【卓m@s】緋色の魔法少女番外編:太陽ノ少女06【SS】
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【卓m@s】緋色の魔法少女番外編:太陽ノ少女06【SS】

2015-08-11 16:57

    「いやー今回はさすがに疲れたわねぇ・・・」

    あの夜が明けて次の昼食時。
    私達は久しぶりに訪れた穏やかな時間を堪能していた。

    「疲れたはいいけど、少しくらい相談してくれると僕は嬉しいんだけどなぁ」

    ぼやいたのはリョウだ。
    裏で『街道の紅い焔』を懐柔していた事を知っていたのはそれを頼んだリツコとその際リツコに付いていたチハヤさんだけだったらしい。
    その割にあの時驚いた様子がなかった事を尋ねると『まぁ何かしら手は打ってるだろうとは思ってたからね』との事。
    流石は弟といったところだろうか。

    「敵を騙すにはって言うでしょ?」
    「今回は味方を騙す必要があったとは思えないけどね」
    「あら、言うようになったじゃない」
    「姉さんに鍛えられてるからね」

    軽口を交し合う姉弟。
    何だかんだ言ってこの二人はやっぱり息が合っている。

    「・・・ま、無事に終わったから別に私はいいわ。それよりも・・・」
    「そうね。問題は依頼料がもらえなかった事」
    「あはは・・・」

    今回の依頼、当然だが報酬額は相当なものであった。
    しかし依頼は失敗という事で報酬はなし。特別お金に困っているわけではないが・・・

    「あーん!終わったら色々と買いたいものがあったのにぃ!!」

    とまぁこんな感じでユメコが騒いでいる。
    ちなみに私は別に日々生活出来れば良いと考えているため特別不満はない。
    尤も私が言い出した手前多少ばつの悪さはあるけれど。

    「そういえばチハヤは?今朝見かけたきりだけど・・・」

    いい加減文句を言うのにも飽きたのか、ユメコが周りを見渡しながら尋ねた。

    「ああ、チハヤなら―――」



    ――――――

    「ああああああああぁぁっ!!」
    「―――ふっ!」

    激しい剣戟が響く。
    常人の目では捉える事さえ適わない動きで二つの影が交差する。

    「くっ!!!」

    その片方、小さい影がその身を更に低くして小さく唸る。
    そしてその姿勢のまま弾丸の如く地を駆ける。

    「良い動きです」

    しかしもう一つの影はそれを難なくいなす。
    そしてそのまま―――

    「あうっ・・・!」

    勝負が決する。
    結果は十本やって九対一だった。

    「んあー!悔しいー!!」

    小さい方の影・・・マミが倒れたまま叫んで草の上をゴロゴロと転がった。
    そちらに向かってチハヤが足を進める。

    「ですが昨日までとは大分違いますね。正直驚きました」
    「む、何それ!もしかして一回も負けないつもりだったの?」
    「ええ」
    「うあー!その余裕!」

    あっさりと答えるチハヤに更に足をばたつかせるマミ。
    まるで今までの殺伐とした間柄などなかったかのような穏やかな空気だ。

    「マミもチハヤお姉ちゃんも元気だねー」

    それを眺めていたアミがぽつりと呟いた。
    彼女の得物は弓であるためアミは横から見学していたのだ。

    「それより・・・いい加減戻らなくていいのですか?」
    「むー」

    チハヤの言葉にマミは頬を膨らませた。
    チハヤとしては苦笑いを浮かべるしかない。
    それもそのはず。今二人がこんな事をしていていいはずがないのだ。
    アデルを討ち二人(名目上はマミ)は『街道の紅い焔』のトップに立った。本来であれば現在混乱中の組織を離れられるはずはないのだが・・・

    「だってカインが別にいいって言うんだもん!」
    「そうそう!『雑務は私達が全て引き受けますからお二方は少しお休みください。というか邪魔だからどっか行っててください』とか言うんだよ!?」
    「自分でマミ達の事推したくせにー!!」
    「そうだそうだー!」

    賑やかに騒ぐ双子をチハヤは微笑んで見守っていた。
    本当に初めて会った時からは想像出来ない表情。しかしこれが本来の二人の姿なのだろう。

    「もー!何だかいらいらしてきたからもっかい!」
    「まだやるのですか・・・?」
    「だって負けたままじゃ悔しいもん!」

    そう言ってマミが飛び起きる。

    「んー・・・そろそろ食事にしたいのですが・・・」
    「えー!」

    マミが抗議した途端、マミのお腹が可愛らしい音を立てた。

    「あ・・・」
    「ほら、貴方もお腹が空いて来てるではないですか」
    「うー・・・」

    少し頬を赤らめて唸り声を上げる。

    「それでは今日はここまでとしましょう」

    そう言ってチハヤは踵を返した。
    優雅に去っていく彼女。しかし―――

       ―――ギュ

    「・・・マミ・・・?」

    その彼女の服をマミが掴んで止めた。
    俯いているため表情はわからない。

    「あ、あの・・・!」

    緊張したような声色。
    心なしか服を掴む手も震えているように見える。

    「また、またマミと、その・・・」

    チハヤは少しの間きょとんとしていたが、やがて優しい笑顔を浮かべるとマミの髪をゆっくりと撫でた。

    「・・・いつでも声を掛けて下さい」
    「あ・・・」

    上げた表情が見る間に笑顔に変わって―――

    「―――うん!!」



    ――――――

    「ふーん。チハヤさん、随分懐かれてるんだね」
    「そうみたいねぇ」
    「―――あら、私の話題ですか?」

    と、そこに丁度チハヤさんが帰ってくる。

    「お疲れ様。どうだった?」
    「元気だった・・・と思いますよ。やはり根は良い子なのでしょう」

    チハヤさんは答えながら昼食を頼んだ。

    「しばらくはあの子達に付き合う事になりそうです。
    しかし本当に強い。私にとっても良い修練になりますね」

    確かにあの二人が強いのは全員身に染みてわかっている。

    「ふーん。今度私も混ぜてもらおうかしら」
    「僕も一緒に行こうかな」

    触発されたのかユメコが名乗りを上げた。
    次いでリョウもそれに乗る。相変わらずいつも一緒の二人だ。

    「ええ、ぜひお願いします。二人もきっと喜ぶでしょう」

    優しく微笑んだチハヤさんは、何というかとても綺麗だなと思った。


    こうして私達の初めての大きな依頼は失敗として終わった。
    しかしその後も盗賊ギルドとの関係は切れる事無く続き、一先ずは一件落着?という形の結末を得られたのであった。


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