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wattinさん のコメント

いろいろあったがなんやかんやで夢だったから助かった
No.25
125ヶ月前
このコメントは以下の記事についています
 発車のベルが聞こえた。その音はずいぶん遠くから聞こえたような気がした。  低いエンジン音と共に、バスが走り出す。 「水曜日の噂は、クリスマスの謎に繋がっている」  ときぐるみは言った。 「クリスマス?」  今はまた7月だ。 「そう。クリスマス。水曜日のクリスマスだ」  彼はその不気味な顔で、じっとこちらをみる。 「水曜日のクリスマスには100の謎がある。ひとつ目の謎はもちろん、なぜサンタは遅れたのか、だ」 「100もあっちゃ困る。締め切りは目の前らしいぜ」 「大丈夫だよ。君が思っているよりは余裕がある」 「サンタが遅れたってのは?」 「そのまんまだよ。君もよく知っている彼さ。みんな大好きな彼が遅刻したんだ」  わけがわからない。  窓の外から、繰り返しオレンジ色の光が射した。断続的に、カウントダウンのように。  どうやらトンネルの中に入ったようだ。ずいぶん長いトンネルだった。この辺りに、トンネルなんてあっただろうか? 「このバスはどこに行くんだよ?」 「それはオレたちが決めることじゃない。すべてソル次第だ」 「ソル?」 「ソルだけは裏切るな。彼らはきっと、君に味方する」 「よくわからないな。このバスは、バッドエンドに向かってるんじゃなかったのか?」 「今の路線ならそうなる。でもソルだけが、それを変えられる」  着ぐるみが窓の外を指した。 「ほら、みてみな。目の前のバッドエンドが始まる」  トンネルの出口がみえた。  まるで、新しい世界に放り出されたように、みえる世界が変わった。        ※  まず窓の外にみえたのは、大型の電器店だった。  バスはその前を通過する。  続いて、奇妙な丸い物体がみえた。  さらにその先には、みっつの音叉が重なる、見覚えのある楽器メーカーのロゴがショウアップされている。その光が交差点を照らす。  道路の向こうには、巨大な、だから平べったくみえる建造物の影があった。  がらんとした交差点だ。きっと、普段なら。  けれど今は違った。その交差点の真ん中に、目を離せないものがあった。  軽自動車に、トラックがぶつかっている。見覚えのある緑色の軽だ。それは粘土細工をテーブルから落としたように、無残にひしゃげている。その隣を平然と、バスは通り過ぎていく。  すれ違うとき、ひび割れたフロントガラスから車内がみえた。  ルームミラーの下で、不細工な猫を模したキャラクターが紐でつられて揺れている。  運転席ではショートカットの女性が――それは間違いなく宮野さんが、血を流して突っ伏している。  隣ではオレが、スマートフォンに何か叫んでいる。  ――なんなんだよ。  オレはここにいる。目の前にもオレがいる。一瞬、オレは事故車の中のオレと目が合ったような気がした。  ――なんなんだよ、一体。  バスは一定の速度で走る。  血を流した宮野さんが、事故車と一緒に後方へと流れていく。 【BAD FLAG-01 交通事故】        ※ 「どうだい? 嫌な未来だろ?」  と、隣のきぐるみが言った。  その声で、夢から覚めたような気がした。 「なんだったんだよ、今のは」 「ほんの目の前の出来事だ」 「宮野さんの車が事故を起こすってのか? いつ?」 「オレは知らない。はっきりとしたことはわからない。知識なんかほとんどないんだ。なにせまだ、少年なもんでね」  オレは顔をしかめる。  ――未来がみえた?  馬鹿げている。  だが、確かに目の前にオレがいた。見間違えだとは思えなかった。  窓の外に視線を向ける。バスはいつの間にか、再びトンネルに入っていた。オレンジ色の光が、順番にオレを照らしていく。 「ショックか?」  ときぐるみが言った。 「混乱してるよ。わけがわからない」  とオレは答えた。 「まだまだこんなもんじゃねぇぜ。本番は、これからだ」  無機質な声でアナウンスが流れた。  ――次は終点、7月25日です。  その直後、バスがまたトンネルを抜けた。        ※  光。――強い光。日中の光だ。  眩しくて、オレは目を細める。それからみえた景色に、息を呑んだ。  そこには見慣れた部屋があった。オレの部屋だ。なのにバスの窓越しにみるそれはあまりに非現実的で、上手く思考できない。  バスは走り続けている。その振動を感じる。オレの部屋の景色が後方に流れ、また前方からやってくる。映画のフィルムのコマみたいに、ほとんど同じ景色が連続している。  部屋の中には、やはりオレがいた。  オレは銀色のアタッシェケースを開いていた。見覚えがある。あの、宮野さんがレストランで受け取ったアタッシェ―スだ。  その中身は――なんだろう?  何枚かの、紙の資料のようだった。だいたいは裏返っていてよくみえないが、2枚だけ確認できた。  クロスワードパズル?  オレはそれを解こうとしているようだった。  ――なぜ、そんなものが?  そう思った直後、ぐにゃりと視界が歪んだ。立ちくらみのような感覚――ほんの短い時間、目を閉じてまた開く。  すると、窓の外にみえる景色が変化していた。  次は、また夜だ。  オレは夜道を走っていた。  先ほど、宮野さんの車が事故を起こしていた道ともまた違う。  幅の細い道の両脇に、建物がびっしりと並んでいた。なんだか騒々しくみえる街並みだ。  そこを、オレが走っている。  オレはずいぶん慌てているようだった。地面のおうとつに足を取られて派手にすっころぶ。転ぶのなんていつ以来だろう? 自分自身が転ぶのは、みていてあまり気分のよいものではない。  窓の外のオレは勢いよく立ち上がり、また走り出す。  ――一体、なにを急いでいるんだろう?  だがその答えは、すぐに氷解した。  オレが向かう先には、古いビルがあった。その壁の一部が大きく崩れていた。瓦礫が辺りに散らばっている。爆破されたような、そんな印象。  そして瓦礫の中に、ひとりの少女が倒れている。  シャツに黒い染みが広がっているのが、遠くの街灯から届くかすかな光でわかる。  ――オレは、この子を知っている。  なぜだかそんな気がした。  彼女は目を閉じ、窓の外のオレが肩を抱いても、ぴくりとも動かなかった。 【BAD FLAG-02 爆発】        ※ 「バッドエンドを書き換えろ」  と、きぐるみが言った。 「時間はもうない」  どきん、どきんと鼓動が胸を打っていた。ひどい頭痛を覚えて、オレはそこを押さえた。形にならない記憶が頭の中で渦巻いていた。 「思い出したよ」  オレは、隣のきぐるみをみる。 「お前、少年ロケットだろ?」  ぼろぼろのきぐるみは、不敵な笑顔を浮かべたまま、じっとこちらをみている。 「へぇ、覚えていたのか」 「忘れてたよ。結局、なんのマスコットなんだお前」  少年ロケットは、幼いころに持っていたキーホルダーだ。どこで手に入れたのか覚えていないし、手放してもうずいぶん経つ。  きぐるみは言った。 「ロケットだろ? 名前だってもろじゃないか」 「ちっともロケットっぽくない」  ただの不気味なガキにしかみえない。 「でも飛び出すぜ? 別の世界までひとっ跳びだ」 「ならバスで移動するなよ」 「準備がいるんだよ。ロケットって発射台まで車で運ぶんだろ? 前に、ニュースでみたことあるぜ」  ふいに、バスが停まった。音を立ててドアが開く。だが窓の外は暗く、何もみえない。 「さぁ行きな。急げよ。カウントダウンは始まっている」  行けって。 「ここ、どこだよ? 一体どこに行けばいいんだよ?」 「知らねえよ。きっとソルが導いてくれる」 「ソルってなんだよ?」 「ソルは遠い場所にいる。それでもこの世界を照らす」  こいつとは、まともに会話ができないようだ。  オレは座席から立ち上がる。  後ろから、きぐるみが言った。 「おい、忘れてるぜ」 「ん?」 「ほら」  振り返ると、着ぐるみは大きな手で、器用にスマートフォンを掴んでいる。それは確かに、オレのスマートフォンにみえた。 「ああ。ありがとう」  いつの間に落としたのだろう? 受け取って、そのスマートフォンをポケットに入れる。  指先が何か硬いものに触れた。引き出すと、それはスマートフォンだった。  ――どうして?  同じスマートフォンが2台ある。起動させてみると壁紙まで同じだ。 「これは、オレのじゃない」 「いや。君のだ」  きぐるみから受け取ったスマートフォンには、メールが1通、届いていた。  フォルダを開いてみる。  件名のないメールだ。アドレスは、英文になっている。  ――ソルが鳴らすベル?  そう読めた。  あの着ぐるみの言葉を思い出す。「ソルだけは裏切るな」。これの、ことなのか?  メール文を開く。        ※  拾った携帯にあなたのアドレスが登録されていました。  主人公とありましたが、あなたはどなたですか?        ※  主人公ってなんだよ。  やはりこのスマートフォンは、オレのじゃないようだ。 「スイマには気をつけろ」  と着ぐるみは言った。 「スイマは君に襲い掛かる。ヨフカシを捜すんだ。ヨフカシはスイマの中にいる」  わけが、わからない。  何もかも。 「どういうことだよ?」 「いいからさっさと行けよ。忘れるな、スイマの中のヨフカシを捜せ」  ちょっと待てよ、どうしてスマートフォンが2台になるんだ? だいたいあの窓からみえた苛立たしい景色はなんなんだ?  そう、言おうとした。  でもそれよりも先に、なにか強い振動が、肩を揺らした。 ひげ ‏@HiGravityEdge  いきなり交通事故フラグだと…!? minion ‏@minion_strife  なんだか街とか428っぽい雰囲気もある。 ボルボロス/岩氏 ‏@barroth38 クロスワードは皆さんに任せるわw  黒猫にゃんこ@良平さん❤︎ 2時間 第一話のビラを配った人は宮野さんっぽいなっておもった…(´・ω・`) minion ‏@minion_strife ソルってなんだろう。太陽? 伊藤允彦 ‏@gatuhiko  ベルくんにメールをお願いする時は、ソルを名乗ってもらった方が良さそうですね。 イマゼ鬼 ‏@KMI_Oni 水曜日はタイムリミット、かも知れない ※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。 お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント(   @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。 なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
3D小説「bell」本編
3D小説の楽しみ方



1.これは、「読者たち」が「絶望の中にいる少女」を救う物語です。少女を救う意志と情熱を持つ読者=あなたの参加をお待ちしております。



2.現実と作中の時間はリンクしています。たとえば主人公が8月1日にピンチを迎えるなら、読者のみなさんは8月1日までにその問題を解決しなければなりません。



3.ひとりの読者=あなたが、物語を変えます。作中のすべての問題を、あなたひとりが解決しなければいけないわけではありません。読者のうち、たったひとりでも問題を解決すれば、物語は先へと進んでいきます。



4.ルールは明示されません。物語を読み、想像し、自ら方法を見つけ出さなければならないのです。