大澤聡×山本貴光「ほんとうの本の読みかた——『百学連環』から知を再編成する」【2016/10/28収録】 @sat_osawa @yakumoizuru
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擬似同期 俺も教室に通ったな 君の名は、みたい これぞ擬似同期 なるほろ
いまから約150年前に、西周(にしあまね)が私塾で行った講義の記録「百学連環」。そこでは、「百学」がいかに「連環」しあっているかを示す学術マップが描かれていた。山本貴光は、新著『「百学連環」を読む』で、明治の啓蒙知識人によるマップを丁寧に読み解き、現代のわたしたちのガイドとなる新しい地図を描いている。今回のイベントでは、「百学連環」を出発点に、山本貴光と批評家の大澤聡が現代の知のありかたを再考する。情報時代のわれわれはどのように思想を紡いでいくことができるか。博識で知られる二人は実際にどのように本を選び、読み、情報を整理しているのか。構造から実践まで、知へのアクセスを徹底的に語るイベント。 ■ このイベントのねらいは2本立てで構成されます。あくまで私(大澤)個人の頭のなかでのイメージですが。ひとつは、人文的な知の枠組をどのように再編成していけばよいのか、この壮大な問いに暫定的な解答を与えること。これはやや抽象度や専門性が高いかもしれません。うってかわって、もうひとつの方は、具体的でテクニカルなものです。「読む」とはいかなる営為なのか、サンプルとして登壇者のいわば舞台裏を開示し、それを方法化(ハウツー化)すること。この硬軟2つのミッションはじつは相互に密接に連関しています。その詳細は対話のなかでしだいに明らかになるはずです。山本貴光さんの『「百学連環」を読む』は、大学の外部で「知」や「思想」や「批評」のサルベージに邁進する、ここゲンロンカフェにもってこいの1冊ではないでしょうか。150年前の知の激変期にその生態を真摯に観察し、未来のあり方を提言した西周の思考の軌跡が透かし見えるわけですから。思うに、大学をはじめ今般の知的な領域に求められるのは、既存の諸領域を自己目的的に横断する企画力などではもはやありません。そんなものではなくて、ありえたかもしれない別の線引きを過去に遡行しては何度でもシミュレートしてみせる構想力でしょう。西周とそれを解読する山本さんは、その構想力の立ちあげに有効ないくつものヒントを示してくれています。しかし、本書のポイントはそこだけではない。読みはじめるとすぐに、「百学連環」の解読作業を進める山本さんの頭の働かせ方の軌跡を実況中継式に進行形で記録することで、“「読む」とはいかなる営為か”を読者に体感的に理解させることにも目的が設定されているとわかります(詳細は『週刊読書人』2016年9月30日号掲載の私の書評にゆずります)。読書や学習や調査に関するアドバイスや、考えるヒントが随所に埋め込まれていて、それらを繫ぎ読んでいけば、そこに本格的な教養論や読書術が浮びあがってきます。二重化したねらいをイベントに課したのはこのようなしだいです。山本貴光さんというまたとないガイドを得て、デジタル時代の読書術、たとえばリサーチ方法からメモの取り方まで、あるいは本の選び方なり、資料の整理の仕方なり、アイデアを拡張するコツなり、日ごろ気になってもなかなか他人に訊けないそのあたりの事情についても歴史を参看しつつ、じっくり検討していけたならば、みなさんにとってもどこか意義ある対話となるのではないか、そんなふうにいまは考えています。(大澤聡)【イベントのページ】http://genron-cafe.jp/event/20161028/