日本郵政、金融2社の保有株削減 25年度までに50%以下へ
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日本郵政、金融2社の保有株削減 25年度までに50%以下へ

2020-11-30 08:09

    日本郵政がグループの株式上場から5年という節目を迎え、保有するゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の株式の保有割合を2025年度までに50%以下に減らす方針を打ち出した。新規事業に国の認可が必要な現在の資本関係は経営の足かせになっており、金融2社の株式売却はグループの悲願だ。だが、売却を進めるには相次ぐ不祥事で失墜した信頼の回復やグループの再成長が不可欠であり、実現に向けた道のりは険しい。


     経営の足かせ

     「中期計画の期間中は当然だが、できるだけ早く50%以下に引き下げたい」。日本郵政の増田寛也社長は13日に開催した次期中期経営計画の骨子の発表会見の席上、グループの資本政策についてこう打ち出し、関係者を驚かせた。

     もともと、郵政民営化法では日本郵政が保有する金融2社の株は17年9月までに全て売却するように定められていた。それが民主党政権時代の法改正で「できるだけ早期に処分」と変わり、文言とは裏腹に明確な売却期限がなくなったまま、ずるずると現在に至っている。増田氏が示した方針は、グループの大きな転換点になる。

     日本郵政は現在、ゆうちょの89%、かんぽの64%の株式を保有。日本郵政には国が57%と過半を出資しており、国が間接出資する形の金融2社には民業を圧迫しないよう新商品・サービスの発売に国の認可が必要な「上乗せ規制」が課され、認可を得るにも時間がかかっている。

     だが、日本郵政が保有する金融2社の株式の割合が50%以下になれば、新規業務が届け出だけで済み、金融2社の新規事業に対する負担が大幅に軽減して経営の自由度が高まる。上乗せ規制は商品競争力の足かせになっており、過度なノルマと相まってかんぽ生命の不正販売につながったとの指摘も少なくない。

     増田氏に今年1月の社長就任直前に話を聞いた際「(19年4月から実施した)貯金限度額の引き上げより、上乗せ規制撤廃を優先すべきだった」と強い問題意識を語っていた。

     だが、就任後はかんぽ生命の不正販売問題の対応に追われ続け、それどころではなかった。問題の調査や顧客への補償、関係者の処分などに道筋がつき、10月に保険営業再開にこぎ着け、ようやく本来の経営課題への取り組みを打ち出すことができた形だ。増田氏は「いつまでももたもたしていられない」と語る。

     とはいえ、金融2社の株式売却を実現するのは容易ではない。2社の株価は低迷し、ゆうちょ銀株に至っては株価が簿価の半額以下になったことを受け、日本郵政は20年9月中間期の単体決算で下がった分を損失として計上する減損処理で約3兆円もの特別損失を計上したほどだ。株の売却には不祥事で失墜した信頼の回復や低迷する株価の反転などが前提となり、増田氏も「将来に向けた方向感を示すことができれば、市場からの評価が変わってくる」と指摘する。

     だが、郵政グループの収益環境は厳しい。かんぽ生命は少子高齢化で契約者が減少傾向だったところに不正販売で新規契約が激減。ゆうちょ銀も超低金利政策による運用難で苦境からの脱却が見えない。今後もグループの稼ぎ頭である金融2社に逆風が続くのは明らかだ。日本郵便も郵便物は右肩下がりで、好調な宅配便の「ゆうパック」だけでは補いきれない。

     郵便、銀行、保険という主力3事業の収益力が細るからこそ、新たな収益の柱を創出する必要があるが、うまくいっていない。成長戦略の目玉として15年に約6200億円を投じて買収した豪州の国際物流大手トール・ホールディングスは業績不振で買収の2年後に4000億円超の減損を迫られた。今もなお、経営難が続いており、一部事業の売却を余儀なくされる。

     不動産事業で収益も

     こうした中、21年度にスタートする5カ年の次期中期計画では、グループの再成長に向けて戦略の仕切り直しを急ぐ。柱に据えるのは、デジタル技術でビジネスを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。増田氏は「DXを強みであるリアルネットワークの郵便局網と融合して新たな価値を創造する」と強調する。

     例えば、日本郵便では人工知能(AI)を活用して荷物の最適な配送順序やルートを作成し、郵便局員の勘や経験に頼ってきた配送業務を2~3割効率化する。さらに郵便・物流に関するデータを蓄積し、最適な職員配置や物販などに生かす。増田氏は「今後も成長を牽引(けんいん)するのは主力3事業」とした上で「デジタル技術で各事業を横串でつなぎ、新たなサービスを提供できないかを検討する」とした。

     一方で、新たな収益源の開拓に向けては不動産事業を有望視する。老朽化した郵便局が建つ都心や駅前の一等地などの保有不動産は、再開発して高層ビルを建てれば、賃料収入で大きな収益を生む可能性がある。増田氏は「グループ外の不動産にも投資を拡大し、不動産開発を将来のコアビジネスになるよう育てていく必要がある」と力を込める。

     もっとも、新たな成長戦略に向かうのも、かんぽ生命の不祥事で失った信頼を取り戻すことが大前提だ。それなのに、かんぽ問題が一段落した矢先の9月にゆうちょ銀の電子決済サービスを通じて不正に貯金が引き出される問題が発覚、公表の遅れなど対応が後手に回ったことも判明した。

     問題に歯止めがかからないのは、不正の再発防止に向けたグループのガバナンス(企業統治)改革が途上であることの裏返しでもある。グループの再成長には中期計画と並行してガバナンス改革も完遂させなければならない難しいかじ取りを迫られており、増田氏ら経営陣の手腕が厳しく問われる局面が今後も続く見通しだ。
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