的に、護衛任務や殿軍が多いことも影響しているのでしょうが……
    アレですね、「5」のミッション18だったかな? にある「クルイーク要塞戦」を
    ほぼ毎回のミッションでこなしている、という感覚。
    しかも本作では気象条件が絡むシーンもいくつかあるので、疲労感に拍車がかかります。
    これで過去作同様、難易度が上がればミサイル1発でオシャカ、
    かつ再開はミッションの頭から、なんて状況だったら、ほぼ確実に発狂できたでしょうね…。


    実際の空戦なら急を要することが多いだろう、と慮るところも無きにしも非ず。
    とは言え、全ミッション、もう少し時間的に猶予があっても良かったんじゃ?
    とは思います。




    ■選択肢が多そうで実はそうでもないエアクラフト



    エスコンと言えばやっぱり、色んな機体を駆って空を自由に舞い、
    ターゲットをがしがし屠れる楽しさこそが神髄なのだと思うのですよ。


    ですが本作、ミッションアップデートの度にほぼ確実に前半と違う要素を追求され、
    しかもその大半は無人機襲来などの空戦に依るところが大きいです。
    かいつまんで言うと、「対地ミッションだと思って出たらやっぱり空戦だった」
    という展開がものすごーーく多いんですね。


    そういう状況を鑑みてか、本作では使用できる攻撃機がとても少ないです。
    (A-10とSu-34の2機のみ)


    なので兵装的には基本、空戦特化でガチガチに固めつつミサイルとバルカンで対地をやるか、
    あるいは対空戦闘力の高い機体に特殊兵装として対地武器を積むかの方が多くなる。
    そして実際に、エアクラフトの選択肢としても対地攻撃機よりマルチロール機などのほうが、
    対地に有用な特殊兵器を(しかも搭載数も多く)持っている、という状況。
    ゆえに、ツリーが充実して所有機体が増えれば増えるほど、
    対地攻撃機の出番がなくなっていく……


    とりわけエスコンファンなら「A-10」の存在性が極端まで薄れてしまっている事には、
    忸怩たる思いがあることでしょう。

    「FAEB(燃料気化爆弾)なし」
    「足の速さと対地戦のボリューム的に、YF-23withUGBでもじゅうぶん賄える」
    「4AGMはF-22AのXSDBがあればお払い箱状態」
    「下向きバルカンも、追加パーツのレーダーロック機銃システムがあればいらない子」

    いいとこないじゃんA-10!!


    涙目シャークヘッド



       Su-34「ワイは速度稼げるから先輩よりはまだマシやな」
       A-10 「でもキミの兵装も他のヤツで代用できるで」
       Su-34「あっ」



    まあそれでも一応、ミッション14「ケープ・レイニー急襲」や
    ミッション16「アンカーヘッド夜間市街戦(敵味方識別)」など、
    低速でゆっくり飛び回りながら目標をドカドカ攻撃していく場面では、
    思いの外活躍してくれるところもあります……
    が、そもそもマルチロール機ならヒットアンドアウェイで手数を補えるので、
    A-10に拘る必要があんまり無いというね。



    ケープ・レイニー急襲 ※画像はF-35です




    特殊兵装って、各機体とも3種までっていう縛りを続ける意味、あるんでしょうか……?
    「追加パーツ」の概念で装着コストという要素が生まれたことですし、
    どうせなら特殊兵装も追加パーツの一種と割り切って、
    数ある兵装の中からコストを削りつつ選ぶ形でも良かったような気がしてきます。
    (それはそれでマルチとのバランス取りとか大変だろうけど)




    ■昂らないネームド機


    「7」は無人機との戦いがメインであり、
    無人機(MQ-99、MQ-101)との戦闘機会はものすごく多いのですが、
    一方で敵側エースと呼べる有人パイロットとの戦闘は、実質ミハイ戦のみに集約されます。



    メビウス1「おじいちゃん、お空なら昨日飛んだでしょ」
    おじいちゃん「やだやだ、毎日飛びたい!」



    え、難易度NORMAL以上ならネームドがいるじゃんって?
    残念なことに、本作におけるネームドはその出現条件も相まって、
    「スキン狩りの標的」ぐらいの存在感でしかありません。


    なんて言うかね。
    せっかく「ネームド=その名を轟かせるほどの敏腕パイロット」という存在なのだから、
    彼らも無人機に負けず劣らずなぐらい強くて良かったんじゃないか、と思うんですよ。
    それなのに、彼らは基本的に他の有人機と同じく「ぬぼー」と空飛んでるカンジ。
    真正面からのヘッドオンミサイルでも容易く撃墜できちゃうぐらい、
    そこらへんのパイロットと何も変わるところがありません。


    唯一違うのはド派手なスキンぐらい。


    なので「スキン狩りの標的」……というわけです。
    加えて、出現条件がけっこう特殊なので、ネームド倒した! というよりかは、
    「ネームド出せた!」みたいな達成感の方が強いまである。
    なんか違くね? と思わないでもありません。
    とは言え、上述したように「7」は各ミッションの時間的制約がけっこうキツキツなので、
    そこにやたら強敵なネームドをゴロゴロ配置されても困るっちゃ困る。
    でもなんだかなぁ……とモニョるところは、結構あります。


    時代は無人機! だけど有人パイロットだってまだまだ頑張ってる!
    というところを、もう少し見たかったような、そんな気はします。


    ちなみに彼らネームドの出現条件ですが、いくつか抜粋してご紹介しますと……

    「特殊兵装で複数TGTを同時に撃墜する」
    「TGT以外の標的を全て倒す」
    「3分以内に渓谷を駆け抜ける」
    「壊れた砲台の下をくぐる」

    ドルアーガの塔かよ! さすがナムコだな!!

    と突っ込みたくなるぐらい、条件がまんまドルアーガ。
    で、いざ出てきても上記の通り。
    まああらゆる意味で「有人機の時代は終わりつつある」ということの示唆なのかも……。



    (,,'ω')<モビウスワン、ターゲッデストローイ



    ■難易度変更でほぼ変化しない難しさ


    現状、EASYから始めてHARDまでプレイしての感想ですが……

    いやこれほとんど難易度変わってないよね??


    過去作では難易度を変えた際、
    「自機の被ダメ率」(EASYならミサイル3~4発まで耐える→ACEだと1発即死)
    「兵器の搭載数」(バルカンやミサイルの搭載数が著しく変わる)
    「敵機の挙動」(低難易度だと比較的緩やか)
    といった変化があり、難易度が変わっている事が顕著に分かるようになっていました。


    ですが本作においては、難易度を変えても被ダメは大して変化しません。
    ミサイルには余裕で数発耐えるし、機銃も一発チュンってかすれば1%の損耗。
    過去作の「機銃の雨を見ただけで怖くて近くを飛べなくなる」みたいな威力変化は無し。




    所詮ただの豆鉄砲、痛くも痒くもないぜ
    (イジェクト!イジェークト!!)


    こちらのバルカンにはNORMALまで無限→HARDから上限あり、という変化があるものの、
    ミサイルや特殊兵装の携行数が変わらないため、難易度として大きな差は無いです。


    そうやって考えてみると、本作における「難易度」の大きなウェイトは、
    やはり「雲」「落雷」「気流」といった気象的な要素によるもの、
    そして後半ミッションの幾つかで発生する「敵味方識別」のような、
    状況不明瞭からなる要素によるものが大半を占めている、と改めて感じます。


    そしてこれらがやはりと言うべきか、難易度を変えても何にも変わらない。
    つまり、どの難易度でもだいたい同じくらい難しい。


    加えて言うなれば、各ミッション終了時に得られる資金(MRP)は、
    難易度が高いほうがキルスコアなどにかかる倍率が高まるため、稼ぎが良くなります。
    (難易度EASYだとx0.8だし、難易度HARDならx1.2になる)
    MRPを貯めるとエアクラフトツリーで機体やパーツ購入に充てることが出来ますが、
    基本的には初期機体を頑張って使い続けるよりも、さっさと上位の機体に交換したほうが
    キャンペーンモードの攻略は格段にラクになります。
    さらに言えば、同じ難易度でもミッション1とミッション20とでは
    クリア時にもらえるボーナスの額に天と地ほどの開きがあるため、
    どうせフリーミッションで稼ぐなら前半のものより後半のものを回した方が、
    相対的に大きい稼ぎを得られます。(楽に稼げるとは言ってない)






    さすがに初周からHARDでやれとまでは申しませんが、
    日和見をしてEASYで2周3周するよりは、NORMAL→HARDのステップを早めに踏んだ方が
    エアクラフトツリーを充実させるためには良さそうです。
    高性能機体に特殊ミサイルの追加パーツをガン積みしてQAAMを乱射すれば、
    あのミハイやフギムニですらあっという間に撃墜できちゃう……かも。


    これ、前回のエントリでも申し上げたことですが、せめて難易度変更によって

    「気流による影響・被雷率の変化」
    「敵味方識別の条件変化(あるいはPOP数自体の減少)」
    「雲の中での自機ミサイル追尾性能の変化」(これは専用パーツがあるっちゃある)
    「各ミッションの時間制限(護衛対象の生存や目標撃墜までのリードタイム)」

    が多少なりとも体感できる範囲で違えば、
    本作に対する巷の評価ももう少し変わったんじゃないかという気も。


    それはそれで、「進化した飛行体験」をウリにする本作が台無しと言われそうですが、
    せっかく難易度を選べる仕様なのですから、もう少し段階的に「それと解るレベルの」
    変化をつけていただきたかった、とは思わずにおれません。



    ※2019/08/24追記※

    難易度ACEまでクリアしました。
    計4種の難易度設定に対する、ぼく自身の体感としましては

    ・ちょっと被ダメが増えた
    ・ちょっと敵機の機動が鋭くなったような気がした

    くらいで、過去作ほどの大きな差というのは感じませんでした。
    裏を返せば「7」は、これまでのエスコンと比べて
    低難易度で全20ミッションを確実にクリア出来る腕があれば、
    高難易度になってもちゃんとクリアできるようになっている
    ……ということかなと、今は思っています。




    ■納得できないエース感


    エースコンバットなのにエース感を納得できない、とはこれいかに。



    ミッション7「無慈悲な摂理」にて、複雑な地形+乱気流+落雷という悪条件コンボの中、
    突如急襲してきた敵エース『ミハイ(ミスターX)』と初めて激突することになります。


    この時、ミサイルを食らうと当然ながらダメージを受けるわけですが、敵側の無線で

    「ミサイルを食らったのに即死しないだと!?」
    「ダメージを最小限に抑える飛び方をしているんだ。後で君たちにも教えよう」

    みたいなやり取りがあるんですけどね。いやいや。


    コクピットにヘッドオンで食らっても4発ぐらいまで耐えるよ?


    さすがメビウス1だ!ミサイル直撃してもなんともないぜ



    他の無線会話でもけっこう言える(そして最初の項で述べた部分でもある)んですが、
    どうにもこう、「無理くりエースに仕立てようとしてる」感、ありませんか……?


    これは敵側についても同じことが言えます。
    ただでさえとんでもない変態機動を繰り出してくる上に、
    こちらのミサイルを何発叩き込んでも墜ちてくれない。
    イベントの都合だけで撤退したり、墜としたと思ったら生きてたり。
    で、その理由が「ダメージを最小限に抑える飛び方をしてやがる!」と来たもんだ。
    単純に「機体が頑丈だ」とか「良い装甲を施してる」って言われた方が、
    まだナンボかすっきりするのに……。


    思えばぼくが「5」や「ZERO」におけるエース戦が好きな理由って、
    こっちと相手の基本的な条件がほぼほぼイーブンな感覚だから、という気がします。
    要は、どの機体にどんな特殊兵装積んでようが、何機編隊であろうが、
    きっちりミサイル(バルカン)叩き込めばちゃんと墜ちてくれる。
    そういう分かりやすい公平さって、戦いの緊張感を盛り上げてもくれるし、
    いざ勝った時の達成感にも混じりっけがないんですよね。


    (ちなみに「ZERO」ではピクシーとの最終決戦も好きなんですが、
     あれは上記とはちょっと違う理由で、決闘気分がMAXに盛り上げられるからです。
     とりわけ、あの場面でかかるBGMとの相乗効果がとにかく神がかり的)


    それからすると、「7」は何とも勝ちの旨味が薄いというか、
    どこか納得のいかないまま試合終了となってしまうエース戦が続きます。
    手慣れてくると「ハイハイ、イベントでしょ。ミサイル一発当てたしあとは放置で」
    みたいなことになってくるので、緊張感がどうしても薄れてしまう。
    こっちもこっちで1~2発食らったって死にゃしないと思ってるので、
    相互ヘッドオン状態からのミサイル/バルカン全ブッパ戦法を普通に取れてしまう

    この感覚で今「ZERO」でもやったら、被撃墜の雨あられになりそうで怖いですね。




    ヘッドオンからのスレスレミサイル




    もうね、エスコンは次回作から「部位ダメージ」システムでも盛り込めば良いと思うよ。
    ミサイルをヘッドオン/エンジン直撃で食らったら、難易度に関わらず即死とか。
    バルカンも、キャノピー直撃でパイロット死亡になるとか。
    そして敵も同じ条件にする。
    これならこっちが狙い澄ました一発で相手を撃墜できるし、逆に回避側に立っても
    ミハイの言うような「ダメージを最小限にコントロールする挙動」を取ったりして、
    プレイヤーは自分の腕次第で生き延びられる状況を構築していけるようになります。
    単純なHP(パーセント)制よりは、よほどエース感あるって思いません?






    タブロイド「ヤツはミスターXにきっちり2発ミサイルをブチ込んでる」




    加えて言えば、「チェックポイント(CP)からのリスタート」システムも、
    ミッションの緊張感をかなり大きめに削いでいると感じます。
    なにせ、CPからのリスタートを選ぶだけで弾薬/ダメージが全回復

    「補給のために基地に戻る場合は帰還ラインまでうんぬんかんぬん」

    うん。要らないよね?

    補給したかったらCP通過まで粘って、そこでリスタートした方が時間も削られないし。
    帰還ラインまでの往復に1分前後もかかることを考えたら、その間1機でも多く撃破した方が
    スコアも稼げるしで、今回ホントに帰還補給のメリットがありません。
    逆に、CPからリスタートするデメリットの方が特に見当たらないという始末。


    そして無補給で粘り続ける→撃墜されてやり直しすると、それもクリアタイムに影響する。
    特に全ミッションSランクを狙うなら、CP通過のタイミングで一旦リスタートした方が、
    格段に有利です。
    そしてそういう仕様になってしまっている時点ですでに、何かがおかしい気がします


    ミサイルは生えるもの(ただしストレンジリアルに限る)



    過去作には基本として、空を駆ることの緊張感(ワンミスが即死に繋がる)があり、
    ゆえにフライトや兵装をマネジメントしながら飛ぶことの面白さがあり、
    それは戦術として「どのように攻め、何をどう攻撃し、どうやって目的を達成するか」
    を考えて練って実行する手応えを我々に与えてくれていたのだと思います。
    帰還補給などもその一種で、どのタイミングで補給を入れるか、兵装を変えるべきか否か、
    なんてことを考えながらやりくりするのが面白かったのだし、
    うっかりミサイルを切らしちゃえばその後が地獄になるからこそ、
    ここの場面では機銃掃射を頑張って……とかやってたわけです。


    けれど「7」はあんまり、そういう小難しいことを考えなくても、
    各CPごとに持ってる兵装を使い尽くすつもりでひたすら攻撃をすればいいし、
    実際そのぐらいの勢いで殲滅戦を仕掛けた方が、タイム的な制約もパスしやすい。
    今までのエスコンの常識に倣って、ケチるところをケチりつつじっくりと……
    なんてやってる方が、かえって手詰まりに陥りやすい感すらあります。



    弾薬の心配などせず、燃やせ燃やせ~٩( 'ω',,)و




    これがせめて「CP通過時の残弾数/被ダメ率は持ち越しされる」という仕様だったら、
    やはり既存のエスコンを踏襲したプレイスタイルが必要になったと思いますし、
    その一方で本作のあらゆる制約はもう少し緩められるべきだとも思います。


    「7」の敵が無人機という物量押しで攻めてくるなら、こっちもCPリスタート補給という
    半ば裏ワザに近い方法で物量押しをすれば良い……とでも言うような、
    この何ともしっくり来ない感じが、いざミッションを完遂した時の
    「おれは エースに なったぞ!」
    感を阻害しているようにも思えるのです。
    もちろんCPリスタートに頼らないでもクリアはできるようになっていますし、
    必須の手段、ってわけじゃないんですけどね。



    数々の難関ミッションを制覇しても、
    天空の王ミハイを撃墜しても、
    フギン/ムニンを木っ端みじんにしてみせても、
    どうにも腑に落ちないこの感じ。
    エースっぽく持ち上げられてるんだけど、なんかエースになれた気がしない
    そういう納得の行かなさは、「7」を数周ほど回した今でも、うっすらと残っています。



    ■総評



    今回は辛口評価ということで、だいぶ粗をほじくる感じにはなってしまいました。
    もちろん良い点も多数ありますし、個人的に好きと思う部分はあって、
    それらをざっくりまとめた上での感想は
    「シリーズ進化の方向性としてはアリ」
    となります。


    裏を返せば、「7」そのものは進化の途上。
    これ自体が過去シリーズを総括する完成形とまでは言えない、というところです。




    コクピット視点、もう少しだけ引いてくれるとやりやすい気が…


    元々ぼくはSFCの「エリア88」というゲームをやっていて、ふと
    「3Dの世界で爆弾投下してみたいな」
    とか思ってエスコンを始めたクチなので、そんなに多くを求めてはいないんですよね。
    あの美しい空を飛びながらバンバン敵をやっつけられるだけで、じゅうぶん及第点。
    雲はミサイル遮断という意味でこちらの回避に使えるところもありますし、
    なにより雲を突っ切って飛ぶのが単純に楽しいと感じたりするので、さして苦痛はないです。


    ただ、本当にエスコン初心者にはあまりオススメ出来ないな、とは思います。
    こうしたゲームに適性のある人なら難なく飛び込んでくるのかも知れませんが、
    プレイヤーの裾野を広げる、的な意味では厳しいところが多いのでは。
    また、過去のエスコンを良く知るプレイヤーにもある種のカルチャーショックのような、
    「あれ、エスコンってこうするゲームじゃなかったっけ?」と感じさせるところもあり、
    色々な点で「7」は「7」に慣れていかないといけない作りになっています。


    そういった部分に対してゲーム側から適切にフォローが出来ているかと言えば、
    かなりの部分でプレイヤー任せにされており、
    それをしてぼくは「荒削り」というふうに評価しています。




    とにもかくにも、「超本格的ヒコーキごっこ」というコンセプトに基づいてなら、
    「7」もじゅうぶんにヒコーキごっこを楽しめると思います。
    ただし、プレイを通じて受ける負荷(ストレス)に対して
    解放(カタルシス)が少ない感は否めず、そこを自力補給できないと、
    イライラばかりが募る可能性は高いと思います。





    以上、あんまり批評とも呼べないような批評でした。
    とりあえずエスコン好きな方、「7」に興味のある方は、
    一度遊んでみて損はないとは思います。
    個人的にはシーズンパスも購入したことだし、DLCの追加ミッションが待ち遠しい。





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  • 【考察】エースコンバット7は「状況識失調」の物語である【ネタバレ注意】

    2019-08-09 19:00

    どうもどうも、最近すっかり配信できずにいるわんこです。

    合間を見い見い、出来る時にチョコチョコとやってはおりますが、
    なるべく安定した放送ペースを確立できるよう、陰でまだまだモフモフしています。

    先日(8/6)久々に放送をしたわけですが、そこで選んだタイトルが、


    「ACE COMBAT 7 SKIES UNKNOWN」




    そう、ついにエスコン7ですよ! 発売からだいぶ経っちゃったけど!
    今回コレが出来るようになるまでには、いろんな方の技術的・物資的協力がありました。

    そのことに改めて感謝申し上げつつ、今回はエスコン7の考察をしてみたいと思います。



    ※一部ネタバレ要素を含みます。
     エスコン7のネタバレを避けたい方は注意です。




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    ■個人的には大満足! しかし世間の評価は







    さてさてまずはエスコン7(以下「7」)の感想としてですが、
    歴代エスコン「04」、「5」、「ZERO」ぐらいしかやってなかった自分にとっては、
    圧倒的にパワーアップしたグラフィックが何より感動的で、
    文字通り隔世の感と呼べるものがありました。

    プレイ環境はコンシューマ機ではなくSteam版(PC、グラボはGTX 1050Ti)でしたが、
    フレームレート的にもおおむねヌルヌルで、一周通してひたすら快適。
    また処理能力の向上もあって、フィールド内には様々な要素が追加され、
    それがゲーム性にも濃密に影響を与えています。

    この件についてはおいおい語るとして……


    「7」のキャンペーンモードを一通りプレイして、まず率直に思ったことは、

    「全体的に難易度が高い」

    「なかなかキツいと思わされるミッションやシチュエーションが多い」
     └これは難易度「EASY」でも同様。むしろ本作は難易度の差を感じにくいかも
    「ドラマ部分は淡々としていて、しかも複雑味が強い」
    「でも面白い」

    というものでした。
    キャンペーン全てのステージを通じてキツい/苦手はあるものの、
    「二度とやりたくない」
    と感じたものはなかったです。


    総じて言うと、エスコン初心者にオススメするにはちょっとキツいものがあるけれど、
    シリーズ進化(の方向性)として、アリじゃないかな、と思う部分は多く。

    「もうちょっとこうして欲しいかな」と思うところも無いでは無かったのですが、
    それを語るのは別の機会にしたいと思います。



    上記はあくまで「ぼく自身の感想」。
    しかし世間の評価を見てみると、また随分と違う評価が出てきます。

    「難易度が高い」
    「状況が理不尽に感じる」
    「展開が薄い、達成感や爽快感に欠ける」
    「意味の分からない会話が多い」



    今回の考察はまさにコレについてなのですが、先に結論を述べますと、

    「7」のシナリオとゲーム性は、併せて一体になるよう設計されたものである


    ということ。

    ゲーム中の難しさも、シナリオの展開も、劇中人物たちの言動も、
    全てはある一つのテーマに沿って形づくられていったものではないだろうか。

    そんなお話をしてみたいと思います。


    ■エースコンバット7は「状況識失調」の物語である


    本エントリの題名を復唱しつつ、いよいよ本題に入りたいと思います。

    「状況識失調」
    というのは完全にぼくの造語なのですが、
    それを語る上で「7」のゲーム性についての解説は欠かすことが出来ません。
    そのため、ここの記述にかなりの分量を割きます。


    全国100万人のエースパイロット諸氏ならとっくにご存知のことと思いますが、
    航空用語に「バーティゴ(空間識失調)」というものがあります。
    「状況識失調」という言葉は、このバーティゴを他の要素にまで広げた物言いです。
    (これについては後段にて述べます)

    さて、バーティゴとはどのようなものか?
    Wikipediaの記述には以下のようにあります。

    主に航空機のパイロットなどが飛行中、一時的に平衝感覚を失う状態のことをいう。健康体であるかどうかにかかわりなく発生する。

    機体の姿勢(傾き)や進行方向(昇降)の状態を把握できなくなる、つまり自身に対して地面が上なのか下なのか、機体が上昇しているのか下降しているのかわからなくなる、非常に危険な状態。しばしば航空事故の原因にもなる。

    濃いの中や夜間の飛行など、地平線水平線)が見えない状況で飛行する場合に陥りやすく、また視界が広くとも雲の形や風などの気象条件、地上物の状態などの視覚的な原因、機体の姿勢やG(重力加速度)の変化などの感覚的な原因によって陥ることがある

    引用:Wikipedia『空間識失調』の項目より






    「7」ではパワーアップした描画力・演算力による雲、降雨の水滴、着氷、霧、
    砂嵐といった要因により、視界不良が頻繁に起こります。
    また、タービュランス(乱気流)により、意図しない挙動を強いられることもしばしば。
    おまけに被雷によるHUD不良と挙動乱れが起こるミッションまであります。


    余談ながら、これらの要素はゲーム内での難易度選択でも全く変化しない……
    というのがぼくの体感です。
    そして先述した「7」そのものの難易度の高さも、大半がこれらの要素に起因しています。


    気流と落雷ぐらいはEASYで軽減してくれても良かったのに、とは思わないでもない。

    (落雷に叩き落され岩肌に直行→ピンボール状態からの爆散コンボ、数回決めました)



    このため、プレイ中は既シリーズと比べても格段に「バーティゴ」を体感しやすいです。
    シリーズ常連のエースパイロットの方も、過去作品の感覚でプレイしていると、
    予想外の状況が連続することになるでしょう。
    そのぐらい、「7」の空はこれまでのエスコンの空とは多くのものが違っています。 



    雷雲の中を飛行している時の視界状況。
    キャノピーにまとわりつく水滴や着氷を含め、上下左右、一切の状況が分からなくなります。
    ようやっと視界が晴れた、と思ったら山肌の直前だったりすることも……。




    実際に戦闘機を操縦した経験を持つ元航空自衛隊パイロットの方ですら、
    「7」のプレイ中にバーティゴを経験したと述べるほどです。

    【参考】:『エースコンバット7』はもはや面白くないフライトゲームへと成り果てた


    現実世界では機体の姿勢や重力加速度(『G』)等の要因もあり、
    パイロットとしてそれらを体感したことの無い自分には語るべくもないので、
    詳しいところは上記の参考エントリを読んでいただきたいと思います。



    自分は水平に、まっすぐ飛んでいるはずだ。
    自分は敵機を追いかけて旋回し、今は一回転宙返りをした後のはずだ。
    自分は上昇しているはずだ。
    周囲には山や建物は無いはずだ。


    そんな「はずだ」操縦が引き起こす事故。
    何故そう思ってしまったのか?
    振り返ってみると、それらは全て「視界不良」が原因で起こっていたのでは?
    少なくともぼく自身はそうでした。


    これを踏まえて、ことエスコンにおけるバーティゴ発生の原因はパイロットの視覚、
    すなわち「主観」「思い込み」に頼るからではないだろうか?
    ということに思い至りました。




    では、そんなバーティゴをいかにして回避(あるいは克服)すれば良いのか?

    上記の参考エントリによれば、リアルで航空機を操縦するときに信じるべきは、
    「視界」ではなく「計器」なのだそうです。

     質問にもあったがバーティゴは慣れで防げるものではない。何千時間飛ぼうがバーティゴは起こる。だからこそパイロットは計器飛行を習熟するのだ。これは飛行機というものが発明されてから現在まで変わらない。

    引用:『エースコンバット7』はもはや面白くないフライトゲームへと成り果てた」より


    「視界より計器」

    こう書くと大げさに聞こえますが、実際エスコンシリーズに慣れたプレイヤーであれば、

    画面左下のレーダー
    HUDに表示される高度計
    (ALT)と速度計(SPEED)
    ・方位計
    (「NW」等の略号+「210」等の数字=方位)
    ベロシティベクトル(画面中央付近にある、○に毛の生えたようなマーク)

    あたりを組み合わせ、自機の姿勢や進行方向を確認するクセがついていると思います。
    また進行方向的に地面や山などに激突しそうなときは「PULL UP」警告が出たりするので、
    すんでのところで激突を回避できる時もあります。






    あるいは、これもまたあくまでゲームとしてのエスコンに限った話ですが、
    左右のラダーボタンを同時押しするなどして使える「オートパイロット機能」を用いて
    強制的に姿勢を水平に戻す、という手も場合によっては有効です。

    (速度や角度が悪いときはどうしようもない)


    これはあくまで「ゲームとしてのエスコンのフライト」に限っての話ですが、
    実際に計器を常に確認しながら飛ぶことで、あるいは機械を信頼することで、
    バーティゴによる衝突事故の確率は劇的に減らせます。
    (落雷はアレどうしようもない。避雷針とか何か無いものかね)



    何度か被雷すると、雷の近くを飛ぶだけで「ヒエッ……」てなります




    ここまでゲーム内での「バーティゴ」に関するお話をしました。
    内容を簡潔にまとめると、

    • 「7」は今まで以上にバーティゴに陥りやすいよ
    • その原因は、多分だけど「視界/視程」に頼って飛ぶからじゃないかと思うよ
    • そういうときは「計器」を確認しながら飛ぶクセを身につけるといいよ

    という感じです。


    何度も地面にキスして「もーーーやだ! 自分にはこういうゲーム合わない!!」
    と投げ出しそうになっている/もうなっちゃった方にも、ぜひ一度、
    「計器を確認しながら飛ぶ」というのを試してみてほしいところです。
    また、歴代のエスコンですと「5」がチュートリアル機能つきで基礎を身に着けやすく、
    ミッションの難易度も比較的ゆるやかに上がっていく……とぼく個人は感じているので、
    入手してプレイできる方には「5」から入っていくことをオススメしたいです


    ※現実では計器故障とかもあり得るため、あくまでゲームとしての、
     それもエスコンに限っての話としています。
     もしも、将来的にエスコンが「計器故障」まで導入してきたら……
     いろんな意味でお手上げですね。




    さてさて、前段が長くなってしまいました。
    続いてシナリオ面のお話。
    こちらも巷では賛否両論あります。
    そして、ここの部分こそが「状況識失調」という言葉につながるところです。



    序盤、とある出来事から主人公は罪を問われ、懲罰部隊へと配属されます。
    この内訳は実際にゲームをプレイして確認して欲しいのですが、
    その因果関係、客観的証拠といったものは、誰の目にもはっきりしていません
    周囲を取り巻く状況と憶測によって、主人公はその責任を負わされることになるわけです。

    (プレイヤー視点からは、一瞬とは言え歴然なのですが……
     フライトレコーダーやAWACSの記録など、様々な情報を解析することで
     証明できるのではと思うのですが、どうなんでしょうね)


    また終盤に至る直前には、これまた戦時中の出来事により、
    戦争状態にあった両国、いや世界は「情報的な見通しの良さ」を失うことになります。
    個人が使用するインターネットに当たる通信インフラさえも破壊され、
    味方が敵になり敵が味方になる混迷した状況の中
    プレイヤーは戦闘中に敵味方を目視で識別する必要性が出てきます





    これが全部「UNKNOWN」なんだよ……


    この状況下に陥った中での初ミッションはしかも、夜間の市街という。
    識別のため目標に接近あるいは注視しようとして、ハードラックとダンスっちまう……
    やらかしちゃった人も、きっといるよね、ね?(3敗)






    さらにゲーム後半のことですが、とある人物の取った行動について、
    劇中人物たちの解釈が分かれるという場面があります。
    これについて類推できる要素はいくつかあるものの、
    当の本人がそれについて語ることは無いため、真意は最後の最後まで明らかになりません。




    「ごめん、ちょっと意味がわからない」



    そして、作中世界に大きな影響を及ぼした人物の、最終的な安否。
    これも(一応語られはしますが)明確である、とは言い切れません。
    その理由は、『エスコン3』をプレイした人ならお分かりかも知れませんが……
    ボカしつつ言えば「あんなことになったのに、最後ああなるなんてあり得るの?」
    というところです。
    これについて途中のプロセスに当たる部分は、作中では「一切」描かれていないのです。



    他にも様々な場面で、登場人物同士、あるいは国や組織同士での
    「情報の錯綜」
    「解釈や見解の相違」
    「認識の齟齬」
    を露呈する事が多く、互いに事態不明瞭の状況が最後までずっと続いていく……
    というのが「7」におけるストーリーの大きな特徴だと思います。

    「7」のキャッチコピーである
    『願い、救い、痛み、恐怖、空はひとつにつながらない。』
    をそのまま体現している、とも言えるでしょう。


    これは、今までのエスコンと比べても明らかに異質なものです。


    基本的にエスコンシリーズのシナリオは、謎や伏線を孕んでいることはあっても、
    最後にはお話としてそれらにきちんと「答え」が示され、
    プレイヤーはそれによって納得と安堵、
    あるいはカタルシスを得るという構造になっていました。

    (作品によっては『アサルトレコード』などで補完する形を取ったり)


    そこからすると「7」の話は部分部分がボンヤリとしていて、
    しかも主人公の立場を含めて状況が目まぐるしく入れ替わっていくため、
    単にイベントムービーの流れだけを追っていると、最後までそのボンヤリが残ったまま終幕、
    つまりは消化不良で終わってしまうところがある、と感じます。







    それは「シナリオの失敗」なのか?
    それとも何らかの狙いがあってのことなのか?




    「7」は、それを受け取る者=プレイヤー自身にその解釈と判断を委ねるという
    手法を採択したのだ、とぼくは思っています。


    こういった手法は小説や映画などに多く見られます。もちろんゲームにも。

    「戦いの果て、人類の未来はどうなったのか?」
    「あの時の彼の行動にはどんな意味があったのか?」
    「あの人物たちのその後は?」

    それらを作中のほんの些細な描写から類推し、自分なりの答えを導き出すことを楽しむ。
    別の言い方をすれば読み手=プレイヤーに投げっぱなしにするとも言えます。

    投げっぱなしゆえ、読み解きのヒントとすべき要素をごく簡単に見失ったり、
    ヒントでないものをヒントとして拾い上げ誤った解を導き出してしまったり、
    そもそも正解もクソもない泥沼にハマり込んでしまうこともあります。
    時にはその解釈を巡って、人同士で諍いが起こることも……

    正誤はともかくとして「指標とすべきもの」が見当たらない時、
    各々がそれぞれ信じたものをぶつけ合って「事故る」という風景は、
    割と昨今いろんな場所で見かけることが多いかなと。


    まあ、これもあくまでぼく個人の感覚論でしかありません。
    「どっちだと思うかは、鏡だな」という、劇中の台詞が沁みます。
    我々プレイヤーの立場としては、あくまで物語を楽しむ側であるわけなので、
    そのことさえきちんと解っていればそれでいいのではないか、とも思います。






    以上、シナリオに関しては少々短いですが、ここまでを簡潔にまとめると、

    • 「7」のシナリオはそれまで拾い上げた情報に基づいて「読み解く」タイプのお話だよ
    • でもゲーム中(特に一度のプレイ)ではなかなか全部を拾い切れないと思うよ
    • そのため、読み解きの仕方によって意見は千差万別に割れがちになるよ


    という感じです。


    上記のように、目に映る状況ややり取りからはなかなか真相が見えてこない……
    主観や思い込みに依存すると、本当に頼りとすべきものを見失ってしまう……


    空間について、
    真実について、
    結末について、
    その後について、
    あらゆる場面を染め上げてしまう認識錯誤。
    その結果、陥ってしまう状態。


    それをして、ぼくは「状況識失調」という造語を宛てがうことにしました。



    「7」は空間識失調を起こしやすいゲーム性を獲得している。
    システムまで絡んでより一層、色んなことが分からなくなったりする。
    そしてシナリオ上での展開、謎解きについても手がかりが分かりにくく、
    プレイヤーはその読み解きのためのヒントを見失いやすい。



    これらの要素を全てひっくるめて鑑みると、
    「エースコンバット7は、あらゆる意味で状況識失調に陥る作品」なのです。



    自分の置かれている状況そのものが把握できない、それが状況識失調



    ■自らの手で状況識失調を脱せよ



    これまたぼくの憶測ゆえ、正解云々といった話ではないのですが……

    「7」の脚本を担当した片渕須直氏は初めから、
       このような構造を狙って書き上げていたんじゃないか?

    と勘繰っています。
    しかも推理ものとは違い、結末らしい結末はあれど、
    「真相」の全てが作中で明かされるということが無い。
    そういう構造自体に、ある種の「狙い」を感じるわけです。

    例えばいつまでも堂々巡りし続ける、終いには目眩ましのようですらある、
    そんな「終わらないミステリー」を意図的につくりだそうという、狙い。

    状況識失調によって「事故」が起こる構造的原因は、バーティゴのそれと似ています。
    見たものと実態が異なるから。
    あるいは見たものに頼ってそれに幻惑されるから。
    こうだと思った、あるいは考えたことが的はずれだったから、
    つまるところ、「主観」と「思い込み」が事実とズレているから。

    それを脱し切れないことによって、結果的に「事故る」。
    「7」で描かれた戦争はまさにそれを発端として起こり、
    そして話が進むほどに混迷を極めていきます。


    「真実は人の頭の数だけ存在する」
    と宣った、某新世紀アニメのKさんを思い出しますね……。


    何を受け取るか、どれだけ汲むか、どう味わうかは、全て受け手に委ねる。
    それに本当に狙いがあり、その全てが意図した通りに機能するのだとすれば、
    そこから捻り出された答えはそのまま「プレイヤーを映し出す鏡」なのかも知れません。





    ところで上の項にて、バーティゴによる「事故」を回避するにはどうすれば良いか?
    については「視界ではなく計器を信じるべき」というお話をしました。



    では、状況そのものにおける識失調とそれによる「事故」を回避するには
    どうすれば良いのか?

    作中では何をもって「計器」とすべきか、ということは何も明示されません。
    しかし我々は、目の前に広げられたものの中から取捨選択をする以外に
    やりようがありません。
    裏を返せば、我々の目の前に広げられたものそれ自体がヒントを包含する大海、
    ということになります。

    「広げられた」というのは、何も「7」だけに限った話ではありません。
    他のシリーズが時系列上結ばれているのであれば、その中に脈づいたものもまた、
    判断の材料たり得ます。

    『「7」の全貌を咀嚼したければ過去作も含めて履修すべし』
    ……というのはやや乱暴にすぎる話だと思いますが、
    実のところ、「04」や「5」をやっていなければピンと来ないであろうキーワードが
    小ネタどころかメインのシナリオにまでがっつり絡んで来ますし、
    逆に言えば過去作をやっておくことで人となりを把握できる人物がいるということも、
    「7」の解釈を進めるために挙げておきたいと思います。


    そして、この大海の狭間に見え隠れするヒントが、
    シナリオ面における不明瞭さを解消し状況識失調を脱するための「計器」となりえます。
    確度の高いヒントを拾い上げて拠り所=計器とし、類推を重ね『真相』を導き出すのは
    あくまでプレイヤーである「あなた」なのです。



    こと「7」のみに関して言うと、読み解きのヒントはイベントシーンよりもむしろ
    フライト中の無線会話などに多数埋め込まれているのですが、
    特に初見プレイ時、それを悠長に追っていられるだけの余裕はないと思います……
    先述したように「7」はバーティゴを起こしやすい状況ゆえ、大半のプレイヤーは、
    機体制御に神経を尖らせながら飛ぶことのほうが圧倒的に多く、
    また1ミッションのプレイにもそこそこ時間がかかるので、
    3~4ミッションも前に一瞬出てきただけの無線会話を記憶して積み上げていくのも、
    なかなか至難の業ではないかと思うのです。

    (一応、初見プレイ時でも攻略済みのミッションを再プレイできるようになっているので、
     お金稼ぎで何度も繰り返しているうちにふと気付くことも、不可能ではないかもですが)




       ロングキャスター「サンドイッチの出来上がりだ!」
       カウント「ハンバーガーじゃなかったのか」
       ロングキャスター「どっちも俺の好物だ(キリッ」
       カウント「そんなこたあ聞いてねえ」



    「7」というゲームのつくりは、親切か不親切かで言えば、「かなり不親切」です。


    ゲーム性やシナリオ以外にも、過去作との世界観設定的なつながりを含め、
    ある意味で「ついていけない人を置いてけぼりにする」ような不親切さ。
    ぼくがエスコン初心者に「7」を勧めにくいと感じる理由も、そこにあります。


    エスコンはもはや空戦の爽快感をとことん堪能する「ゲーム」としてではなく、
    ゲーム体験すら巻き込んで一つのテーマを提示し、
    プレイヤー自身に解を求めさせる「物語」となりました
    それも丁寧に欺瞞された表皮によって、プレイヤーの誰もがそうとは気付かぬうちに。

    ※ぼくは未プレイなのであまり多くを語れないのですが、伝聞からの推測として、
     『エスコン3』のつくりと何か似通ったものを感じたりもしています。
     『3』をプレイした人は、どのように考えるでしょうか?
     いつか自分でプレイしてみて、この疑問に答えを出してみたいです。

    このギミックに気付けた人は(仕掛けとしての良し悪しは置いといて)
    この作品のあり方を肯定できるかも知れません。
    ゲーム性のみ、あるいはシナリオ性のみを注視して評価した人は、
    キツい部分が鼻について否定的な見方をしてしまうかも知れません。

    「難易度が高い」
    「状況が理不尽に感じる」
    「展開が薄い、達成感や爽快感に欠ける」
    「意味の分からない会話が多い」

    ……繰り返しになりますが、「7」においてはそれら全てが
    「状況識失調」に陥っている、まさにその証です。
    言うなればそれ自体が「7」の大きな特徴なのですが、
    しかしてそこから脱した先にあるものが、
    本当の正解と呼べるものなのかどうかすら解りません。


    ここで今一度バーティゴを思い出していただきたいのですが、
    急降下している状況に(計器を見て)気が付いて回避を試みた→目の前に岩肌が!
    →ティンッ☆
    ……なんてことすらあるわけで。
    脱出のヒントだと思ったものがヒントじゃなかった、
    あるいはその時点ではもうにっちもさっちもいかない状況にハマっていた、
    という可能性は、常につきまといます。

    目測を誤ってビルにFOX4!


    かと言って物語に一つの結末が設けられる以上、そこには何らかの答えはあるはず。
    そう考えることすら、正解かどうなのかは分かりません。
    暗中模索のごとく不明なままのものを、一体何に基づいてどう判断するべきなのか?
    「7」のシナリオはそれを常に、我々に向かって問い続けます。

    一連のシナリオを通じて「状況識失調」に陥った我々は、
    作中に散りばめられたパズルのピースのような一つひとつの情報の破片から
    信頼に足る根拠をかき集めて「計器」とし、フライトを成立させていく。
    そうあることを、造り手によって求められたのではないでしょうか。


    改めて申し述べます。

    「エースコンバット7はあらゆる意味で状況識失調に陥るがしかし、
     過程にあってはその状態そのものを咀嚼し楽しみ、
     最後には自らの判断でもって状況識失調を脱していく作品」
    なのです。






    時には同じ読み手=プレイヤー同士による意見交換によっても、
    解に近づくためのヒントや思いがけない視点がもたらされることもあるでしょう。
    ネット上にも「7」のシナリオ考察に関するブログやコメント等がありますので、
    この機会にぜひ漁ってみて下さい。


    ※製作者インタビューなど、ゲーム外でもたらされる公的情報についてはこの場合、
     解釈上のヒントとはしません。
     そこに頼らざるを得ないつくりは、さすがにちょっとズルいと考えます。



    ずいぶん長くなってしまいましたが最後に、言いたかったことの総括です。


    • 「7」はゲーム的にもシナリオ的にもバーティゴしまくるよ
    • そこから脱出するための手掛かりは、目の前に広げられたものの中にあるよ
    • ぼくらはこの作品を通して、自分の手で答えを導き出すことを求められているよ
    • そうして出てきたものは、「あなたを映す鏡」なのかも知れないよ




    • これもまた「答え」ではなく「ぼくの解釈」に過ぎないよ






    最後までお読みいただき、ありがとうございました。







  • 【ネタバレ注意】映画「響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ」感想

    2019-04-21 13:252
    2019年4月19日、ついに「響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ」が封切りされました。本当は公開初日をキメてどっぷり感情の海に浸りたかったのですが、今回は諸事情からちょっとムリだったため、翌20日の鑑賞となりました。

     今回もネタバレ成分たっぷりでお送りしていきますので、「まだ誓フィを観ていない!」「第二楽章読んでないよ!」という方はくれぐれも閲覧注意です! よろしくお願いします。































     いいですか!? ちゃんと注意しましたからね!!!!
      (もはや様式美)




     なお「リズと青い鳥」ですが、劇中に登場する演奏曲(コンクールで演奏することになる自由曲)の題がそのまま映画タイトルにもなっており、これを文中で混ぜると思わぬ混乱を生む可能性があります。
    そこで、以下の文中では演奏曲としての呼び方を「リズと青い鳥」とフル表記し、映画タイトルとしては「リズ鳥」と省略した呼び方に固定しています。







     まず第一に、

    ○原作の流れを良く落とし込んだ100分間だった

     原作で言えば「第二楽章前編~後編」の2冊分を貫く内容だった今回の『誓フィ』、登場人物も一気に増えてエピソードも膨大にある中でしたが、時系列のコントロールも含めて実に上手に物語の枠に落とし込んでいたな、と率直に感じています。
     原作→映画の順でお話に触れたぼくとしては「夢ちゃんのエピソードはまるまる削られちゃったのかー」とか、ちょっと残念なとこもありましたけど、でもそれに関わる加部ちゃん先輩の魅力はキッチリと描かれていたと感じました。
     「誓フィ」については全体のメインテーマを『がんばることの意味』に絞って、久美子や奏を軸として周囲の人物たちがどうであるか、を描くことに集中させていたと思います。その中で活き活きと立ち回る人物達の姿を、最初から最後までタップリ楽しめる作品でした。

    (余談ですが夢ちゃん、美玲と奏が「オーディション選抜ってホントに実力主義なんですかぁー?」のシーンでちゃっかり奏の後ろの席を陣取ってましたね。彼女のエピソードも短編フィルムとかで見てみたいなあって思う。いや割とマジで)


    ○久石奏の描かれ方が終始可愛かった

     「くせ者」という前評判の奏でしたが、ともすればエグ味さえ出してしまうようなキャラ付けの奏が終始かわいらしく見えるよう、表情や動きを注意深くつくってあるな、という風にも感じました。おかげで前半は常にニヤニヤしっぱなし。色んな意味でヤバイ観客になってた。ある意味ではこれ、1期からずっと観ていた立場=久美子の視点、というフィルタを通して観ることが出来たからなのかも知れないな、と思います。
     奏のモヤモヤの最終的な解決についても主役の久美子に委ねることで、スタッフロール前最後のシーンのまとまりも上手についていたと思います。上記のこととも被りますが、膨大なエピソードを一本のテーマに集約する、ということを強く感じました。


    ○葉月、大活躍!

     今回何気に目を引かれる機会の多かったのが、実は葉月。
     美玲の一件からこっち、葉月が準主役的な立場ながらも要所要所に感情の移ろいを感じさせる出番があって、物語全体に深みを与えていたと思います。結果発表での葉月の涙には、がんばる者を応援する人たちの感情というものがたっぷりと描かれていたのでは。やったね葉月!


    ○意外、川島サファイア!

     一方意外だったのは緑輝。後輩にまさかのタメ口……!
     いや小説書いてる時も「緑輝は後輩にはどういう口調になるのか?」が気に掛かってはいたのですが(ちなみに原作では同級生からタメ口なので違和感なし。アニメ版では1期から通してほぼ初のタメ口だったのでは?)。
     でも先輩らしさを感じさせる緑輝も良かったです。考えてみれば緑輝には『琥珀』という妹がいるので、最初からお姉ちゃん属性を兼ね備えているんですよね。


    ○優子の部長っぷり

     「リズ鳥」ではみぞれの友人ポジとしての出番が多かった優子ですが、「誓フィ」ではやはり部長としての出番が多かったです。
     入部式での頼もしさ満点な優子から、業務連絡でのぴょんぴょんモードな優子まで、とにかくTVアニメ版では見られなかった優子の姿がたくさんあったのが印象的。ちょっとドジなところがあるのもまた良いですね。そしてコンクールの結果発表後の優子とそれに寄り添う夏紀の姿に、もう涙を堪え切れなかった。その後の広場で部員達の前ではカラリと士気高揚を図る優子と、トロフィーを預かったまま最後尾から彼女を見守る夏紀の姿もまた良き。
    (このへん涙腺崩壊しちゃって、もうほとんどシーンを直視できませんでした)
     優子株は『ストップ高』という言葉を知りませんねホント。このまま天に突き抜けるまで上り続けて欲しいのですが、果たして次の出番はあるのか……?


    ○夏紀の存在感

     優子と言えば欠かせないのがやはり夏紀。なかよし川は今回もなかよし川してました。
     いいところで優子にツッコミを入れて場の空気を緩ませたり、シリアスなシーンで遺憾なく前面に出たりと、夏紀の存在感が実にクッキリしています。夏紀と加部ちゃん先輩とのつながりは直接的には描かれなかったものの、同じ『チームもなか』だった「森田しのぶ」の一瞬の描写とその後の夏紀の姿勢で表現するなど、ニクい描き方。「がんばることの意味」という本作のテーマはある意味、2年次までの夏紀に関しても繋がってるんですよね。故にTV1期から見ていた自分としては奏との激突シーンなど、特に刺さるものがありました。
    「ずっと頑張ってきた先輩? 奏ぇ、お前は夏紀先輩の何を見て来たって言うんだ?」


    ○今回も充実の選曲、そして演奏シーン

     オープニングの「これが私の生きる道」、それがそのまま新入生歓迎演奏という導入のスムーズさ。他にも久美子が奏に相談をするシーンでは木管の練習曲に「主よ、人の望みの喜びよ」、サンフェスでの美玲爆発シーンの影では立華が演奏する「Bolero」で粛々と進行する状況を後押し……など、相変わらず劇伴としての曲の使い方が上手い。

     そして肝心のコンクールシーンでは「リズと青い鳥」のフル演奏、という大盤振る舞い。
    (余談ながら、課題曲は一部の吹奏楽クラスタが推理していた『マーチ・スカイブルー・ドリーム』。ただし演奏シーンはなし)
     のぞみぞが出て来た瞬間、リズ鳥を思い出してウルっと来ちゃった人も多かったのではないでしょうか。オーボエを思い切り吹き切るみぞれと、決然とフルートを奏でる希美、どちらも恰好良い。この二人についてはまた後ほど言及。



    ○揺れ動く久美子(と秀一)の心情

     いわゆるアバンタイトルの部分で唐突なくみこラブストーリー(秀一の告白シーン)、そして大吉山近くの公園でのさりげない間接キス、あがた祭りで楽しそうに二人で走るシーン、手を繋ぐシーン……なんというかもう満足感でおなかいっぱい。TV1期2期を通じてちょっとずつ溜め込んでたフラグをここで一気に回収した感があります。
     作品全体の終端を整えるためか、二人のフィナーレを迎える時期を少し早めた、秀一にもそれなりに決断の理由を作ってあげた、など徹頭徹尾二人のことを大事に描いていたと感じました。
     あがた祭りの夜、あの状況でチューしたくなるのは男子の心理。でも後から「俺が悪かった」と言える辺りがマジ秀一。あと麗奈にリズ鳥吹かせてる隣で「ゆるす」のスタンプ送ってる久美子もマジ久美子。二人の関係は三年生編ではどうなっていくのでしょうか。
    (これを書いてる時点でまだ最終楽章未読な人)

     言うまでもなく今回の主役は久美子でして、その心情の描かれ方はやっぱりとても丁寧でした。高校2年生という、まだ進路を確定させるにはやや早く、将来への思考を放棄するにはやや遅いという微妙な時期。そこに部活のことや恋愛の事など色々積み重なって……という流れは原作そのままではあるのですが、それを加速させるようなシーン(仕事帰りの父親と一緒に歩きながら進路の話をする等)をちょくちょく挟むことで、不規則に揺り動かされる久美子を見ることが出来たのは満足感高かったです。

     他にも後輩への接し方、とりわけイジろうとする奏を指でグイーっと押し返したり、泣き崩れる美玲の説得にあたる久美子の毅然とした態度には、TVアニメ版で見て来た1年次の久美子とはまた違う、ある種の頼もしさと老獪ささえ感じました。3年次の久美子がどう描かれるかも、見てみたいですねえ……。これがフィナーレなんてウソだよね?そう言ってよ!!


    ○練習時の楽器取り出し

     これ実は以前からけっこう気になっていたことなんです。
     TV版では楽器ケースごと教室に運び込んでいて、ぼくも小説を書く時はその描写に準拠していたけど違和感はありました。というのも、学生時代は楽器ケースから楽器を取り出すのは楽器室(または音楽室)で、パート練習の場には楽器と譜面台を持っていくって感じだったから。もちろん練習が終わった後は楽器室(音楽室)で楽器をケースに収めて棚に戻して終了。誓フィではそんな描写になっていたのが、個人的にはコトリと腑に落ちました。
     この楽器の取り出しの件、他所の学校はどうだったのかしら? 機会があればそのへん、他の吹奏楽クラスタな皆さんにも伺ってみたいです。
    (ここのコメントに書いてもいいよ)


    ○モブ達の描かれ方が上手い

     TVアニメ1期にもちょっとあったけど「インタビュー形式で語らせる」という手法を今回も上手く使っていたな、と思います。それも現代っ子らしく「スマホ録画によるインタビュー」。主要キャラの描写にも巧妙に使われていて、まさに今を生きる高校生ならでは、っていう視点を感じました。
     それ以外のシーンでもチラリと映るモブ達は相変わらず活き活き。とりわけ新1年ズの個性が光る光る。印象に残ったのは自称・忍者の末裔「服部半葉」と、滝野の妹「滝野さやか」。それぞれスマホインタビューに登場シーンがある他、さやかは加部ちゃん先輩との絡みでも出番がありましたね。
     それと原作にも言及があり少々謎めいた存在だった「葉加瀬みちる」。あんなん見たら流石の久美子も「なんだよアイツラ……」ってなりますって。あと麗奈、何気に制球力Aクラスやね。


    ○のぞみぞの存在感

     「リズ鳥」の前後からも予想はされてたけど、今回のぞみぞの登場はかなり抑えられ、声の登場も無かったもよう。でも「リズ鳥」を含め、話の筋をキッチリまとめるにはある意味効果的だったとも。それに異なるテーマを与えられた二つの作品は、それぞれ互いに補完し合うつくりになっていたのでは、とも思います。
    (リズ鳥が先行した結果、後出しになった誓フィの方が補完する要素は多いのだが)
     逆にリズ鳥を見なかった人にも違和感なく話の筋を追える作りにもなっているし、リズ鳥を見ていればもちろん様々な感情を想起されて演奏シーンでグッとくること請け合い。それ以外のシーンでもちょこちょこコミカルなみぞれがかわいい。あがた祭りの夜は幸せそうなのぞみぞ(+なかよし川)で良かったなと思います。ホント添い遂げて。

     一方、リズ鳥ではそれなりに存在感を発揮していた『剣崎梨々花』が、今回は少し引っ込み気味。いやまあ何気にコンクールのシーンでは葉月のすぐ後ろを陣取ってたり、楽器搬入/搬出がんばってたりと、画的な意味での出番はあるんですけどね。
     黄前相談所に絡めて「みぞれ先輩、希美先輩と仲いいから、希美先輩に相談してみたら?」ってやり取りがあったってことで脳内補完しよう。そうしよう。



    ○総 評

     つらつら述べて参りましたが、今回も京アニらしく実に細やかな仕事の光る作品だったな、と思います。
     宇治川周辺や六地蔵周辺など「聖地」もちゃんと出て来たし、トロンボーンのグリッサンド(秀一がみちるにやってみせた『プァ↑~~~ァァァ↓~~~アアッ↑』てやつ)の動きなんかはトロンボーン吹きとしては「あるあるあるあるあるあるwwwwww」ってな感じでした。
     前段でも述べた通り、登場人物もエピソードもほんとうに多くてチョイスが難しいところもあったと思います。チラホラと「このボリュームならTVサイズにした方が良かったのでは」という意見もありましたが、ぼく自身は『ひとつのテーマに絞ってギッシリ描き切ったことで、逆にそこを強く主張できた』と見ています。そういう見せ方を大胆に出来るのが劇場版のメリットの一つかな、とも。
     演出面でもいろいろこなれてきた感もあり、正直を言えばまだまだ続編を観ていたい気分です。原作でも「最終楽章」が発刊されてますし、京アニさんには数年後でも良いので是非「久美子3年生編」に向けてもうひと頑張り、と願いたいところです。