めるまがアゴラちゃんねる、第117号をお届けします。
配信が遅れまして大変申し訳ございません。


コンテンツ

・今週の池田信夫
 アゴラ研究所所長、池田信夫のエントリーでアクセスが多かった記事、アゴラ・チャンネルの動画を紹介します。

・ゲーム産業の興亡(129)
同人&インディゲームのイベントが示すゲーム市場の裾野の変化
新清士(ゲームジャーナリスト)


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今週の池田信夫

増税の賛否で政界を再編せよ
http://agora-web.jp/archives/1620314.html
急に解散風が吹いてきた。政治部の記者は、政策はアマチュアだが政局はプロなので、彼らの解説は信用できる。12月2日解散で14日投開票というスケジュールが有力らしい。その理由は消費税ではない。内閣支持率である。政治家が使うNHKの世論調査で、支持率は8%落ちて44%にな...

劣化する民主政治 - 『なぜ大国は衰退するのか』
http://agora-web.jp/archives/1620290.html
消費税の増税を延期して解散という話がにわかに現実味を帯びてきたが、これは政治的には合理的だ。このように厄介な問題を次の世代に先送りするのは、民主政治の必然的結果である。アメリカでも政府債務はGDPの7割に達し、戦時中の水準に近づいている。ローマ帝国の時代…

なぜ円安で不景気になるの?
http://agora-web.jp/archives/1620121.html
来年4月から消費税率を10%に上げることについて、「増税したら景気が悪くなる」という人が騒ぎ始めています。しかし増税しなかったら、景気はよくなるんでしょうか? 今年になって景気が悪くなったのは増税のせいなんでしょうか?

景気がよくなれば財政は黒字になるのか
http://agora-web.jp/archives/1620480.html
増税先送りを主張する人は「先送りで名目成長率が上がれば、財政は黒字になる」という。これは昔の「上げ潮」派の主張で、論理的には正しい。リーマン・ショックのあと成長率が回復したので、プライマリーバランス(PB)の赤字は縮小した。問題は、それが均衡するためにどれぐ...

「明るい焼け跡」からの再出発
http://agora-web.jp/archives/1620756.html
きのうのアゴラ読書塾では本書を読んだが、昨今の増税先送りをみていると、財政が崩壊して「焼け跡」になるのも、そう遠い将来ではないだろう。そのときのために、かつての敗戦がどういうものだったか、知っておくことは役に立つ。

G型とL型に分岐する社会 - 『なぜローカル経済から日本は甦るのか』
http://agora-web.jp/archives/1619650.html
先月の「G型大学とL型大学」という記事には大きな反響があり、ニュースにもなった。これは「L型大学」のイメージが、私立文系の大学によく当てはまるためだろう。ただニューズウィークにも書いたように、もっと本質的な変化は日本社会そのものがG型とL型に分岐することだ。

G型大学とL型大学
http://agora-web.jp/archives/1618134.html
富山和彦氏のプレゼンテーション「我が国の産業構造と労働市場のパラダイムシフトから見る高等教育機関の今後の方向性」が話題になっている。

1000兆円の借金を返す方法
http://agora-web.jp/archives/1619938.html
「クルーグマン教授、“消費増税で国債暴落”論を一蹴」とかいう支離滅裂な記事が出ている。「国債暴落」というのは金利上昇と同じことだが、本文では彼は「株価が暴落する可能性を指摘する経済専門家もいるが、金利が低いままとどまり、円安のおかげで日本企業がますます競...

世代間戦争としての「原発再稼動」
http://agora-web.jp/archives/1619974.html
川内原発の「再稼動」が決まったことで、また原発が注目を集めているが、NHKニュースの世論調査はちょっと意外な結果だ。上の図のように、「賛成」と「どちらかといえば賛成」を合計した回答は、30代以下でもっとも高い。この結果について、小林傳司教授なる人物が、次のよ...


池田信夫の【アゴラVlog】増税を先送りすると政府債務は発散する
http://youtu.be/pfmfnPiA03c
衆議院の年内解散総選挙の可能性が濃厚です。「消費増税延期の可否を問う」選挙ということですが、はたしてそのような悠長な政局争いをしている場合でしょうか。日本の財政は待ったなし。現状を改めて確認します。



特別寄稿:新清士(ゲームジャーナリスト)

ゲーム産業の興亡(129)
同人&インディゲームのイベントが示すゲーム市場の裾野の変化


11月16日に、秋葉原で「デジゲー博2014」というイベントが開催された。コミックマーケット(コミケ)などで、趣味で開発されてきた「同人ゲーム」や、大手企業に所属しない独立系開発者が作った「インディゲーム」の展示・販売イベントで、今年で2回目だ。

日本でも、インディゲームへの関心が高まりつつあるが、コミケはあくまでマンガなどの同人誌販売が中心で、ゲームの比率は全体としては多くない。近年はコミケへのゲーム関連の出展者は、減少気味と関係者からの声も出ていた。

自身もベテランの同人ゲーム開発者の主催委員長の江崎望氏によると、デジゲー博は、出展サークル数は、162サークルと募集予定の150を大幅に超え、昨年の2倍に達したという。入場者数についての正式発表は、まだ行われていない。感覚的には数千人規模の入場で、これも昨年の約2倍にはなったのではないかという。


■海外で広がるインディゲーム、遅れる日本

海外では、インディゲームの大きなブームが、この10年あまりに間に着実に広がってきている。特に、09年にリリースされ世界的にブームになった「マインクラフト」(PC、Xbox360、PS3、iPhoneなど)いった最も成功したゲームは、今年10月までに5400万本の販売する途方もない成功にまで至っている。

そして、開発会社のスウェーデンのMojang(モーヤン)は、今年9月に、マイクロソフトに25億ドルで買収されるという途方もない結果を生みだしている。製品のリリース時には、わずか7人で開発していた企業のサクセスストーリーだ。

この成功は極端なレベルの動きだが、それでも世界的に見ると数人の開発チームで数十万本の売上を達成しているケースは少なくない。競争は激しくなっており、ゲームを作ればヒットするという状況でなくなってきているものの、優れたゲームが次々に出てきている状態だ。世界的に見てインディブームといってよいただ中にある。

一方で、日本では、こうしたインディゲームの成功は、まだ登場していない。

デジゲー博は、海外の動きも含め、日本での同人&インディゲームの盛り上がりを生み出せないかと、同人ゲームの開発を長年行ってきた開発者たちが中心になって企画したイベントだ。

80年代後半から、90年代前半にかけては「パソケット」という同人ゲームだけを対象としていた即売会イベントが存在していた。ピーク時には週に1度は日本のどこかで、そうした即売会イベントも開催されていたようだ。しかし、90年代は、家庭用ゲームが中心となり、パソコンゲームが廃れていった影響もあって、いつしか同人ゲームだけに特化したイベントは開催されなくなった。

00年代に入ると、3Dグラフィックスの技術が求められるようになったことで、ゲーム開発は非常に敷居の高いものになってしまい、PCゲームの市場もあまり存在しない日本では、同人(アマチュア)のゲーム開発者の数は増えなくなってしまった。

同人ゲームを、新規に作る開発者はあまり増加せず、開発者も年齢を重ねベテランばかりという状態になってしまったと言われるようになった。


■裾野の広がりを生む開発者をどのように増やしていくのか

ゲームの開発環境は、10年前後から、UnityやUnrealといった安価な開発環境が登場したことで、開発自体は行いやすい状態が生まれた。しかし、新規にゲームを作り、発表をする人が増えないという状態が起きてしまった。

そのため、江崎氏たちは、コミケとは違う形で、ちゃんとゲームが主体になるイベントの必要性を感じて、昨年11月、デジゲー博を企画した。パソケットの復活を目指したのだ。

すでに、スマホゲームはネット配信によって、ゲームを展開できる時代に、リアルなイベントにニーズがあるのかと危ぶまれたのだが、結果的に、大きな反響を得て成功を収めることができた。

リアルなイベントの良さは、多様な意図を持ったサークルが参加してくるため、非常にバラエティに富み、裾野を広げる効果がある。

参加しているサークルには、単なる趣味でゲームを開発しているサークルが展示をしているところから、実際に販売してヒットを目指すサークルが宣伝目的で出展しているところ、開発ツールを宣伝しているところ、その場で同人ゲームを販売することを目指しているところ、Oculusのような新しいVRデバイスでのデモを行うところなどがあった。

これまでの古い同人サークルから、新しくゲーム開発を始めた若い層まで、多様なサークル参加があったようだ。それは参加者の側にもいえ、社会人から高校生といった一般のユーザーから、様々なプロのゲーム開発者も見学に訪れていた。


■日本でも広がるインディゲームの動き

ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が、「プレイステーション4」向けに、インディゲームをサポートすることを強調していることもあり、日本国内でも注目が着実に集まってきている。

9月に、サイバーエージェントが、クラウドファンディングサービス「Makuake」でインディゲームに力を入れていくと発表している。

会場には、商品展開の可能性がないかと探している、ソーシャルゲーム系企業の姿も見受けられた。

デジゲー博のようなイベントは、インディのみならず、アマチュアも含めたゲーム開発者の裾野を広げることを、着実に進むきっかけとなるように思われる。今後も、成功例が出てくるにしたがって、さらにこうしたイベントの重要性は増してくるだろう。

終了時には、来年の開催も発表が行われた。



□ご意見、ご質問をお送り下さい。すべてのご質問に答えることはできないかもしれませんが、できる範囲でメルマガの中でお答えしていきたいと思っています。連絡先は、sakugetu@gmail.com です。「新清士オフィシャルブログ」http://blog.livedoor.jp/kiyoshi_shin/ も、ご参照いただければ幸いです。

新 清士(しん きよし)
ジャーナリスト(ゲーム・IT)。1970年生まれ。慶應義塾大学商学部、及び、環境情報学部卒。他に、立命館大学映像学部非常勤講師。国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)名理事。米国ゲーム開発の専門誌「Game Developers Magazine」(2009年11月号)でゲーム産業の発展に貢献した人物として「The Game Developer 50」に選出される。日本経済新聞電子版での執筆、ビジネスファミ通「デジタルと人が夢見る力」など。
Twitter ID: kiyoshi_shin