3D小説「bell」本編
■久瀬太一/7月30日/23時40分
オレはあまりメールを打つ方じゃないから、返信が遅くて自分で嫌になる。
――途切れるなよ、電波。
クモの糸にしがみつくような心境でそう念じながら、必死にメールを確認し、返事を書く。
※
続いてのメールは、主に宮野さんの悪行に関するものだった。
――宮野さんからスマホとミュージックプレイヤーの情報を入手してください。
高級プリンを持って行け、と書かれているメールもあった。
オレも、彼女が持ち帰ったというスマートフォンとミュージックプレイヤーは気になっていた。
今日の昼にも彼女と連絡を取り、明日、アルバイトに参加する予定を立てていた。
でも彼女は、それらを手元では管理していないらしい。
なかなか入手は難しそうだが、そうそう弱音を吐いてもいられない。とにかくなんとか、中身を確認する手段をみつけよう。
※
さらにメールは続く。
情報の洪水に飲み込まれそうになりながら、開いたメールをみて、一気に頭が覚醒したように感じた。
――みさきの現状は聖夜協会の会員とおぼしき女性の元にいる。命に別状はない、安心しろ。
命に別状はない。
たしかに、その一言でずいぶん安心できた。
あるいはまた、時限爆弾と一緒に部屋の中に閉じ込められているような、無茶苦茶なことになっているのではないかと心配していたのだ。
――でも、一緒にいるのは、聖夜協会員か。
聖夜協会全体が敵なのか、まだはっきりしない。
でも少なくとも、みさきはまだ解放されてはいないのだから、問題なしとはいえないだろう。
――とにかく、聖夜協会だ。
聖夜協会とスイマについて調べよう。
一層、八千代という人物と連絡を取りたくなった。
※
その先は、みさきのことに触れられているメールが続いた。
どうやらソルたちは、みさきが弾いたピアノのことを気にしているようだった。
――そんなことまで、知ってるのか。
残念ながら、オレはあのピアノについて、ほとんど覚えていない。
ただびっくりしただけだ。
自分と同じ歳の、それもなんとなく自分より頼りなさそうにみえていたみさきが、すごく堂々と大勢の前でピアノを演奏したから。
直前の、怯えていた彼女が嘘みたいだったのを覚えている。
あのときの、彼女との出来事は、物覚えの悪いオレでもさすがに覚えていた。
でもそれをメールに置き起こすには、少し時間がかかる。
オレは電波があるうちに、より多くのメールを処理するべきだと判断して、次のメールをひらいた。
さいとう@金東コ51b @jinbe_s 2014-07-30 23:40:48
久瀬「Twitterじゃまとめられないならブロマガに流すわ、すまんの」
いぬくん@bell 長崎支店 @kun_inu 2014-07-30 23:42:10
十分早いから安心してくれ久瀬w
ヌマハチ@SOL @_NumaBEE_ 2014-07-30 23:40:18
英雄って久瀬くんで呪いって"約束"かな?
ほうな @houna_DI 2014-07-30 23:43:53
プレイーもだけど、メールが「会」ったになってるよw<焦るな運営
amor000@bell情報ディーラー @nagaeryuuiti 2014-07-30 23:47:21
あなた、天才か!!
"@a33_amimi: しもた!「あなたは逐一メールに返事する必要はない,回答を思い浮かべるだけでこちらにはわかるはずだからしっかり思い浮かべてくれ」って伝えればいいんじゃないの!! これで電波使える時間倍になるんじゃ…"
みお@TRPGやりたい劇団員 @akituki_mio 2014-07-30 23:55:03
今日は電波が良く繋がるなー
※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。
お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント( @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。
なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
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