We Are The Greatest Show Men
ミュージカルが好きじゃない。(というか苦手)
それは単純に嘘くさいからだ。(笑顔すぎて怖いのよね)
タモリさんも言っていたが、なんで普通に話さないのか、なんでいきなり歌い出すのか、そういうのが不自然すぎてどうしても乗り切れないというのはもちろん、歌って踊ってというその形式が必然的に放つハピネスとエナジーが、軽薄な偽善を押し付けてくるようで、その同調圧力に辟易していた。(新興宗教みたいな感じ)
海外のものなら何を言ってるか基本的にわからないし、ウエストサイドやキャッツなど、古典とされてるものは確かにそれなりのパワーがあり、フェイバリットにはならないまでも、色々勉強にはなったし感じるものがあった。(苦手だからこそ大学の授業でミュージカルのコマ取ってたし)
だがそういう海外のミュージカルを日本語でやられた時には本当に蕁麻疹がでるくらい気持ち悪く感じてしまう。(日本語がそもそもこの形式に合ってないのではないか)
初めてそう感じたのは高校の時にひょんなことから観に行ったアニーだった。(もう少し低年齢だったら違ったかもね)
なんか、なんでそんなに違和感あるのか自分でもわからないほど生理的に耐えられなくて、それ以降どんなにミュージカルを勧められても積極的に観る気にはなれなかった。(でも宝塚は除く)
こんなことわざわざ書くの、ミュージカルが大好きな人には申し訳ないと思うし、こうして文字にすると前世に何かあったのかってくらい嫌ってるみたいに取られちゃうかもしれないけど、これは玲司さんが先日のヤンサンで言っていたランボーやダイ・ハードみたいなアクション映画が肌に合わないというのとまったく同じなので、別に憎悪してるわけじゃないことをご理解ください。(めんどくせぇ男だなおい)
ただ「俺のとは違うなぁ」というだけの話ですので。(最近あんま言ってないね)
…で、『グレイテスト・ショーマン』である。(キターー!)
2018年に世界中で大ヒットした映画なので説明するまでもないが、P・T・バーナムという19世紀に実在したアメリカ人興行師(ホラ吹き、ペテン師でも有名)をモデルにしたミュージカル映画で、ヒュー・ジャックマンが現在でも毀誉褒貶があるバーナム氏に扮して、その人生を寓話的かつ肯定的に描いた作品である。(詳しくはWikipediaでも見てちょ)
ストーリーはいわゆるアメリカンドリームを掴む系の話で、貧乏だったバーナムが上流階級の幼なじみと結婚して家族に支えられながら、ニューヨークで不具者や日陰者を集めてサーカスを作って大成功してのし上って行くんだけど、調子に乗ってサーカスは分裂しかけてすったもんだあってまたみんなで再出発するぜ!グレイテストなショーを、世界最高の夢(嘘)で世界を笑顔にするぜ!っていう話で、テーマはこういうものにありがちな多様性や自己肯定や人類愛や家族愛を描いている。(こう書くと、人間なら誰でも共感できそうなクソ通俗的で陳腐なものにも見えるね)
「現在でも毀誉褒貶のあるバーナム」と書いたのは、まぁ調べりゃすぐわかるのであえて説明しませんが、実際この映画の評価は彼を美化しすぎているとして、評論家の間ではむちゃくちゃ賛否が割れたらしい。(否定派の気持ちもわかる)
でも蓋を開けてみればそんな批評はどこ吹く風、観客の口コミで大ヒット、これはいわば「大衆」が持ち上げた映画なのだ。(ここがポイントね)
そんな『グレイテスト・ショーマン』を、なぜ今観たかというと、その前にナウシカを劇場で観て感動したのと、この期間は逆に映画館空いてるし、いま新作の代わりに古典となった名作がやってたりするから、できるだけ観ておこうというモードだったから。(平日レイトショウとかだとマジで貸し切り状態だから最高よ)
ではなぜ当時「グレイテスト・ショーマン」を観なかったのかと言うと、ヒュー・ジャックマンは割と好きなので観ようかと思ってたけど前述の通りミュージカルだしまぁいいかってなんとなく観なかっただけですゴメンナサイ。(でも当時観てたらダメだったかもなぁ)
それに俺の周りでめちゃくちゃおもしろかったからお前絶対見ろよ!と強くリコメンドしてくれる人もいなかったしね。(久世曰く、俺がミュージカル嫌いなの知ってたから言わなかったそうです)
あでも、あの歌はなんとなく知ってたよ、「This Is Me」。(オーオーオーオー♪)
でもなんか、あの歌も見るからにすげえ自己肯定が強いし、CMや予告でもドヤってるからさぁ…どうせミュージカル特有のあの、過剰なエナジーとハピネスの押し付けだろうとタカを括ってました。(こうやって世界を閉ざして老害化してくんだろうなぁ)
ほら、前に『ラ・ラ・ランド』で痛い目にあってるしな。(あれは結果、ミュージカルではなかったが)
ミュージカルなんてまじで陳腐な偽善の塊で、愛と幸福と自己肯定の全体主義だと思っていた時期が俺にもありました。(ボクシングにも蹴り技ありまぁす)
そんな俺が初めて観た『グレイテストショーマン』。(早よ本題に入れ)
開始10分くらいから、歌が来るたびに泣いてしまった。(ララランドの時とは違う涙ね)
「A Million Dreams」
の寓話的で幻想的な展開と謎の健気さに涙し、「Come Alive」
で俺もこのサーカスに加わりたくて好奇心が粟立ったかと思えば、「Never Enough」
に息もできないほど圧倒され、「 This Is Me」
なんかもう、思わず席を立っていっしょに踊ろうかってくらい全身が熱く震えた。(おいしいとこ全部公開の20世紀FOXやアトランティック・レコードもヤバイ)
そしてラストの「The Greatest Show」
はミュージカルという形式でしか放てないハピネスとブレイヴとエナジーのアメリカンカクテルなノアの洪水に、二日酔いどころか今でも酔ってます。(何を言うとるのかね君は)
あえて比較するならば、音楽映画では『ボヘミアン・ラプソディ』『シャイン・ア・ライト』を超える歓喜、今年としては『攻殻機動隊 SAC_2045』、ここ数年では『ゲーム・オブ・スローンズ 』『ストレンジャー・シングス』に勝るとも劣らない興奮、今世紀では『相棒 -劇場版II-』に匹敵するほどの感動、そして我が生涯でも『BTTF』『ダイ・ハード』『天使にラブソングを』『星の王子 ニューヨークへ行く』『ツインズ』らに並んで殿堂入りは確実の「感謝」を覚えたわけ。(殿堂映画が軒並みミーハー)
とにかくこの映画は、いくら褒めても言葉が足りないくらい素晴らしい作品でした。(スーパーヒトシくん人形1万体)
しかしなぜそれほどまでに褒めちぎるのか、はっきり言いましょう。(言っちゃってこの時代遅れのミーハーさん)
誰あろうこのミュージカル嫌いの俺が、そこまで感動したわけは何なのか。(だから早よ言え)
なぜこの『グレイテスト・ショーマン』があの『相棒 -劇場版II-』に匹敵するのか。(・・・)
それはこの映画が「ミュージカル」ではないからなのです。(!?)