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反証可能性とは
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反証可能性とは

2013-06-29 20:00
    反証可能性とは

    今回はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

    ■反証可能性とは
    科学の健全性を維持する指針はいくつかある。以前説明した「オッカムの剃刀」もそのひとつ。ここでは「反証可能性」について述べる。

    反証可能性というのは、もしその主張が間違っていた場合に、それが間違いだと証明できるか否かということ。たとえば「お守り」の効果はどうだろうか?お守りを持っていても事故に合うかもしれない。

    しかしお守りを持っていたから軽微な事故で済んだのであって、お守りがなければもっと大事故になったかもしれない。この理屈だと、実際には守られていなくても、それを証明することができない。つまり反証可能性がないという。ゆえにお守りの有効性について科学で扱うことはできない。

       *   *   *

    疑似科学の一大勢力に「創造論」というものがある。進化論では原始的な生物が長い時間をかけてだんだんと複雑な生物に進化していったという考えをとる。発見される化石などもそれを裏付けている。

    創造論というのは、ほんの少し前に世界が創造者(神)によって作られたという考え方。この考え方にもとづくと、化石などもあたかも「数億年前に作られた」かのように、ごく最近神によって作られたことになる。

    原始的な生物が徐々に複雑な生物に進化していった「ように見える」のも、そういうふうに神が一瞬で作ったからだ。この創造論は反証できない。どんな証拠を持ってきても「すべては神がそういうふうに作った」で終わってしまう。なのでこれも科学とはみなされない。

    ま、「フッ、すべては計画通り」みたいな。どんなに予想外の事が起きても、「それが最初からの計画だったんだ」と(笑)。

    勘違いしてはならないのは、反証不可能性は「科学で扱えるか否か」であって、正しいか正しくないかではない。正しくてもそれを科学では示せないし、間違っていても科学ではそれを示せないということ。

       *   *   *

    反証可能性の説明はこれで終わりなのだが、これを誤った意味で使う人も少なくない。たとえば微量な放射線の人体への影響は、現在のところよくわかっていない。人間をまったく同じ環境下に閉じ込めて何十年も実験するわけにもいかない。

    なのでたまたま起きた事故(チェルノブイリ事故とか)や、自然放射線の高い地域に住んでいる人々のデータをいろいろ補正しながら、影響の比較を試みるわけだが、現在のところあまりうまく行っていない。

    なので実証が困難なのはその通り。しかしそれと反証可能性は全然別なものだ。放射線の影響については検証方法の進歩や新たな事故なので検証が可能になる可能性はある。現状検証できないのと、未来永劫論理的・原理的に反証が不可能なこととは違う。

    お守りの効力や創造論は、理論的に反証することが不可能。どんなに科学技術が進歩しても無理だろう。しかし現時点で実証でされていない&実証が困難であるというのは、それとは違う。

    「LNT説は実証できないんだから科学じゃない」という人がいて驚いたが、それは反証可能性というものを取り違えている。

       *   *   *

    あとついでに、「反証可能性」でググったら引っかかった池田信夫の記事。

    つまり、ある実験が反証になるかどうかは、人々がそれを反例とみるか例外とみるかというパラダイムに依存して決まるので、反証可能性は科学性の基準にはならない、というのが現在の科学哲学の通説である。

    「黒田東彦氏と反証可能性」 2013年04月24日 『池田信夫 blog』

    http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51853306.html

    さすが池田信夫。言ってることがわからない。というか「通説」って?池田信夫は

     ・ その学説が反証可能である(=科学として扱える)

     ・ その学説が科学的に正しい

    の2つを混同しているのではなかろうか。反証可能な学説の中に、科学的に正しい学説と正しくない学説がある。つまり「正しいか正しくないか」が科学的に判断できるというのが、反証可能性なのであって、正しいか否かそれ自体ではない。

    池田信夫が示すコペルニクスの例でいえば、コペルニクスの学説は反証されたことになる。つまり地球は自転していなかったと証明されたことになる。

    むろん現在ではそう考えられていない。コペルニクスの学説は正しいとされている。「コペルニクスの学説は正しくない」と判断したのは、慣性を考慮していなかったためであって、それだけのこと。

    つまり「慣性の法則を考慮しない地動説」は否定されたが、「慣性の法則を考慮した地動説」は、否定されていない。仮説A単独では成り立たなくても仮説A+仮説Bなら成り立つ余地がある。

    科学は間違う。現にこれまで多くの間違いをしてきた。ある学説が正しいか正しくないかを判断することはできない。せいぜいその時点でもっとも妥当と考えられる説でしかない。

       *   *   *

    ある実験が反証になるかどうかは、人々がそれを反例とみるか例外とみるかというパラダイムに依存して決まるので

    これもおかしな理屈。例外ならそれを例外とする合理的な理由が説明されなければならない。勝手に主観や独断で「これは例外だ」と判断していいわけがない。もしコペルニクスが「これは例外だ」と根拠も示さず言い張ったなら、科学者失格だろう。池田信夫は科学の考え方をわかってない。

    疑似科学系の研究者はしばしば都合の悪い結果が出た実験は独断で「失敗」として扱う。なのでたまたま都合がいい結果がでたデータだけを統計的に処理するので、妙なことになる。しかも当人はそれが適切でないことがわからないから困ったものだ。

    実験には誤差がつきもの。ゼロを中心にプラス側にもばらつくしマイナス側にもばらつくようなデータで、マイナス側だけを「失敗」と扱って捨てて残りのデータで平均をとったら、本来はゼロになる値がプラスの値になってしまう。で、「俺の説が有効なのはデータで証明された」と大喜びする。

    実験を「失敗」と判断するのに客観性・合理性が必要。間違ってもその理由に、その実験が証明すべき事を持ち込んではならない。しかし関係が複雑になってくると、「関係ない」ことを証明することが難しくなってくる。

       *   *   *

    池田信夫は以前「IT企業はノマド化していて会社に出社しない社員ばっかだ」と言っていた。なんかパラレルワールドに生きているのではないかと、本気で思いたくなる今日この頃。

    執筆: この記事はメカAGさんのブログ『疑似科学ニュース』からご寄稿いただきました。

    寄稿いただいた記事は2013年06月26日時点のものです。

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