• このエントリーをはてなブックマークに追加

マコトさん のコメント

久瀬君ヒーローだわー
No.1
126ヶ月前
このコメントは以下の記事についています
 久瀬くんが私を引っ張る。  同い年とは思えない力強さにびっくりして、私は気づけば彼の後ろについて部屋を出ていた。 「どこにいくの?」  と私は尋ねる。 「もっと綺麗なところだよ」  と彼は答える。  私の手をひいたまま、久瀬くんは走る。廊下で数人の大人に声をかけられたけれど止まらない。パーティ会場にも目もくれず、私たちはホテルを飛び出す。  久瀬くんは足が速くて、私は生まれて初めてじゃないかというくらいの全力疾走だった。行き先もわからないけれど、不思議と不安はなかった。それよりも、久瀬くんに置いていかれないように必死だった。この手を離すことの方が怖かった。  私はじっと、久瀬くんの後ろ姿をみつめる。  久瀬くんは無言で、ただ手を力強く握っている。  その温度に、大丈夫だ、と言われている気がする。  どきん、どきんと鼓動が打つ。  体温がどこまでも上昇していく。  肌に触れる、冷たい空気が心地いい。  息が苦しくて、頭はまっ白だ。  なにも考えられなかった。  さっきまで胸に溜まっていたはずの不安も、もう思い出せなかった。        ※    どれくらい走っただろう。とっくに限界を超えていて、でも久瀬くんの手のひらだけを信じて走っていた。  気がつけば、私たちは小さな公園にいた。  少し坂になった芝生があって、久瀬くんがそこまで私を引っ張り上げる。  久瀬くんがふいに、すべての力を出しきった、という風に仰向けに倒れ込む。私も限界で、どうしようもなくて、久瀬くんの横に寝転がる。彼の横顔がみえた。 「綺麗だろ」 「え?」 「ぶっ倒れてから見上げる星が、いちばん綺麗なんだ」  それで私は、仰向けになった。  真正面に夜空がある。  その空に星は少なかった。地上の明かりでいくつか雲もみえて、濁っていて、ありきたりな夜空。  けれど、確かに綺麗だと思った。  私が知る中で、一番綺麗な星空だと思った。  暗い夜空が明るくみえて、なんだかちょっと涙が滲んだ。  それからしばらく、星を眺めたまんま、久瀬くんはぽつぽつと話をしてくれた。  彼の失敗談をきいて、私は笑った。  ずっと、このままでいたいと思った。  久瀬くんも同じ気持ちなら嬉しいと思った。  だけど、彼は言う。 「がんばれ、みさき」  今はその言葉が、星空と同じように綺麗に聞こえて、私は頷いた。        ※  とはいえ目の前には、明らかな問題があった。  遅刻だ。叱られる。  うつむいてそう言うと、久瀬くんは笑った。 「叱られるのはオレだろ。勝手に連れてきたんだから」  そんなことはないのだ。久瀬くんは、悪くない。  彼だけが泣いている私に気づいてくれたのだから。 「大丈夫だよ」  と久瀬くんは言う。  それから、ふいに、私になにかを差し出した。 「これ、やるよ」  彼が手のひらに持っていたのは、キーホルダーだった。不敵な笑みを浮かべる、赤い帽子をかぶった男の子のマスコットがついている。  そのマスコットに似た顔で、久瀬くんは笑う。 「こいつ、みた目はこんなだけどさ、実はすげえんだぜ」 「すごいの?」 「うん。こいつにはさ、奇跡の魔法がかかってるんだよ」 「なに、それ」  私は思わず笑う。  さすがにもうこの世界には、魔法なんてないと知っている歳だったし、久瀬くんがそういう子供っぽいことを言うのがおかしかった。  なのに、笑顔を浮かべたまま、声だけは真剣に。 「本当だよ」  と彼は言う。 「こいつを持ってると、絶対に悲しいことは起こらないんだ。そういう風にできてる」  だからもう怖がらなくてもいい。  そう言った彼の声は力強くて、不思議と嘘だとは思えなかった。  私は、たぶん心の底から頷いて。  それから笑って、キーホルダーを受け取った。        ※  パーティ会場に戻ると、もちろん私たちはひどく叱られた。  でも、キーホルダーの魔法だろうか、それが悲しいことだとは私には思えなかった。  予定よりも30分も遅れて、私はピアノの前に座る。  不思議だった。もちろん、緊張していた。  でも、絶対に上手く弾けるとわかっていた。 amor000@bell情報ディーラー @nagaeryuuiti 2014-07-28 10:19:33 ってことは、久瀬先輩がついた嘘って、このキーホルダーの説明? あ、いや、他人のための嘘なら構わないんだったか   みどばち @midobachi3 2014-07-28 10:19:57 これは良い意味で小学生じゃないw  コウリョウ @kouryou0320 2014-07-28 10:22:37 ショタ久瀬の失敗ってなんだろ   みどばち @midobachi3 2014-07-28 10:23:46 「いろんな人に頑張れって言われたら、嫌になっちゃった」てのは分かるな  amor000@bell情報ディーラー @nagaeryuuiti 2014-07-28 10:24:51 @midobachi3 俺もわかります。   ※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。 お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント( @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。 なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
3D小説「bell」本編
3D小説の楽しみ方



1.これは、「読者たち」が「絶望の中にいる少女」を救う物語です。少女を救う意志と情熱を持つ読者=あなたの参加をお待ちしております。



2.現実と作中の時間はリンクしています。たとえば主人公が8月1日にピンチを迎えるなら、読者のみなさんは8月1日までにその問題を解決しなければなりません。



3.ひとりの読者=あなたが、物語を変えます。作中のすべての問題を、あなたひとりが解決しなければいけないわけではありません。読者のうち、たったひとりでも問題を解決すれば、物語は先へと進んでいきます。



4.ルールは明示されません。物語を読み、想像し、自ら方法を見つけ出さなければならないのです。