まだ舞える・・・!!
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まだ舞える・・・!!

2017-10-15 22:54

    7.Recognize Inner sight

    いろいろ考えてはみたものの、なにもいい案は思い浮かばなかった。
    ええい、とにかく行動だ!
    ボクはなるべくキレイな格好をして隙だらけアピールをしながら街を歩いた。
    いわゆる囮作戦だ。
    とにかくスリの子に接触しなければ始まらないと思ってこうしたけど・・・
    まぁ捕まえられない。
    まずいつ取られたかわかんない。うますぎ。
    取られたのに気付いても逃げられて追いつけない。はやすぎ。
    中身はないから実害はないのだけれど、さすがに傷つくよね・・・

    ・・・あれか。取られるの前提でいくか。

    ボクは囮用のがま口の中に「これをスった方にお願いがあります。今日の18:00にもう一度この広場に来ますのでお話をさせてください。もちろんお礼も」というメモと地図を入れ広場に身を投げ出した。
    釣りのエサってこういう気持ちなんだな・・・


    「・・・」

    「来てくれないかと思ったよ。ありがとう。本当にいつスられたかわからなかった。すごい腕前だ。」

    「・・・話って?あとなにくれるの?」

    「お礼はあとでいいかな?ボクは職人なんだ。なにかキミが欲しいものを作るよ。もちろん、ボクが作れる範囲で、だけど。」

    「ふーん。まぁいいや。どんなものが作れるかわかんねぇけど、工房か何かあるんだろ?そこ見せてよ。」

    「わかった、じゃあボクのお店で話をしようか。ついてきて。晩御飯くらい出すよ。ボクはバーニー。雑貨職人のバーニーだ。」

    「・・・アダム」

    「わかった。アダム。短い付き合いかもしれないけど、キミを売るつもりはないから安心して。ボクには知りたいことがある。その協力をしてほしいだけなんだ。」



    「これ全部お前が?・・・やるじゃん!これなんだ?何に使うんだ?」

    「それは万華鏡さ。中をのぞいてみなよ。」

    「!?すげえ!なんだこれ!!!お、回したら模様も変わるのか!」

    「そういったおもちゃから家具までいろいろ作ってるんだよ。」

    「・・・ちょっと見直した。わかった。話す。あ、イチから作ってもらってもいいんだよな?」

    「ボクに作れるものなら、ね。」

    「よし、ちょっと考える。それじゃあ先に話を聞こう。何が知りたいんだ?」

    「その前に食事にしない?ボクも誰かと食事をするのって久しぶりでちょっと楽しみだったりするんだ。」

    「もちろん!なんだ!?シチューか!お、結構うまいじゃん!!!」

    「そう言ってくれるとホッとするよ。。。料理あんまり得意じゃないんだよね。最近始めたばっかりでさ。」

    「そうなのか?でもこんだけ温かくて具が入ってるシチューなんて食べたことないぞ」

    「・・・今日はお客様用に奮発したんだよ」

    ボクからすれば、ごくありきたりで、特にうまくできたわけでもない料理でも、彼らにはご馳走になる。これも壁なんだな・・・

    おいしそうに食べてくれることに安心と嬉しさと。
    でもそこに見えない壁の輪郭を確かに感じながらボクはシチュー残りをかきこんだ。


    8.There's a way to find

    「つまりその家を追い出されたシャーロットっていうやつを探してるんだな。しかも名前は偽名かもしれない。ついでに知り合いでもない。・・・それどうやって探すんだ?」

    「・・・改めて考えるとすっごい無謀な気がしてきたよ。いや、ホントに手がかりがなにもなくてさ・・・でも、今この町で誰も助けてくれない中で追い出されたらスリになるくらいしか生きる道ないんじゃないかなぁって思って。思い切ってスリの子に聞いてみようと思ったんだよ。」

    「うん、まぁそうだな・・・でも俺たちもチーム組んでやってるわけじゃないからなぁ。ほら、チームになると分け前どうするとかでめんどくさいんだよ。」

    「なるほど、確かにそうかもね。でもこう、たとえば新入りが入った話とかってないの?」

    「うーん、俺も友達みたいなヤツはいるけどさ。正直に言って他人に構ってる余裕はないんだよな・・・みんな自分が今日生き延びるために必死さ。」

    「そう・・・だよね。」

    「あっ、別にお前が気に病む必要はねーぞ?俺たちにとっちゃそれが当たり前だから、別にイヤミでもないし、お前らを恨んだりもしてない。・・・あれだろ?お前はあえて隠してるけど、あんま人に言えない身分だろ?」

    「!?・・・やっぱばれるよね。ごめん、うん。全部は話せないけどそうだよ。まぁいわゆる没落貴族ってやつだよ。いろいろあってさ、ボク一人で追い出されちゃったんだ」

    「なるほどね・・・じゃあ一人なのか・・・」

    「そうなるね。一応住む場所はなんとかなったんだけど、お金がないからこうやってもの作って売って生活してるんだよね。ボクにはこの腕があったからなんとかなってるけど、そういうのがなかったらこの町では生きていけないだろ?だからシャーロットがどうなったかキミたちならもしかしたら何か手がかりを知ってるかも、って思ったんだ。」

    「事情はわかった。話せないことがあるのもわかった。飯も食ったしお前に腕があるのも分かった。・・・今すぐに役に立つような話はねぇ。でもなんかあったら教えるよ。お前は貴族様、あ、元か。まぁそうだけど、嫌いじゃねぇ。でも一つだけいいか?そのシャーロットをみつけて、お前はどうすんだ?」

    「ありがとう、ホントに助かるよ。
    ・・・会わせたい、いや、会わせなきゃならない人がいるんだ。ボクはその子にシャーロットを連れて帰るって約束したんだ。」

    「ふぅん・・・まぁいいや。・・・また遊びに来てもいいか?」

    「もちろん、構わないよ!すごい変な出会い方だったけど、これも縁だよね。」

    「へへっ、やっぱさ、スリやってるとさ、周りがみんな信じられなくなってきてさ。ここは飯も温かいし、面白いものがいっぱいある!
    あ、でも最後に一つだけ。魚肉そぼろはさすがにやめといたほうがいいと思うぜ。」

    「・・・やっぱり?」


    9.When the clockwork moves and starts to shine

    『・・・というわけでそのスリの子に協力してもらうことにしたんだ。アンジェ、なにかヒントないかな?』

    ギャリーさんからこっそり受け取った手紙はこのように締められていた。
    確かにそうだ。どうやって探せばいいのか見当もつかない。
    なにか暗号みたいなものがあれば・・・

    「あっ」

    暗号はないけど合言葉ならあるじゃないか。

    『ううん!楽しい!だってわたしたち、正反対だから!』

    これしかないと思った。


    なるほど、よくわかんないけど、二人の合言葉がこれなのか。
    ・・・すごいなアンジェ。これめちゃくちゃ深くないか?
    そのままでいいから友達になってくれ、か。
    ボクもアダムとはそういう付き合いができるようにしなきゃなぁ。

    正直ボクは今迷っている。
    シャーロットの正体をアダムに伝えるべきか否か。
    顔も名前もわからないのに探せるわけがない。。
    でも、プリンセスが入れ替わっただなんて誰にも言えない秘密だ。
    2人の他にはボクしか気付いてない。
    アダムを信用してないわけではない。むしろ信用できると思ってる。
    あれからアダムは何か情報があるとすぐに知らせに来てくれた。
    スリの対処法なんかも教えてくれた。ボクもいろんな道具の作り方を教えてあげた。
    そうそう、アダムは望遠レンズを欲しがった。
    遠くからどんな人が歩いてきているか、どこに財布を入れているか前もって確認できるから仕事がやりやすくなったと喜んでいた。
    ボクとしては複雑な気持ちだけど、彼を責める気にはなれなかった。
    やっぱり壁をぶち壊すしかない。

    「あのなバーニー、俺思うんだけど、もうシャーロットはスリやってねぇんじゃねぇか?」

    もう何度目かわからない食事の席でアダムが言った。

    「ここ最近ずっといろんなコミュニティのやつに聞いて回ってるけど、そんなヤツの話でてこねぇんだよ。人探し専門のおっちゃんに聞くしかもう手がないと思うぜ。
    たとえば、だけどな?器量よしなんだったら誰かに拾われてるかもしれねぇ。聖人みたいな人に孤児院に連れてかれたのかもしれねぇ。・・・言っちゃ悪いがくたばったのかもしれねぇ。」

    黙って頷き先を促す。

    「そのくらい、俺たちがいる世界はシビアなんだよ。生き残るには何か腕が立つヤツ、運よく拾われるヤツ、そしてスリができるヤツ、だ。なにもなけりゃくたばるしかないんだよ。それはわかってほしい。バーニーは頭が回るし手に職があるから生きてる。俺はスリだ。バーニーと会える運も持ってた。だから生きてる。言えない事情があるのはわかってるんだけどよ、もうちょっとヒントがないとこれ以上手伝えないんだよ。悔しいけどよ。」

    「・・・ありがとう。言いづらいことを言ってくれて。そうなんだよね、うん、ボクも頭ではわかってるんだけど。キミを信用してないわけじゃないのはわかってほしいんだ。むしろ信用してる。頼むならアダムしかいないって思ってる。でも、ボクだけの判断じゃ決められないんだ。本当にごめん。」

    「いや、いいさ。誰にでも言えないことの一つや二つあるだろ。ついた方がいい嘘だってあるんだ。でも困ったな。正直お手上げだぜ。」

    「そういえばアダムはいつからここにいるんだい?」

    「あ?言ってなかったか?もう5年はこの生活だぜ。しかしまぁオトナ見てるとこのままでいいのかねぇ、とは思うよなぁ。特にお前に会ってから知らないことばっかで余計に思うようになったよ。」

    「ん???5年・・・なぁアダム。アンジェって子、知ってるか?」

    「お?あー、いたなぁ、そんなやつ。金髪の女の子だろ?かわいそうに、結構きっつい親だったからなぁ。そういや最近みねぇな。なんだ?知り合いか?」

    「・・・ああ、友達なんだ。というか、ボクの依頼主がほかならぬアンジェなんだよ。」

    「・・・マジ?」

    時計の針がやけに大きく聞こえた。


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