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  • 第6話:夏の終わり

    2018-09-03 13:00  
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    「あ、作りすぎちゃったや…」
     鍋にこんもりと残った夕飯のおかずを見て、私は顔をしかめる。こんな時によみがえるのは、いつも嬉しそうにご飯を掻き込む彼の姿だった。美味い、美味いなんて言いながらいつもクールな彼が無邪気な子供のようになる瞬間だ。
    「なんで、なの…」
     また涙が溢れてくるのを止められなかった。二人分の食事を作って、彼の訪れを待つことがこの夏休みの定番だ。今でも、彼がふと来てくれるんじゃないかという淡い期待が拭い切れなくて、そしてそれに気づいてしまってただただ切ない気持ちになる。
     彼が突然いなくなった。
     だだっ広いリビング。彼がいない夏休みはつまらなかった。メイクをするのも、お気に入りの服に着替えるのも彼に見せたいから。全部全部、私の行動は彼に向いてしまっていた。
     今日も連絡がないことを告げる携帯画面が恨めしい。
    「どこに行っちゃったんだろう…」
     会えないのなら、いっそのこ

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