MMさん のコメント
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珍バイトを語るとき、外せないのはやはり、噂のあのバイトしかないでしょう。
そう、今や、都市伝説と化した「死体洗い・ホルマリン漬け」です。
このバイトは、珍バイトというより、裏バイトの代表例として見られがちですが、実際には「医療行為」のひとつされております。
おそらく、都市伝説的に広まったのは、大江健三郎氏の小説『死者の奢り』の中でホルマリン漬けの死体プールでアルバイトする学生の話が出てくることに起因するのでしょう。
そもそも、このバイトで扱う死体とは、どういうものかといえば、いわゆる「検体」と呼ばれる医学部医学科および歯学部歯学科で行なわれる遺体解剖実習用の遺体です。
この遺体は、「献体」と呼ばれる、医学および歯学の発展のために自分の死後、自らの肉体(遺体)を解剖学の実習用教材となる事を約束し、遺族が故人の意思に沿って医学部・歯学部の解剖学教室などに提供することによるものが大半です。
また、時には、引き取り手のない身元不明者の行き倒れ遺体や、死刑執行後の遺体が、法務大臣の認可を得て、各医科歯科大学に提供されます。
通常の病院では、たとえ、医療目的であっても「死亡体」を保有できる期間が2日と定められています。
従いまして、どんな大病院であっても、死体をホルマリン漬けにする施設も存在せず、あくまで医師の養成所である「医学部・歯科大」のみで行なわれます。
この遺体解剖実習ですが、体のあらゆる部位を爪の先まで、3ヶ月ほどの時間を掛けて、丁寧に解剖するので、その期間中、同じ検体が乾燥することを防ぐために、毎回、解剖実習後にホルマリンのシャワーを掛け、1ヶ月ごとにプールか専用水槽へ、検体を納めます。
このプールは、遺体保存室にあり、、縦×横8mぐらいの四角いプールになっています。
この作業をする際には、教授が直接にその学校に所属する大学生にアルバイト募集の声が掛かります。私も最初は断ったのですがその時は、他に引き受け手がいなかったらしく、どうしても!と泣きつかれて、これも人生経験かなと思い、渋々引き受けました。
これが、いわゆる「ホルマリン漬け」のアルバイトですが、実際の作業の内容は以下の通りです。
解剖実習で扱った全ての検体をプールに戻したのち、デッキブラシの先で、ゆっくりとプールの底へ沈めます。
この場合、男性よりも女性の方が、体脂肪が多いせいか、浮き上がりやすいようです。
だいたい、すべての検体を沈め終わるまで、2,3時間掛かりますが、ここで大変なのは、アルバイトの作業者の身体中に、ホルマリンの強烈な匂いが染み付くことです。
その時、着ていた服は、結局、全て棄てることになりますし、自分の目の白目の部分も黄色く染まってしまいました。
一応、ゴーグルにゴム頭巾、長手袋という完全防備の姿勢で臨みますが到底、防ぐことは出来ません。
ほとんどの学生がやりたがらないバイトですので、この2時間で5万円ほどのバイト収入になりますが、身体に染み付いたホルマリンの匂いが完全に消えるまでは、1週間ほどは掛かりますし、何年経っても忘れられないほどの衝撃を受けますので、決して割りの良いバイトではないことはたしかです。
一方、似たような話では、葬儀屋が行なう、「湯灌(ゆかん)」と呼ばれる普通に遺体をアルコールで洗い清める仕事の場合は時々、アルバイトの募集があります。
これは、普通、葬儀社が行なったり、専門の業者に委託する業務ですが、やはり、気軽な気分で行なうには、相当ヘビーなバイトです。
また、病院の中で無くなった患者を霊安室まで運ぶバイトの経験もあります。
これは、病院の近くに待機して、呼び出しがあれば、夜中でも駆けつける仕事です。
一回1500円で、呼び出しが無い場合は一晩5000円の報酬ですが、深夜の病院で逝ったばかりの遺体と行動を共にするのは、それなりに度胸のいる仕事でした。
写真: 「写真AC」
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ホルマリンは揮発性が高いうえに毒性が高く、人体に有害(中毒を引き起こす)であることから医薬用外劇物に指定されています。ホルマリン自体は、医療器具や部屋の消毒などに使用されますが、そのためには強制排気装置を備えた作業空間が必要と法律で規定されています。したがってホルマリンが揮発できるような状態で使用され、さらにその中に人がいる状況はありえません。そもそも目を開けていることすらできません。また、ホルマリンをそのまま廃棄することもできませんから、プールなんかを作ってしますと廃液処理が大変です。
献体された遺体などは「医学発展のための篤志」であることから大学医学部では敬意をもって扱われますので、ごった煮のように荒っぽい扱いをすることもありえません。一体ずつ個別に保存庫に入れられます。引き取り後(この時点「消化管内容物」=「腐敗ガス発生の原因物質」は既に大部分が取り除かれています)、まず専用の冷蔵庫に保存され、その後数日間かけて防腐処置(ホルマリン等を含む保存液の注入)を施されます。一般には橈骨動脈(腕の動脈)や大腿動脈などから保存液を注入することで行われ、その後は同じく専用の冷蔵庫にて解剖実習までの間保管されます。
行政解剖や司法解剖の場合は短期間で終了しますのでたいていの場合は冷蔵庫の中で終了まで保管されます。
実際に遺体をホルマリンに入れたとして、「処理が終わる」=「遺体の比重がホルマリンと同じになる」(=「腐敗しない」)ということですので、処置が完了していない浮く遺体であれば棒で押したところで沈めてもすぐに浮かんできますし、すくなくとも棒のようなものでは沈めることは困難です。浮かばないようにするためには、常に押さえつけないといけません。また一度「沈んだもの」=「処理が終わったもの」なので腐敗によるガスが体内にたまって浮かんでくるということはありません。
つまり、都市伝説以外なにものでもありません。
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