ご存じない方も多いと思うので、改めてMIKU STOMPについて紹介してみましょう。これは簡単に言うと、ギターを演奏すると、そのメロディーに合わせて初音ミクが歌ってくれるという不思議な機材です。そう、ギターからの入力音からピッチを検出し、その高さで初音ミクが発音すると同時に、歌声の長さもギターからの音に合わせてくれるのです。長い音符で歌わせることもできるし、短く切ればスタッカートで発音してくれるというわけです。またチョーキングをかければ、それに歌声も追従してくれるし、ビブラートにも対応してくれるという優れものです。ただし、発音できるのは単音で、和音には対応していません。そのため、“ジャラーン”とストロークで弾くと、わけのわからない発音になってしまいますから、このへんは演奏における注意点ですね。
↑初音ミクがプリントされたMIKU STOMPの本体デザイン。単3形乾電池×2本で駆動し、電池寿命は約5時間。KORGのMIKU STOMPの紹介ページを見ると「ギターでミクが歌う! コンパクト・エフェクター」とあります。確かに見た目はギター用のエフェクターだし、接続のしかたもギター・エフェクターと同じですが、感覚的にはエフェクターではないですね。強いて言えば、ギター・シンセサイザーです。ROLLYさんも「ギター・シンセにすごく近い感じですね。弾いてから発音するまでにレイテンシーがあるのも、そっくり。このレイテンシーを考慮して弾くのは、なかなか慣れが必要ですなぁ」と話します。
レイテンシーというのは、音の遅れのこと。ギターを弾いてから、その音の高さや長さを分析したうえで、初音ミクに歌わせるという処理をデジタル的に行なうため、どうしても処理に時間がかかり、音に遅れが生じるんでしょう。実際にギターの弦を爪弾いてから初音ミクの歌声が出るまでに0.1秒程度の遅れがあることが、ギタリスト的には違和感を感じるんですよね。
ここでもうひとつ気になるのは、歌詞はどうなるのか、ということです。MIKU STOMPの本体にはローターリースイッチがありますが、これを使って歌詞をコントロールするようになっています。計11種類のモードが選択でき、たとえば“Ahh”を選択すると「アー、アー、アー」と歌い、“Looh”なら「ルー、ルー、ルー」、“Nyan”なら「ニャン、ニャン、ニャン」という具合です。この各種モードの中でおもしろいのが“Random 1”と“Random 2”です。Random 1はランダムに日本語の歌詞を歌ってくれるモードで、MIKU STOMPに登録されている約1000語ある単語を、それっぽい感じで歌ってくれます。ランダムなので意味はでたらめですが、名詞、動詞、形容詞、副詞、接続詞をそれなりの順番で歌うので、なんとなく日本語っぽくなるんですよね。ちなみに、Random 2は日本語でも英語でもない外国語を200語ほど集め、カタカナ発音で歌わせているそうです。
↑「アー、アー、アー」や「ニャン、ニャン、ニャン」など、全11種類の歌詞パターンを選べるロータリースイッチを搭載。ここで、ROLLYさんがひっぱり出してきたのがFenderの『G-DEC3(ジーデック・スリー)』という機材。SDカードに入れたMP3楽曲を再生しながらギターを弾けるという高機能なギターアンプです。とりあえず著作権フリーの楽曲をバックに鳴らし、ぶっつけ本番で弾いてもらったのが以下の音源です。
ROLLYさんが慣れずに、試行錯誤している雰囲気が聴いてとれると思います。ROLLYさんが初音ミクを歌わせているという事実が、なんとなくシュールというか、不思議な感じですよね。「やはりレイテンシーで合わせられるようになるには、少し練習がいるなぁ……。いまのは曲を知らずに、初めて聴いた曲に合わせながら弾いているから……」とは言っていましたが、ROLLYさんが弾くと、うまく収まっちゃうんですよね。
しばらく使ってみたROLLYさんは、「せっかくなら、自分で考えた歌詞でも歌わせたい」とやる気満々。MIKU STOMPはそうしたことも実現可能なのですが、そのためには多少のステップが必要。この詳細については、次回の後編でレポートしてみたいと思います。
記事の感想はROLLYさんのツイッター(@RollyBocchan)まで。週刊アスキー本誌にも掲載しています。
『MIKU STOMP』
●実売価格 1万4000円前後(記事作成時の価格です)
●コルグ
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