めるまがアゴラちゃんねる、第116号をお届けします。
配信が遅れまして大変申し訳ございません。


コンテンツ

・今週の池田信夫
 アゴラ研究所所長、池田信夫のエントリーでアクセスが多かった記事、アゴラ・チャンネルの動画を紹介します。

・ゲーム産業の興亡(128)
毎日2億円を稼ぎ出す「モンスターストライク」ブームのmixi
新清士(ゲームジャーナリスト)


アゴラは一般からも広く投稿を募集しています。多くの一般投稿者が、毎日のように原稿を送ってきています。掲載される原稿も多くなってきました。当サイト掲載後なら、ご自身のブログなどとの二重投稿もかまいません。投稿希望の方は、テキストファイルを添付し、システム管理者まで電子メールでお送りください。ユニークで鋭い視点の原稿をお待ちしています http://bit.ly/za3N4I

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今週の池田信夫

資本主義の不平等化は避けられない - 『大格差』
http://agora-web.jp/archives/1618564.html
1980年代以降、格差が拡大する現象が先進国に共通にみられるが、これには次のような原因が考えられる:
 1. 技術革新
 2. グローバル化
 3. 資本蓄積

「G型幻想」を捨てよう
http://agora-web.jp/archives/1619809.html
冨山和彦氏のG型/L型モデルでみると、日本経済の問題がすっきり整理できる。今まで経済学者も官僚も、G型が無条件にいいと信じて「スーパーグローバル大学」などの恥ずかしい政策を打ち出し、それに反発する側は、本書のように「反グローバリズム」をとなえる。本書は「原...

G型とL型に分岐する社会 - 『なぜローカル経済から日本は甦るのか』
http://agora-web.jp/archives/1619650.html
先月の「G型大学とL型大学」という記事には大きな反響があり、ニュースにもなった。これは「L型大学」のイメージが、私立文系の大学によく当てはまるためだろう。ただニューズウィークにも書いたように、もっと本質的な変化は日本社会そのものがG型とL型に分岐することだ。

1000兆円の借金を返す方法
http://agora-web.jp/archives/1619938.html
「クルーグマン教授、“消費増税で国債暴落”論を一蹴」とかいう支離滅裂な記事が出ている。「国債暴落」というのは金利上昇と同じことだが、本文では彼は「株価が暴落する可能性を指摘する経済専門家もいるが、金利が低いままとどまり、円安のおかげで日本企業がますます競...

G型大学とL型大学
http://agora-web.jp/archives/1618134.html
富山和彦氏のプレゼンテーション「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性」が話題になっている。

世代間戦争としての「原発再稼動」
http://agora-web.jp/archives/1619974.html
川内原発の「再稼動」が決まったことで、また原発が注目を集めているが、NHKニュースの世論調査はちょっと意外な結果だ。上の図のように、「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合計した回答は、30代以下でもっとも高い。この結果について、小林傳司教授なる人物が、次のよ...


【アゴラVlog】朝日新聞世紀の大誤報 慰安婦問題の深層
http://youtu.be/yd1UXTecs4U?list=UUJHLwoEJ55msgoxeiqJjOvA


特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

ゲーム産業の興亡(128)
毎日2億円を稼ぎ出す「モンスターストライク」ブームのmixi


スマホゲーム会社関連の四半期決算が、11月8日に集中して、行われた。大きく目を引くのが、ブームを引き起こしている「モンスターストライク(モンスト)」のmixiだろう。

14年7~9月期の売り上げは222億3400万円と、モンストがリリースされる前の前年7~9月期が18億3400万円しかなかった。また、そのうちゲーム事業の売り上げは194億4700万円と、全体の87%を占めており、好調さが突出している。月に約64億円売り上げている計算となる。一日2億円の売り上げがあるという大当たりの状態だ。

モンストの売り上げは、14年4~6月期と比較しても、93.5%増加したと発表され、好調さなペースで拡大が続いている。今や、mixiはモンストの専業企業といってもいい状態になっている。


■「パズドラ」を抜き、首位に躍り出るのが常態化

決算説明会では、10月28日に発表になった、米調査会社AppAnieeの世界ランキングの売り上げトップパブリッシャーのランキングで5位に付けているとアピールしている。

ちなみに、1位は「クラッシュ・オブ・クラン」のフィンランドのSupercell、2位は「キャンディ・クラッシュ・サーガ」の英King、3位に、「パズル&ドラゴンズ(パズドラ)」のガンホー・オンライン・エンターテイメント、4位がLINE、6位がコロプラという推移だ。

mixiは、先月、コロプラを抜いて順位を一つ上げている。10位以内の日本企業は4社だ。ただ、日本の企業は各社とも、日本以外の国での進出にはあまり成功できていない。アプリのトップダウンロード数のランキングでは、10位以内に日本の企業はない。

モンストは今年1月には200万人のユーザー数だったが、10月には世界で1500万人のダウンロード数を記録している。

日本国内でのアップルのAppStoreでのトップ売り上げランキングでは、9月以降に、パズドラを抜き1位に出る回数が増加している。10月29日に行われたガンホーの決算では、9月には1位をパズドラがしめることができた日数は、17日で56.7%だったと発表が行われている。

モンストは10月には、1位となった日数は15日だったので、2年半にわたり常に首位を取っていたパズドラを抜き、首位となることが常態化しつつある。業績の急上昇を支えたのが、8月からのLINEとの提携で、4人対戦をすることを可能にしたことで、プレイするユーザー数が劇的に増加した。

ついにパズドラのブームが終わり、それに変わったのが、モンストのブームの時代になったと言ってもいいだろう。


■順調とはいえない海外進出

ただ、モンストのブームは、日本国内に限られる日本のゲームの特性には変化がない。世界進出しているとはいえ、5月に台湾版をリリースし、10月に北米版を提供しているのみで、まだ、完全にワールドワイドにリリースしているわけではない。

そして、北米版は決して好調といえる立ち上がりではない。10月24日にダウンロードランキングの最高位で355位につけたが、11月1日以降は1500位以下のランキング外となっている。売り上げランキングでは、250位前後に付けているものの、100位以内に入らなければ、大きな収益が望めないスマホゲーム市場では、好調といえる数値ではないだろう。

日本のスマホゲームは、海外ユーザーとの好みの相違などを乗り越えることができず、クラッシュ・オブ・クランのように、世界のどこでもヒットするという状態を生み出せてはいない。日本国内のユーザーの課金率と課金額の高さによって、支えられている世界的な高順位であるという国内市場頼みという状況には起きていない。

モンストは、11月に韓国版をリリースし、今後、提携している中国最大のゲーム会社テンセントを通じて、中国市場でのリリースが開始されるが、大成功は容易ではないだろうと見ている。韓国市場は小さく飽和状態にある。比較的成功している台湾市場でも100万ダウンロードまでしか達成できていない。

特に、中国市場で好まれるゲームは、大きく人気が出る要因となった4人の他プレイヤーと共闘できるというモンストが最大の売りとして、部分とは大きく異なっているためだ。一緒に遊ぶというよりも、相手を倒すタイプのゲームが好まれる。そのため、モンストは、中国のゲームユーザーの好みと少し違っている。

日本の国内市場がユーザー数の獲得面からいっても、飽和状態に向かっているのは間違いないのだが、今後、これ以上の成長をどこに見出していけばいいのかというのが難しいところだろう。


■「パズドラ」から学べる法則性

ただ、モンストの場合は、ガンホーという前例があるため、今後がまったく予想が付かないとまではいえないだろう。

第一に、まだまだガンホーの売り上げは高い状態にあるが、3100万ダウンロードを達成していても、パズドラを通じて、「どんな大ヒットをしているゲームでも、いつかはブームが去る」ということがはっきりした。ガンホーはユーザーの課金率は低下しているものの、無料で遊べる範囲を拡大するなど、多数の施策を打つことで、月間アクティブユーザーは今年に入って、安定していることをアピールしているが、これもいつまで続くかはわからないだろう。

第二に、「有力なヒットタイトルを持っていても、次の新規ゲームのヒットを生みだすのは容易ではない」ということだ。これはガンホーを含め様々な企業が直面している課題だ。結局、ガンホーはパズドラ頼みになっており、それ以外のタイトルで、ポストパズドラと言えるタイトルを生みだすのは難しい状況が続いている。

第三に、「続編、もしくは同一のブランドゲームを出して成功することも容易ではない」だ。7月にパズドラ内で卵のキャラクターを育成する「パズドラW」の新機能が追加されたものの人気を劇的に回復させることができてはいない。決算では「8月は新規ダウンロード数は増加したものの、想定よりも低め」と述べている。

mixiは対戦機能に焦点を置いた「モンストスタジアム(仮称)」を開発していることを発表した。ユーザーが4人対戦時に、2対2で遊んでいる様子が見られていることから、このゲームの検討を開始したということだが、「パズドラW」のような物ではなく、ブランドを利用してブームを継続できるのかどうかは、今後、注目できるだろう。

もちろん、mixiは、昨年の今頃では信じられなかったほどの高い収益を得ているため、様々な選択肢を取ることができる。単なるモンストだけの会社を脱皮できるのかには、否応なく注目せざる得ない。



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新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin