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【第408号】a man
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【第408号】a man

2022-09-26 07:00
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    山田玲司のヤングサンデー 第408号 2022/9/26

    a man

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    美容室には日々いろんなお客様が来店される。

    彼もそのうちの1人だった…


    初来店時の印象。


    すらっとして身長は高く、ライク ア UNIQLOファッションに全身を包んだシンプルなスタイル。


    そして他人を気軽に自分のフィールドにいれないように寡黙な雰囲気を漂わせていた。


    席にご案内し、挨拶をすませ、カットのカウンセリングをしてるとある匂いを察知した。


    この人コミュニケーションが苦手だな…という匂い。


    そうなると、ヘアスタイルに関係ないプライベートなことは聞かないようにするのがマイスタイル。そこに踏み込むのは信頼を得てから…



    この仕事をしてると見聞色の覇気が以上に強くなる。


    目で見える情報からその人の内面を予測。相手が自分のことを話す前に「〇〇じゃないですか?」と確認すると、「えっ!?なんでわかるんですかぁーー すごいーー!!きゅん!!」みたいな流れが作れる。


    私はこのテクをよく使う。(みんなもよかったら合コンなどで使ってみてネ!)


    彼のファッションはシンプルだけど、清潔感はキッチリしてて、なにより初来店の時は髪が伸びて崩れたから来たというより、整えに来たことから髪型への美意識は異常に高いのかな…と予測したがその通りだった。


    初回来店時は他店でカットして一週間くらいしかたってないベリーショートのお直しカットだった。


    希望のヘアスタイル写真を数枚用意し、修正してほしいところを淡々と説明していた。


    ほとんど切るとこないやん……

    で終わるのは三流。


    二流のオイラはdo the ど根性でバランスの悪い部分を整えベストを尽くした。


    カット中は施術の確認以外の会話はなく、彼は静かに目を閉じていた…


    その日の施術以来、彼は今もお店に通ってくれてる。


    3、4回くらいまでは施術以外の会話はほぼなかったと思う。正直会話が無い方が施術に全集中できるからそれはそれで問題ない。


    何度目の来店かは思いだせないが、ある日少し踏み込んで会話してみようかな…と思い、たわいもない会話をしてみた。


    思った以上に笑いのツボが浅いことがわかり、そこから心理的な距離がちぢまったように思う。



    そんな彼は不思議な要素をいくつか持っている。


    まず毎回必ずキッチリ10分遅刻してくる。

    そして特に謝罪はないw。


    毎回スタイルはベリーショートだが、その中でのこだわりがハンパない。


    毎度スタイル写真をいくつか用意したり、前回のカットのダメ出しなど…こだわりが服を含めたファッション全体ではなく、ヘア一1点集中のみという尖りっぷりがパナいこと。


    さらにかなりの高確率でデカいリュックで来店してくる。


    僕が「荷物預かりまーす!」と言いリュックを預かると、そのリュックは中身ないんかい!と思うほど軽い。なんのためのデカいリュックなんだ……と毎回不思議に思い、ある日そのことを聞くと「いやーまぁ…まぁ…」とはぐらかされた。


    しかし自分は蛇年ということもあり一度食いつくとあきらめが悪い。しかし何度リュックの意味を聞いてもはぐらかされ続けた。


    そんなやりとりを続け…

    今年の6月のある日…


    「今日リュックの秘密を言います!」といきなり言われた。


    何度聞いても答えてくれなかったのにようやく話す気になってくれた。蛇年のしめつけの強さがなせる技、まさに粘り勝ちである。しかしなぜか施術中にはリュックのことは教えてくれず「最後のお会計の時に言います!」と言われた。


    安定感抜群の小粋な浅いトークとテキパキしたカットで施術を終え、いよいよ待望のお会計タイム!!


    その日も相変わらずデカいリュックでの来店でそのリュックをクロークから出し彼に手渡す。相変わらず空くらいの軽さw。


    彼はリュックのジッパーを開いた。


    ドキドキ……


    ドキドキ……


    タップルのCMの女の子くらいドキドキしていた。


     
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