『その部屋で血を流したのはメリーかもしれない』
※
メリーが、血を流した。
山本とあったとき、センセイはまだ生きていたように装うために。
それは本来、センセイと真犯人の会話だった。だからところどころ食い違いがあった。
ニールはおそらく、ノートPCに保存されていた監視カメラの動画を使ったのだ。でもその監視カメラがどこにあるのかまではわからなかった。だからノートPCを壊して満足していた。
ニールは、山本が紅茶に入れた薬が睡眠薬だと知っていたのだろう。
これは完全な当てずっぽうだけど、真犯人から聞いたというのが、いちばん説得力があるように思う。この予想も、真犯人がセンセイにとって親しい人物だったことを指している。
ともかく少年ロケットのきぐるみにひそんだニールは、山本に睡眠薬を飲ませることに成功した。
山本が眠ってしまってから、彼はセンセイの左脇にナイフを突き刺す。
なぜ、センセイは刺されなければならなかったのか?
――だから、なのか?
センセイは、流れた血で真犯人の血を隠すためだけに、刺されたのか?
それは、めちゃくちゃだけど、辻褄が合うような気がした。
なぜか不自然に左脇を刺されたセンセイ。
一度、ナイフの根本に付着し、拭われた血。
その痕跡が発見されるのをおそれて、ニールはルミノール試薬の使用を強く拒んだ。
ニールは、徹底的にメリーの痕跡を消そうとして。
そのために、センセイを刺したのか?
※
そこまで考えたとき、ふいに、強いめまいに襲われた。
視界がぐるぐると回り、思わず膝をつく。
気持ち悪くて、目を閉じた。
――なんだ?
オレの身体に、なにが怒っている?
ふいに、声が聞こえた。
――条件を達成しました。
――リュミエールの光景、起動します。
そして、暗い視界に、光が射した。
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それは白い、長方形をした光だった。映画のスクリーンのような。
白いスクリーンの左下に、ふっと文字が浮かぶ。
――リュミエールの光景、起動。
【BREAK!!/BAD FLAG-08 推理失敗 回避成功!】