「言葉」
その日、娘は泣きながら学校から帰って来たという。
いつもは誰かと一緒に帰って来ている ( 学校では防犯的な観点から「できるだけ複数で帰ること」が推奨されている ) にもかかわらず、この日はひとりで帰って来た。心細かったのだろう。悲しかったのだろう。近くまで迎えに来ていた妻の顔を見た途端、泣き出してしまったそうだ。
何気なく言われた「ある言葉」に傷ついたという。言った本人に悪気はないのだろうし、おそらく言ったことも忘れているだろう。もしかすると別の誰かが同じことを言われても聞き流していたかもしれない。それでも娘は傷ついていた。
娘の感受性をよく知る親としては傷つくのも理解できるし、正直聞いていて気持ちの良い話ではない。一方で、娘が同じことを誰かに言っていたらと想像している自分もいた。無邪気だった娘にいつの間にそんな邪気が芽生えたんだろうと頭をハンマーで殴られたようなショックを受けるような気がした。
「言うより、言われる方で良かったね」と次の朝、ぼくは娘に言った。 「言った子の親は悲しいと思うよ」と。 「でも言った子は親に言わないよ。言われた子は親に言うけ...