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オレはドアに両手をつく。
「こんなところで何してんだよ?」
「そっちこそ。どうして……」
「なんとなくだよ。なんだっていいだろ」
君が倒れている未来をみて、なんて、いちいち説明していられない。
「ドア、開けてくれよ」
「ダメ。ドアノブがないの」
「ない?」
「なんか、コンクリートで埋まってて」
やはり彼女は誘拐されたのか? ――誘拐。現実味のない言葉だ。でも、未来がみえるバスよりはいくぶんリアルな言葉だ。
「窓から出られないのか?」
「窓がないの。この部屋」
「わかった。警察に電話するよ」
「それはだめ。ごめん、走って呼んできてもらえる?」
彼女の声は震えていた。ここにいた方がよい、と思った。
ポケットに手を突っ込みながら、尋ねる。
「どうして? 電話した方が早い」
「ここには悪い人がいるから。みつかると面倒でしょ」
それならなおのこと、早く警察に伝えた方がいい。どれだけ走っても電波には勝てない。
スマートフォンのホームボタンを押し、電話のアイコンに触れる。ライトのアプリが終了して、なにもみえなくなった。
暗闇の中で、か細いみさきの声が聞こえる。
「久瀬くん。まだそこにいる?」
「ん? ああ」
「ありがとう。でも、早く行って」
イチイチゼロ、と入力して、発信する。
「久しぶりに会ったんだ。話しをしようぜ」
「でも――」
ふいに背後から、男の声が聞こえた。
「その部屋には爆弾があんだよ」
同時に、後頭部で、衝撃が弾けた。
一瞬、意識が飛んだのだと思う。
自分がどこにいるのかわからなくなった。頬に固いものが当たっていて、それでオレは倒れているのだと理解した。頭に激痛がある。何かで殴られたようだ。
耳元に転がっていたスマートフォンから、声が聞こえた。
「どうされました? 聞こえていますか?」
そちらに手を伸ばす。でも指が触れる直前、白い手袋がそれを拾い上げた。
「ああ、すみません。時報と間違えました」
男だ。片手に警棒のようなものを持った男。彼は通話を切ってしまう。スマートフォンの明かりが、サングラスの顔をぼんやりと照らす。
ドン、と音が聞こえた。みさきがドアを叩いたようだった。
「久瀬くん! どうしたの? 大丈夫!?」
男が警棒で、ドアを叩き返した。より大きくて暴力的な音が響く。
その反響が消えて、スマートフォンの明かりも消えて、辺りが静まり返ってから男は言った。
「ヒーロー気取りか? でもな、入り口見張ってねぇはずねぇだろ馬鹿が」
ほんの数歩の距離を、ゆっくりと、男が近づいてくる。
「オレには許せないもんが300個くらいあるんだ。トマトの汁でしけったサンドウィッチだとか、イヤホンから下らねぇ音楽を漏らしてるガキだとか、当然みたいな顔して列に割り込むじいさんとかだ。こっちは座りたくて電車を一本見送ってんだよ。ふざけんなってんだ」
背中に衝撃を感じた。それはすぐに痛みに変わった。うめき声を飲み込む。意味のない強がりだ。
頭上から男の声が聞こえる。
「誰だってそうだ。誰にだって許せないもんがある。例えばいきなり目の前でヒロイックなラブシーンをはじめる馬鹿とかだ。駅で抱き合ってる奴らはみんな死ねばいいんだ。ドア越しに叫びあう奴らなんて最悪だ。お前らのことだよ」
もう一度。今度は肩の辺りに、痛みが飛んでくる。
暗闇の中で、自分がどう倒れているのかも、よくわからなかった。
ただの勘で手を伸ばす。
期待通りの感触が、指先にあった。
男の足。闇雲につかんで、噛みついた。
男が小さな悲鳴を上げる。
「……ああ。殴られても反抗的なガキは、嫌いじゃない」
立ち上がろうとした。
その直後、また頭に衝撃を受けて、そこで意識が途絶えた。
鬼村優作 @captain_akasaka
久瀬君ッ!久瀬君ッ!!!
子泣き中将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw
うああああああ!
しゅんまお@くま @konkon4696
ぴーんちぴーんちだいぴーんち!!
スター(ロボ) @Sutaa
久瀬君もやばい方向に…
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