クッキー☆10年略史
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クッキー☆10年略史

2020-02-15 17:09
  • 6

 本記事は、クッキー☆の10年にわたる歴史をおよそ年代順にたどり、様々な出来事や文化について解説するものである。なお、本記事は教科書的な基礎知識を養うことを目的とした簡素なものである。したがって、歴史記述はできるだけ全体的な歴史の流れを反映するように構成されており、しばしば詳細な言及が省かれている。より詳しい情報については、外部のクッキー☆関連のwikiなどが参考になるであろう。

1.淫夢

 2002年に発売された週刊誌によって、プロ野球のドラフト指名候補とされていた多田野数人がホモビデオに出演していたことが報道された。このビデオの題名が「真夏の夜の淫夢」であったことから、この事件およびそこから派生したホモビデオ関連のネタは「淫夢」と呼ばれるようになった。淫夢ネタを支持し愛好する人々は「淫夢厨(淫夢民)」と呼ばれ、独自の言葉遣い(淫夢語録)で会話するようになった。
 ホモネタとスキャンダルというアングラ的な起源を持つ淫夢の活動は、しばしば過激な個人情報の詮索や荒らし行為を伴うことがあった。ニコニコ動画における淫夢厨は、2010年ごろにはすでに、発掘された様々なホモビデオやMAD動画を活発に投稿しており、他ジャンルへの「風評被害」認定による出張荒らしを行っていた。


2.クッキー☆

 2010年2月15日「【東方合同動画企画】魔理沙とアリスのクッキーKiss」がニコニコ動画に投稿された。これは、複数の絵が紙芝居のように繋げられキャラクターの音声が加えられた、約30分の映像作品であった。
 この動画は「東方project」の二次創作コミュニティ「マリアリが俺のジャスティス!」のメンバーによって企画されたものであり、基本的には、コミュニティのメンバーが絵の作成や声の収録を行った。そのため、プロでない素人参加者による声当てに対して、演技が拙いと指摘するコメントが初期に見られた。


 当時、「真夏の夜の淫夢 第二章」における「○○(棒読み)」という語録に代表されるように、ホモビデオにおける棒読み演技は、淫夢ネタに特徴的な要素として淫夢厨に認識されていた。そのため、クッキーKissの投稿から数日の間に、一部の淫夢厨が「風評被害シリーズ」のノリで出張荒らしコメントを行うようになっていた。そうした淫夢厨はその後、淫夢動画の一部にクッキーKissの要素を登場させるなどしてネタにし続けていた。


 しばらくして、企画主催者かつ本動画の投稿者であるHZN(蓮奈理緒)は、フィルター機能を用いて淫夢コメントを規制し、荒らしコメントは「クッキー☆」とだけ表示されるようにした。末尾の☆はHZNがよく好んで使用した文字表現である。これ以降、クッキーKissの本編動画およびこの動画に関係するネタは「クッキー☆」と呼ばれるようになった。


 数か月の間に、クッキー☆要素を含む淫夢動画や、クッキー☆を素材にしたMAD動画がニコニコ動画に投稿されるようになっていった。とくに、音MAD「I’m so クッキー☆」は動画内容が途中でクッキー☆から淫夢に突然切り替わる「一転攻勢」と呼ばれるスタイルを採用したことで知られる。この手法はニコニコ動画全体で大変な人気を博し、多くのパロディが作られた。


 クッキー☆を企画したコミュニティのメンバーであり、主役キャラクターの声を担当したUDK(宇月幸成)は、特に演技が棒読みであると淫夢厨に評価されていた。やがて、UDKのニコニコ生放送には淫夢厨が現れるようになっていった。2010年11月の生放送では、リスナーからクッキー☆ネタをからかわれたUDKが激怒して泣いてしまう事件が起き、淫夢厨の間で大きな話題となった。このとき、2chでは淫夢スレとは別にクッキー☆に関する話題を扱うためのスレとして「【ニコ生】宇月幸成スレ【魔理沙】」が立てられ、その後、現在まで続く「クッキー☆総合スレ」(通称:本スレ)がこれを継承した。


 淫夢厨の推測では、事件時にUDKを泣かせた犯人は、生放送の旧来のリスナーであったSKRYK(桜雪、クロノス教授)とされた。そのため淫夢厨はSKRYKの個人情報を調べ上げて激しく非難した。しかし、UDKは友人としてSKRYKを心配し、彼を擁護する内容の生放送を泣きながら行った。その後もSKRYK本人による弁明のための生放送が行われたが、騒動は収まらなかった。


 同じ時期に、淫夢厨はたまたま、クッキー☆の声当てを担当したHNS(ひなせはるか)がHZNと一緒にを食べたことを示すブログ記事を発見した。この発見によって、淫夢厨の間ではHZNは出会い厨なのではないかという疑惑が浮上した。
 その後、同じく声当てを担当したNDK(なでこ)がツイッター上で、HZNをブロックしたことを報告したうえで、HZNに足を触られるなどのセクハラを受けたことを公表した。そのため、今までSKRYKを主に話題にしていた淫夢厨は、一転して、HZNのセクハラ問題を追究するようになった。その後HNSは、HZNに会った際に抱き着かれそうになったと回答した。
 そして同様にHZNのセクハラを暴露したUDKは、HZNに抗議するために淫夢厨を容認し協力することを宣言した。さらに、主役の声当てを担当したRU(れう)もHZNのセクハラを告発した。
 そして、一連の騒動をまとめたMAD動画「東方を悪用した出会い厨「HZN」に激怒する総統閣下【守れ!青少年】」がニコニコ動画に投稿されたことで、淫夢厨以外の多くの人々にも事件が知れ渡った。HZNはすぐに、ブログに謝罪文を掲載した。謝罪の内容は、参加者へのスキンシップや、荒らしへの対応が行き過ぎていたと反省するものであった。数日後、HZNは身内の関係者に対して炎上に関する謝罪文を送ったが、誠意の感じられない文面がリークされ、余計に非難されてしまった。
 2010年12月5日、最終的にHZNは、セクハラ問題の責任を感じたため現在進行中の企画を降り、今後一切の制作活動を辞めるとブログで発表した。


 セクハラ事件が収束してから、UDKなどのクッキー☆側の人物と淫夢厨は再び敵対するようになり、そのうえ淫夢厨の間でも特定の人物を巡り内紛が起こるようになっていた。

 しかし、この事件の前後で淫夢におけるクッキー☆ネタの存在感が大いに増したこともあって、一過性のブームで終わることなく様々なMAD動画が作られたりスレで話題にされたりし続けることになった。ちなみに、淫夢内で東方を扱うサブジャンルは「東方夏淫夢」と呼ばれており、HZNの事件より数か月前に作られた「淫夢異変シリーズ」という一連の動画では、クッキー☆ネタが登場したことがあった。
 このように東方夏淫夢のネタの一部としてクッキー☆が取り上げられ、周知されることがしばしばあった。しかし、HZNの事件以降、クッキー☆ネタが明らかに本編に登場する「早苗といっしょにトレーニング」などの動画のように、淫夢の派生ではなくクッキー☆の派生としての東方動画が現れた。このように、「クッキー☆」は、東方夏淫夢の一種というよりは、クッキーKissから派生した様々な事件や関連する動画などのネタを包括した一つのジャンルとなっていった。また、淫夢厨であるという身分と両立することが多いが、クッキー☆に継続的に関心を向ける「クッキー☆厨」という層がある程度確立した。


3.クッキー☆☆

 2011年12月23日、「【東方project】クリスマス企画!【ボイスドラマ】」がニコニコ動画に投稿された。これは、音声投稿サイト「こえ部」においてTIS(大佐)が企画した音声劇作品に一枚絵を加えて動画形式にしたものであった。この動画はクッキーKissと同じく、素人による音声つきの東方系作品であったことからクッキー☆スレで紹介され、「クッキー☆☆」と呼ばれた。
 そのとき、参加者のBNKRG(紅くらげ)MZ(まーず)などがニコニコ生放送を行っていたことが発覚し、スレのクッキー☆厨は生放送に突撃して交流をすることに面白さを見出した。しかし、音声劇ということもありニコニコ動画の方ではMAD動画のネタとして人気を得ることはなく、ブームはスレ中心のものに留まった。


 2012年になると、「【総勢17人】幻想万華鏡 春雪異変の章【東方アニメアテレコ】」という、既存の東方系同人アニメ作品に素人の参加者が声当てをした別の企画動画が投稿された。これは「クッキー☆☆☆」と呼ばれた。この他、「東方アニメ小劇場 パチュリーが爆発する」「【例大祭9】 ニコ生はたたん」「【東方MMDドラマ】紅美鈴 ~EpisodeZERO~【フルボイス】」など、次期のクッキー☆を発掘しようとする過程でネタに組み込まれるようになった東方系動画も多い。
 この頃、ニコニコ動画の方では、HZNの生々しい騒動が終わってから時間が経っており、クッキー☆が動画表現のネタとして定着していた。ここでは主に初代のクッキー☆を中心に、大作的な音MADや、劇中のBGMをアレンジする「ほのぼの神社アレンジシリーズ」など様々な動画が作られていた。


 2013年1月1日、クッキー☆☆のTISが同様に企画した音声劇動画「【東方project】お正月企画!【ボイスドラマ】」が投稿された。このわずか2日後に、3DCGソフト「MMD」の東方系キャラクターモデルによる映像が加えられた動画が投稿された。このMMD版動画を投稿したのは企画側の人物ではなく、淫夢・クッキー☆寄りの動画制作者であった。
 そして、音声劇に3DCGのキャラクター映像が加わり、動画映えするようになったため、ニコニコ動画においてこの作品自体の人気が高まり、MAD動画も流行した。この作品は当初、クッキー☆スレの番号則に準拠し「クッキー☆☆☆☆」と表記されることもあったが、ニコニコ動画においては初代クッキー☆に次いで初めて大きな話題になった継承的な動画作品ということで「クッキー☆☆」と呼ばれた。


 2013年12月24日、TISの3作目の音声劇動画「【東方project】クリスマス企画! 2013【ボイスドラマ】」が投稿された。このとき、ニコニコ動画のタグ機能によってつけられた「クッキー☆☆三期」というタグがTIS本人によって固定化されたため、TISの企画した作品の総称は「クッキー☆☆」、2011年のクリスマス企画は「クッキー☆☆一期」、2013年のお正月企画は「クッキー☆☆二期」というように遡って命名されるようになった。
 TISは一期のころに初めてクッキー☆厨と接触し、一旦警戒する素振りを見せたが、最終的にクッキー☆ネタを受容するようになっていった。そして、自分の作品がクッキー☆厨に目を付けられていることを理解しながら音声劇を企画し続けたため、素人参加者を売り物にする「ヴォイスドラマ業者」と呼ばれて非難されることもあった。しばらくして、クッキー☆厨によってプライベートな情報が調べ上げられてしまったTISはクッキー☆☆三期を投稿した直後の時期に失踪し、引退状態となった。


 クッキー☆は淫夢の流れをくみ、動画表現のネタであると同時に情報詮索や出張荒らし行為を伴うジャンルである。2014年6月、クッキー☆☆二期の主役の声当てを担当したKNN(栞奈)に対して、2ch上で殺害予告を行った人物が逮捕された。この事件の話題はニュースサイトからTwitterに広がり、さらに地上波の報道番組「めざましテレビ」の1分ほどの短いコーナーで報道された。逮捕された人物は「クッキーのお正月企画での巫山戯た演技で霊夢のキャラを著しく損なわせた(原文から引用)」という理由を文面上は挙げており、事件報道時にも「キャラクターの声がイメージと違うと怒り…」という形で動機の説明がなされた。
 この事件によって、内部的にはクッキー☆の過激なジャンルの在り方を巡って論争が起き、外部的にはクッキー☆の知名度が上昇することになった。


 最終的にクッキー☆☆は、有志によって一期・三期のMMD版動画も投稿されたため、安定した人気を得た。クッキー☆☆の参加者の多くはこえ部やニコニコ動画などで活動していたため、各人物の投稿した歌唱曲が「クッキー☆キャラソン」として楽しまれるようになった。
 ネット活動の豊富な情報と、MMD版による映像描写が合わさることによって、クッキー☆☆の参加者たちは強い個性を持つキャラクターとして動画で表現されることになった。2013年頃、初代クッキー☆およびクッキー☆☆は、たんに音MADの素材になる以外に、人物のキャラクター性を強調したMADである「BBクッキー☆劇場」の題材となっていた。これは、キャラクターの映像を切り抜いて透過させたBB(ブルーバック)素材を用いた人形劇のようなものであり、もともと淫夢において流行していた表現方法であった。
 2014年頃からは、クッキー☆のキャラクターをファンアート風に描いた手描きイラストが「ニコニコ静画」に投稿され始めた。
 このように、クッキー☆においてキャラクター的な表現方法が増してきたため、いままでとは逆に、クッキー☆厨による作為的な行いによってクッキー☆のネタが規定されるという現象がしばしば起きるようになっていった。例えば2014年頃、初代クッキー☆の幸村理桜(浜本しおり)が担当した役の本編中の絵をフィッシング雑誌の表紙にコラージュした画像が流行したため、釣りと特に関係がないにもかかわらず幸村理桜は「釣りキチおばさん」というキャラクターとして扱われるようになった。


4.MK、KZY、ATUDなど(2014-2015)

 TISのクッキー☆☆の後、クッキー☆の後継作品となることをあらかじめ意図した作品が複数の人物によって作られるようになった。もともとクッキー☆厨であったMK(満月)は、クッキー☆☆に触発され、似たような音声劇をこえ部で企画し、2013年10月に「【東方ボイスドラマ】The Witch's Happy Halloween?」としてニコニコ動画に投稿した。しかし、それほど人気は得られなかった。
 その後、MKがクッキー☆厨であることが明らかになると、売名のためにクッキー☆を匂わせるような音声劇を作って失敗したとして「売名失敗兄貴」と呼ばれることになった。これ以降もMKは東方系の音声劇を企画し続けたが、クッキー☆の後継を目指した他の作者のものと比べると、地味なものが多かった。


 KZY(美翔カズヤ)は、ほのぼの神社アレンジを投稿していた人物のうちの一人であり、TISに憧れていた。KZYはクッキー☆厨であることを公言しつつ、引退したTISの後を継ぐ作品を企画していることをブログで発表した。そして2014年8月10日、「東方夏休み ヴォイスドラマ企画」が投稿された。この動画はヴォイスドラマと表記されているが、初代クッキー☆のような声付きの紙芝居形式で作られていた。
 この動画は、作りがやや雑でありクッキー☆要素の露骨な言及を含むものであったため、クッキー☆厨からは酷評された。これを受けてKZYは、単に売名がしたかったと告白し、さらにそのことで非難が集中すると、ブログ上で自分のアンチに対して強く罵倒し返した。参加者と過度に親しくすることはしないと宣言していたKZYだが、その後、クッキー☆☆と同じ役で出演させるために自分の作品にスカウトしたエスカ(ESK)と一緒にニコニコ生放送を行おうとしたため、激しく非難された。最終的にKZYは謝罪を行い、現在の名義での活動を引退した。


 もともとオリジナルのweb漫画を投稿していたATUD(阿刀田阿子)は、2014年6月に「東方 初夏のボイスドラマ」、12月に「【東方ボイスドラマ】the reimu's happy holidays」をニコニコ動画に投稿した。ATUDによる作品はKZY同様に声付き紙芝居の形式を取っており、最初の二作品にはクッキー☆や淫夢のネタが暗示的に用いられていた。
 続く2015年8月投稿の「【ボイスドラマ】霊夢と魔理沙のチョコレート★ハート」は、物語構造や演出方法において初代クッキー☆を強く意識した作品であった。そして、12月投稿の「東方クリスマス2015!ボイスドラマ企画」は、物語内に、同一の東方キャラクターの名前を共有する複数の人物が登場したり、既存のクッキー☆関連人物をそのまま登場させたりするなど、クッキー☆に関するネタを大量に取り入れた作品であった。


 2015年7月、携帯ゲーム機のイラスト制作ソフト「うごメモ」のネットコミュニティ上で小学生が中心となって制作した声付きアニメ動画「アヤツリ異変...ナゾの影」が、クッキー☆厨によってニコニコ動画に転載された。小学生による動画企画という点や、ミラミカルリランという斬新なオリジナルキャラクターが、クッキー☆厨にとって衝撃的であったため話題になった。


 MK、KZY、ATUDなどによる作品は、クッキー☆側の人間の手が加わっていることから、「養殖クッキー☆」と呼ばれることがあった。特に古参のクッキー☆厨にとっては、養殖の流れは否定的に捉えられがちであった。
 しかし、この時期、初代クッキー☆参加者であったYMN(やみん)のようにクッキー☆厨と積極的に交流したがる人物や、動画に出演した人物を囲って好意的に交流したがるクッキー☆厨の、両方が普通に存在するようになっていた。そのため、ネタにされる参加者とネタにするクッキー☆厨の間の距離が近くて相互に介入作用があることは、古参でない新入のクッキー☆厨にとっては違和感がなかった。


5.その後(2016-2019)

 2016年ごろ、恋本かぼちゃ丸本物NICO!などのクッキー☆厨によっていくつかの動画作品が投稿された。このような作品は典型的に、クッキー☆厨が企画者となり、素人の声当て参加者およびイラスト参加者を募り、映像作品として編集したものを「ボイスドラマ」と呼び、ニコニコ動画に投稿するという体裁を取った。
 2017年3月、クッキー☆スレの一部の人物たちによって企画された「【東方手書き】クラウンピースと小さな勇気【声当て】」が投稿された。これは、恋本やかぼちゃ丸などの作品と違い、声の参加者には既存のクッキー☆に関係のない人物を採用し、できるだけ普通の東方系動画を装って制作されたものであった。
 5月、MajorMilkによって「【ボイスドラマ】魔理沙とアリスのイースターエッグHunt」がニコニコ動画に投稿された。これは、アメリカのクッキー☆厨である企画者が発案し、海外の英語圏の参加者を中心に制作されたものであったことから、クッキー☆厨にとって大きな話題となった。
 同時期に、クッキー☆MAD投稿者として人気の高かったしりりが初めて企画した、クッキー☆のパロディ的作品「魔理沙さんのスペルカードを探せ!」が投稿された。11月にはザッパー☆による映像の凝った「【東方ボイスドラマ】幻想郷ラブラブパニック【手書き】」が投稿され、12月にはクッキー☆お絵描きチャット定期開催者ゲスやろうによる「【東方2017秋!ボイスドラマ企画】魔理沙と霊夢の温泉☆旅行」が投稿された。
 2017年末から2018年にかけては、「幻想郷中秋の名月 月餅☆盗難事件」、「【東方ボイスドラマ】衝撃!魔理沙妊娠中!(中国語)」など、中国語圏の企画者による作品が投稿された。
 2018年5月、覚醒蓮奈を名乗る人物が初代クッキー☆を新しい参加者でリメイクした作品「【東方voicedrama】新・魔理沙とアリスのクッキーKiss」を投稿した。6月にはしりりが、ギャグ色の強いMAD動画風の「【東方地獄動画企画】魔理沙とアリスと根菜のゴルゴンゾーラ和え」を投稿した。
 この頃、緑のお茶ペペーチョのように、MAD動画投稿者でありながらクッキー☆動画を企画したり、声当て担当にも参加したりする人物が増えた。
 2019年2月に投稿された「【東方ボイスドラマ】椛の悪即斬!【試作版】」は、本来の投稿予定日は2018年3月であったが、企画者のヨツンヴァインが何度も延期を繰り返したため約1年遅れての投稿になった。そのため、作品自体よりも企画者の延期発表がネタとして楽しまれるという珍しいケースになっていた。
 ここで紹介した作品以外にも様々な類似作品が大量に作られており、数え方によれば100個を超えることもありうる。これらの様々な作品をクッキー☆の文脈においてどのように位置づけるかについては、クッキー☆厨全体の間で意見が一致することはなさそうであり、それゆえ各作品の認知度や評価はそれぞれのクッキー☆厨によって大きくばらついている。


 クッキー☆の歴史の前半は、淫夢や東方夏淫夢と区別される、独自性のある界隈が固まっていく過程であった。しかし、その歴史の後半ではクッキー☆という界隈の中で様々な独自性のある界隈が分化していった。


 ニコニコ動画でのクッキー☆は、自給自足的な、動画表現用の素材としての側面がさらに強くなっていった。クッキー☆☆三期などの参加者であるHSI(緋翠)は、もともとあまり注目されていなかったが、2016年頃にたまたまMAD動画素材として活躍するための基盤が整備されていき、そこで多数の動画が投稿されたため人気キャラクターとなった。
 このブームの背景としては、HSIの人物的特徴は関係が無く、HSIを動画コミュニケーションの優良な素材として扱えるインフラが整備されていたことだけが重要であった。すなわち、条件さえ満たしていればHSIに限らず他の誰かでもありえたわけであり、実際に、りゅーがJOKER(ジョーカー)などの比較的知名度の低かった声当て参加者をHSI同様に人気キャラクターに擁立しようとする運動も起きていた。
 この時期、一つのテーマに沿った複数の人物の制作したMAD動画を一つの動画に繋ぎ合わせて投稿する「合作」ブームも起きており、動画表現による交流の場となっていた。


 ニコニコ静画におけるクッキー☆タグの内訳は、画像形式の素材もあるが、ファンアートが非常に大きな割合を占めるようになった。手書きイラスト特有の問題として、描き手の個性が現れた絵として描かれるため、ネタ本来の一次的な要素が少ないと見なされることがある。例えば、クッキー☆の人物として描かれた絵に、クッキー☆と結び付く要素が乏しかった場合、静画コメントによって「ただの東方」という定型句で批判されることがある。
 しかし、静画のイラストのような二次素材がMAD動画で用いられることは次第に増えて行き、よく見られるようになった。クッキー☆静画では、独自の設定付けやブームが見られたり、投稿者同士が協調したり、投稿者そのものがイラストのネタになったりすることもある。
 2017年の東方ジャンルの同人誌即売会において、れオナるド16世が静画のメンバーを集めて制作した同人誌「大人のクッキー☆~Asoteddo~」を有料頒布し、クッキー☆厨の間で話題になった。


 クッキー☆実況界隈は、「クッキー☆実況スレ」で任意の動画を再生しながらひたすら感想を書き込み続ける人々の集まりである。起源は2011年頃だが、クッキー☆☆が現れて以降、歌唱曲を繋げた「キャラソン」や、参加者に関連のある別作品を導き出す「親等理論」によって見つけた作品を、重要なコンテンツに取り入れるようになった。
 かつて苦行とも形容されたクッキー☆の本編視聴体験の伝統をくむ、本編それ自体をコンテンツとして重視するという珍しい界隈であるが、独自の文化を形成しており、他のクッキー☆内の界隈とのつながりは薄い。


 クッキー☆本スレ界隈は、2010年以来の「クッキー☆総合スレ」を基盤とする人々から成る。スレの初期はHZNのセクハラ事件の前後の時期であったため、様々な情報調査や監視を行うことがスレの慣行となっていった。
 事実的情報や人物の反応に関心のあるスレと、動画表現に関心のあるニコニコ動画では、しばしばクッキー☆観が一致しないことがあった。クッキー☆本スレは、スキャンダルネタとしてのクッキー☆ジャンルの性質をよく保存しているといえる。そのため、クッキー☆の他の界隈から、本スレは悪質で加害的な側面をもつものであると非難されることがあった。
 このような、過激さを排して友好的な活動をするべきであると主張する「良識派」と呼ばれるクッキー☆厨と、そうでないクッキー☆厨との間には長い論争の歴史がある。しかし、この問題は淫夢においても議論されてきたが、簡単には解決できないことがわかっている。

おわりに

 2011年頃、クッキー☆は、苦行的な視聴体験を伴いながら本編にコメントを書き込んで遊ぶものであった。そして、参加者の生放送や関連人物の炎上事件を追って楽しむものであった。そして、様々なネタをMAD動画やイラストに表現して面白がるものであった。
 それは現在、実況、本スレ、動画および静画というように典型的な界隈に分化している。そのため、現在のクッキー☆厨で、2011年頃のクッキー☆厨と全く同じ概念として「クッキー☆」を捉えているという者はほとんどいない。このことは、約10年という時間の経過によって、クッキー☆というジャンルが大きく変化したことを表している。


(この文章は、クッキー☆10周年特別企画の企画時に用いた草稿を増補したものです)


クッキー☆10周年特別企画

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助かる。
4ヶ月前
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なんか全部読んだ
4ヶ月前
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勉強になりました
4ヶ月前
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クッキーの歴史の勉強とかウッソだろお前!と思ったけど
自分も同じ様な目的で見に来たから何も言えねぇ
2ヶ月前
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これが歴史なんすね
2ヶ月前
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文面が知的で読みやすかった+1145141919810
1ヶ月前
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