連載2回目 『侠貌』 六天舜
初めに
この物語は私の青春の蹉跌の記録であり、一つのフィクションも入っていない。当時は自分で意識をしていなかったが、男とは強くなければならないという事が、完全に行動に表れていたような気がする。だから、根性がない等という言葉は一番忌避していたし、喧嘩に勝ことと、泣きごとを言わないという事が至上であり、私たちの目指す所でもあった。今振り返り見れば赤面の至りである。本当に強い男は喧嘩ばかりではなく精神的に強くなければならないし、優しさも持たなくてはいけない、時には薄情に成れる事も強い男には、必要である。この頃の私たちは今思うと本当に子供であったと思わざるを得ない。でも、この様な人生の一部があり、今があるという事を私は忘れない。言い換えればこの頃の私がいたから現在の私がいるのである。
青春それは無軌道な事ばかり、それが本当であると思い行動した。だから、後悔は一つも無い。禅の本を読むと『随処に主となれば立つ処皆真成り』とあるが、私たちの青春は誰が教えたのでもなく自分で考え、自分で行動していたのだから、皆、真即ち、本当の事であったに違いがない。
平成二十五年 三月 一九日 ...