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差別はネットの娯楽なのか(11)―Bong_Lee「ネット右翼、ネオンくんってどんな人なんだろう?『死ね、殺す』という言葉を安易に使う人たち」
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差別はネットの娯楽なのか(11)―Bong_Lee「ネット右翼、ネオンくんってどんな人なんだろう?『死ね、殺す』という言葉を安易に使う人たち」

2013-02-24 16:04
    and_292264.jpg在日コリアンが実名でTwitterをやっていると、誰もが一度はネット右翼的な人や、排外主義者に絡まれる。在日コリアンに関する問題から日韓の歴史、韓国の政治、共和国の各問題まで、ありとあらゆる角度から「議論」という名の難癖や、「質問」と称した嫌がらせを受ける。

     

    例え悪意はなく、自分はたった一つの質問のつもりで、それが初めてのことでも、在日コリアン側にとってそれは何度も繰り返し語って来たことだったりする。見知らぬ人からメンションが付くたび、その内容を見てため息をつくことも多い。そういったことから、Twitterをやめ、Facebookへと移行した在日コリアンも多い。

     

    その中でも、@neon_shuffle(以下、ネオン氏)というアカウントの彼は、在日コリアンや、在日コリアンに好意的な日本人に対して執拗にメンションを飛ばすことでも知られている。私もたびたびやりとりをしたことがあるが、先日はあるところで目にした。

     

    それは、リアルでも交流のある、在日コリアンの青年、Bong_Lee氏(いつもは凡ちゃんと呼んでいるので、以下凡ちゃん)のつぶやきからだった。彼のつぶやきは、この連載でも何度か引用させてもらったことがあるが、いつも心を揺さぶる。今回もまた、そうだった。

     

    ここ数日ネオンくん@neon_shuffle と話したけど、やっぱりちょっとよくわからない言葉を投げかけられて困惑している。「在日が日本でのうのうと暮らして民族教育受けるのは本土の人の飢餓や貧困をそのままにしてる、差別だ。そんなお前はクズだ、死ね」みたいなことを延々と言われてる。

     

    ネオンくんがいつものように絡んで来たきっかけは朝鮮学校の無償化除外の件で俺がつぶやいたことを見つけたことだと思う。日本で生まれ育った俺に対して「朝鮮へ帰れ」というのも平常運転なんだけど、こういう言葉を投げかけられることに慣れつつあるのもまた怖い。@neon_shuffle

     

    ちょうどこのつぶやきの少し前、朝鮮学校の無償化除外、補助金問題についての報道が相次いだ。共和国の核実験の時もそうだが、朝鮮半島で事件が起こると矢面に立たされるのは在日コリアンであり、朝鮮学校だ。ネット上でも、それは例外ではない。

     

    在日のほとんどは日本で生まれ育ち日本で死ぬ。民族教育は自分達のルーツを求める自然な欲求だと思うし、世界中で色んな人たちが色んな試みをしている。自分のルーツの言葉や文化、歴史やその他もろもろを学べるっていう環境を整えるっていうのは、やっぱり重要だと思う。@neon_shuffle

     

    朝鮮学校無償化除外の問題は朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の拉致問題とミサイル、核開発が進展しないからというものだけど、朝鮮学校の生徒たちがどうやって関与できるのか、ネオンくんが「お前が朝鮮の人間を餓死させている」というのと同じくらいわかんない。@neon_shuffle

     

    高校まで朝鮮学校に通い、大学から日本学校に進んだという彼は、朝鮮学校と日本の大学、総連や韓国、共和国、そして日本社会に対する自分の等身大の思いを淡々とネオン氏に語りかけるスタイルでつづった。

     

    彼自身が日本の大学で学び、さまざまな人とも出会う一方で、ネット上では差別があふれかえっていった。現在では新大久保のデモなど、現実の世界にまで飛び火して「死ね、殺す」という言葉が溢れかえっている。それらと対峙することの辛さなど、まるで自分のことのように頷きながら、時に胸が締め付けられる思いの中で、彼のつぶやきを読んだ。

     

    (全文はTogetterの「ぼん(Bong_Lee)さんによる、ネトウヨと朝鮮学校の補助金問題などに関するコメント」http://togetter.com/li/460029 をどうぞ)

     

    ラストの

     

    正直ネットつらいなと思って、そろそろやめようかな、と思ってたんだけど、まぁもうちょいと頑張ろうと思ったきっかけがあったんですよ。それはとある大学のとある学生が、うちらのことに興味持って話を聞いてくれて、文章を書いてくれたこと。とても勇気がわいたんだよ。

     

    俺に勇気をくれたのは若い日本人。そういうのがさ、いいよね。なんかさ、いいよね。

     

    という部分まで、つぶやきをずっと追いかけた。まるで上質の青春小説を読んでいるかのような錯覚に陥るほどだったし、読後には炭酸水を飲んだ時のような爽やかさに包まれた。

     

    Twitter上でも、凡ちゃんに対して「私の尊敬してる人」、「正直、凡さんみたいな人が東アジアの希望だと思います」、「感動した!」、「ぼん君に何かおごりたい」といった声が数多く並んだ。

     

    強い言葉、誠実な言葉はこんなにも人の心を掴み、安心させてくれるものなのだと思ったし、TLが久しぶりに明るい話題で包まれた夜だった。最初、このつぶやきが始まった時は、「もしかして凡ちゃん、Twitterをやめるのでは?」と思い、そうであれば延々彼に絡んだネオン氏を許さないと早合点したが、そうでなかったことでも安心した。とても素敵な夜だった。

     

    そして、一夜明けた朝からは、いつものように残酷な日々が始まった。凡ちゃんのつぶやきが「在日韓国人のBong_Leeさん 『最近ネトウヨに死ね、殺すみたいなことを延々と言われてる』」と題して、2ちゃんねるで取り上げられていた。そこから派生した「まとめサイト」は、途中で読むこともできなかった。

     

    私は2ちゃんねるは玉石混淆であり、匿名性のヘイトスピーチも多いとはいえ、独自の文化も生み出しており、すべてを否定することはできないと思っている。

    問題は、「まとめサイト」だ。この世界の情報は、すべては切り取られたものであるかもしれないが、「まとめサイト」の多くは、ネット右翼と呼ばれる人々をターゲットに絞り込み、それらを煽るような作りに特化している。

    2ちゃんねるの中にある差別的な書き込みばかりを抜き出し、色つきの大きな文字で飾る。まとめサイトだけを読んでいたら、在日コリアンに対する差別やヘイトスピーチが、この社会の一般的な意見であると思い込んでしまうだろう。また、多くのネット右翼も、自分の差別意識を正当化させるために読むのかもしれないが。

     

    ネット右翼ってどういう人なんだろう?ネオンくんってどんな人なんだろう?ってよく考える。「死ね、殺す」という言葉を安易に使う人たち。ネオンくんは「嫌がらせ、厭味」といってたけど一日のうち多くの時間を人を嫌がらせる言葉を捻り出すモチベーションは何なんだろう。@neon_shuffle


    らちが開かないので「会おう、焼肉食いに行こう」と何度も誘ったけど全部断られている。彼はこの先「死ね、殺す」と街角で叫ぶ人たちにちやほやされながら、社会のぬかるみのようなところでいつまでも同じ「嫌なこと」を書き続ける無残な物書きとして生き続けるのだろうか。@neon_shuffle

     

    私には、2ちゃんねるの中の在日コリアンへ差別意識を抜き出し、増幅させるまとめサイトと、在日コリアンにある種の憎悪を抱き、延々と絡み続けることでネット右翼からの支持を集めるネオン氏が、重なって見えた。どちらもネットの深い闇の中にある、沈殿した澱のような「差別」と「悪意」をすくい上げ、拡散している。拡散したその先に、何があるというのだろうか。

     

    (李信恵)

    画像: 「ぼん(Bong_Lee)さんによる、ネトウヨと朝鮮学校の補助金問題などに関するコメント

    – Togetter」のキャプチャー

    http://togetter.com/li/460029

    ※この記事はガジェ通ウェブライターの「李信恵」が執筆しました。あなたもウェブライターになって一緒に執筆しませんか?

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