ユーザーブロマガは2021年10月7日(予定)をもちましてサービスを終了します

明治の怪人たち
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

明治の怪人たち

2014-07-02 07:31

    明治の巨大ヒーロー」「明治の巨大怪獣」の続き。

    仮面ライダーなどに登場する等身大の怪人たち、彼らは
    概ね次の様な特徴を持っている。

    1. 等身大である
    2. 人間に近いが奇妙な姿をしている
    3. 特殊能力を持っている


    カミキリインベス © 2013 石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

    ところがこの定義に従うと、鬼や天狗も怪人だということになってしまう。



    歌川国貞「木の葉天狗」

    確かに姿形は似ているが、決定的に違うところがある。天狗や鬼には存在する理由がないが、怪人には存在する理屈があるという点である。

    前近代の人々は、こういう化け物がいますと言われれば、はいそうですかと納得してしまう。ところが近代人だとそうはいかない。怪人が存在するに至った理屈が必要であり、怪人がそこに登場した理由が必要だ。

    そんなわけで怪人の登場は明治まで待たなくてはならないのだが、基本的に明治にも怪人はあまりいない。むしろ長年生き続けた規格外に成長した生物が、怪物として登場することが多い。


    少年日露戦史.第拾六編 巌谷小波 博文館 明治37-39

    全く迫力がないイラストだが、とにかくネコ科の巨大な生き物との格闘を描いている。次に紹介するのは長年生き続けた猪との格闘、こちらも迫力はない。


    槍術名人佐分利左内 隆文館編集部 樋口隆文館 大正3

    出版年からも分かるように、大正初期ならば長年生き続けた化け物というのは、十分に現役のコンテンツだった。

    長年生き続けたのだから、当然知恵もあるだろうし、巨大に成長することもあるだろう……という理屈である。ただしこの様な怪物は、明治以前から存在している。そんなわけで古臭い怪物に飽き飽きしてしまい、全く新しい設定を求める人たちもいた。




    少年探検隊 江見水蔭 博文館 明43.6

    このイラスト、オランウータンではないかと思われた方もいらっしゃるだろうが、実際にオランウータンである。この物語では怪物扱いされている。

    もちろんゴリラも怪物として大活躍をしている。こちらは少々分かりにくいが、確かにゴリラである。


    東天丸五郎吉 : 南洋奇談著者旭堂南陵 講演[他]出版者樋口蜻輝堂出版年月日明44.9

    これらの物語では類人猿が、この世に確かに存在する人に近い姿をした凶悪な生物として登場し、悪逆非道の限りを尽す。

    ここまで来れば怪人まであと少しで、実は明治の三四年には、恐らく最初期の怪人『人猿』が『女海賊』という小説に登場している。

    『女海賊』では、日本に復讐するため海賊の首領となりロシア軍と手を組んだ美女高浜千浪と、新聞紙の主筆記者花房太郎との息詰る戦いが描かれる。高浜千浪の武器は小型の爆裂弾であり、彼女の切り札が『人猿』である。

    『人猿』はエジプトのギリーム村に住むマスラーという動物学者がアフリカから連れて来た怪人で残忍極まる生物だが、なぜか高浜千浪にだけは従順でその忠実な部下となっている。

    『人猿』は猿と人間との能力を兼ね備えた生物であり、かなり怪人に近い。武器は強力な爪と怪しい鼻息である。


    『女海賊』 江見水蔭 青木嵩山堂 明治三六(一九〇三)年

    この作品が書かれたのは明治三六(一九〇三)年のことで、現代でも違和感のない怪人として『人猿』は最初期の存在だろうと思われる。

    面白いのが『人猿』以降に怪人が続々登場したのかというと、そうでもない点だ。『人猿』にしても十分に活用されているわけではなく、ポインター犬に噛み殺されてしまう。

    すでに創作するための材料があったとしても、上手くコントロースすることができない。すでに登場していても、後に続く人が出てこない。というように、物語には科学技術に似たところがある。


    広告
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。