PROGRESSIVE CAPITALISM(スティグリッツ)経済書籍の感想
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PROGRESSIVE CAPITALISM(スティグリッツ)経済書籍の感想

2020-03-08 10:07


    スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM(プログレッシブ キャピタリズム): 利益はみんなのために
    Joseph E. Stiglitz (原著), ジョセフ・E. スティグリッツ (著), 山田 美明 (翻訳)
    単行本: 470ページ
    出版社: 東洋経済新報社 (2019/12/20)
    言語: 日本語
    ISBN-10: 4492315233
    ISBN-13: 978-4492315231
    発売日: 2019/12/20

     トランプ批判、保護主義叩き、グローバリゼーション信仰、国連平和主義信仰、親中、以外は良い、トランプ批判と保護主義叩きになると多少非論理的と思える。
     全体的にはトランプ流経済政策(非競争・富裕層優遇など)からの大転換を提案する、それは新たな社会契約から始まる、そして今では手の届かなくなった中流階級の生活を誰もが目指せるようにする進歩的政策を提案する。
     企業が市場支配力を高めることで効率的な競争を阻害している点、金融化の害悪、貧困の連鎖、成長の鈍化、イノベーション経済への移行、経済力と政治の関係など多岐、経済政策の大転換は政治改革から始まる。

    ■抜粋
     ・レント(不労所得)と成長の鈍化について
     国民所得のパイは、労働所得、資本所得、その他に分類できる。このその他の大半を、経済学者は「レント(不労所得)」と呼ぶ。地代、天然資源から得られる利益、独占による利益、過剰な知的財産(特許権や著作権)から得られる利益も、「レント(不労所得)」と考えられる。
     労働所得とレント(不労所得)との間には大きな違いがある、労働者は働けば働くほどパイの規模は拡大する、完全市場では、労働者はこの労働に対する見返りとして、パイに追加された分の所得を受け取る。
     それとは対照的にレント(不労所得)は、パイ全体の規模を増やすようなことを何もしてないのに多大な所得を受け取っている、これはつまり、本来であればほかの人の手に渡っていたであろう所得を受け取っていることになる。
     独占についても同じことが言える、独占企業の力が増せば、それだけ多くの超過利益(独占によるレント)を手にできる、だがこの場合にはパイが縮小するおそれがある、市場の独占支配は競争を阻害することで富の創造の基盤となる良質な経済活動を阻害する、それに加え独占企業が市場支配力を行使するため生産を制限し、その製品の供給を減らすかもしれないからだ。
     このようにレント(不労所得)は、成長や効率の向上に役にたたないどころか、害になる場合もある。

     ・新たな社会契約の必要性「共通地盤の崩壊」
     市場経済(資本主義体制)が国民の性格を変えつつある、少なくともかなりの国民が、以前よりも利己的になりモラルを低下させている、新たなテクノロジーはこの点でもまた、国民一人一人や社会のあり方を変えつつある。
     新たなテクノロジーが、さまざまな形で個人やその相互交流に影響を与えている証拠は山ほどある、例えば集中力が持続する時間が短くなり、十分な時間をかけて難しい問題を解決できなくなった。
     他者との交流も少なくなった、交流するにしても同じような趣味や考え方を持つ人とだけだ、その結果、社会が分裂し誰もが同類の人たちと暮らしている。
     そのような社会では「共通の地盤」を見つけるのが難しくなり、社会的に協力し合えなくなる、すると弱い者いじめが増える。一人ひとりが自分の最悪の部分を表面化させ、社会的な矯正機能が働かない場所でこっそりと行動を起こす。
     うわべだけ見れば他者との交流は増えているかもしれないが、社会的な交流の質や豊かさは劣化している。
     いまでは、国民の間で分断・対立が広がり、国民それぞれがまったく異なるレンズを通して世界をながめ、「もう一つの真実」まで主張している。
     その結果、政策的な合意を形成するのも、成長可能な政治を実現するのも、次第に難しくなっている。本書の中心テーマは、こうした事態を改善することにある。
     ※【もう一つの真実とは、例えば「温室効果ガスが気候変動に関係している証拠を、認めるか認めないか」「アメリカンドリームはあるかないか」「トリクルダウン理論」「ポスト・トゥルース(事実が重視されず、感情的な訴えが政治に影響を与える事態)」などの問題と思われるが本文では明確には指定されていない】
     

     ・学習する社会が知識経済やイノベーション経済の成長となる
     知識経済やイノベーション経済の要となるのが、研究である。基礎研究が知識を生み出す。知識は「公共財」であり、誰もがその恩恵を受けられる。だが、公共財に関する経済学者の基本的な知見によれば、市場の力だけでは公共財は十分に供給されない。
     したがって研究(特に基礎研究)には大々的な公共投資が欠かせない、知識の発展を支援する教育制度についても同様である。
     大学が経済成長に欠かせない役割を果たしていると考え、公的支援を行うのが普通だ。
     不動産投機(レント不労所得)により成功を収めた個人はいるだろうが、それにより成長を成し遂げた大国はいまだかつてない。
     国の富と個人の富を混同してはいけない、投機(レント不労所得)の奨励は研究や教育を妨げるものでしかない、レントシーカーがレント(不労所得)という形で私物化している国民所得や国富の割合は、不相応なほど多い。
     ※【スティグリッツは知的財産権保護を弱めることをそそのかすが保護主義の私は懐疑的】

     ・市場の力だけでは社会的公正や機会の均等を保障できない
     政府には、社会的公正を促進する重要な役目がある、誰もが暮らしていけるだけの所得を手に入れられるようにすること。
     機会の均等を保障すべく、若者が両親の所得や教育レベルや社会的地位などに関係なく、必要な公共財(教育など)によりスキルを身につけ、そのスキルに見合った適切な仕事につけるようにする。
     国の富と個人の富を混同したレトリックを利用したり、企業や個人が市場支配力を行使して、過剰なほどの利益(所得)を持ち去ることのないようにすることが重要になる。

     ・豊富な団体や機関の相互関係
     政府が提供するインフラや、公的支援を受ける大学や研究機関から生まれる知識を利用すれば、民間企業が展開できる。
     実際のところ、民間企業はこれまでにさまざまなことを成し遂げてきたが、あらゆる知恵を生み出したわけでもなければ、社会の問題に対するあらゆる解決策を提供してきたわけでもない。
     民間企業の利益は政府や非営利の大学や研究センターが提供する土台の上に成り立っている。
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