山本視点
banner_space.png その洋館は、住宅街から、山にほんの少しだけ入ったところにあった。
 三角屋根のお洒落な木造の建物で、暗いなかにぽんとあるとまるで、ミニチュアが置かれているようだった。
「思い描いていたのと、少し違いました」
 と私はファーブルに声をかける。
 なにかホテルのパーティ会場のようなところを想像していたけれど、こちらの方が居心地はよさそうだ。懇親会というのがどんなことをする会なのかは知らないけれど、これなら肩肘を張らずに済むかもしれない。
「センセイはアットホームな会もお好きでしたから。とはいえ、今回はそれだけではないようですよ」
 ファーブルは玄関のドアに近づき、軽くノックをした。
 中から「はい」と男性の声が聞こえて、ドアが開いた。
 優しい顔立ちだが意外と体格の良い、スーツを着た青年だ。
「貴女が、山本さんですね。お待ちしていました、中へ」
 はい、と頷いて、私は部屋の中に入る。
 玄関ホール? というのだろうか。それなりの広さがある部屋になっている。
 テーブルがひとつと、椅子が6脚あった。
 だが、そんなものよりもずっと気になるものがあった。
 ――棚?
 正面の壁一面が、巨大な棚になっている。
 たてに5段。横に10行程度の、どちらかといえば無個性な棚。
 その半分ほどは埋まっていた。
 ある棚には和風の仮面が。別の棚には、ヌー? ともかく木彫りの哺乳類が。さらに別の棚には食品サンプルだろうか、ただ皿に盛られたごはんみみえるものもある。
 ――なんだ、これ。
 あまりにとりとめがなさすぎる。
「コートはお脱ぎになりますか?」
 と声をかけられて、私は首をふる。
「いえ、大丈夫です」
「そう。僕のことはワーグナーと呼んでください。そちらのファーブルと同じ、会員のひとりです。聖夜協会についてはご存知ですか?」
「ええ、はい。来る途中に」
 ワーグナーは朗らかに笑う。
「よかった。ワーグナーなんて大げさな名前、聖夜協会のことを知っている人にしか名乗れませんからね」
 どうやら話しやすそうな人でよかった。
 私は、正面の棚を指さして聞いてみる。
「これ、なんですか?」
 でも答えは別の方向から帰ってきた。
「まったくわからないわ」
 私と同じくらいの歳の女性だ。
 今この部屋にいるのは、私のほかには、ファーブル、ワーグナー、そしてこの女性の3人だけだった。
 彼女は明るい笑みを浮かべる。
「よかったわ、同じくらいの歳の人がいて。私はベートーヴェン。まだ聖夜協会に入ったばかりよ。よろしく」
 私も、同性で歳の近い相手がいてよかった。
「はい、よろしくお願いします。ええと、ベートーヴェン、さん?」
「なんかこの集団では、偉人の名前で互いを呼び合うのが通例みたいなのよね。山本さんは、どうしてこの懇親会に?」
「センセイという人からメールを貰って」
 ほう、とベートーヴェンは呟く。
「メールね。私たちは手紙だったけれど。ともかく今夜の主賓は、あなただって噂よ」
 それは意外だ。
「どうして? メールよりも手紙の方が丁寧じゃないですか?」
「わからないけどね。私たちの招待状にも、いちいち貴女をよろしくって書かれていたもの。それに――」
 ベートーヴェンが視線で、テーブルの上を指す。
 そこには小さな白いメモが載っていた。
 ファーブルがいかにも作り物の笑顔を浮かべて、そのメモを手に取る。
「ここにはね、22時にセンセイへの部屋の扉が開くと書いてあります。そのとき、まずは山本さん、貴女ひとりだけで部屋に入るように、ともね」
 なんだ、それ――。
 でも。
「メールでも受け取りました。22時に会おうって」
 ふん、とファーブルが鼻を鳴らす。
「それまでに貴女が、センセイの元に辿り着ければいいですがね」
「どういう意味ですか?」
 この洋館はそれほど広くはなさそうだ。辿り着くのが大変、とは思えなかったけれど。
「左右に扉があるでしょう?」
 とベートーヴェンが言う。
「どちらも今のところ、鍵がかかってるわ」
 試してみたら? と言われて、私は右手の扉に歩み寄る。
 だが、ドアノブを引いても、押しても、確かにその扉は開かなかった。
 かわりに扉には、なんだかきらきらと輝く文字が並んでいる。

       ※

 「や」のついた
 たなのもののな
 ならばせ
 せんたーをよめ

(この扉は19時45分まで開かない)

       ※

「こっちは19時45分。もう片方は、20時30分まではひらかないそうよ」
 なるほど。
「でも、なら待っていたらいいだけじゃないんですか?」
「ううん。なんか、特別なことをしないと扉は開かないんだって」
 ほら、とベートーヴェンがまた扉を指す。
「あの、『や』のついた棚のものがなんとか、っていうのをどうにかしないとけいないみたい」
 なんだ、それ。どういうことだ。
「センセイは、こういったイベントがお好きなんですよ」
 とファーブルは笑う。
「どうやら今夜は貴女が主賓のようですから、謎解きはお任せいたしますよ」
 と、そう言って、ファーブルは席についた。

読者の反応

ユノノギ@3D小説第一部バッヂ制作班 @yunonogi
わーーーーーぐなーーーーーきたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ


悠梨@bellの音色は鳴り止まぬ @pear84
センセイまためんどくさい仕掛けをwwwwwwwwww 


キョン@3D小説謎解き係(希望) @okitakyontoki
ちょっと待って!著者さんドジってる!内容は言えないけど書いちゃダメなこと書いてあるよ!!!!!!!
(※編注 掲載当初に登場人物名の誤表記がありましたが、現在は修正されています)


KK @seioukk02
誤字は気にするな!! 


かぐら大佐@埼玉ソル @bell_colonel
何も見なかった!!!!はい!!!!!自己完結!!!!!!


KURAMOTO, Itaru @a33_amimi
@rapiss らじゃっすw #3D小説 #3D小説閑話


いちごみるく @pon_hane
あ、直った、いや最初からこうだったんだ(記憶改竄)


かぐら大佐@埼玉ソル @bell_colonel
修正wwwwwwwwwwwwwwwwwww


ラピス @rapiss
あー笑った笑ったwえっと次は何をすればいいんだっけ? 





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