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明治のヤモリが虫だった
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明治のヤモリが虫だった

2015-01-03 16:13
    水戸尾州紀州三家三勇士伝 放牛舎桃林 講演[他] 礫川出版 明治二六(一八九二)年


    明治の娯楽小説からの引用。『守宮(やもり)[虫ノ名]』と書かれている。

    ほとんどの人にとっては、面白くもなんともないのだけれども、実はこの数文字にかなりの情報が含まれている。

    まず、この時代には守宮(ヤモリ)が分からない人が多かったということが分かる。分からないから、ヤモリは虫であるという註釈が付いている。

    次にこの時代だと、まだまだヤモリは虫だったということが分かる。今でこそ爬虫類やら魚類など、様々な分類があるが、昔は雑で四本足で走るやつらは獣、空飛ぶやつは鳥、水にいるやつは魚、それ以外は虫呼ばわりされていた。明治の二〇年代でもそういう雑な分類で済ませていた人々がまだまだ存在していた。ヤモリに限らず、ヘビもよく虫扱いされている。


    最後、[虫ノ名]というのは、いわゆる脚注である。ところが明治三十年以降、娯楽小説にはほとんど脚注は出てこない。この本が出版された明治二六年の前後、ほんの僅かの期間にのみよく脚注が使われている。

    なぜ娯楽小説から脚注が消えたのか、理由はいくつか考えられるが、仮説をさらっと紹介しておこう。

    1. この時代は娯楽小説であっても正確に読みたい(読ませたい)という欲求があった
    2. 本文の中で解説をする技術を書き手が手に入れた
    3. 楽しみながら知識を増やす装置として使用されていた小説の役割が変った

    というわけで十文字足らずの文字列から、こういうことを伺い知ることが出来る。こんなことが分かったからといって、なんら得することはないんだけど、ヘーっと思えたりフーンと思うことが出来る。


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