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【講演会レポ】はやぶさ2から探る地球の水の起源(前編)
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【講演会レポ】はやぶさ2から探る地球の水の起源(前編)

2019-08-21 21:00

    後編はコチラから

     2019年8月4日(日)に会津若松市生涯学習総合センターで行われたイベントの講演会「はやぶさ2から探る地球の水の起源」に参加してきました。

     講演者ははやぶさ2の観測装置の1つ、近赤外分光計「NIRS3」のPIとしてNIRS3の開発と運用に携わっている会津大学准教授 北里 宏平(きたざと こうへい)先生



     講演では、現在リュウグウの探査を行っている「はやぶさ2」が目指す科学的な成果とNIRS3の観測結果について、地球の水を探る視点から解説してくれました。私自身あまり理解が追い付いていないはやぶさ2のサイエンスを学ぶいい機会になりました。今回の講演は聴講後にこうして講演会レポを書く予定はなかったのですが、個人的に気になっていた情報、特にはやぶさ2の帰還後に関するプチ情報を得ることができたので、その内容も皆さんに紹介します。長くなったので前後編に分かれています。(またかい)


    はやぶさ2の概要

    講演の冒頭でははやぶさ2の概要をお話してくれました。

    現在、はやぶさ2は今年(2019年)12月からの地球帰還のためのリュウグウ離脱に向けた準備を行っている。来年の12月にウーメラにカプセルを落とすが、初代と異なりはやぶさ2は大気圏に突入して燃え尽きることはない。



    地球の水はどこから?~小惑星起源説~


    我々の太陽系は太陽、8つの惑星、惑星を周る衛星、準惑星、小惑星や彗星などで構成されている。



    小惑星のほとんどは、火星と木星の間にある小惑星帯に存在している。密集して帯のように見えることから、この領域を「主小惑星帯/メインベルト」と呼んでいる。内側はS型小惑星が多く、外側はC型小惑星が多い。これは太陽からの距離に関係していて、太陽に近いほど表面の温度が高いので、水分や有機物、揮発性の高いものが存在しにくくなっていると考えられる。彗星は小惑星とは違い、尾をひいている。尾は彗星から噴出されるダストや塵によってできる。

    ※S型小惑星とは:岩石を主成分とする小惑星 はやぶさが探査した小惑星イトカワなど。

    ※C型小惑星とは:岩石の中に水や有機物などを多く含むと考えられている小惑星 リュウグウがこれにあたる。

    太陽系の惑星は、原始太陽の周りにあった塵やガスが集まって形成されたと考えられている。惑星の成り立ちはだいたいのことがわかっているが、細かく見ていくと、惑星がいつどこで誕生したのかは正確にはわかっていない。研究者は太陽系の歴史を解明したいと考えており、解明するうえで重要なことが「地球の水の起源」である。太陽系の天体の中で、表面に液体の水が存在するのは地球だけ。

    地球の水の起源を探ることは、太陽系の成り立ちだけでなく、生命の起源にも迫ることができる。というのも、人類を含む地球に存在する生物のほとんどが水で構成されている。さらに最初の生命は海で生まれたと考えられていることから、地球の水がいつどうやってできたのかを考えることはとても重要。

    なので昔から研究され、様々な仮説が提唱されてきた。その中でも有力な説が3つある。


    有力な3つの説の紹介

    (私は小天体探査ファンとして、3番目の説を推していきたいが…。)
    一般の方々は2番目の説だと思う人が多いとのこと。

    で、このどれが正しいのかはまだ明らかになっていない。ちなみに先生たちが一番有力だと思う説は3番目の説。なぜ小惑星起源説が有力だと思われるのかというと、地球の月の成り立ちを考えると見えてくる。地球の月は「ジャイアントインパクト」と呼ばれる出来事でできたとする説が有力である。火星くらいのサイズの天体が地球にぶつかって、その破片が今の月を作ったとするのがもっともらしい説である。で、このような巨大な衝突が起きると、元々地球表面に海(の構成材料)があったとしても、それらが吹き飛ばされて無くなってしまうと考えられるので、1,2番の説は否定できる。

    さらに3番の小惑星起源説を支持する情報として、地球ができた後に小惑星がたくさん降ってきたという証拠がある。地球のマントル物質に、レアアースエレメント(REE)という、本来地球のコアに取り込まれる物質が予想より多く含まれていることが分かっている。これは、地球ができたころに、小惑星によってREEが供給されたことを示している。また、月のクレーターを調べると、地球ができた後にたくさん隕石が降ってきたことがわかった。

    で、地球に降ってくる小天体には小惑星と彗星の2種類があるが、なぜ彗星ではなく小惑星なのか。


    上のグラフは、いろんな天体に含まれる水素の同位体比と窒素の同位体比。(中性子の量が違う。重い水素と軽い水素の比をとっていると考えてもらっていい)地球・月の水素や窒素の同位体比は、小惑星起源と考えられている隕石の同位体比とほぼ同じ値を示している。それに対し、彗星の同位体比は地球・月・小惑星とは異なっている。つまり、成分的に彗星の水は地球とは異なっている。なので小惑星が起源であると考えられている。

    ただ、小惑星起源説に問題はないかとかといわれるとそうではなくて、小惑星起源説はいくつかの問題を抱えている。

    まず、地球の水の量をうまく説明出来ないというのがある。地球の海水の質量は1.4×10^21 kgとわかっていて、地球ができたころに付加された(外からやってきた)物質は10^22 kg。ここからわかることは、小惑星から供給される水で地球の水を説明しようとすると、地球に付加した物質の14 wt.%が水でないと説明がつかない。地球に降ってくる隕石をみると、S型小惑星が由来の普通隕石の場合、水分がわずか1 wt.%ほど。それに対してC型小惑星が由来と思われる炭素質隕石は10 wt.%ほど。

    もし、地球に降ってきた隕石がC型小惑星で占められるなら、地球の水の量を説明できそう。

    だが、地球に降ってくる隕石の大半は普通隕石で、C型小惑星由来と思われる炭素質隕石は少量。そうなると、地球の水の量を説明できない。

    そこで、前提を疑ってみることにした。この場合の前提は、C型小惑星=炭素質隕石であるということ。これを、C型小惑星=炭素質隕石+H2O氷 に置き換えてみる。


    我々は小惑星の表面しか観測できておらず、表面的には炭素質隕石のようだが、実は見えていない内部に水の氷が存在しているかもしれない、と考える。このような氷がC型小惑星の内部にあるとすれば、地球の水の量を説明できる。

    実際、最近の観測によって、C型小惑星は予想していたよりも多くの水分を持っていることがわかってきた。



    それを示すものとして、まるで彗星のようにガスを含んでいるC型小惑星があったり、表面が霜でおおわれたC型小惑星が発見されたりしている。メインベルトにある小惑星は比較的太陽に近いので、表面に氷が安定して存在することは出来ない。だが霜があるということは、太陽光で蒸発しても内部から供給されて霜が生まれていると考えられる。

    <まとめ>


    はやぶさ2は、間接的な方法でC型小惑星の内部での水の挙動を理解することを目的として頑張っている。



    C型小惑星とはやぶさ2


    C型小惑星での水の挙動について。C型小惑星はもともと、氷と岩石でできていた。

    太陽系の初期、天体は放射性物質をたくさん持っており、放射性物質が崩壊するときの熱で天体全体が暖められ、氷が水に代わり、水が岩石と反応して含水鉱物ができたと考えられている。



    問題は、この時水はどんな挙動を示したのか。考えられることとしては、水が岩石の隙間を移動して外部に出るパターン(これだと水が抜けて天体の内部には水や氷は存在しなくなる)と、岩石に隙間がなく、水が動くことができないパターン(天体が冷えると水は再度氷になる)がある。

    このどっちであるかをはっきりさせることが重要。この問題を考えるうえで、リュウグウを探査することは的を射ている。



    リュウグウの表面はリュウグウの母天体の内部物質が転がっていると考えられる。太陽系の歴史は衝突の歴史でもあり、リュウグウのような小さい天体はかならず衝突を経験している。元々は100kmくらいの天体だったのが別の天体とぶつかってばらまかれた破片が集まってできたのがリュウグウであると考えられる。

    ここで、リュウグウ表面の物質の組成が均質か不均質であるかを見極めることが重要。均質か不均質かで水が移動したのかしていないのかがわかる。水が移動すると岩石の物質が溶け出していろんなところへ移動(して偏りが生まれる?)するので組成が不均質になり、水の移動がなければ均質のままになる。

    小惑星の内部に氷が存在すると考えると、水の移動は起きないので、リュウグウの組成が均質であれば、仮説は正しいとなる。



    ここまでのまとめ。はやぶさ2はリュウグウの不均質性を、その場観測だけでなく持ち帰ったサンプルの分析から明らかにする。



    ここでいったん専門的な話は休止して、北里先生が描いたリュウグウの想像図のお話がありました。


    このイラストはリュウグウ到着前に描いたもの。上からのお達し(リュウグウ想像図コンテスト)で描いたとのこと。赤道上にリッジがあったり、大きなクレーターがあったり、実際のリュウグウにとても似ている想像図ではあったものの、コンテストでは審査基準が予想の精度ではなく絵心だったので、他の方に賞が贈られたとの事。



    画像をよく見ると、「3μm吸収は見える!!」「0.7μm吸収が見える大きいクレーター フレッシュ 自転軸の向きを変えた」「イトカワのようなボルダーがたくさんころがっている」「ベンヌのような赤道リッジ←レゴリス 高速回転の名残」の文字が。(小惑星ガチ勢プロの本気がうかがえてめちゃくちゃ面白い!!)



    その後、リュウグウに到着したはやぶさ2は、これまでいろいろなミッションを行ってきている。その中には講演者の北里先生がPIを務める観測装置「NIRS3」の観測も含まれている。


    前編はここまで。後編ではNIRS3によるリュウグウの観測結果と、はやぶさ2帰還後に関するお話があります。後編も新情報が盛りだくさんとなっています。

    後編はコチラ

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