『ゴースト・バスターズ』のマシュマロマン大暴れシーンの製作裏話


映画『ゴーストバスターズ』のマシュマロマンのシーンは撮影に苦労しただけでなく、本当にこのキャラクターをラスボスとして登場させていいのだろうか? とギリギリまでハロルド・ライミスとダン・エイクロイドを悩ませたそうです。


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io9が、Cinefixの「Art of the Scene」シリーズの最新作「『ゴーストバスターズ』のマシュマロマン大暴れシーン製作裏話」を紹介しました。

動画とともに要訳をどうぞ。



1981年、ダン・エイクロイドは『ブルースブラザーズ』や『サタデー・ナイト・ライブ』で脚本家やコメディアンとしてだけでなく、超常現象研究家としても雑誌に記事を書き、多方面で成功していました。そんな彼がオカルトといった得意分野を活かして脚本を書いたのが『ゴーストバスターズ』です。

そして、ダン・エイクロイドは『アニマル・ハウス』や『パラダイス・アーミー』、『ミートボール』といった作品を撮って名を売っていたアイヴァン・ライトマンを監督に指名しました。ライトマン監督はエイクロイドの書いたスペシャルエフェクト満載な脚本を読み、「これは不可能だ」と思ったのだとか。しかし、マシュマロマンをはじめとするその奇想天外なアイディアに魅了されたそうです。

最初の段階では、マシュマロマンは脚本の20ページ目に、ゴーザの変形パターンの1つとしてちょろっと登場するだけの予定でしたが、ハロルド・ライミスはこの映画には多くのゴーストが登場するので、ラストは巨大なマシュマロマンが、キングコングなみに街を破壊する方が観客も喜ぶのではないかと考えました。しかし、そのアイディアには不安がつきまとったため、繰り返し変更されたとのこと。

監督とプロデューサーを兼任していたアイヴァン・ライトマンは、『ゴーストバスターズ』のアイディアを脚本無しでコロムビア映画に持ち込み、当時のコメディ映画の予算としては高額とされる2500万ドルを得ました。楽に資金を得られた一方、当時、コロムビア映画は次の夏に公開する映画を必要としていたため、ライトマン監督達は「1年後に公開できるようにしろ」という非常にタイトなスケジュールを強いられたのです。

しかし、脚本は撮影に入れるような所までフィックスされていなかったため、エイクロイドとライミスはタイプライター(といけないお薬)を前に頭を抱えることに。製作補のマイケル・グロスは作品内に登場する(とはいえ、この時点で脚本は仕上がっていない)ゴーストを作ることのできるVFXスタジオを探し始めましたが、大きなスタジオはすでに仕事が入っていて頼むことはできなかったのです。

肩を落とすグロスの元に、過去にアカデミー賞を3回も受賞したリチャード・エドランドがILMを抜けて独立するというニュースが入ります。こうして『ゴーストバスターズ』のエフェクトは、創設されたばかりのボス・フィルム・スタジオが担当することとなりました。

コンセプトアーティストのトーマス・エンリケはすぐにマシュマロマンのデザインに取り掛かり、試行錯誤した結果、今のマシュマロマンの形になりましたが、決定してからもライトマン監督は巨大なマシュマロ型モンスターが映画のラストに登場するのがふさわしいのかどうか確信を持てずにいたそうです。また、ライトマン監督だけでなく、ハロルド・ライミスと編集のシェルドン・カーン、エイクロイドの父親も同様の意見でした。

しかし、ライミスは「文字通り物体のない最大の恐怖が、厳密な形がないマシュマロのモンスターとなって最後に登場するというのは悪くない」と考え、また、エイクロイドの「アメリカ人の消費主義が想像を超えた姿でゴーザの形として現れた」という意見もあって、マシュマロマンが街を破壊するというシナリオで落ち着いたのです。

元々、マシュマロマンは300フィートあり、ハドソン川から自由の女神の隣に出没するように書かれていました。しかし、それでは随分と予算がかかるということでそのシーンをカットし、マシュマロマンの大きさを約34メートル(112.5フィート)に変更。

そして、当時としては珍しい1/18のセットで撮影することになりました。モデルショップスーパーバイザーのマーク・スターン(IMDbにはマーク・ステットソンと掲載)は、トイザらスで丁度いいサイズの消防車やパトカーを見つけ、カリフォルニア州のトイザらス全店に連絡して買い占めたそうです。

ボス・フィルム・スタジオのリンダ・フロボは、表情のパターンに合わせて、繊維ガラスの骨格とケーブルシステムを使ったマシュマロマンの頭部を3種類作成しています。

セントラルパーク周辺を闊歩する様子は、4人のパペット使いが隙間からケーブルを動かして表情を変えたりしながら再現。ビルをよじ登るシーンは、メカニカルエフェクトスーパーバイザーのシーン・モリスがパイロテクニシャン(火薬技術者)のジョー・ビスコシルと共に火に強い物質で作ったコスチュームをスタントマンに着用させて撮影し、建物の横で顔が溶けるシーンは、3台のガスヒーターを頭部のモデルにあてて、20分かけて溶ける様子を撮影しています。

ゴーストバスターズがビルを爆発させるシーンでは、アニメーションの経験を持つデザイナーが爆発をデザインし、それをモリスがパイロテクニシャンと協力して実現させました。モリスの活躍で巨大な爆発ができたものの、その爆発の大きさにライトマン監督は「これではゴーストバスターズが全員死んでしまうのでは?」と疑問の声をあげました。しかし、エフェクトチームは「それが面白いんだろう」とあっけらかんとした対応をしたとのこと。

当初、マシュマロマンが消滅したことを印象付けるために、かぶっていた帽子がゆっくりと地上に落ちてくるというシーンが入る予定でした。これは、18フィートのアルミニウムで補強された帽子をクレーンで吊るしてゆっくりと降ろすという計画でしたが、落ちる速度が問題となりカット。代わりにマシュマロマンが溶けるという演出になりました。

このシーンを再現するためにプロダクションチームは、ウィリアム・アザートンに150ポンドのシェービングクリームを頭からかぶらせるという計画を立てましたが、撮影の直前にクリームの量が多いと感じたアザートンは、スタントマンで試してどんな風になるのかを知りたいと発言。

その結果、哀れなスタントマンはそのシェービングクリームに押しつぶされてペシャンコ状態に......。結局、クリームは半分の量の75ポンドで十分と判断されたとのこと(2010年にウィリアム・アザートンが「元々75ポンドでスタントの実験後にその半分になった」ともインタビューで話しているので、正確な量は不明)。

紆余曲折あったものの、ファイナルテストの観客は『ゴーストバスターズ』の仕上がりに大満足。受け入れられるかどうか不安の種だったマシュマロマンも大好評で、1984年の北米興行収入第1位に輝きました。続編の評判はそれほどよくはありませんでしたが、マシュマロ作りのモンスターは今もなお愛され続けています



[via Laughing Squid via io9

中川真知子

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