環境委員長解任を受けて

今回は『川口順子オフィシャルサイト』からご寄稿いただきました。

■環境委員長解任を受けて
『環境委員長解任を受けて』
参議院議員 川口順子

まず、国会や国民の皆様に、今回のことで、ご迷惑をおかけしたことは、申し訳なく思っております。

また、多くの皆様に激励のお言葉をいただきました。誠にありがたく、今後ともしっかり考え、実行にうつすとの姿勢を貫いてまいる所存です。引き続きよろしくご指導ご鞭撻いただきますよう、お願い申し上げます。

解任決議を受けて、今の思いを書きとどめました。ご一読いただければ幸いです。

●環境委員長解任を受けて
憲政史上初めての常任委員会委員長の解任ですが、これは、野党が憲政史上初めて、数のみを頼りに、党利党略で、常任委員会委員長解任を行った事件です。このことは明確に記録され、歴史が、そして国民が、この政治責任を問い続けることになるでしょう。

私は、領土と主権を守り、日中関係を改善するという重要な国益を守ったことにより解任されたわけですので、国会の判断は理不尽と言わざるを得ません。

今回の解任決議に関して、私は以下の二つの点について、国会の中はもちろん、国民の皆様に批判的かつ建設的にご議論いただきたいと思います。

第一に何が国益なのかという問題です。

私は、政治家は、何が我が国の国益かを行動の規範とすべきであると考えます。どのような大局観、歴史観をもって、相克する国益に優先度をつけていくかが、いつも政治家に問われています。国民の皆様に、その考えかたをお伝えすることも大事です。

私及び自民党は、厳しい日中関係にかんがみ、日中関係の改善という国益と環境委員長としての責務を果たすという二つの国益間の相克を考え、真剣に悩んだ上で、現時点では、日中関係の方が優先されるべきと判断しました。25日に予定された環境委員会の5分間の法案趣旨説明は、規則により委員長の代理を立てることで対応可能だったこともありました。

野党は、今回の件に関し、この国益相克の問題をどう判断したか、まったく述べていません。野党の解任決議提案理由には、「国益」の「こ」の字もありません。一体野党は、領土を守り日中関係を改善する国益を、そもそも比較考量したのでしょうか。どういう理由で私の滞在延長に反対したのでしょうか。まさか、「一度決めたことだから」ではないと思いますが、まったく説明がありません。

解任決議を提出するのであれば、少なくとも、この相克問題を真正面から議論すべきでした。それにより、国益や国会に対する国民の理解も深まったと思います。国益を判断することから逃げる野党、適切な国益の判断ができない野党が数を頼みに日本の政治をミスリードした今回の件で、国民の政治不信がまた高まることを残念に思います。日本の野党の劣化を象徴する案件です。

私が、勝手に委員長の義務をすっぽかしたと野党は言います。そうではありません。代理で委員会を開催しようとの提案を野党が反対しました。反対の理由は、これまたわかりません。国会を円滑に動かす国益を認識していないとしか言いようがありません。ルール通りに事を進めることに反対をしておいて、ルールを守らないことを解任の理由にするのは、不可解です。ルールは国益を守るために活用するものです。結果的には、飛行機搭乗時間に議院運営委員会の決定は間に合わず、時間切れになりました。

野党の判断は、日中関係改善の国益と環境委員会の審議を円滑に進める国益の両方を失わせるものでした。

この場合、どのような判断が正しかったか、十分にご議論いただきたいと考えます。

第二に、国会のルールや申し合わせが今後の我が国や世界の発展に貢献するものとなっているか、足を引っ張っていないかという問題です。

今回、国会議員の海外出張のルールが問題となりました。現在、国会開会中の委員長の海外渡航は、原則的に自粛することになっています。しかし、議員外交の中で、特に委員長が外国で果たす役割は大きいのですが、それが容易に認められないのが現状です。もっと重要な、政府を代表しての総理や閣僚の海外渡航にも、大きな制約があります。

これでよいのでしょうか。グローバル化する国際社会にあって、我が国が第三の経済大国に相応しい役割を果たしていくために、また、国際的な孤立に陥らないために、国民各層の国際社会との交流が必要です。閣僚には海外で国益を追求してもらい、国会答弁は副大臣が対応できるよう柔軟にすべきです。

私も外務大臣や環境大臣時代に、国連総会もトンボ帰りでしたし(外国の外務大臣は最低1週間は出席し、様々な会談を行います)、週末にベルリン、パリ、ロンドンを回り、月曜日には国会で答弁をしていたなど、海外に行くために大変な綱渡りをしました。

日本の閣僚は外国の閣僚と、閣僚相互で信頼関係を築く機会に恵まれません。これは、日本にマイナスです。委員長も同じです。委員長代理も委員会をもっとしばしば開くことができるようになるべきと思います。このような状況を変えない限り、国際社会での日本の存在感はどんどん小さくなってしまいます。

現在日本に問われているのは、自己完結的な国内のシステムを自らの意思で積極的に変え、世界の国々とのインターフェースを幅広くとることができるかどうかです。これは今後の日本の生き方を見通した時に、日本にとっての死活問題だと考えています。

議員が国際的な視野をもあわせ持つようになるために、大局的な見地から判断ができるようになるために、私は、今回の案件を契機に、国会ルールの見直しが行われることを願います。

そのための国民の皆様および国会議員同志のご賛同をいただければ、と思います。

以上

執筆: この記事は『川口順子オフィシャルサイト』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2013年05月15日時点のものです。

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