【卓m@s】緋色の魔法少女番外編:いつかどこかの話07【SS】
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【卓m@s】緋色の魔法少女番外編:いつかどこかの話07【SS】

2015-09-12 10:34

    平穏はある日突然に壊される。
    それは乱れた世の常か、それとも身に宿した運命故か―――

    「ハルカ!!」

    主の声が響く。
    私が瞬間的に身をかがめるとその傍を魔法の銃弾が掠めていった。

    屋敷中・・・いや、村の至る所で悲鳴と怒号が響いている。

    「お願い!貴女はアイを・・・!」

    声を受けて私はアイの部屋へ走る。
    そこまで広い屋敷ではない。私はすぐにアイの部屋へとたどり着く。

    「―――!」

    部屋の中に黒い影を認める。
    即座に私は腰の剣を抜いてその影を切り捨てた。

    「アイ!」

    幸いと言うべきか、アイは傷つけられてはいない。私はすぐにアイを抱えて部屋を飛び出した。

    “万が一の時は、貴方達はこの部屋を―――”

    私が屋敷にお世話になり始めたその日。主は私をすぐにその場所へと連れていった。

    “ここがこの屋敷では一番安全なはず。防音加工もしてあるからアイが泣いてしまっても外に音は漏れないわ”

    何故初日からそんな事を、などと思う事はなかった。
    アイの事を考えればそれは十分に有り得ることだと思ったから。。

    “でもここには何人もは入れない。そういうスペースにするわけにはいかない。だから―――”

    剣戟と銃声が鳴り響く廊下を駆け抜ける。
    飛来した銃弾が私を、そしてアイの頬を掠めた。

    “貴方達がここを使いなさい。そして生きるの”
    “何故そこまでして下さるのですか・・・?”

    痛みにアイが顔を歪め、そして泣き出してしまった。
    私は何とかアイをあやしながら片手で敵を払い、前へ進み続ける。

    “・・・恩返し、かしら。貴女のマスター、アイのお母さんがいなければ私・・・いいえ、この村はもう存在していなかったでしょう”

    何とか敵を潜り抜けて私はその場所へ辿り着く。幸いそこにはまだ敵の手が及んでいなかった。
    私はすぐに教えられていた場所へと身を隠す。

    “だからあの人の、あの人の子達の為に出来る事なら私達は何でもする。例えこの命が尽きる事になっても”

    戦の音がここまで響いている。
    特殊な加工らしく、中の音は漏れなくとも外の音から状況を判断する事は出来るらしい。
    腕の中ではアイが泣き叫んでいる。外では屋敷の者たちの悲鳴が響いている。

    「――――――っ!!」

    私はアイを強く抱きしめ、必死にそれらに耐え続けた。
    姉さん達の悲鳴に胸が締め付けられる。しかし私が出ていくわけにはいかない。

    『貴女はアイと生きて―――』

    マスターの言葉。それはマスターからの最後の命令であり、願い。
    ここの人たちは皆その為に命を投げ出そうとしている。私が出ても結局は多勢に無勢。精々一矢報いる相手が少し増えるだけに過ぎない。
    ・・・そして、私がいなくなればアイは死ぬ。

    「――――――」

    身体を駆け抜ける衝動を、突き抜ける感情を必死に押さえ付ける。
    腕の中に感じる確かな暖かさ。
    私はこの温もりを失うわけにはいかないと、必死に自分に言い聞かせ続ける。
    そして―――


    ――――――

    ・・・どれくらいの時が経っただろうか?
    あれほどうるさかった音の全ては消え、今この場所は静寂に満ちている。
    果たして外はどうなっているのか?
    ただ一つ分かるのはもう外に私の知っている人たちは一人もいないであろう事だけ。

    「・・・・・・」

    腕の中でアイが穏やかな寝息を立てている。
    アイの鼓動が伝わる。

    「・・・・・・っ・・・」

    不意に頬を雫が伝った。
    それを皮切りに私の口から嗚咽が漏れる。

    「っ、ぅ・・・ぅう・・・ううううぅぅぅ―――!!」

    ずっと堪えていた声が溢れ出す。
    気付けば私は大声で泣き始めていた。

    「あああっ、うっ・・・うぁああああああ!!!」

    一度崩れてしまうともう駄目だった。
    寂しさ、悲しみ、絶望・・・
    様々な負の感情が私の中を駆け巡っている。
    もうこのまま死んでしまったほうが楽になれるのでは。そう考えた時・・・

    「―――?」

    頬に触れる温度。
    見るといつの間にか目を覚ましていたアイが私の頬を撫でていた。
    状況がわかるわけではなかろう。私の心がわかるわけでもなかろう。
    それでもアイはまるで私の心に寄り添うかのように、その小さな手で私を撫でていた。

    「アイ・・・」

    小さな手を優しく握るとアイが私に笑いかけた。
    再度目から熱いものが溢れる。しかし今度溢れたそれは先程までとは違う物。

    (私は―――)

    アイを強く抱きしめる。
    本当なら苦しいだろうに、アイは泣く事もなく私に抱かれていた。

    しばらくそうした後、私はゆっくりと外へ出た。
    辺りを伺うが人の気配は感じない。それはこの村が完全に滅ぼされた事を意味する。
    折れそうになる心を支え、細心の注意を払いながら外へ出る。

    「・・・・・・」

    村は完全に廃墟と化していた。ほんの少し前までここに人が暮らしていたと言って誰が信じるだろうか。
    慎重に村の外を目指していると向かう方向より音が聞こえてきた。
    咄嗟に私は建物の影に身を隠す。

    やがて蹄の音聞こえ、それがすぐ近くで止まる。
    私は心臓が跳ねそうになるのを必死に抑え込んだ。

    「――――――、―――」
    「―――。――」

    何か話しているようだが内容まではわからない。しかし聞こえるほどまで近づくわけにもいかない為、私はこのまま・・・

    「―――ぁぅ」

    そこでアイが小さく声を上げた。
    しまった、と思う時にはもう遅く―――

    「ぁ、ああああぁぁぁ!んやぁぁぁぁぁ!!!」

    アイが大声で泣き出してしまう。
    私は即座に覚悟を決めて剣を抜いた。

    (私はこの子と生きる―――!)

    躊躇っている場合ではない機先を制する為に素早く飛び出して剣を振るう。
    しかし・・・

    「・・・っ!!」

    私の剣はあっさりと弾かれ、首元に相手の刃が突き付けられる。
    その刃がゆっくりと沈み―――

    「・・・待って!」

    誰か、女性の声がその動きを止めた。
    顔をそちらに向ける。視線が絡む。
    黑いローブをまとい、腰に細身の剣を携えたその女性は―――


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