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2015/12/25
夏野剛メールマガジン 週刊『夏野総研』
vol.165
【「グーグル流」に訪れた限界。“らしさ”を突き通すリスクの正体】
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《目次》
01.時事ネタキュレーション
02.ビジネスモデル分析
03.Q&A
04.Product Lab
05.Good Food Good Life
06.Weekly Wine
07.スケジュール
08.編集後記
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【01.時事ネタキュレーション】
日々ぼんやり見ているニュースも、見方を変えればいろいろなことが見えてくる。当コーナーは、日本の未来を読むための時事ネタや話題コンテンツを、私がキュレーターとなって解説していくものです。
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※執筆の都合上、12月22日までのニュースについて解説しています。
◆テレビも焦る、LINE動画配信の破壊力 国内5800万人への配信力を「生放送」で生かす
http://goo.gl/zAq7oe
たしかに「スマホで動画を見る」というスタイルは定着したが、一方でビジネスモデルを構築するのは難しい。視聴者数がリアルに見えてしまうため、「視聴率×人口」という旧来メディアの指標に負けてしまうからだ。ゆえに、生放送番組を仕込み続けると費用と広告収入のバランスが崩れてしまう。ただし、LINE関係のCMをテレビから引っぱがして、ここを中心にしていけばいいかもしれないが。
◆「iPhone 5」のプリペイド販売、ソフトバンクが開始
http://goo.gl/0iTd93
昔、プリペイドは政府から「犯罪やスパイ行為に使われるから」という理由で自粛させられたものだが。状況はあまり変わってないと思うけれど。
◆グーグルとフォード、自動運転車の生産提携を協議中=米専門誌
http://goo.gl/8FZNtf
ITに極めて弱い自動車会社にとっては正しい戦略だな。
◆Facebook、「Messenger」アプリからUber配車サービスを利用可能に
http://goo.gl/wfwXbQ
別にあってもなくてもいいかな。
◆サイバーエージェント、アプリ開発で新職種
http://goo.gl/b7O05W
センスいいね。
◆日本マクドナルド売却 米本社、ファンドなどに打診 株最大33%分
http://goo.gl/hLk3mo
あまり知られていないけれど、日本マクドナルドはマクドナルド本社のフランチャイズという位置付け。
◆東芝、家電に大ナタ 16年3月期のリストラ費2000億円超
http://goo.gl/vKCaoh
売ってくれえ。
◆シャープ争奪戦 台湾・鴻海が高額オファー 革新機構の検討額上回る
http://goo.gl/tRpUvL
鴻海でいいじゃん。
◆ソニー、スマホ動作時間1.4倍に 20年に新型電池投入
http://goo.gl/FXferW
ということはTESLAの走行距離もさらに伸びるかな。
◆リニア新幹線の「南アルプストンネル」18日着工 10年超の大工事
http://goo.gl/UZB5kg
日本の土木技術のショーケースにして欲しいな。
◆ANAとJAL、仁義なきラーメン戦争 エコノミークラスでつけ麺が味わえる
http://goo.gl/2SbKtX
下手な機内食よりよっぽどいいよね。
◆ルーカスフィルム、40億ドル。それはディズニーにとって「いい買い物」だった
http://goo.gl/iocH35
たしかにいい買い物だった。
◆米ディズニー社、コスプレ入園を禁止…警備強化
http://goo.gl/S3iGj0
つまんないな。『ビビディ・バビディ・ブティック』はどうすんだろ?
◆高尾発・八王子行き「深夜バス」が盛況な理由 最終電車を乗り過ごした酔客を救済
http://goo.gl/XAPxQQ
すばらしいアイデアとサービス。
◆フィンテック、SBIがファンド 横浜銀やソフトバンク出資
http://goo.gl/4cRpWE
ブームだね。
◆日本銀行、「ビットコイン」の分析を公開―ブロックチェーン技術に興味津々
http://goo.gl/H8bza9
こういうレポートが公開されるのは素晴らしい。
◆都民6割「東電以外」検討 電力自由化 より安く/原発の電気いや
http://goo.gl/AQVHqY
さっさと発送分離すればいいのにな。
◆労働生産性、先進7カ国で最低 茂木友三郎生産性本部会長「勤勉な日本が…残念な結果」
http://goo.gl/9y9ig9
従業員がどんなに勤勉でも会社というシステムが悪いとどうしようもない。サービス業で半分とは……。
◆大学、壊滅的不況期突入か…18歳人口半減なのに大学数倍増という悪夢
http://goo.gl/JX8kul
そもそも国立大学を全面私立化して、奨学金制度を充実させる方が競争原理が働いていいと思うのだが。
◆スマホ「5000円以下」の料金プランを=総務省有識者会議
http://goo.gl/XEcVjs
こんなものを政府に要求されるくらい業界内の競争がないということ。
◆夫婦同姓規定は「合憲」、原告の請求退ける 最高裁判決
http://goo.gl/x8LQ9h
規定は合憲でも、完全に時代遅れであることは否定できない。
◆新幹線の手荷物規制強化を協議 JR東海、国交省などと
http://goo.gl/ks2tSZ
無理でしょ。
◆当初見込みの6倍、五輪運営費試算1兆8000億円
http://goo.gl/ZUabVf
大騒ぎしすぎ。
◆河野氏、消費者庁の徳島移転に前向き 検証実験実施へ
http://goo.gl/yUYlio
全面移転すべき。
◆橋下市長が退任「持てる力は全部出し切った」
http://goo.gl/DjmPNL
住民投票に負けてむしろ強くなったかもしれない。
◆子育て給付金、2016年度から廃止 自民「軽減税率で譲歩」
・低所得高齢者に3万円給付案、自民厚労部会が了承
http://goo.gl/6jUXOn
http://goo.gl/HePTX7
子育て給付金を廃止するのはいいけど、老人給付金を増やすのはやめて欲しい。
◆スポーツ予算、過去最高320億円 政府の新年度当初案
http://goo.gl/G0r9Ay
2020年にはオリンピックだからね。
◆Netflix、寝落ち検出で再生停止するリモコン靴下 Netflix Socksを発表
http://goo.gl/cmPyb7
ジョークだな。
◆読売社説「新聞は重要な公共財」にネット民が総ツッコミ「常識的に考えて電気や水道の方が重要」
http://goo.gl/ZAHz5v
めちゃくちゃ。完全な我田引水だな。
◆「日本郵便は優遇されすぎ」ヤマト運輸の意見広告を81%が支持
http://goo.gl/seZMxT
うん、されすぎだ。
◆小林幸子さん、紅白でボカロ曲「千本桜」を披露
http://goo.gl/ZoQRCO
返り咲きが本当に実現するとは! 幸子さん、おめでとうございます!
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【02.ビジネス分析】
企業が手がけるビジネスの仕組みや戦略や動き、それを取り巻く社会状況などを解説していきたいと思います。
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【今月のグーグル】
グーグル関連の注目ニュースをピックアップ。「すごいグーグル」「やっぱりグーグル」「グーグルの弱点」「グーグルの誤算」の4つのジャンルに分け、解説していこう。
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〈すごいグーグル〉
まずは「すごいグーグル」から。『米グーグル、人工知能ソフトを無償で公開 普及を優先 AI分野で主導権狙う』(http://goo.gl/2Zw59f)というニュースがあった。
ここで注目すべきは「無償で公開」というポイントだ。世界中でAIの技術開発が進んでいる今、ソフトを公開せず自社内で開発し独占的にリリースすれば、それだけである程度の利益を見込むことができる。しかし、グーグルはその方法を選ぶことはなかった。その背景にあるのは、グーグルのビジネスモデルの存在だ。グーグルはすでに、インターネットを利用する人が増えれば増えるほど利益が上がる広告をメインにしたビジネスモデルを作り上げている。そして、AIはインターネットと密接に関わっている存在であるため、AIが普及することは、グーグルのビジネスの規模が増すことを意味するわけだ。Androidを各メーカーに無償で提供する戦略と同じことを、AIでも行う。目先の特許料に固執するのではなく、その先にある“経済圏を拡大するため”に大胆な施策を取れるビジネスモデルは「すごい」ことであるし、そういった戦略を大胆に展開できる考え方や経営判断も称賛に値する。
また、グーグルは、環境問題やエネルギー問題の解決にも取り組んでいる。『Google、再生可能エネルギー買取量を倍増』(http://goo.gl/enXCdd)というニュースがあったが、コンピューター技術が進歩すれば自ずと環境問題に影響が及ぶことを見越し、その解決に向けて積極的な取り組みを行っているのだ。この動きを見るに、グーグルは民間の営利企業ではあるが、自社が“公器”であることを理解しているのだろう。規模の違いはあるため一概には言えないが、この点は多くの日本の企業も見習うべきことである。
先手を打つという意味では、『Gmail、暗号化されていない通信でメールを受信すると警告を表示』(http://goo.gl/uZe9r7)というニュースにも触れておきたい。もしGmail上で何かしらの問題が発生すると、グーグルに否がなくても責任を問われるリスクが存在するのは事実だ。このセキュリティの強化は、自社のサービスの満足度や利用者数を増やすための施策であると同時に、起こりうるリスクを見据えたこととも言える。
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〈やっぱりグーグル〉
孫正義氏が後継者に指名したニケシュ・アローラ氏がグーグルで最高事業責任者を務めていたことでもわかるように、グーグルは早くからインドのマーケットに目をつけていた。『Google、インドの事業計画着々と、駅の無料Wi-Fiや巨大社屋の建設など』(http://goo.gl/cnzz6R)というニュースも、インドにITのインフラが整っていないと思えば無償のWi-Fiを大胆に整備し、ネットの普及を推し進めようとする施策の一つであり、その行動力は他を圧倒している。また、この自社でネット回線を提供する戦略は、いわば通信キャリアのビジネスを中抜きにすることでもあり、世界中のキャリアにとっては恐るべき存在になっていく。そして、このインド戦略の先にグーグルが見ているのは、アフリカのマーケットだろう。インドの成功基盤をそのままアフリカで展開することを考えていると思われる。
先述したとおり、インターネットを利用する人が増えることはグーグルのビジネスを拡大させることを意味する。インドへの展開はまさにこの考え方が当てはまるわけだ。インドへの展開に代表される「攻め」の戦略をする一方で、グーグルは「守り」の戦略にも抜かりがない。
例えば、ネットの利用者が増えても、大量のデータ通信が必要であれば普及は遅れてしまうもの。そこに手を売ったのがこの2つの施策だ。『Google Chromeに受信データ量を大幅に節約する「データセーバー」モード追加へ』(http://goo.gl/m0DRPU)と『GoogleのモバイルWeb高速化プロジェクト「AMP」、来年Google検索に導入』(http://goo.gl/DbYlMz)。データ量が多くなればなるほど、利用者に負担をかけ、またネットインフラを圧迫してしまうことを見越し、ブラウザ上でデータ量を節約するサービスを打ち出した。また、高速化プロジェクトの『AMP』も同じ発想だろう。
AIの話題でも触れたが、グーグルは自社の経済圏を広げるためにAndroidを各メーカーに提供している。これに関連して、このようなニュースがあった。『米グーグル、「スマートフォン向けプロセッサ」の自社開発を検討中か』(http://goo.gl/q4UCgE)。
このニュースや自社でAndroid端末の『Nexus』を出していることを見ると、グーグルは各社のAndroid端末に対して不満を持っているのではないかとも感じられる。事実、シェアでは圧勝していても、性能の面でiPhoneやiPadに対して優位かと言えば疑問を感じざるを得ない。そこでグーグルが目をつけたのがチップ。端末だけでは優位に立てないと判断し、Androidに適したプロセッサの開発を検討しているのではないだろうか、ということだ。
ちなみに、Appleも『A9』などのチップを開発しているが、グーグルとAppleには大きな違いがある。それは自社で独占しないこと。例えば、このチップをNexusのみに搭載することもできるが、グーグルはそれをしないはずだ。グーグルは、すべての端末に提供することで多くのメーカーを巻き込み、iPhoneなどに対して優位な立場を確立する構えだと思われる。
グーグルが開発するサービスや技術は社会に大きな影響力を与えるものが多いが、ドローンもその一つだろう。『Google X発のドローン、2017年を目処に一般向けサービスを展開する』(http://goo.gl/NwLGud)の記事によると、グーグルは一般向け用のドローンを開発しているとのことだ。ドローンといえばAmazonも注目されている。しかし、Amazonとは似て非なるもの。最大の違いは「配達用」か「多目的用」か、ということだ。Amazonのドローンが進化しているとはいえ、その主目的は荷物の配達。ところが、グーグルは一般向けに開発を進めているため、マーケットの規模は比べ物にならない。例えば、自宅の敷地をドローンが監視することなどが考えられ、自社向けにもドローンを使ったGoogle EarthやGoogle Mapなどの展開も容易に考えられる。ドローンは、自動運転同様きわめて大きなポテンシャルを秘めていると言える。
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〈グーグルの誤算〉
グーグルといえば、自動運転の開発もかなり進んでいる。開発は順調に見えるが、思わぬ方向から規制が入ったようだ。グーグルは、完全に無人で運転する自動運転の開発を目指しているが、『カリフォルニア州、自動運転車の無人走行を禁じる法案』(http://goo.gl/4LRup9)というニュースがあったのだ。これによってドライバーの同乗が義務化されるなどの制限が与えられてしまった。グーグルは、自動運転の分野でもっとも進んでいくのはアメリカ、特にカリフォルニアだと睨んでいたはずだ。自分たちのホームグラウンドと呼べるカリフォルニアで、このような規制が行われたのは予想だにしていなかったことと思われる。つまり、グーグルにとっては大きな「誤算」だったはずだ。
グーグルの傘下であるYouTubeでも誤算が生じている。