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山田玲司のヤングサンデー 第323号 2021/1/4

シンジの時代

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18歳の元日。当時の彼女と一緒に初日の出を見に行った。


殆どの記憶が霞んでいて、細かいことは思い出せないのだけど、当時車の免許がなかった僕はおそらく彼女の友人の車に乗って4人で夜明け前に出発したのだと思う。


小さな車に4人の若者が乗り込んでガラスは結露で曇って街頭の灯りがキラキラ光っていた。


彼女は「ここならとてもいい初日の出が見られるよ」みたいな事を言っていた。


そこは埼玉の田舎で、街頭も少なくて殆どが「暗闇」だった。


そして着いた場所は大きな川の河原で果てしなく空が広がる広大な場所だった。


そして今年の元日。僕は夜明け前に車に乗って「同じ場所」に行った。


とんでもない歳月が流れたけど、その場所はあの時とほとんど変わらない。


堤防の高台のベストポジションに行くと、すでに数台の車が停車してあり、日の出の方向を向いてその時を待っていた。


僕もその並びに車を停めて日の出を待つことにする。


隣の車にはあの時の僕らと同じくらいの年の男女が3人乗っていて、待ちきれずに何度も車から出ては寒さに耐えきれず車内に戻るのを繰り返ししていた。


しばらくすると、あちらこちらから次々に人が集まってきた。

犬を連れた老夫婦や、家族全員パジャマに防寒着みたいな格好の人達。

イヤイヤ連れてこられた風の子供。

その場で偶然の再会をした中年男性と壮年の女性がテンション高く挨拶を交わしている。


車を降りると、空には雲1つ無く透明な空気が張り詰めている。


夜明け前は特に暗く、寒くなるというけど、本当に夜明け前の空気は刺すような寒さになった。


ゆっくりとオレンジのグラデーションが明るくなり、太陽が顔を出す。

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ただ地球が自転しているだけの話なのに心が震える。


張り詰めた冷たい空気に陽の光が刺す。

ほのかに暖かくなってくる。


来た人みんなが笑顔になっている。


その全てが「18歳の時の自分」には見えていなかったものだ。