• このエントリーをはてなブックマークに追加
■久瀬太一/8月22日/18時30分
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

■久瀬太一/8月22日/18時30分

2014-08-22 18:30
    久瀬視点
    banner_space.png
     それはなんの変哲もない、ただのノートPCにみえた。
     以前、この部屋を八千代と捜索したときにも置かれていたものだ。
     オレはその前に腰をおろし、モニターを眺めていた。ノイマンが横から身を乗り出すようにして、PCを操作する。
    「このアイコンをダブルクリックしなさい」
     とノイマンは言う。
    「そうしたら、どうなるです?」
    「ゲームが始まるわよ、もちろん」
    「オレがドラゴンの前に立っているわけですか?」
    「そうなるわね」
     あれは、ゲームなんてものにはみえなかった。
    「いったい、どうなってるんです」
    「プレゼントは頭で理解できるものではないわ。私が作ったゲームは、特定のプレイヤーが起動した場合のみ、その世界の中に入れる。そしてこのゲームは貴方のために用意された。それだけよ」
    「どうして?」
    「依頼があったのよ」
    「誰から?」
    「それは秘密。でも、いくつかの意図が絡まり合っている」
     ノイマンは笑う。
    「貴方、昔、クリスマスプレゼントにゲームを欲しがったことがあったでしょ?」
     そりゃ、あったとは思うが。
    「いきなりドラゴンに食われるようなゲームの世界には入りたくないな」
     もっと平和的なものはなかったのだろうか。
     ノイマンは笑う。
    「意外と愚痴が多いわね。貴方、それでもヒーローなの?」
     ヒーローなんてものになったつもりはない。それでも確かに愚痴っぽいのはよくない。
     あの、アドレスに「これで完璧」と書かれているサイトには、アクセスできるようになっていた。
     そこにはゲームの、詳細な攻略情報があった。あまりに丁寧で驚いた。
     内容は繰り返し読み込んでいる。
    「じゃあ、行きます」
     オレは、モニター上のアイコンをダブルクリックした。

           ※

     なんとなく強い重力がかかるような、不快な感覚を覚悟していたけれど、そんなことはなかった。
     何事もないように、静かに、ただ周囲の光景が切り替わる。石造りの、幅の広い通路。
     オレはいつの間にか立ち上がっている。先ほどまで座っていたせいで、バランスを崩しそうになる。なんとか踏みとどまり、立ち上がってから起動させればよかったなと公開した。
     周囲は暗い。
     でも目の前に、巨大な何かがいることはわかる。
     あのドラゴンだ。確認するまでもなかった。行動は頭に入っている。
     振り返って、駆け出す。空気はひんやりと冷たい。カビ臭いにおいが鼻をついた。足音が無暗に大きく反響する。
     不思議と、恐怖はあまりなかった。
     もちろん自分の何倍もあるような生き物がすぐ後ろに迫っている状況が怖くないわけがないけれど、別の感情の方が強い。
     気分は高揚していた。
     小学生のころの、運動会の徒競走を思い出した。
     走るときはいつだって、無我夢中になる。頭は使わない。
     腕を振って、足を動かす。シンプルに。
     鎧も、腰の剣も、走るのには向かない。そのひとつひとつの抵抗を振り払うように、オレは走る。
     背後でドラゴンが、空気の塊みたいな叫び声をあげる。
     耳が痛い。音に背を押されて、少しバランスを崩す。でも倒れない。
     目の前に目的の扉が迫っていた。
     オレは腰の剣をつかむ。本物の剣なんてものに触れるのはこれが初めてだった。少し手間取って引き抜く。意外に軽い。刀身はもう何年も前に海辺に打ち捨てられたようにぼろぼろになっている。
     物が斬れるとは思えなかった。それでも、信じるしかない。オレは扉に向かって、思い切り剣を振る。
     頼りない重みが、手の中からなくなった。刀身はぼろぼろに砕けている。でも扉は下半分がまっすぐに切り取られている。不思議な感覚だ。どう剣を振るのか、はじめから規定されていたようだった。
     オレは情けなく這いつくばって、その穴をくぐる。
     ――大丈夫。
     とオレは自分に言いきかせる。
     すべてはソルたちによって、完全に攻略されている。
     オレはそれを再現すればいいだけだ。
    読者の反応

    サトウ地依図@sato @siam1224 2014-08-22 18:37:54
    @sol_3d 攻略始まった、がんばれ久瀬くん。  


    リョウゼン シュウ @shuu_ryouzen 2014-08-22 18:44:51
    リアルシロクロサーガ、開始か!久瀬くん頑張れー!


    子泣き中将@優とユウカの背後さん @conaki_pbw 2014-08-22 18:41:01
    まずは第一関門突破か。「あまりに丁寧で驚いた」うん、ソルも驚いた(  


    seiruforto @seiruforto 2014-08-22 18:41:14
    そういえば非現実のフラグが今日らしいのか、これは期待  


    Digital Beefsteak @D_Beefsteak 2014-08-22 18:41:48
    @sol_3d この久瀬くんを見てる久瀬くんは、いないって考えた方がシンプルだよな  


    スター(ロボ)@And Game制作 @Sutaa 2014-08-22 18:42:31
    この間にドーナツ食べよ。
    変なところでミスってBADなんてごめんだ。
     

    り01 @lis_ninja 2014-08-22 18:44:57
    おお久瀬くんの戦いが始まってる!  


    たよたよた @ka_ramel_k 2014-08-22 18:46:50
    @sol_3d ついに動き出したか!  


    ラピス @rapiss 2014-08-22 18:45:28
    ソル全員で見守ってる感すごい  





    ※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。
    お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント(  @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。
    なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
    banner_space.png
    久瀬視点
    コメントを書く
    コメントをするには、
    ログインして下さい。