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2月8日、電撃文庫より第20回電撃大賞【銀賞】受賞作の『王手桂香取り!』(著:青葉優一、イラスト:ヤス)が発売されます。
本格将棋ラノベを称する当チャンネルとしては、これは応援せずにはいられません。そこでどこよりも早い(?)『王手桂香取り!』レビューを数回に分けて書いていきたいと思います。
上条歩。中学一年。三度の飯より将棋好き。ひそかに憧れる人は将棋クラブの主将、大橋桂香先輩。そんな歩の前に突如美少女たちが現れる。「私たちは、将棋の駒だ」そう言い放つ彼女たちは、香車を筆頭に駒の化身だという。その将棋の強さは人知を超えており、歩は駒娘たちの教えのもと、さらなるレベルアップをしていく。折しも中学校将棋団体戦の東日本代表を決める大会が間近に控えており、歩は桂香先輩のチームメイトとなり、ともに頂点を目指すべく奮闘する。二人の前に立ちはだかるのは、桂香先輩の幼少時からのライバル、二階堂。二階堂を打倒し、桂香先輩へアピールすべく、歩は駒娘たちと秘策を練るが!?
あらすじはこんな感じです。
まず、キャラクターのネーミングからして将棋愛が感じられます。主人公の名前は「歩」。これは将棋を題材とした作品では定番といえるようで、つい先月からドラゴンエイジで連載開始された『駒ひびき』(監修・高橋道雄九段)の主人公も「あゆみ」です。一歩一歩、着実に前進していくことを示すその名前は、ライトノベルや漫画の主人公にピッタリで、読者も共感を覚えやすいのでしょう。
で、ヒロインは「大橋桂香」。桂香が桂馬と香車を合わせたものというのは言うまでもありません。他の駒の文字を組み合わせても、これ以上に女の子らしい名前は、ちょっと思い当たりませんね。ちなみに北村桂香さんという女流棋士が実際にいるのですが、将棋好きの父親にそう名付けられたということです。
しかしここで注目したいのは名字のほうです。将棋の初代名人は大橋宗桂といい、彼を祖とする「大橋家」は江戸時代の将棋家元として、江戸幕府が崩壊するまで棋界の中心であり続けました(家元は他に「大橋分家」「伊藤家」があるのですが、当時はこの三家以外の人間は名人を名乗れませんでした)。
したがってこのヒロインは、将棋作品のキャラクターとしてはもっとも由緒ある名を持っているわけです。このことを知っていれば『王手桂香取り!』という作品をよりいっそう楽しめそうです。
では、次回から本章を取り上げていきます。