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管理監視社会 ワクチン接種 マイナンバー活用の成否は
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管理監視社会 ワクチン接種 マイナンバー活用の成否は

2021-02-09 04:04

    個人情報法制ばらばら「2000個問題」 接種に壁、マイナンバー活用の成否は

    菅義偉(すが・よしひで)首相が進める行政のデジタル化が、大きな試練に直面している。新型コロナウイルス対策で政府は、ワクチン接種の状況や履歴の一元化管理にマイナンバーの活用を検討している。自治体が管理する既存のシステムでは、情報の登録にかかる時間や共有の仕組みで支障がでるためだ。ただ、その運用には個人情報の保護も大きな課題となる。国や自治体、民間でばらばらの個人情報保護の法制は、その数の多さから「2000個問題」とも呼ばれる。マイナンバー活用の成否は、同問題の解消にもつながると期待されている。

    「マイナンバーの活用で間違いなく実現できる」
     平井卓也デジタル改革担当相は1月27日の参院予算委員会で、新型コロナのワクチンをめぐり、個人の接種記録をマイナンバーとひも付けて管理するシステムの導入に意欲を示した。

     政府は当初、通常の予防接種で市区町村が作成する「予防接種台帳」を使い、国民の接種状況を確認する方針だった。台帳には住民個々の住所や氏名、接種時期や回数などを登録する。だが、厚生労働省によると、ほとんどの自治体がデータベースの入力を手作業で実施しているほか、データ更新も月に1回程度だ。

     新型コロナのワクチンは、3週間程度あけて2回打つ必要がある。また、2回目の接種前に引っ越しなどで住所が変われば、接種券の再発行といった混乱も生じかねない。

    加藤勝信官房長官は27日の記者会見で、市区町村の予防接種台帳では実際の接種から情報登録まで2~3カ月のタイムラグがあると指摘し「(国が)リアルタイムに近い形で接種状況を的確に把握できる新たなシステムを整備する」と強調。平井氏と足並みをそろえ、マイナンバーの活用に意欲を示した。

     新システムは国が開発し、市区町村や医療機関などがデータを入力する仕組みが想定される。入力情報は、接種した場所や年月日、接種回数、ファイザー社製かなど、使用ワクチンの種類や製造ロット番号などが項目にあがる。ワクチンは製造工程や輸送、接種の状況で品質に差が出ることもあるといわれる。リアルタイムの情報管理で、副反応などが起きた場合、即座にその原因を究明して拡大を防ぐことができる。

     こうした予防接種をめぐる情報の取り扱いは、個人情報保護とも密接に関わる。今通常国会へ提出が予定されている、デジタル庁設置を含むデジタル改革関連法案には、個人情報関係3法を統合して、地方公共団体の制度についても全国の共通ルール化といった措置が盛り込まれている。

    日本の個人情報保護関連の法令は、情報を取り扱う主体ごとに異なり、極めて多数あるからだ。国の法律としては、

    (1)民間事業者に適用される個人情報保護法
    (2)国の機関に適用される行政機関個人情報保護法
    (3)独立行政法人に適用される独立行政法人等個人情報保護法-の3つがある。

     そして地方自治体については、都道府県や市町村の1700超の自治体がそれぞれ、個人情報保護条例を定めており、これに加えて、複数の自治体で構成する広域連合などが制定している規則もある。これら個人情報保護に関する規制の数を合計した数字が、「2000個問題」と呼ばれるゆえんだ。

     個人情報の定義が法律や条例ごとに微妙に異なり、個人情報保護の権限、ルールがばらばらで、管轄を超える際のデータの取り扱いが不明確であることも大きな問題だ。

    例えば、A県B町の町立病院で受診しているB町民の患者が、さらに高度な治療が必要となり、隣接するC市の県立病院に転院する場合。B町の病院にあるカルテのデータは、B町の個人情報保護の対象となる。県立病院のカルテ管理の方式も異なるほか、B町は渡す権限もないため、患者情報を渡すことができない。結果的に県立病院では患者の罹患(りかん)履歴などを再度登録するといった作業を余儀なくされる。

     自治体が管理する個人情報は事実上、その自治体だけでしか利用できないというのが実態だ。この縦割りが、医療だけではなく、大規模災害時の国や自治体、民間企業の支援連携がうまくいかない要因ともされ、専門家や経済界が長年にわたり、改善の必要性を訴えてきた。

     新型コロナの感染者情報を共有するシステムとしては、厚労省が構築した「HER-SYS(ハーシス)」もあるが、本格稼働が遅れている。同システムは、医療機関や保健所が入力した検査結果や感染者の氏名、居住地などの情報を国、自治体が共有する仕組みだ。だが、多くの自治体では、外部の情報システムとのオンラインでのやり取りに制限があり、解除するには、審議会などの手続きが必要で、これが国への情報提供の遅れにつながっていると指摘される。

    新型コロナは、昨年の全国民への特別定額給付金の支給作業などで、日本のデジタル化の遅れを浮き彫りにしてきた。マイナンバーを使ったワクチン接種が、個人情報を保護しながら、安心と安全を国民に効率的に提供できるか。菅政権のデジタル化は、ワクチン接種での2000個問題解消が最初の試金石となる。

     個人情報保護法の改正案のポイントは大きく3点。

     まず第1が、現在3つある国の個人情報保護に関する法律を、行政機関個人情報保護法に一本化する。次に地方自治体の守るルールもこの行政機関個人情報保護法にそろえることで、国、各自治体が守るべき個人情報保護が共通化できる。3点目が個人情報保護委員会が監督・監視する体制とすることだ。

    ただ、各自治体では「生活保護受給の有無」「性的少数者」など機微に触れる個人情報を取り扱うなど、国よりも取り組みを先行してきた歴史があり、国が一本化する際に、情報の範囲をどう設定するかが問われている。


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