読書レビュー「消えない月」新潮社 著者:畑野智美
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読書レビュー「消えない月」新潮社 著者:畑野智美

2018-02-21 20:55
    読書レビュー「消えない月」著者:畑野智美

     典型的なストーカー事件を題材に被害者と加害者の二つの視点で話は進んでいく、二人の生い立ちから勉学、仕事、家庭や生活環境・精神的な価値観などを交えて、男女の出会いと恋愛そして破綻が描かれる。
     読んでみて加害者側の一方的かつ独善的な愛の形(完成愛)を正当化できる可能性について言及した意欲作だと感じた。

     加害者になりやすい共通したタイプの研究と被害者になりやすい共通したタイプの研究を元に人物像を描いたと思われるが、ストーカー事件に関する調査研究から物語を作る手法に固執過ぎてしまったと思う。
     完全に出来上がっている人物像に著者自身が感情移入しずらくなっている為、描かれた人物に人間味・匂い・息づかいのようなモノが感じられない、加害者に対して不快感・不愉快感ばかり目立ってしまい読み進め難い、著者の人間趣向を感じられなかったのは残念だ。
     また、手法の弊害として一般のいわば普通の生活からこの物語り自体が離れてしまい、この物語が別世界(他人事)の出来事になってしまっている、これでは最終的な正当化の可能性に説得力が無くなってしまう、「このようなストーカー事件は誰にでも起こり得る、加害者にも被害者にも誰でもなり得る」と感じさせなければならないと思う。
     このサイコ(加害者)を『どう社会や生活に溶け込ませるか』と、いわば普通で問題が無かった出会いと恋愛から『どう恋人からストーカーに変質するか』の展開や構成が雑だと感じた。
     サイコ(加害者)が目標に掲げる『完成愛』を達成する為に、社会的倫理的に見れば間違った努力をするのは興味を引かれた。

     本作は加害者が犯した罪に対して同情し得る『人間の弱さ』に光を差し冷静な理解を目指した趣旨に私個人として高く評価したい。
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