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■久瀬太一/8月24日/15時45分
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■久瀬太一/8月24日/15時45分

2014-08-24 15:45
    久瀬視点
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     バスはまだ走り続けていた。
     なにもない、まっ白な景色の中を、ひたすらに。
    「ここはどこなんだ?」
     とオレは尋ねる。
    「まだどこでもない」
     ときぐるみは答える。
    「そろそろオレは、目を覚まさないといけない」
    「どうして?」
    「みさきのところにいかなくちゃ」
    「でもさ、君が間に合ったとして、本当に彼女を救えるのかな?」
     わからない。でも。
     理由なんてどうでもいい。そんなもの、適当に後から見繕えばいい。
     彼女は強がっているけれど、意外と弱虫なんだ。今も震えているかもしれない。あのキーホルダーには魔法がかかっているんだ。彼女には絶対に、悲しいことは起こっちゃいけない。
     魔法なんて嘘だ。そんなもの存在しない。だからオレが、その嘘を本当にしないといけない。
    「わからないけど、オレがいかなきゃいけないんだよ」
     オレは彼女が撃たれることを知っている。
     さっき知った。それがすべてだ。
     きぐるみは相変わらず、ぼろぼろのまま不敵に笑っている。
    「その通りだよ、ヒーロー」
     つい、眉を寄せる。
    「オレはヒーローなんかじゃない」
    「そうだよ。みんな嘘だ。でもその嘘を本当にするんだ」
    「どうすればいい?」
    「耳をすませよ」
     きぐるみがこちらをみる。
    「ほら、彼女の声がきこえるだろう?」
     半信半疑のまま、オレは耳をすます。
     でも、聞こえない。
    「なにも聞こえないよ」
     当たり前だ。
     どうしてこんなところまで、みさきの声が届くんだ。
     なのにきぐるみは、は、と馬鹿にしたように笑う。
    「そんなわけないだろ? みんなでがんばって運んだんだぜ?」
     とたん、確かに、声がきこえた。
    「みんなが動けば、奇跡ってのは、意外と当たり前に起こるんだ」
     それは暗闇の中で、ささやかな光をみつけるように。
     確かにまっすぐに、確かな熱をもって、彼女の声がオレを射していた。

           ※

     思わず、笑う。
     彼女の声は、妙に強がるようで。
     悲壮感はまったく隠せていなくて。
     なのに、声だけは強くて。
    「絶対に、また会おう」
     と彼女は言った。
     ――オレは、その言葉を知っている。
     なぜか、そう思った。
     ずっと昔にきいたことがある。
     懐かしい歌みたいな、古い古いおとぎ話みたいな。
     まぶしい、と感じた。
     オレは目を開いていた。

           ※

    「よう」
     と声がきこえた。
     そちらをみる。なんだか、泣き顔のような笑顔で、八千代がオレをみていた。
    「よう」
     とオレは応える。
     起き上がろうとして、でも脇腹に激痛が走って、オレはうめき声をあげる。
    「大丈夫かい?」
    「どうみえる?」
     苦笑して、八千代は言った。
    「少なくとも、死んじゃいない」
     オレは耳にイヤホンがついているのに気づいた。それは八千代の手の中にあるミュージックプレイヤーに繋がっている。
    「あんたが、みさきの声を届けてくれたのか?」
    「オレは仕上げだけだ。目が覚めたら枕元にあったんだよ」
     まるでサンタクロースのプレゼントだ。
     ソルだろう。きっと。ほかには考えられない。
    「もう一度、流してくれるか?」
    「ああ」
     八千代が手元のボタンを押して、またみさきの声がきこえた。
     ――絶対に、また会おう。
     オレは息を止めて、身体を起こす。
    「八千代。頼みがある」
    「なんだ?」
    「みさきのところにいかないといけない。手伝ってくれ」
    「どこにいるんだ?」
    「まだわからない。これから捜す」
     オレはベッドから立ち上がる。
     また、脇腹の激痛で、軽くよろめく。
     八千代がオレの肩をささえた。
    「報酬は?」
    「最高のハッピーエンドをみせてやる」
     彼は笑う。
    「ああ、オレもたまたま、そいつを探してたんだ」
     キャンディ食べる? と八千代が言った。
     ああ貰うよ、とオレは答えた。
    読者の反応

    TeamFirpfut / 南雲 @jin_nagumo 2014-08-24 15:48:22
    本編45分更新!!!おおおおおお、久瀬君覚醒!!!八千代と共にハッピーエンド目指して突っ走る!!!!!  


    みお@3D小説はまだまだ続く @akituki_mio 2014-08-24 15:48:36
    くっそおおおお、かっこいい!!! この二人かっこいいいい!!  


    比火@sol @c01010dec 2014-08-24 15:48:59
    八千代ーーー!!
    飴食べる?のところメールしてよかった
    久瀬くんうけとってくれた!


    らら@柚 @rara_1108 2014-08-24 15:49:49
    八千代が久瀬くんにキャンディを!!!うわーん!!!  


    ちゅうそん@もふもふ頭 @a_n_00 2014-08-24 15:49:59
    2人ともいっけえええええ!  


    ぷいむーたん@カレーパンタジスタ @puimuutan 2014-08-24 15:50:35
    ぎゃー!この展開!たまらん!たまらん!  


    あしか(蜜柑) @asika809 2014-08-24 15:51:24
    @sol_3d 
    八千代「キャンディ食べる? 」
    久瀬君「ああ貰うよ」
    ザラザラザラ、、、
    久瀬君「!?」


    かめ@kameaaa32 @kameaaa32 2014-08-24 15:51:58
    ハッピーエンドが報酬か……悪くない  


    MIRO @MobileHackerz 2014-08-24 15:52:32
    @sol_3d 代官山ついたああ   pic.twitter.com/Lt3DbjcykA
    8eb8e06037f366ddc562d0a4b6fcfd757047cda1


    はるり@3D小説@埼玉班 @haruri_37 2014-08-24 15:53:06
    この写真のヒーローバッチに書かれてる文字が、今までHEROだったのが最後だけKUZEになっている。そして、愛媛でみつかったヒーローバッチにはどっちの文字も書かれてないのがなにかあるんじゃいかと川越班の意見   pic.twitter.com/0O8YHGzgiw
    6a731fdd1b9715176f87584fd668721d66eb48cc


    かなた @walkure1122 2014-08-24 15:55:59
    もう後はハッピーエンド目指して突っ走るだけですね!がんばれ!!!  


    Digital Beefsteak @D_Beefsteak 2014-08-24 15:57:49
    @sol_3d 店員さんに聞きましたが、ほかに冊子などは無いそうです。新宿組とお茶を飲みながら対応を考えます


    aranagi@静岡ソル @arng_sol 2014-08-24 15:58:08
    え?代官山不発?  


    ラピス @rapiss 2014-08-24 16:00:13
    別の場所なのか?ヒントなんだっけ  





    ※Twitter上の、文章中に「3D小説」を含むツイートを転載させていただいております。
    お気に召さない場合は「転載元のアカウント」から「3D小説『bell』運営アカウント(  @superoresama )」にコメントをくださいましたら幸いです。早急に対処いたします。
    なお、ツイート文からは、読みやすさを考慮してハッシュタグ「#3D小説」と「ツイートしてからどれくらいの時間がたったか」の表記を削除させていただいております。
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