やまだひさしさんインタビューラジオDJとして、そして『niconico』のMCでもお馴染みの、やまだひさしさん。現在も「ラジアンリミテッドF」や「ニコラジ」といった番組で活躍中だが、どうやら最近は更なる活動にも積極的だとか。そこで「ニコラジ」生放送直後のやまだひさしさんへお話を伺った。現在の活動とその狙い、2014年のやまだひさしさんが果たして一体何を目指すのか。本記事は、そのような視点でインタビューを行っている。

●『やまだひさしのやまちゃんねる通信』誕生

-最近新しい活動を始めたようですが……
やまだひさし:と言ってもメインは「二コラジ」と「ラジアンリミテッドF」ですね。この2つ、特にラジオは「2 way」といってリスナーとの双方向を大事にしていて、昔で言えば葉書、それがFAXになりメールになり、僕の番組は生放送なので電話も使ったり、更にTwitterも出てきました。とにかく、なるべく距離の近いところでコミュニケーションをとってきた。二コラジも同じように「コメントを拾う」ことでかなり近い存在のメディアであり続けられたと思っています。またドワンゴさんがやろうとしていることも、ネット上で完結しているサービスなのかもしれないけれど、超会議などのイベントにも積極的ですよね。

この「リアルなところに踏み込む」っていうハイブリッドさを愉しむのが、現代のメディアの面白いところだと思っているんですよ。じゃあ、そんな時代に僕自身は何をやるか? ということで引っかかったのがブロマガだったんですね。ただ、ブロマガも単純にブログの一つだと思っていたのが「文章だけじゃなく音声をアップしてもいいし、動画でもいいし、もっと言えばファンクラブ的なコミュニケーションツールにも使えるし」ということが分かって可能性を感じて。「だったら実際どんなものなのか」ということで「やまだひさしのやまちゃんねる通信(以下、やまちゃんねる)」というブロマガを始めてみました。

●良い番組を視聴者の力とともに運営していく、そんなメディアを作りたい。

-どのような活動をしていくのですか?
やまだひさし:今はまだ僕のネットワークであるミュージシャンとか音楽周りのゲストの力を借りて認知して貰っている段階です。ただ今後は音楽だけではなく、面白い人達を僕らしい切り口でゲストにお呼びして、トークなりで番組を充実していきたい。(今後の目標としては)そういった人たちにもメリットを還元していけないかなと思っています。

というのも、今までの番組では局がスポンサーを見つけてきて、僕は喋るだけであったものが、これからは全部そういったものも担ってみようかなと。たとえばゲストへの出演料等や経費もブロマガですべて賄えるような、対価をきちんと反映できる仕組みにしたい。音楽の人はプロモーションで来てくれることが多いですが、最初からスポンサーの力ではなく、良い番組を視聴者の力とともに運営していく、そんなメディアを作りたい。これは僕の中でも初チャレンジになります。

●濃い繋がりを持つメディア

-「メディアを作りたい」とはどういった意味でしょうか?
やまだひさし:震災以降、自由に喋れる場所が正直無くなった気がします。昔はニコニコ動画だけは許されていたのに、ニコニコ動画も大きくなってきたので今後は制約も出てきてしまうんじゃないかと。僕のことをファンになってくれる人達は、僕には歯に衣着せぬ発言をして欲しいんだろうなと思っていますし、自分自身も「じゃあ黙っていられるか?」と言えば黙れない性分的な部分もあります。それなら、その発信の場所をつくっていこうと。

ただ、マスメディアじゃなくていいんです。本当に欲しい人に対して濃い情報を正しくお伝えする、これはサービスの基本だとも思うんですけど、やまちゃんねるはそれでいい。マスメディアはラジオもニコニコもありますから、そこは大事にしつつ、濃い繋がりを持つメディアを持ちたいんですね。

例えば、既にライブの楽屋から生放送をするということをやりました。ブロマガであれば機材やスタッフもそこまで必要じゃないですし、機動力を活かしていく。実はミュージシャンの中には、テレビやラジオが苦手な人はたくさんいます。じっくりと時間を割き、丁寧にインタビューしてお互いの信頼関係を築いてリラックスした雰囲気で話してくれる言葉をしっかりファンに届けたい。その時間をつくることが既存のメディアではなかなかできない。かといって、ミュージシャンが自分のチャンネルを作って放送したとしても、ファンだけの場では広がっていかない。

●本気で追いかけてくれるファンの方々に本当に欲しいものを届けられた
アーティストの皆さんには、「ここなら伝えたいことを伝えられますよ」というメディアとして信頼を重ねていきたいと思っています。僕という"場所"に来てくれれば全く違う層にも届くかもしれないし、視聴者の皆さんは僕のブロマガをチェックしてくれれば新しい「何か」を見つけられる、そういうものにして行きたいんです。

さっきも言った通り、取材はどこでも行きます。レコーディングスタジオでもいいし、家がいいなら自宅にも行くし、追っかけて取材をする。まさに出前ですね。例えば『VAMPS(ヴァンプス:『L'Arc〜en〜Ciel』のHYDE(Vo & Gt)さん、『OBLIVION DUST(オブリヴィオン・ダスト)』のK.A.Z(Gt)により結成されたロックユニット)』には相当お世話になって、彼らのファンが沢山見てくれた。

彼らも信頼してくれて、ヨーロッパツアーの楽屋や最後にはホテルでまで取材収録をさせてもらえた。それは凄い需要があって、本気で追いかけてくれるファンの方々に本当に欲しいものを届けられたと思います。この幅を広げていって、例えば「ゲーム実況者と一緒に、やまだひさしがゲームをやったらどうなるか」とか、普段ラジオではゲストに来ないような文化人・政治家・料理人が来たらどうなるのか、そういったゲストの幅も広げていって、その結果どうなるのか、それを僕自身も知りたいんです。

-そういえばブロマガでは「美味しいチャーハンの作り方を教えて欲しい」と言ったことや、今後はディナーショー的なものをやってみたいというお話もしていましたね。
やまだひさし:やりたいですね、それこそキッチンスタジオを借りて会員だけを集めたりしてね。ブロマガではファンクラブ的な要素にも期待していて、もともとDJでファンクラブなんて無理だろうと思っていたのですが、これも今までと違う切り口という意味で行けないかと。ラジアンリミテッドで僕の特技や趣味は知っていたものの、そこまで深い話は出来ないですから、「やまちゃんねる」ではそういった活動もしていきます。実際に「美味しいチャーハンの作り方」は反応も良くて。マスでなければ、こういうメディアもアリだと思いました。

●「アジアを見ているんだよ」

-続いて、やまださんがリリースした中国語アプリに関しての質問です。こちらも挑戦的だなと感じたのですが。なぜアプリを出すことにしたのか。なぜ中国なのかをお聞かせ下さい。
やまだひさし:アプリも凄い複合的にチャレンジしています。まずは日本の中だけでは、そろそろビジネスとしてのパイも減ってくるだろうと。今は世界にもリンクしているのに未だに既得権益にしがみついていて誰もそれを声高に言わない。「新しい道を切り開いていかないと行けないのに、日本だけに依存している、それって大丈夫?」と。英語と中国語が出来ればほぼ世界中で通じますから、中国はそういう意味で魅力的だと思っています。そこで「ラジアンリミテッドF」では中国でも活躍している蒼井そらさんをお招きして「そらと一緒に言っCHINA」というコーナーを企画し、アプリもリリースしました。

そらと一緒に言っCHINA

そらと一緒に言っCHINA:TOKYO FM「やまだひさしのラジアンリミテッドF」のコーナー「そらと一緒に言っCHINAーっ」公式アプリ。中国を訪れた際の様子を漫画形式で再現し、中国語を学べる点が特徴。500円。

正直、あの企画を立ち上げた時は日中関係が良くて、もっと行けるなと思っていたんですが、ここ数年は中国で活躍してもなかなか日本のメディアは取り上げないですし、少し今は静観状態といったところでしょうか。ただ、人間同士仲が悪いまま終わるわけもないでしょうから逆に言えば今やっておけばと考えています。とにかく「アジアを見ているんだよ」というのを伝えたい。

●更なるチャレンジ
もう1つのチャレンジが番組販売です。ラジオは昔からあるメディアですが、未だに再放送等の販売制度が確立されていない。権利関係も複雑でOKが出ないんですね。しかし今の時代、再放送や二次使用を認めない手はないだろうと思っていたんです。僕もこういった話を制作会社の社長と話せるようになってきて「試しにアプリでオフィシャルに再放送を売ってみたい」と言ったところ実現しました。その結果、あのコーナーだけは4月から順番にバックナンバーとして番組販売していて、これはJFN(JAPAN FM NETWORK ASSOCIATION:全国FM放送協議会の略で、民間ラジオネットワークの1つ)で初の試みでもあります。

-アプリの魅力や、そこに込められた思いは他にもあるのでしょうか。
やまだひさし:もしかしたら、若い子達の夢が叶うきっかけにもなるんじゃないかという気持ちがあって、第2弾、第3弾をニコラジやラジアンFに出演してくれているゲストの為に開いていきたいんです。例えばニコラジの絵師スタントである五月病マリオさんが、たまたま僕の知り合いでもあるGLAYさんと「ニコラジ」で繋がり、オフィシャルのキャラクターデザイナーに選ばれたりしました。こういったコラボや化学反応で違う文化を作ったり、そういったことを担っていきたい。

●日本だけで満足してちゃ駄目!
まだまだ彼らは荒削りだし特にDJは師弟制度もなく、きちんと教える人がいないので「ニコニコ」という環境はあって、喋れてはいるものの「喋りで喰う」というレベルの子は、まだまだいないと思っています。そんな中で、実験もできて人にも見て貰えるといった利点を活かせる「ニコラジ」はそれが出来る場所だと思うので、海外も含めて更なるステップアップを進めていきたい。例えば百花繚乱だって、ハイブリッドで喋れるようになればもっと頼もしいDJになりますよ。せっかく「ニコニコ」がこういう文化を作ったんだから日本だけではなくASEANなど、世界をまたにかけて活動の場を広げていきたい。

中国もですが、アジアのマーケットに興味があって。これはニコニコの子達にも思うんですけど、日本だけで満足してちゃ駄目!世界を目指してほしい。「もっと熱くなれよ!」って。折角インターネットで世界と繋がっているのに何で国内限定だけの活動なんだよ、桁が違うんだから勿体ないよ、と。

アプリはそれに繋がる一歩であって、やまだひさしプロデュースという形で今後も多くのクリエイターが活躍する場になって欲しい。だから、大変ではありますがヒットさせたいと思っています。

●やまだひさしという男に投資をしてみないか

-改めてこのインタビューをご覧頂く方々へのメッセージはありますか。
やまだひさし:僕は全部やりたい、全部トライしたいし、全部の人と話をしたい。とにかく会いたいし喋りたいという気持ちが非常に強い。それを、「やまちゃんねる」を通じて皆さんにも感じて欲しい。ただ、会員が増えないと会いに行く予算も成り立たない。それを是非成り立たせて欲しいんです。言い方を変えれば"ファンド"なんです。僕は面白い番組を提供するからみんな、やまだひさしという男に投資をしてみないか、ということは伝えたい。つまらなければ退会は自由なので、試しにひと月どう?みたいな。

正直ヨーロッパでの番組であったり、幕張メッセの楽屋貸し切りアーティスト総出演といった、なかなか見ることの出来ないものを実際に提供してきたつもりです。今後はエンターテイメントだけでなく、例えばどこかで有事災害など伝えるべきだと思えば即向かってみなさんに伝えられるような、そこまでの活動が出来る規模にはなりたいです。

-ありがとうございます。最後に個人的な質問を1つだけ。やまださん忙しいにも関わらず、更に活動の場を増やしています。どうやって時間を作り出しているんですか。
やまだひさし:僕、忙しいんですかね?だってまだ寝る時間ありますから、本当に忙しい人に怒られますよ。「寝られないまでやってから言え」って(笑)そんなことより折角のメディアを活かしたい。寝なきゃまだまだ時間はありますから(笑)

-有り難うございました!

やまだひさし:5/4生まれ A型 北海道出身。ナレーション、映画の吹き替え、声優、MCなど精力的に活動。また環境問題にも積極的に取り組み、環境省主催のエコと音楽が融合したライブイベント「Re-Style LIVE」の総合プロデュースも、第1回開催の2003年より担当。2000年5月に第37回ギャラクシー賞ラジオ部門DJパーソナリティ賞受賞。

やまだひさしのやまちゃんねる通信

http://ch.nicovideo.jp/yamachannel

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