• 【見学レポ】JAXA相模原キャンパス特別公開2019(後編)

    2019-12-08 20:30
    前編は→コチラから
    中編は→コチラから

    2019年11月2日(土)に行われたJAXA相模原キャンパスの特別公開の見学レポの後編です。

    後編では中編の続き、私自身が行った質問と回答、見学したブースの写真と雑感を紹介します。


    見てきたもの


    1:火星衛星探査計画(MMX)
    2:超小型探査機OMOTENASHI
    3:「はやぶさ2」のリュウグウ探査
    4:木星探査: ひさき から JUICE へ (ミニ講演会を聴講)
    5:深宇宙探査技術実証機DESTINY+
    6:天文衛星と新しい衛星計画
    7:エネルギーから宇宙を拓く
    8:人工衛星の熱制御技術
    9:小型月着陸機SLIM

    中編・後編ではざっくり9種類のブースについて紹介。後編では上記6~9について取り上げます。


    6:天文衛星と新しい衛星計画


    ・X線天文衛星ひとみ(ASTRO-H)

    衛星ひとみは2016年に、打ち上げから1ヶ月あまりで事故により失われた。本格的な運用前ではあったものの、目玉の観測装置である軟X線分光検出器SXSは、事故前にペルセウス座銀河団の観測を行っていた。その観測では、SXSが予想以上の分解能を達成していたことがわかっている。SXSによるペルセウス銀河団の観測結果についてのポスターがありました。


    ひとみが観測した、ペルセウス銀河団の高温プラズマの観測結果について。

    素晴らしい分解能でX線を分光し、わずかな観測でありながらその凄さを示したひとみのSXS。
    ひとみの展示を見るととうしても悲しみと寂しさを感じてしまう。後続の代替衛星「XRISM」の開発がすぐに立ち上がり、2021年の打ち上げを目指しているのがせめてもの救いだ。

    X線天文衛星ブースのスタッフに質問してみました。

    Q:ひとみの代替機がすぐに立ち上がったのはどうしてですか?
    A:ひとみは元々世界中から期待された衛星だった。そして事故を起こす前に、わずかながら観測ができて、いろんなことがわかった。ならば、もっと観測すればもっとわかる。だからあげましょう。というのがあったと思う。

    代替のX線天文衛星XRISM(クリズム)は、2021年度打ち上げの予定。(小型月着陸実証機SLIMとの相乗り)

    ひとみのポスターの向かいを見ると、これまでのX線天文衛星たちに搭載されていた機器がずらりと並んでいました。
    どれも初めて見るものばかり。これはあすか、そしてぎんがの!こんなものが現存していたとは…興味深い。


    過去の日本のX線天文衛星に搭載されていた機器

    左から
    ・ぎんが(ASTRO-C)の大面積比例計数管LAC
    ・あすか(ASTRO-D)の撮像型蛍光比例計数管GIS
    ・あすかのスタートラッカー
    ・ひとみのプリコリメータ
    ・ひとみのフィルターホイール


    ひとみのプリコリメータ(左)とSXS用フィルターホイール(右)


    ひとみのプリコリメータの断面。この多層構造が肉眼で見られるとは!
    アルミニウムの薄板が、バウムクーヘンのように同心円状の多層構造になっている。

    プリコリメータは、視野外からのX線(迷光)を除去するために反射鏡のさらに外側に配置されてる遮光用レンズフードだそう。衛星すざくから採用され、ひとみにも搭載された。

    ひとみの代替機、XRISM(クリズム)にもひとみのSXSの改良版、そしておそらくプリコリメータが搭載される。
    XRISMにはひとみが見るはずだった星たちをたくさん見てほしいと思う。

    ・赤外線天文衛星あかり(ASTRO-F)

    全天の赤外線地図の作成を主目的とした、日本初の本格的な赤外線天文衛星。
    恒星や銀河、星雲の観測や、太陽系の小惑星の観測も行った衛星なのだが…

    あかりが撮影した観測画像をまとめたポスターがありました。おー特別公開って感じ…ん?


    あかりが見た宇宙。独特の美しさがある観測画像の数々が紹介されている。中でも驚いたのは右下に紹介されている"彗星"。

    右下に、あかりが観測した…彗星の画像がある!?!?!!えっ…あかりちゃんって彗星も撮ってたんですか!?


    あかりが見た"彗星"。綺麗に撮れている…感動です。

    あかりが撮った銀河や星雲、小惑星の画像は見たことがありましたが、まさか彗星も撮っていたとは…初めて見ました。

    あかりの後継機計画には日欧共同のSPICAがあり、現在は欧州宇宙機関(ESA)のMクラスミッション5号機の3つの候補の1つとして選定中。2021年にミッションの最終的な選定が行われる。

    ・赤外線位置天文観測衛星JASMINE(ジャスミン)

    私にとって、突如現れた謎の天文衛星計画。今年に公募型小型3号機として選定されたのですが、それを知ったときは驚きました。Nano-JASMINEはどうした


    小型JASMINEのポスター。

    小型衛星JASMINEは、銀河系中心領域(バルジ)の星の位置や運動を正確に観測することを目的とした衛星。赤外線は塵に吸収されにくいので、銀河系中心の星を高精度で観測できるそうだ。
    イプシロンロケットで打ち上げられるサイズの衛星で、打ち上げは2020年代の中ごろを予定。以下、質疑応答で出てくるJASMINEは小型(衛星)JASMINEについて。

    Q:小型衛星JASMINEはどんなミッション?
    A:可視光に近い赤外線の波長の観測装置で、銀河系中心を撮り続けるのがミッション。全天サーベイではない。地球は太陽の周りを回っているので、銀河系中心の(年周視差の)観測に適している期間が春と秋だけ(半年くらい)。夏と冬はぼーっと生きている。これだと、チコちゃんに叱られてしまう。なのでその間は何かしようということで、今話題の系外惑星の探査をする計画もある

    小型の位置天文衛星ということですが、なんとJASMINEは、「系外惑星の探査」も行えるそうです。

    Q:系外惑星の探査ってどういうことですか?
    A(系外惑星探査分野の研究者の方でした): JASMINEは新しい系外惑星を発見しようとしている。ただやみくもに探すのではなく、JASMINEが狙うのは、複数惑星系。既に惑星が見つかっている系(恒星)を詳しく調べて、もう1つか2つ惑星がないかを調べる。そして発見したら終わりではなく、アメリカがそろそろJWST(NASAが開発中の大型宇宙望遠鏡)を打ち上げるので、JWSTでより精密な観測ができる。流れとしては、JASMINEで系外惑星や候補を見つけて、NASAのJWSTで超詳しく調べる。バイオマーカー、生命がいるかもしれない証拠をJWSTで調べる。実際にできるかはわからないが、これから準備をしていく。
    JWSTは口径が大きいので暗い星まで見えるが、分光観測ができるのは明るい星に限られる。JASMINEが系外惑星を見つけても、JWSTでは見えないかもしれない。なのでJWSTで見えるギリギリの明るい星周りの星をJASMINEで探す

    (系外惑星の分光観測ができるとかJWST凄すぎる…小さな衛星JASMINEと大きな衛星JWSTの協力が見られそうで楽しみです。)

    また、JWSTのほかにもWFIRST(ダブリューファースト)という衛星との協力があるかもしれない。
    JASMINEの打ち上げは2024年を予定。そして、アメリカのWFIRST(NASAが開発中の赤外線サーベイ宇宙望遠鏡)は、2025年に打ち上げを予定している。WFIRSTは打ち上げ後、JASMINEのように銀河系中心をめっちゃ調べて、重力マイクロレンズ法で系外惑星を探す。なので2機が同時期に銀河系中心を観測できる可能性がある。
    JASMINEとWFIRSTが共同で観測すれば、1つの衛星ではわからない発見があるかも。


    系外惑星探査に関わる方から興味深いお話を聞けました。小型JASMINEはメインの観測のほかに系外惑星の探査を行う計画があるということで、個人的に非常に興味がわくミッションだと感じました。日本も系外惑星の探査を行えるってすごく嬉しいです。
    NASAのJWSTとWFIRSTミッションによるフォローアップ観測も期待しちゃいます。


    日本はWFIRSTへの参加を目指しているそうです。



    7:人工衛星の熱制御技術


    宇宙機の表面の"色の違い"についてのパネル展示が目に入ったので、「人工衛星の熱制御技術」の展示をみてきました。なかなか面白い発見がありました。


    宇宙機の表面の色の違い。金色の宇宙機、黒色、銀色など。

    Q:宇宙機の色の違いはなんですか?
    A:はや2やあかつきの金色は、断熱材で、外側のフィルムが金色をしている。銀色の部分は熱を外へ逃がすラジエータ。一方のぞみ(PLANET-B)やかぐや(SELENE)の黒色は、塗料。ただの塗料じゃなくて、電気を通す塗料。機体が帯電してしまう軌道にいる衛星から、電気を外へ逃がす役目がある。断熱材で外部との熱の出入りを小さくし、内部の熱を出す機器は、ラジエータを使って排熱する。という役割がある。
    探査機はやぶさには、ラジエータの進化版が搭載されている。

    Q:進化版?
    A:一般的な銀色のラジエータは、低い温度の時も熱を放射してしまうので宇宙機内部が冷えてしまう。低い温度(熱を外へ逃がしたくない時)でも熱を放射しようとする性質がある。そこでこのSRD(Smart Radiation Device)は、温度が低くなると放射率が小さくなる性質を持っている。この画期的なラジエータをはやぶさは積んでいる。(これは初耳)さらに、SRDに薄膜を付けることでSRDによりも放射率の高い、ラジエータと同じくらいの放射率を持ったラジエータが実現できている。今後はいろんな課題を解決していって性能を高めていく。

    Q:はやぶさはSRDを積んでいたんですか?
    A:はい。はやぶさの写真のこの黒いところがSRD

    放射率可変素子SRDについて。はやぶさの機体側面の黒い部分がSRD。

    話を聞いて、はやぶさの黒いラジエータの謎が解けました。今まで知らなかったことを知ることができて大変うれしかったです。

    ちなみにはやぶさ2にSRDが搭載されたのか、気になったので調べたところ、こちらの記事が見つかりました。

    冷暖房不要、省エネの建材に 「はやぶさ」技術応用:朝日新聞デジタル(2014年11月17日)
    https://www.asahi.com/articles/ASGC80RR5GC7UEHF01H.html
    “この材料は特殊なマンガン酸化物でできており、SRDと呼ばれる。工学実験の一環として1号機の送信機に付けられた。同社によると「はやぶさ2」は1号機ほど温度差が激しくない軌道を通るので、「はやぶさ2」への搭載は見送られたという。

    SRDははやぶさ2には無いんですね。これはこれで新発見。



    8:エネルギーから宇宙を拓く


    展示を見たわけではありませんが、リーフレットに興味深いことが書かれていたので紹介。

    相模原キャンパス特別公開2019 リーフレット
    1-8 エネルギーから宇宙を拓く [PDF: 632KB]
    http://www.isas.jaxa.jp/outreach/events/opencampus2019/leaflet/1-8.pdf


    上記リーフレットの左下の写真とそのキャプション(画像:JAXA)

    パンフレット左下に、衛星れいめい(INDEX 小型高機能科学衛星)の写真が写っていますよね。その写真のキャプションを読んでびっくり。

    “打ち上げ前の「れいめい」衛星と搭載されたバッテリ -アシスト自転車用の電池を改良して使用-“

    れいめいのバッテリーはアシスト自転車の民生品だった?!

    小型科学「れいめい」衛星の開発と小型実用衛星の展望 齋藤 宏文, 平原 聖文, INDEX プロジェクトチーム
    http://www.isas.jaxa.jp/home/saito_hirobumi_lab/_src/sc1012/8Dq8BF389F92888Aw89EF8BZ8Fp8FDC8EF38FDC98_95B6.pdf

    調べてみると、“れいめいでは,将来にわたり小型衛星で使用可能な軽量バッテリを目指し,電動付自転車用の民生品薄型リチウムイオン二次電池を使用した.”
    とあるように、れいめいのバッテリーは本当に電動アシスト自転車のものを使っているようです。(真空対策など、軌道上で使えるように改良が施されている。)

    そういえば今年はれいめいの運用設備見学がありませんでした。2017年の運用設備見学では、相模原のアンテナによるれいめい衛星との通信の様子が見学でき、その時は「れいめいは現在、搭載リチウムイオンバッテリーのデータを取得して、バッテリの劣化の評価を継続して行っている」と説明がありましたが、まさか電動アシスト自転車のバッテリーだったとは。

    れいめいの意外な一面を知ることができました。

    ちなみにれいめいにもはやぶさと同じくSRDが搭載されています。


    9:小型月着陸機SLIM


    現在開発中の小型月着陸実証機「SLIM」。

    特別公開の閉場まであと30分近くになったころ、SLIMのブースで特別公開最後の情報収集を実施しました。
    SLIMの基本情報については、こちらの画像をご覧ください。

    2019年9月に作成した際、SLIMに小型プローブの搭載が検討されていることを知りました。

    ブースの真ん中にはSLIMの模型が鎮座していました。

    SLIMの模型。2017年に見たのとはまた違っていて、新しい設計が反映されているようだ。

    エンジン側から見たSLIM。2つのメインスラスタが印象的なデザインになっている。

    よく見ると、着陸脚がある面と太陽電池が貼ってある面が平行になっておらず、若干の傾斜がある
    (現地で会ったフォロワーさんからの情報。太陽電池の発電のためらしい)これは驚き!!機体のデザインは昨年8月の資料で見たのと同じのようだ。

    ちなみに2017年に撮影したSLIMの模型はこんな感じ。

    2017年の特別公開で撮影したSLIMの模型1 スケールは1/10

    2017年の特別公開で撮影したSLIMの模型2

    模型を見比べてみると全然違いますね…。
    着陸レーダアンテナ(八角形の灰色のパネル)の形と数、着陸脚についている半球状の衝撃吸収材などは同じようですが、メインエンジンが1基から2基に増強され、併せて補助スラスタも8基から12基になっています。機体形状もガラッと変わった印象。

    SLIMブースにはなんと、SLIMのプロジェクトマネージャーの坂井先生がいらっしゃっていたので、気になっていたSLIMの小型プローブの搭載の検討について質問してみました。

    Q:これが現在のSLIMの姿ですか?(模型を見ながら)
    A(以下、回答は坂井PM):
    はい。もうここから変わらないと思う。これまでに打ち上げロケットの変更で大きな設計の見直しがあった。今はH-IIAロケットでXRISM(衛星ひとみの代替衛星)との相乗りで打ち上げる予定になっている。

    Q:SLIMの開発は順調ですか?
    A:おかげさまで。今は、JAXAことばでいうと「詳細設計」の段階。図面を引いて、開発モデルの試験を並行してやっている。フライトモデルの開発を来年度くらいから始めたいと思う。

    Q:SLIMの関連資料に「小型プローブの搭載を検討」という記述があるのですが、こちらは今どんな状況ですか?
    A:小型プローブは搭載できるかまだ見極められていない。結局のところ、SLIMの重量で決まる。最終的なSLIMの重量に余裕があれば載せられるし、余裕がなければ載せらない。ちょうどギリギリのところ。模型で言うと、ここにくっついている(丸いところ)。載せられるように設計はしているが、搭載の最終判断は、重量の見極めがついたところで決める。持っていきたいとは思う。


    SLIMの機体についているこれが小型プローブ。

    Q:丸いのはこれはカバーですか?
    A:金色はMLIのカバー。ここにホッピングローバーみたいなのを載せたい。

    少し調べてみたところ、こちらの資料を見つけたので、紹介します。
    小惑星含む月惑星表面探査ローバに関する研究
    http://www.isas.jaxa.jp/home/kougaku/03_report/30_senryaku/11_otsuki_senryaku30.pdf


    SLIM搭載小型プローブの研究資料。小型プローブは外側の衝撃吸収材と内側のホッピング機構などで構成されるようだ。

    Q:小型プローブはカメラを積む?
    A:カメラを搭載する。小型プローブを開発しているチームはJAXAの中のSLIMとは別のチームで、我々としてすごく期待しているのは、あわよくば、着陸したSLIMを外から撮ってくれたらと思っている。

    小型プローブに関する貴重な情報が得られました。感謝です。


    SLIMの特に興味深い展示として、「画像照合航法」があったのでここで紹介。


    画像照合航法の展示映像。左上のSLIMにも小型プローブがついているのが分かりますね。

    SLIMは月面の撮影画像からクレーターを検出し、クレーターの地図と照合して「自身の位置」を割り出すことができる。さらに、撮影画像に写る月面の範囲から、「高度」もわかるとのこと。カメラ撮影で高度がわかる、確かに理屈はわかるが本当にできるとは。変態技術だなあ(褒めてる)

    実際に撮影画像から地図上の位置を割り出す様子を、デモンストレーションで見せてくれました。

    写真右側に掲げられている壁掛け月面地図を、カメラでリアルタイムに撮影したのが画面左の「撮影画像」。それを基に月面上の位置を示したのが画面右の「月面地図」。月面地図上に撮影画像の位置と範囲が映し出されている。撮影画像が動くと、それに応じて月面地図上の範囲も動く。

    カメラの前に手を出して視界の一部をふさいでも、きちんと位置検出ができていました。クレーター数が10個検出できればギリギリ位置検出が可能とのことで、ロバスト性にも優れているようです。

    そのほか、SLIMで気になったポスターを撮影。


    SLIMの図解。新しい技術がたくさん盛り込まれています。




    月を調べるSLIMのカメラについて。

    SLIMは元々イプシロンロケットでの打ち上げの計画でしたが、X線天文衛星XRISMとの相乗りでH-IIAロケットによる打ち上げになりました。この変更により、SLIMの重量に余裕が生まれ、月を調べる観測装置にしっかり重量が割り当てられました。その観測装置の名はマルチバンドカメラMBC(←覚えて帰って!)
    好きな方向を向けられて、いろんな場所でピントが合う、これまでになかったカメラとのこと。期待が膨らみます。

    SLIMの打ち上げは2021年度を予定。



    今回のJAXA相模原キャンパス特別公開は、1日開催ということもあって、気になるブースや講演会のすべてを見ることはできませんでしたが、新しい発見と新鮮な展示物の数々に出会うことができました。先生方を含むたくさんの方に質問することができ、またTwitterのフォロワーさんと会って交流できる機会にもなり、とても楽しかったです。次の開催があればまた参加したいです。

    その時はまた。

    前編はコチラから
    中編はコチラから

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  • 【見学レポ】JAXA相模原キャンパス特別公開2019(中編)

    2019-11-30 20:30
    前編は→コチラから
    後編は→コチラから


    10時に開場。第4会場の研究・管理棟(1)へレッツゴー。

    2019年11月2日(土)に行われたJAXA相模原キャンパスの特別公開の見学レポの中編です。

    まとめたらとても長くなってしまったので、前・中・後編になりました。3分割です。
    中・後編では私自身が行った質問と回答、見学したブースの写真と雑感を紹介します。


    今年、2019年のJAXA相模原キャンパスの特別公開は、例年の夏開催ではなく11月開催でした。春になっても開催のアナウンスがなかったので、今年は無いかもしれないと不安でした。


    昨年(2018年)夏の特別公開は残念ながら、私が唯一行ける日が台風12号で中止になってしまったので、今年の開催が無かったら3年間もおあずけを食らうとこでした。おのれジョンダリ

    例年の2日間開催から1日だけの開催だったものの、開催してくれただけでもありがたいです。関係者の皆様に感謝を。



    見てきたもの一覧

    1:火星衛星探査計画(MMX)
    2:超小型探査機OMOTENASHI
    3:「はやぶさ2」のリュウグウ探査
    4:木星探査: ひさき から JUICE へ (ミニ講演会を聴講)
    5:深宇宙探査技術実証機DESTINY+
    6:天文衛星と新しい衛星計画
    7:エネルギーから宇宙を拓く
    8:人工衛星の熱制御技術
    9:小型月着陸機SLIM

    ざっくり9種類のブースについて紹介。中編では上記1~5を取り上げます。


    2019年11月2日10時、私にとっては2年2ヶ月ぶりの相模原キャンパス特別公開がスタート。

    開幕直後、まずは火星衛星探査計画MMXのブースへ直行。

    MMXについて初めて知る人は、こちらの動画をぜひご覧ください。

    MMXは私の推しの探査計画でもあります。MMXの深い情報は、以下のブロマガ記事にも書いているので、MMXのことをより深く知りたい方はご覧ください。

    【講演会レポ】火星衛星サンプルリターン計画(JAXA MMX計画)―はやぶさ2の次にくるもの―(前編)
    https://ch.nicovideo.jp/yamagon/blomaga/ar1772998
    【講演会レポ】火星衛星サンプルリターン計画(JAXA MMX計画)―はやぶさ2の次にくるもの―(後編)
    https://ch.nicovideo.jp/yamagon/blomaga/ar1777184


    1:火星衛星探査計画(MMX)


    MMXのブースには、MMXについての事がまとめられたポスターや、MMX探査機のレゴブロック(機体色が黒の古いデザイン)などが展示されていました。最初にスタッフの方から紙を手渡され、パンフレットかなと見てみると、パンフレットと一緒にMMXについてのクイズ用紙がありました。「100点満点で素敵な景品がもらえるよ」とのこと。
    待ってましたこの時を!!さっそく回答へ。

    全部で10つある問題のうち、8つは答えがすぐ浮かび、一応ポスターで合ってるか確認。残り2つはポスターを見て答えを探しました。

    MMX推しの一人として、間違えるわけにはいかないと使命感を勝手に感じながらスタッフの方に答え合わせをしてもらいました。答え合わせ第一号でした。
    結果は…全問正解キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!


    まあまあ手ごたえのあるクイズでした。



    特別公開でもらったパンフレットとステッカー。こうした配布物は嬉しいですね。使うのが少々もったいない

    景品はMMXのステッカー(↑写真右下)。これは嬉しい!!最高の記念品になりました。

    多幸感に包まれながら、気になるMMXのポスターを撮影。


    2019年のMMXポスター。MMX探査機の画像はMLIが金色の新しいデザインになっている。

    この後はしばらくの間、Twitterで募集していた質問の回答を集めに行き、午後になり再びMMXのブースへ。その時にはブース中に人だかりができていました。


    午後2時ごろのMMXブース。打ち上げ前の探査機でありながらこの大盛況!しかし…

    大盛況でとても嬉しかったのですが、よく観察してみると、クイズの回答を集めるために人々がポスター前に群がっている状態。なるほどクイズの問題の大半は、ポスターを見ないと普通の人は知らないようなことばかり。ポスターに書かれている答えも見つけやすいとはいえず、(答えの位置を表すシールはあった)結果としてクイズを解くのに時間がかかり、いつまでたってもポスター前に人がいるという状態。本当に混んでいました。
    クイズと景品は非常に面白いやり方だとは思うのですが、お世辞にも回転率が良いとはいえないなと。
    MMXのスタッフに探査についての質問をしに行ってみましたが、人込みのおかげで動くのが大変でした。

    MMXについての質問と回答を以下に記します。

    Q:MMX探査機の色が、黒色から金色に変わったのはなぜ?
    A:金色はまだ確定ではない。金色と黒色は導電性が違うので、まだ判断はしてないと思う。現在はどちらともありえる。
    機体内部の色は黒。発熱機器があるので、ふく射率を上げるために黒色になる。外側が黒にしろ金色にしろ、役割は同じ。断熱の機能を持っている。それが導電性があるかどうかの違い。黒が電気を通す。

    Q:着陸の時に塵が舞い上がると思うんですけど、それの影響を考えた時、導電性はあったほうが、それともないほうが良い?
    A:静電誘導で付く場合、どっちにしろ付く。黒か金色のどちらがいいかはわからない。塵が付くことは前提で考える。今後どこかのタイミングで、外装の判断をする。早めに。4年後の直前ギリギリの判断はない。


    黒い姿だったMMX探査機が、今年になると金色の姿になっていたのでびっくりしました。その理由について聞いてみましたが、まだ金色の姿は確定ではないとのこと。続報を待ちたいところです。


    2:超小型探査機OMOTENASHI


    アメリカの超大型ロケット「SLS」で打ち上げられる日本の超小型探査機「OMETENASHI」と「EQUULEUS」(オモテナシとエクレウス)。OMOTENASHIのポスターを紹介。


    SLSの打ち上げが何年も遅延しているのがなんとももどかしい。

    OMOTENASHIは、月への着陸を目指す超小型探査機。着陸といっても、軟着陸と思いきやそんなことはなく、セミハードランディングで月面にたたきつけられる探査機。なので電装品は衝撃で壊れないようにエポキシで隙間なく固めて搭載するとのこと。

    現在の打ち上げ予定は2020年11月。


    3:「はやぶさ2」のリュウグウ探査


    はやぶさ2の探査成果をまとめたポスターが展示されていました。


    はやぶさ2のSCI運用時の観測写真。今まで見たことの無い光景の数々…。

    ポスターを見ながら(こんなことがあったなぁ)としみじみ思いながら振り返ると、なんと、はやぶさ2のSCI(衝突装置)担当の佐伯先生がいらっしゃるではありませんか!
    私は若干上ずった声で、SCIのライナが見事良い位置に命中してホッとしたことを伝え、さらにいくつかの質問をしました。快く答えてくださり、とても嬉しかったです。

    ・SCI(衝突装置)担当の佐伯先生への質問
    Q:SCIを今後のミッションで使用する、といったことは検討しています?
    A:まだ直接の検討などはない。海外の方からは引き合いがあったりはする。何分物騒な物なので。(笑い)これでやり方が確立されたので、似たようなミッションがあればそのまま積んでもいいかなと思う。

    Q:佐伯先生はMMXに携わったりしますか?
    A:今のところはわからない。まだはや2が1年残っているので。

    (この後、帰還後のはや2について質問。その質問内容と回答は前編に。)

    ・イオンエンジンを研究している学生さんへの質問

    Q:改良が進んだ現在のμ10の推力はどのくらいですか?
    A:もう論文が出ているので大丈夫なので申し上げると、今は12mNくらい。はやぶさの時は8mNで、はや2のときは10mNだった。

    Q:改良型μ10の寿命はいかほど?
    A:寿命の評価は難しいところ。数万時間稼働するので、連続耐久試験をするだけで何年もかかってしまう。なのではやぶさ・はや2のイオンエンジンから抜本的に変えられないというところがある。過去の遺産を引き継いで、変えられるところは変えてやっている。
    はやぶさで壊れた中和器は、故障への対策を加えた改良版がはや2に載っている。中和器の耐久試験は打ち上げ前から今も続けている。

    Q:はやぶさ2が地球に帰還した後、イオンエンジンはあと何年動かせそう?
    A:地球についたらはやぶさ2ごと燃え尽きちゃうかも…

    Q:もしそのまま飛び続けるとしたら?
    A:ほかの機器にもよるので未知数。イオンエンジンとしては全く問題ないと思う。

    リュウグウでのミッションを終えたはやぶさ2。あとは帰るのみになりましたね。

    復路もイオンエンジンが完走するよう、応援しています。ありがとうございました。



    4:木星探査: ひさき から JUICE へ (ミニ講演会を聴講)


    ・「ひさき」からJUICEに続く木星圏探査~ミニ太陽系の探査~ 山崎 敦ひさきPM(プロジェクトマネージャー)

    講演を聴講。内容をざっくりと紹介します。



    ・木星と「ひさき」
    木星には磁気圏がある。木星磁気圏は強力かつ巨大。木星に一番近いところを周るガリレオ衛星のイオは、ずっと強い木星磁気圏の中をくるくるくるくる回っていて、木星磁気圏の外に出ることはない。木星から遠くを周るカリストは、木星磁気圏のしっぽの中に出たり入ったりしており、常時磁気圏内にいるわけではない。

    木星磁気圏の中を周るイオを現在観測しているのが、衛星「ひさき」地球周回軌道から木星とイオを見ている。さらにNASAの木星探査機「ジュノー」が木星の周回軌道から磁気圏やプラズマなどの観測などを行っている。
    「ひさき」のチームは、ひさきとジュノーの観測結果を使って木星近傍の観測を行っている。

    ・ガリレオ衛星について
    エウロパは表面が氷で覆われていて、地下には海が存在すると考えられている。その地下の水は間欠泉のように噴き出すことがある。地下海には生命が存在する可能性もある。イオの火山と噴火もエウロパの地下海と間欠泉も同じ潮汐力によるもの。


    イオやエウロパと比較すると影が薄い気がする衛星、ガニメデ。磁場の存在が特徴的とのこと。

    で、木星の衛星ガニメデは、エウロパのように地下海の存在が確認されている衛星だが、一番重要なのが、「磁場が存在する」ということ。地球のように、内部に液体鉄のコアがあるので、磁場か形成されている。磁場を取り巻きながら、木星の周りを回っている。これを観測したいのが、JUICE(木星氷衛星探査機ジュース)
    ところで、なぜ磁場があると良いのか。磁場があると、オーロラがある。ガニメデのオーロラは地球よりも低緯度で観測できる。
    磁場の関係を調べていって、木星系の中で磁場とプラズマの相互作用を調べるのがJUICEの目的の一つになっている。

    JUICEは2022年6月に打ち上げられ、2029年、今から10年後に木星に到着し、探査を行う。2032年には磁場がある衛星ガニメデを周回する。


    探査機JUICEは磁力計やプラズマ粒子計測機を搭載して木星、ガニメデへ向かう。そして木星磁気圏とガニメデのオーロラの関係を解き明かそうというわけだ!!

    講演を聴いて、木星氷衛星探査機JUICEがなぜガニメデを周回して詳細な探査を行うのか、理由がわかった気がしました。
    講演では、打ち上げから6年になるひさきの木星圏の観測成果も見ることができました。ひさきの活躍を知れて嬉しかったです。

    講演終了後、質問コーナーがあったので、ふと気になったことについて、質問してみました。

    Q:JUICEが木星に到着したとき、一緒にひさきも観測できればいいなと思ったのですが、ひさきは今後、どれくらい運用が可能ですか?
    A(山崎PM):ひさきの設計寿命は、実は1年でした。そこから頑張って今6歳。小学1年生くらい。
    ひさきの軌道は特殊で、高度1000kmを周回している。ひさきの軌道はISSや地球観測衛星などに比べて高度が高いため、放射線の影響を受けやすい。ひさきのCCD(観測装置ではなく、スタートラッカーと、視野ガイドカメラ)が放射線に弱いので、ダメージを受けて使用できなくなってしまう。このCCDは姿勢制御に必要なものなので、劣化が進むと惑星に観測装置の視野を向けることが難しくなり、最終的に衛星の寿命になる。JUICEが到着する2029年、あと10年は、さすがにもたないだろう。
    ひさきの観測装置のディテクターは、CCDよりも放射線による影響は小さい。なので、ひさきがコントロールを失わないところまで観測を行いたい。

    とのことでした。ひさきの高度は1000kmで、大気による軌道減衰がないため長期の運用が可能かなと思っていましたが、高度が高い分、放射線による影響でCCDの劣化が進み、運用寿命を迎えてしまうようです。


    宇宙科学探査交流棟に浮かぶ衛星「ひさき」の模型(中央)。ひさきは後ろの「はやぶさ2」よりもずっと軽い小柄な衛星だ。

    講演のタイトルに「ひさき」からJUICEに続く木星圏探査とあるように、ひさきはJUICEと一緒に観測するというよりは、ひさきがもたらした成果や謎が、JUICEに繋がっていくということなんですね。JUICEとのひさきの関わりを知ることができて、ひさきのことをもっと好きになりました。


    5:深宇宙探査技術実証機DESTINY+


    個人的にすごく気になっている探査機「DESTINY+」。ブースで直撃質問をたくさんしてきました。

    DESTINY+については、こちらの情報スライドをご覧ください。

    2019年9月に作成したもの。


    展示されてあったDESTINY+の模型。機体上部についている双眼鏡のようなものがダストアナライザ(DDA)

    ・イオンエンジンの研究を行っている方への質問
    Q:この模型は探査機デザインの最終版?
    A:最新版ではあるが、確定ではない。まだ設計を検討しているので、どこに何が配置されるかは変わる可能性がある。


    DESTINY+の構想と実証する工学技術について。

    Q:開発で一番難しそうなところはなんですか?
    A:工学的ミッションで言うと、太陽電池と熱制御とイオンエンジンが新しく挑戦しようとしている技術。なぜ熱制御が入っているかというと、まずイオンエンジンがものすごい熱を出す装置で、はやぶさ2の場合はイオンエンジンのノズルの中に太陽光が入らない姿勢なのに対し、DESTINY+はスパイラル軌道上昇の際、イオンエンジンのノズルの中に太陽光が入ってしまい、熱がさらに増えてしまう問題がある。そのために、熱をより強く逃がす展開式のラジエーターを搭載する。宇宙空間で熱を逃がすというのが工学的に難しい。
    実はスパイラル軌道上昇もチャレンジングで、イオンエンジンをはやぶさやはやぶさ2よりも長い時間噴射しないといけないのが難しい。

    Q:イオンエンジンについてはどうか?
    A:DESTINY+に搭載するイオンエンジンははやぶさ2の改良型で、推力がアップしているのでより早く速度が上がるし、比推力はそのまま据え置き。

    イプシロンで低い軌道にしか投入できなくても、深宇宙探査ができるという意味で、ある意味イオンエンジンの新しい可能性を実証するのがDESTINY+。H-IIA、H3ロケットを使わなくても、小型で安いイプシロンロケットでも、イオンエンジンを使えば深宇宙探査ができるっていうのを実証する。DESTINY+が成功すればこういった探査機がどんどん上がる可能性が出てくるのが魅力の一つ。



    DESTINY+のフェートンフライバイ観測について。このポスターは流れがわかりやすいですね。

    ・DESTINY+の探査機システムを担当している方への質問

    Q:DESTINY+がフェートンをフライバイするときは、 通信しながら観測を行い、撮った写真をすぐ送ってくるのか、それともフライバイの時は観測に集中して、写真をメモリに記録しておいてフライバイ後に写真を地球へ送信するのか、これは?
    A:鋭い(笑い)。残念ながら、観測データを通信するには、指向性のある大きなアンテナ(HGA)が必要になる。通信レートの早い大きいアンテナを使えればいいが、DESTINY+が撮像するときは姿勢をフェートンに集中したいので、アンテナを地球に向けるのは難しい。
    実際にフライバイ撮像を開始する時間、ポスターにあるように最接近7.2時間前が通信の限界。これ以降になると細いレートでしか通信できないので、画像を下ろすことは原則しない。撮像し終わった後に、姿勢を変えて(アンテナを地球に向けて)、画像を下ろしていく。

    Q:7.2時間前だとフェートンの画像はどんな感じになりますか?
    A:この時点だと1ピクセルくらいだといわれている。

    Q:フェートンの形がわかるのは、フライバイが完了した後?
    A:そうなると思う。ただフライバイ前に数ピクセルくらいの画像は見ておきたい。DESTINY+が誤った方向を見ているかもしれないから。カメラを向けた星が別の星やゴミだったら大変なことになる。可能な限り人目で確認はしたいが、シーケンスには限界がある。数ピクセルくらいの画像を下ろした後は、あとは探査機が自動で。おまかせになる。


    DESTENY+のカメラ、TCAPとMCAPについて。TCAPは内部に駆動鏡を備えており、フライバイ時に小惑星の姿を捉え続けることができる。

    Q:
    観測装置の開発状況はどうですか?
    A:駆動鏡(TCAP)の試作をしている最中だと聞いている。

    Q:過去の探査機のヘリテージを活かしている観測装置はありますか?
    A:TCAP(小惑星追尾望遠カメラ)については新規開発だったと聞いている。

    Q:探査機の開発で一番難しいところは?
    A:探査機システムを担当する視点でいうと、やはり質量。イプシロンで打ち上げられるのも"売り"の一つだが、ロケットの能力が低いので、イオンエンジンを使うといっても電力が必要になり、大きな発生電力が必要でSAPも大きくなり、観測機器も載せるとなると質量にどうしても響いてくる。
    打ち上げ能力の中に探査機の質量を収めるのが大変。今は入っている。
    もちろんフライバイ撮像も難しい技術だと思う。自動でやらねばいけない。一番の悩みはやはり質量。


    DESTINY+について、資料には載ってない貴重な生の情報を得ることができました。固体ロケットとイオンエンジンの組み合わせの探査機は、あの「はやぶさ」以来ということで、私はDESTINY+に特別な視線を向けています。ぜひとも探査が実現してほしいと思っています。


    中編はここまで。

    後編は近日公開予定。もうしばらくお待ちください。

    前編は→コチラから
    後編は→コチラから

  • 【見学レポ】JAXA相模原キャンパス特別公開2019(前編)

    2019-11-17 20:00

    中編は→コチラから
    後編は→コチラから

    2019年11月2日(土)に行われたJAXA相模原キャンパスの特別公開を見学してきました。特別公開で見たこと聞いたことを、事後レポとしてこの記事にまとめました。例によって前後編です。

    2019年の特別公開は11月開催、それも1日のみ。暑さのない過ごしやすい特別公開でした。

    前編では事前にTwitterで募集した質問とその回答を紹介し、
    中編・後編では私自身が行った質問と回答、見学した各ブースの雑感をまとめます。


    募集した質問と回答


    Q1 はやぶさ2の姿勢制御のエンジン系統について →質問できず

    Q2 日本のX線天文衛星へのこだわりについて

    Q3 はやぶさ2搭載カメラ「InCAM」について →質問し忘れ

    Q4, Q5 太陽発電衛星について

    Q6 月惑星の縦孔・地下空洞探査UZUME計画について

    Q7 深宇宙探査技術実証機 DESTINY+について

    Q8, Q9 はやぶさ2の帰還後の予定について


    全部で9種類の質問を受け、そのうち7つの質問を各出展ブースの関係者に質問することができました。残る2つの質問は、聞くべき関係者に合えなかったことと、単純に内容をど忘れしてしまったため、質問できませんでした。申し訳ない…。


    各質問とその回答について、以下に詳細をまとめていきます。



    Q1:はやぶさ2の姿勢制御のエンジン系統について →質問できず

    往復の航路中での姿勢制御やリュウグウでの降下、上昇などを含めて、どのくらいの化学燃料を搭載すればいいのか、どうやって計算しているのか。計算によって燃料タンクのサイズも決まると思われるがどうなのか。

    はやぶさ2のブースで質問するつもりでしたが、姿勢制御や化学推進に携わっていると思われる方が見当たらなかったので、質問できませんでした。今思えば、はや2の化学推進系担当の森先生を探しに行くべきでした。



    Q2:日本のX線天文衛星へのこだわりについて

    日本はX線天文衛星が有名なのですが、何かしら「X線天文衛星」へのこだわりがある?

    A:日本はX線天文衛星を(赤外線天文衛星などと比べて)昔から継続してこれた。というのも、X線天文学は、衛星を上げないとできない。赤外線や電波は、地上でもある程度の観測ができてしまう。一方X線は、衛星を打ち上げないと何も観測できないから、X線をやる人はしゃかりきになって頑張ったっていうのがあるのと、X線天文衛星を上げるたびに、世界的な成果が上がったこと。これは当時のたちの先見の明と、天体自体が魅力的な現象を起こしたことも大きい。
    衛星を上げると成果が出るから継続できるというのと、なにより、宇宙研だけじゃなく大学や海外の皆が協力したこと。などいろんな要素が含まれている。あとは衛星を上げると、良い成果はもちろん、新しい謎も生まれる。その謎を解くために新たな衛星を上げ、さらに新しい謎が生まれる、の繰り返し。

    日本のX線天文衛星の歴史のポスター。今年は衛星はくちょうの打ち上げ40周年にあたる。



    Q3:「はやぶさ2」搭載カメラInCAMについて

    「InCAM」という謎のカメラはいったい何なのか

    質問し忘れていたため回答はありません。(申し訳ない…)

    質問者による回答のリンクを載せます。https://twitter.com/TransTerraScape/status/1190616211991621633



    Q4, Q5:太陽発電衛星について

    Q4:「太陽発電衛星」で太陽発電衛星では大型建造物を宇宙に作る技術が重要となる。

    先日発表されたHTV-Xの構想では「大型展開構造物の運用実験」というのがあったが、この利用は考えているか?

    https://fanfun.jaxa.jp/jaxatv/files/20191031_htv-x.pdf

    A:実用の前に、小型の太陽発電衛星を宇宙にもっていって実証実験を行う必要はある。

    Q:HTV-Xの利用は?

    A:しない。

    太陽発電衛星と受電装置(レクテナ)の概念模型。衛星の太陽電池とレクテナはそれぞれ2km近いサイズがある。

    Q:太陽発電衛星ってどれくらいの大きさ?

    A:2km四方。ものすごい大面積で発電し、電気を電波に変えて地上へ送信する。地上でキャッチした電波を電気に変換して使用する。そのままの大きさだと当然ロケットに入らないので、100m四方の太陽発電衛星を正方形状に折り畳んだものを多数打ち上げて、それを軌道上で組み合わせて2km四方にする。折りたたむ構造は形状記憶合金を使用。太陽発電衛星は静止軌道上(3万6000km)に打ち上げる。地上の受電スポットも2km級のサイズで羽田空港くらい大きいが、宇宙から見ると小さい。そこに正確に狙える技術が必要。地上に送信するときの電波は、大気による減衰のない周波数を選ぶ。

    エネルギー密度を低くして送信するので、鳥が電波を浴びても焼き鳥にはならないみたい。


    Q5:関連して、太陽発電衛星では作られた電力を無線送電するが、これは主に衛星から地上の受電設備に行う形であると理解している。

    もしも発電衛星から他の宇宙衛星に送電できれば太陽光パネルが不要となる他イオンエンジンなどの大電力設備の運用が楽になると思うが、そういった検討は行なっているのか?

    A:そのアイデアは魅力的で、将来絶対やると思う。ただ今の段階で考えているのは、衛星ではなくドローン。飛んでいるドローンに電波を送って充電をするというのを考えている。充電が足りなくなったらドローンがやってきて、空中で充電する。これが大規模になったのが人工衛星になると思う。ドローンへの電波による給電は地上から空中に向けて電波を発射する。

    まずはドローンで実用化して、今後衛星への給電へ。ただ距離が問題で、ドローンなら数十mだが、衛星になると数千、数万kmの距離に電波を正確に飛ばす必要がある。

    太陽発電衛星の実現のカギとなる3つの技術分野について。発電所を宇宙に作ることの大変さが伺える。




    Q6:月惑星の縦孔・地下空洞探査UZUME計画について

    月の縦孔は溶岩チューブの天井が破壊されたものと理解している。
    探査方法はすでにある孔に降りる方法以外にも溶岩チューブは月面に多数あるので任意の点で穴を掘る方法もあると思う、後者の方が探査の自由度は高いように思えるが検討は如何に?

    A:かぐやが見つけた月の縦穴の層の厚さが、マリウス丘のだと20mくらいある。縦穴の直径は50mほど。20mも掘るのはなかなか難しいのと、溶岩チューブがあるのはわかっているが、どこまで広がっているかがわからないということがある。一応50kmくらいの規模があるかもしれない。
    かぐや(SELENE)が最初に発見した縦穴、「マリウス丘の縦穴」の解説ポスター。


    Q:
    かぐやのレーダサウンダーで地下空洞の場所は特定できない?

    A:レーダサウンダーも信用はできるが、レーダサウンダーは月面地下空洞からの反射を捉えるのと、層からの反射も捉えてしまう。地球の地層のように含まれている物質が層ごとに異なっていた時、例えば地中の真ん中くらいの層にレーダーを反射する物質の層があったとき、レーダサウンダーは層からの反射を捉えてしまう。地下空洞による反射と思っていたのが、実は地層による反射であった可能性もある。その判別がわからない。

     なので、正確に地下空洞の位置を特定するのが難しいのと、穴をあけるのが難しいこと、あとは近くに穴を掘ると天井が崩れちゃうかもしれないというのがあるので、穴をあけるというよりかは今あるもの(縦穴)を活用してゆく。

    月面の縦穴と溶岩チューブを再現した模型。2017年の特別公開で見たかも。



    Q7:深宇宙探査技術実証機 DESTINY+について

    いくつかの資料で2018年度に設計開始で2021年には打ち上げとなっているが、現在でもこの日程で進んでいるのか?もしもトラブル等で遅れてしまった場合は探査対象小惑星の変更、あるいは数年に及ぶ軌道設計の変更で対応できるのか?

    A:打ち上げの予定は2022年度。フェートンに到着するまでに3年、4年かかる。

    もし打ち上げの予定が遅れた場合、フェートンとの位置関係によって変わってくる。

    Q:フェートンの軌道周期くらいずれる?

    A:そこまではわからないが、打ち上げ時期がズレると年単位で遅れちゃう。

    DESTINY+の軌道設計ポスター。書かれている文章は2018年特別公開のものと同じ。


    さらっとブースのお兄さん(イオンエンジンの研究をしている方)が、打ち上げ予定を「2022年度」と言っていましたね。

    D+に関する論文には2022年10月の打ち上げの例が載っているので、こちらのスケジュールでいくのかも?
    こちらの資料も参考になれば。
    Modelling DESTINY+ interplanetary and interstellar dust measurements en route to the active asteroid (3200) Phaethon
    https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0032063318303647

    DESTINY+ Trajectory Design to (3200) Phaethon
    https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs40295-017-0117-5



    Q8, Q9:はやぶさ2の帰還後の予定について

    Q8:はやぶさ2が地球に帰還してカプセルを投下した後、どこへ何しに行くなどの予定は決まっている?

    A(SCI担当の佐伯先生に伺いました):今まさに検討中。どこへいけるのか検討中。

    Q9:地球に向けてカプセルを分離した後に地球スイングバイで加減速が可能なのか?

    A(佐伯先生):カプセルを地球に降ろす軌道に入れるので、自由には選べない。カプセルを放出した後の軌道は決まってしまう。地球帰還はスイングバイという形にはなるが、なかなか良い軌道ではないのて、次どこかへ行くには時間がかかってしまう。何年も、数年、10年単位でかかる可能性もある。

    Q:ちなみに帰還後のはや2の予算は?

    A:まだついてない。予算的な意味でもできないかもしれない。

    はやぶさ2のミッションロゴシール(リュウグウ探査Ver.)最近になり帰還フェーズVer.のロゴも公開された。帰還後のミッションが決まれば、延長ミッションVer.のロゴが出るのかもしれない。


    以上、Twitterで募集した質問とその回答でした。
    特別公開という貴重な場で興味深い質問をいくつもすることができ、なかなか知ることのできないコアな情報を得ることができました。と同時に自身の勉強にもなりました。


    見学レポの中編・後編では、私自身が質問した内容とその回答、あとは特別公開で撮影した写真などを多数紹介しようと思います。

    中編は→コチラから
    後編は→コチラから