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2017年6月17日放送『金元寿子と川上千尋のテラ娘屋』ラジオドラマ「四色のさかな」脚本
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2017年6月17日放送『金元寿子と川上千尋のテラ娘屋』ラジオドラマ「四色のさかな」脚本

2017-06-19 20:00
    少年(原作では老人)
    王女様(原作では王様)
    壺の魔人(原作では封印されているだけ)
    亡国の女王(原作では亡国の王子)

    河の上流にて
    少年「今日も獲れない……せめて自分で食べる分だけでも欲しい……」
    少年「ふんっ!」
    SE・投網
    少年「木の実や果物ばかりじゃなぁ……はぁ……」
    しばらく河のせせらぎ
    少年「そろそろ良いかな? うんしょっと……あ、あれ? 根掛かり? それとも岩にひっかかっちゃったかな? 破れないで欲しいなぁ……」
    少年「ん! ん! ……おっと!」
    SE・バシャ
    少年「なんだ? 壺?」
    SE・ガサ
    少年「随分と長い間沈んでたのかな?ちょっと汚れが……」
    SE・ゴシゴシ
    SE・ブワッ!と魔人登場
    壺の魔人「んー……っぷはー!(ノビをしながら深呼吸)いやぁ、やっと出られたー! 助かったよ少年! まったく願いを叶えてやったと言うのに壺を川底に沈められてしまって いったい何十年経ったのやら。砂の数を数える気分でカウントをすれど、 11桁とかになると飽きちゃうしね。 やっぱ外は良いね!何が良いって空気が良い!匂いもあるしね。 壺の中じゃ匂いが無いの。 おならしたら臭いかもしれないけれど、一応魔人ってことで 生理現象としてのおならはしないから、それも起きないしね。 なにより一回やったら堪ったもんじゃなくて、もう二度としなかったのさ。 んで、君、誰? ま、名前なんてどうでもいいか♪ なぁ、少年よ」
    少年「……気が済みました?」
    壺の魔人「復活して第一声なのに噛まなかった事を誉めて欲しいかな」
    少年「閉じ込められている間、本当に暇だったんだなってのは伝わりました」
    壺の魔人「それなら良かった♪ さてと、封印を解いてくれた少年の望みを一つ叶えてあげよう。 誰か殺したいとか、美女をさらって来て欲しいとか、 その中途半端な見た目を良くして欲しいとか、 大人になりたいとか、色々な意味で」
    少年「食べるのに困らなくなりたいです」
    壺の魔人「食べるのに困らないように……なるほど、なるほど。 何と言うか、平凡だね。 もっと壮大な夢を見てもいいのだよ? 例えば……世界一の美女を抱きたいとか。 そしたら、連れて来て、言いなりになるようにしてあげるから」
    少年「いやですよ、そんなの。 食べるに困らずに日々を楽しめればそれで充分です」
    壺の魔人「つつましいねぇ…… 人間なんて、結局、野心に溢れ、欲にまみれ、 どんな生き物よりも恐ろしい存在だよ。 なのに、なんて珍しいんだ☆」
    少年「そうなんですか? でも、今の僕にはそれくらいしか思いつきませんから」
    壺の魔人「だったら……あー!あー♪丁度良いのがあった♪お金が稼げれば良いよね。 食べるのに困らない程度、に☆」
    少年「あ、はい」
    壺の魔人「んじゃ、ちょっと移動するから、付いて来て」


    場所は湖
    少年「はぁ……はぁ……ちょっとって、距離じゃ、ないです……」
    壺の魔人「さてさて、この湖ですが……さっきの出来の悪い網を出して♪」
    少年「出来が悪くてすいませんね。 そんな網にあなたが封印されていた壺が引っ掛かったんですけど」
    壺の魔人「このわたくしを救って下さった聖なる網を投げ込んで頂けますか?」
    少年「じゃあ、投げてみますね」
    SE・バシャ
    壺の魔人「この湖にはたっくさんいるので、これで大漁ですよ」
    SE・ザバ
    少年「な、なにこの魚!赤に白に青、黄色……4色のさかな……初めて見た」
    壺の魔人「まず見ることのない珍しい魚だから、高値で売れますよ♪ ただ、観賞用だと思って下さい。多分食えたもんじゃなので」
    少年「わ、わかりました!ありがとうございます」
    壺の魔人「これは助けてもらったお礼ですから気になさらずに♪ んじゃ、私は消えますね。次の楽しい事を求めて♪さらば☆」
    SE シュワン!
    少年「な、なんだったんだろう……何にせよ、早速売ってこよう!」


    場所は街にて
    少年「さぁさぁ、見てくれこの珍しい魚!観賞用にどうだい?」
    王女様「へぇ……これは見た事も無いわね。そしてとても綺麗」
    少年「1匹銀貨1枚ですが、如何ですか?」
    王女様「なら、全部頂こうかしら。金貨3枚で良いですか?」
    少年「3枚ですか!貰い過ぎです!」
    王女様「私はそれくらい価値があると思ったので、多いならば問題ないですわね? では、頂いて行きますね」
    少年「は、はい、どうぞ!」


    場所を城に移して
    王女様「綺麗には違いないけど……買い過ぎた、かしら…… 間引きが必要ならば、せっかくだから、食してみましょうか♪」
    王女様「じゃあ、まずは串刺しして……窯に網をかけてっと……」
    王女様「見た目は綺麗だけど、味はどうなんでしょう?不味かったりするんでしょうか」
    王女様「そろそろかしら……え? な、なに!? 薄い尻尾の方から焦げて行く!」
    SE・バッと魚を窯から離す
    王女様「なんなんでしょう? まるで紙に火がついたように……そのまま燃えて行く…… 不思議な魚ね……もう一匹試してみようかしら。 その前に切り裂いて調べた方が良いかもしれないわね」
    王女様「まずは、頭を切り落として…… なんか、こっちを睨んでるみたい? 魚の目ってちょっと苦手ですけど、この魚は特に嫌ですわね。 うわっ!思ったより血が多く出ますわね。 内臓を掻き出して……輪切りにしてましょうか。 ん? 骨の感じは河の魚と言うより、海の魚かしら? しっかりしてるわ。 このまま鉄板で焼いたらどうなるのかしら?」
    SE・フライパンを出す音
    SE・しばし間をおいて乗せる
    王女様「切り身状態だから、火の通り方も判るはず…… あ!ちょっと!待って待って!! なにこれ。本当に紙みたいな燃え方しちゃう…… 焼くのは無理なのかしら? 煮込む?それとも揚げる? 骨が硬そうなので、まずは煮込んでみましょうかね…… どんな魚なのよ、これ……」


    数日後、街にて
    王女様「まさか、煮込んだらほぐれて溶けだすってどう言う事なのかしら。 直前はブヨブヨになっちゃうし……あ、いたいたこの前の少年♪」
    少年「あ、この前はありがとうございました。 普段は食べる事の出来ない贅沢をさせて頂きました」
    王女様「それは良かったわ。それよりあなた、あの魚、食べてみました?」
    少年「あ、はい。なかなか焼くのも難儀しましたけど、 のんびり焙りながら焼いてなんとか」
    王女様「そうなのよね。 焼くのも難しくて、実は煮込むとぐずぐずに溶けてしまうのよ」
    少年「そうなのですね!へんてこな魚ですね」
    王女様「それで、どう言う魚なのかをもっと調べたくて、 もし獲れる場所を知っていたら教えて頂けないかしら? もちろん商売の邪魔になるような真似はしないわ」
    少年「いいですよ。場所はですね……」


    大分離れた場所にある湖
    王女様「ここね。思ったよりも遠かった……少年が運べる程度って思って舐めてたわ……」
    王女様「へぇ……確かに、あの魚がたくさん泳いでるわ……ん?あの建物はなにかしら?」
    SE・石戸が開く
    王女様「立派な作りですけど……隠れ家か何かかしら?」
    亡国女王「……誰?」
    王女様「誰か居るの?!」
    亡国女王「……魔女……じゃない?」
    王女様「はい。恐らくですけど、隣国になります国の王女、になります」
    亡国女王「それは……本来ならば姿勢を正して挨拶すべきなのでしょうが…… それが叶わないので、失礼ながらこのままで対面させて頂きます」
    王女様「いえ、事情があるでしょうし、 勝手に忍びこんでしまったわたくしの方が礼を欠いていますので」
    亡国女王「わたくしは、小さいながらこの地にありました国を治めていた者です」
    王女様「なんですって!」
    亡国女王「見て頂くにはお目汚し失礼してしまいますが、私の裾を上げて頂けますか?」
    王女様「は、はい。では、失礼しまして……」
    王女様「これは……石? 石化されているのですか!? 蝋でもなく……」
    亡国女王「実は、随分と古い話になりますが、漆黒の姿をした魔女が現れました。 恐らくは隣国に限らずほとんどの人が忘却してしまうほど昔。 そこにある湖ですが、その頃はここに街がありました。 広さは無かった物の昔は街道の分岐になる場所でもあり、豊かで賑やかな街でした。 ここから眺める街の様子は、それは本当に素晴らしく、自慢の国でした」
    亡国女王「突然現れた魔女は、まずこの城に乗りこんで来て、私を今の姿に変えました。 身体の半分を石に変え、そして不老不死に。 傷つけてもそのうち完治し、死ぬ事も出来ない。 時々現れては痛みつけ、切りつけ、 いくら泣き叫ぼうが私の身体を壊して笑っている…… そして、ここから見える街を沈め湖にし、国民達を魚に変えてしまったのです…… その瞬間、国は消えたのです……」
    王女様「……国民を……魚に……変えた?……」
    王女様「じゃあ、私が食べた魚は……元・人間? 睨みつけて見えたのは、思いすごしじゃなくて? 串刺しにし、解体し、煮込んで……うぷっ!」
    亡国女王「あなたが悪いわけではないのです」
    王女様「ぐっ……おえっ……はっ……ん……はぁはぁ……」
    亡国女王「あの魔女が起きてきたら、また私を残虐に傷みつけて遊ぶでしょう。 その時に居合わせたら、あなたも危ないわ。 悪いこと言わないから、今すぐ出て行きなさい」
    王女様「いえ、必ず、何としてでもその魔女を倒します。待ってて下さいね」
    亡国女王「ありがとう……無理しないでね……」


    場所を街に戻し
    王女様「……ちょっと良いかしら?」
    少年「あ、どうも。なんでしょうか?」
    王女様「これからショッキングな話しをしようと思います。覚悟を決めて頂けますか?」
    少年「え? あ、はい」
    王女様「あの魚を獲るのはもうやめなさい」
    少年「は? え? なんでですか?」
    王女様「実は……」
    少年「えー!! 人間?! え? あ……僕、魚を何匹も食べてる……人間を食べちゃった……」
    王女様「私は、その人達を、そして女王様を助けてあげたいの」
    少年「事情を知ってしまったら……そうですね……しかし、魔女ですか」
    王女様「えぇ、それはそれは、とても力のある魔女……」
    少年「魔女を倒す……あれ?殺す?……もしかしたら……」
    王女様「なにか心当たりがあるのですか?」
    少年「実は、その場所を教えてくれたのは、この壺から現れた魔人なんです」
    王女様「魔人ですって?」
    少年「感謝をしたくてまた会おうとしたのですが、うんともすんともでして…… もしかしたら、他の人なら呼び出せるかもしれません」
    王女様「その壺はどちらに?」
    少年「住処に置いてあります」
    王女様「では、いそぎましょう」


    少年「あのときは汚れてると思って綺麗にしようとしたら現れたのです。 なので、同じように掃除をしたら現れるかもしれません」
    王女様「わかりました。では、やってみますね」
    SE・ゴシゴシ
    SE・ブワッ!と魔人登場
    壺の魔人「いやっほーい♪今度は時間を置かずに呼ばれたぜい♪」
    少年「やい!あの魚が元々人間だって知ってたのか!!」
    壺の魔人「知ってたよ?でも綺麗だったでしょ?高く売れたでしょ?」
    少年「売れたよ!ってか、この人が買ってくれたよ」
    壺の魔人「あらま! なんと言うべっぴんさん! 魚を飼って貰ったついでに買っちゃったのかい? やるねぇ少年! 乳臭いガキかと思ったら、こんな綺麗なお姉さん相手にくんずほぐれつ-」
    少年「してないよ!してないからね!」
    壺の魔人「ちぇー」
    少年「それより、望みをかなえる力があるんだよね?」
    壺の魔人「そりゃまぁ、なんてったって魔人ですから! えっへん!」
    女王様「なら、一つお願いがあります…… その湖に住む魔女を殺してくれませんか?」
    壺の魔人「綺麗なお口から随分物騒な願いが出てきたね! いいよぉ♪ 殺っちゃうよぉ♪ それに、あの魔女を殺すとか、痛快で良いね!」
    少年「もしかして、川底に閉じ込めたのって」
    壺の魔人「察しのいい子は……だーい好きだ♪ そう言う事! だいたい、街を沈めて国民をぜーんぶ魚にしろって願いを叶えてやったのに、 そのまま幽閉とか、酷いお礼だろ?」
    少年「え?魚に変えたの……おまえ?」
    壺の魔人「そうさ♪だから知ってたわけ。見た事も無いであろう綺麗な魚がいるって」
    少年「ふざけんなー!!」


    王女様「ここからのお話はあまりにあっさりしているので説明するだけにしますわ」
    少年「壺から出てきた魔人が魔女に対面したと思ったら、さくっと殺しちゃった。そして」
    亡国女王「魔女が倒れ、石化と不老不死の魔法が解けた私が今度は魔人を呼び出し、 街と国民を元に戻しました」
    壺の魔人「あー、ちなみに僕ちゃんは一人につき一回しか呼びだせない仕組みなの。 だから、もし僕の壺を見つけた時には、 願い事をしっかり考えてからこすってちょ♪ と言う事で、このお話はおしまーい♪ ばいばーい☆」
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