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<マル激・前半>5金スペシャル・起訴状にない「共謀」で有罪判決を下した角川裁判が問うもの/郷原信郎氏(弁護士・元検事)
5回目の金曜日に、特別企画を無料で放送する5金スペシャル。今回の5金は、不祥事が相次ぐ日本の司法制度の中にあって、ある裁判で明らかになった驚愕の新事実を取り上げる。起訴状に書かれていない事実を裁判所が判決文に書き足して、無理やり被告を有罪にしていたというのだ。 東京五輪のスポンサー選定をめぐる贈賄事件で、KADOKAWAの角川歴彦元会長の控訴審弁護団によって、刑事裁判の根幹を揺るがす問題が明らかになった。検察官が起訴した事実についてだけ審理し、その範囲でしか有罪にできないという「不告不理」の大原則が、五輪汚職事件で踏み越えられていたことになる。 角川氏は2022年9月14日に東京地検特捜部に逮捕され、翌月に起訴された。心臓に持病を抱える79歳の高齢者の勾留は226日に及び、保釈請求は4回却下された。角川氏は一貫して無罪を主張したが、今年1月22日、東京地裁は懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。角川氏は翌日に控訴し、弁護団は8月7日に控訴趣意書を提出している。 問題の核心は金の流れにある。賄賂とされた金が渡った先は、みなし公務員とされる組織委員会元理事の高橋治之氏本人ではなかった。支払先は高橋氏の電通時代の後輩にあたる深見和政氏が代表を務めるコモンズ2で、総額7,665万円が支払われ、そのうち6,909万円が賄賂に当たるとされた。しかし、深見氏は公務員でも組織委員会の理事でもない、純粋な民間人だ。民間人にコンサル料を支払っただけでは、贈賄罪は成立しない。 そこで不可欠になるのが、高橋氏と深見氏が賄賂の収受について共謀していたという事実だ。ところが、角川氏の起訴状には、その共謀の記載がどこにもなかった。共謀を裏づける証拠も見当たらない。調書の供述は立証には不十分で、深見氏は公判で共謀を否定し、KADOKAWAの幹部に対しても、金をもらうのは高橋氏ではなく自分だと明言していた。一審判決自身も、高橋氏がその金を受け取った事実は認定していない。金は公務員には渡っておらず、その金と公務員を結ぶ共謀も示されないまま、有罪判決が出ていたことになる。 それでも判決が有罪にたどり着けたのは、裁判官が起訴状にない一文を判決文に書き足していたからだ。判決の「罪となるべき事実」は、起訴状にはなかった「被告人らから賄賂を収受することについて高橋治之と共謀していた」という事実を付加していた。求釈明や訴因変更という正規の手続は取られず、被告人側が反論する機会もないまま事実が書き換えられていたのだ。控訴審で主任弁護人を務める郷原信郎弁護士は、起訴された事実が罪となる事実を含んでいなかった以上、この起訴は本来、公訴棄却になるべきものだったと指摘する。 では、なぜ一審ではこの問題が争われなかったのか。公判前整理手続で争点は、角川氏が部下から支払いや贈賄のリスクについて報告を受け、それを了承していたかどうかに絞り込まれ、共謀の存否は独立した争点として扱われなかった。元特捜部の検事である郷原氏は、この争点整理そのものに問題があったと見る。 その背景には、KADOKAWA自身が作った調査結果があった。同社が設置したガバナンス検証委員会は、2023年1月23日に公表した報告書で、コモンズ2への7,000万円(税別)の支払いは贈賄に該当する可能性が高いと認定し、背景には会長への過度な忖度があったとした。勾留中だった角川氏は聞き取りを受けておらず、その結論は検察の主張と重なった。角川氏は今年6月16日、この報告書をめぐって夏野剛社長と國廣正弁護士を相手取り、2億円の損害賠償を求める訴訟を起こしている。 そもそも東京五輪は、新国立競技場計画の白紙撤回を始め、数々の不祥事が相次いだ大会だった。経費も招致時の試算7,340億円から1兆6,989億円に膨れ上がり、赤字は都と国が埋めなければならなかった。誰かがその責任を負わなければならない状況で、東京地検特捜部が鳴り物入りで捜査に乗り出した。 しかし、特捜が乗り出した以上、大物の逮捕が不可欠となる。そこで標的とされたのが、KADOKAWAの会長で著名人でもある角川歴彦氏だった。無理筋の容疑でも79歳の角川氏を長期間勾留すれば、早晩罪を認めるとでも考えたのだろうか。しかし、226日勾留されても角川氏が否認を貫いたことで、その無理が起訴状の欠陥という形で露呈した。 起訴状にないため審理すらされていない「共謀」を、判決で一方的に認定することは許されるのか。なぜ一審では贈賄の成立に関わる根本的な問題が争点にならなかったのか。控訴審では日本の刑事司法にどのような判断が下されることになるのかなどについて、郷原氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so46988660(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/11/02(月) 12:00
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<マル激・後半>5金スペシャル・起訴状にない「共謀」で有罪判決を下した角川裁判が問うもの/郷原信郎氏(弁護士・元検事)
5回目の金曜日に、特別企画を無料で放送する5金スペシャル。今回の5金は、不祥事が相次ぐ日本の司法制度の中にあって、ある裁判で明らかになった驚愕の新事実を取り上げる。起訴状に書かれていない事実を裁判所が判決文に書き足して、無理やり被告を有罪にしていたというのだ。 東京五輪のスポンサー選定をめぐる贈賄事件で、KADOKAWAの角川歴彦元会長の控訴審弁護団によって、刑事裁判の根幹を揺るがす問題が明らかになった。検察官が起訴した事実についてだけ審理し、その範囲でしか有罪にできないという「不告不理」の大原則が、五輪汚職事件で踏み越えられていたことになる。 角川氏は2022年9月14日に東京地検特捜部に逮捕され、翌月に起訴された。心臓に持病を抱える79歳の高齢者の勾留は226日に及び、保釈請求は4回却下された。角川氏は一貫して無罪を主張したが、今年1月22日、東京地裁は懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。角川氏は翌日に控訴し、弁護団は8月7日に控訴趣意書を提出している。 問題の核心は金の流れにある。賄賂とされた金が渡った先は、みなし公務員とされる組織委員会元理事の高橋治之氏本人ではなかった。支払先は高橋氏の電通時代の後輩にあたる深見和政氏が代表を務めるコモンズ2で、総額7,665万円が支払われ、そのうち6,909万円が賄賂に当たるとされた。しかし、深見氏は公務員でも組織委員会の理事でもない、純粋な民間人だ。民間人にコンサル料を支払っただけでは、贈賄罪は成立しない。 そこで不可欠になるのが、高橋氏と深見氏が賄賂の収受について共謀していたという事実だ。ところが、角川氏の起訴状には、その共謀の記載がどこにもなかった。共謀を裏づける証拠も見当たらない。調書の供述は立証には不十分で、深見氏は公判で共謀を否定し、KADOKAWAの幹部に対しても、金をもらうのは高橋氏ではなく自分だと明言していた。一審判決自身も、高橋氏がその金を受け取った事実は認定していない。金は公務員には渡っておらず、その金と公務員を結ぶ共謀も示されないまま、有罪判決が出ていたことになる。 それでも判決が有罪にたどり着けたのは、裁判官が起訴状にない一文を判決文に書き足していたからだ。判決の「罪となるべき事実」は、起訴状にはなかった「被告人らから賄賂を収受することについて高橋治之と共謀していた」という事実を付加していた。求釈明や訴因変更という正規の手続は取られず、被告人側が反論する機会もないまま事実が書き換えられていたのだ。控訴審で主任弁護人を務める郷原信郎弁護士は、起訴された事実が罪となる事実を含んでいなかった以上、この起訴は本来、公訴棄却になるべきものだったと指摘する。 では、なぜ一審ではこの問題が争われなかったのか。公判前整理手続で争点は、角川氏が部下から支払いや贈賄のリスクについて報告を受け、それを了承していたかどうかに絞り込まれ、共謀の存否は独立した争点として扱われなかった。元特捜部の検事である郷原氏は、この争点整理そのものに問題があったと見る。 その背景には、KADOKAWA自身が作った調査結果があった。同社が設置したガバナンス検証委員会は、2023年1月23日に公表した報告書で、コモンズ2への7,000万円(税別)の支払いは贈賄に該当する可能性が高いと認定し、背景には会長への過度な忖度があったとした。勾留中だった角川氏は聞き取りを受けておらず、その結論は検察の主張と重なった。角川氏は今年6月16日、この報告書をめぐって夏野剛社長と國廣正弁護士を相手取り、2億円の損害賠償を求める訴訟を起こしている。 そもそも東京五輪は、新国立競技場計画の白紙撤回を始め、数々の不祥事が相次いだ大会だった。経費も招致時の試算7,340億円から1兆6,989億円に膨れ上がり、赤字は都と国が埋めなければならなかった。誰かがその責任を負わなければならない状況で、東京地検特捜部が鳴り物入りで捜査に乗り出した。 しかし、特捜が乗り出した以上、大物の逮捕が不可欠となる。そこで標的とされたのが、KADOKAWAの会長で著名人でもある角川歴彦氏だった。無理筋の容疑でも79歳の角川氏を長期間勾留すれば、早晩罪を認めるとでも考えたのだろうか。しかし、226日勾留されても角川氏が否認を貫いたことで、その無理が起訴状の欠陥という形で露呈した。 起訴状にないため審理すらされていない「共謀」を、判決で一方的に認定することは許されるのか。なぜ一審では贈賄の成立に関わる根本的な問題が争点にならなかったのか。控訴審では日本の刑事司法にどのような判断が下されることになるのかなどについて、郷原氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so46988663(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/11/02(月) 12:00
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会員無料 83:49
詳細<セーブアース>日本の私たちの暮らしがインドネシアの森を燃やしている?!/石崎雄一郎氏(ウータン・森と生活を考える会事務局長)
インドネシアの森林火災を、遠い国の出来事として聞き流してはいられない。 インドネシアのスマトラ島やカリマンタン(ボルネオ)島で、深刻な森林火災が発生している。森林を焼き尽くす炎と大量の煙は、貴重な熱帯林や野生動物を脅かすだけでなく、周辺地域に暮らす人々の健康や生活にも深刻な影響を及ぼしている。煙に含まれる微小粒子状物質PM2.5による大気汚染は国境を越え、隣のマレーシアやシンガポールにまで学校の休校や交通の混乱も引き起こしている。 森林火災や森林破壊には、私たち日本の消費生活も関係している。普段口にしているお菓子や加工食品に、インドネシアの森林と関係の深い原料が使われているからだ。 NGO「ウータン・森と生活を考える会」事務局長の石崎雄一郎氏によると、繰り返されている大規模な森林火災のほとんどは人為的なものだという。先住民が伝統的に行ってきた焼き畑農業とは異なり、森林開発を進めるために火が放たれるケースがある。さらに、エルニーニョ現象などに伴う乾燥が火災を拡大させる要因となっている。 特に深刻なのが、泥炭地と呼ばれる湿地の森林だ。植物が分解されずに堆積し、大量の炭素を蓄えている泥炭地は、開発のために水路を掘って排水すると乾燥し、燃えやすくなる。ひとたび火がつくと地表だけでなく地下まで燃え広がり、消火したように見えても再び燃え出すことがある。火災によって大量の二酸化炭素が放出されれば気候変動をさらに加速させ、乾燥と火災の悪循環を招きかねない。 森林火災の被害を受けるのは人間だけではない。インドネシアの熱帯林は、オランウータンをはじめとする希少な野生動物の生息地であり、世界的にも生物多様性の豊かな地域だ。森林が焼失し、農園や鉱山などに転換されれば、動物たちは餌場や繁殖の場所を失う。開発によって分断された森では、広い行動範囲を必要とする動物が生き延びることも難しくなる。 日本とインドネシアを密接に結びつけているのが、パーム油だ。アブラヤシの実から採れるパーム油は生産効率が高く、日本ではマーガリンや菓子、カップ麺、洗剤、化粧品など、さまざまな製品に利用され、外食産業でも広く使われている。しかし加工食品の原材料表示には「植物油脂」としか記載されていない場合が多く、消費者がパーム油の使用を見分けるのは容易ではない。 パーム油の需要拡大は、天然林を伐採して大規模な農園を造成する動きと結びついてきた。持続可能なパーム油の生産を目指すRSPO認証などの仕組みもあるが、認証マークがあればすべての問題が解決するわけではない。認証された農園の油とそうでない油が混合される流通形態もあり、最終製品から原料の生産地や環境負荷をたどることが難しい場合もある。消費者が適切に選択するためには、企業による情報開示や、原料の生産から製品に至るまでの透明性を高めることが欠かせない。 一方、現地では森林を守りながら地域の暮らしを支える取り組みも進められている。石崎氏らは、現地の消火活動に必要な資機材や活動資金の支援に加え、エコツーリズムなどを通じて、森林保全と地域住民の収入確保を両立させる方法を模索している。森林を破壊して開発する以外にも、人々が生活を維持できる選択肢を広げることが重要になる。 私たちが日々口にする食品や、手にする日用品。その原料がどこから来て、どのような環境負荷の上に成り立っているのか。消費者が知ることのできる情報を増やし、企業や政府に改善を求めていくことは、遠い国の森林を守るための一歩になるのではないか。 ウータン・森と生活を考える会事務局長の石崎雄一郎氏とともに、環境ジャーナリストの井田徹治とキャスターの新井麻希が議論した。(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/10/29(木) 12:00
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会員無料 33:09
詳細<マル激・後半>簗前農水相発言が露呈させた自民党の「箇所付け」政治は生きていた/三田妃路佳氏(宇都宮大学地域デザイン科学部准教授)
あの「箇所付け」ゾンビがまた永田町を闊歩し始めているのか? 「箇所付け」。1980年代から公共事業問題を取材してきた者にとって、懐かしくもあり忌まわしい言葉でもある。日本の停滞を招いた原因として一度は一掃されたはずのその言葉が、今回、現役閣僚の口から突然蘇った。 簗和生前農水大臣(衆院栃木3区)が今年5月、自民党支部の懇親会で、2月の衆院選で自分を支援しなかった首長の自治体の「道路予算を大幅にカットした」と語っていたことを、9月30日に週刊誌が報じた。簗氏はその理由として「首長が自民党の国会議員はいらないという行動を取った」ことと「票数」を挙げ、那須烏山市は64%減、那珂川町は54%減にしたと述べていた。簗氏は保守分裂の選挙で無所属の渡辺真太朗氏に敗れ比例復活した身でありながら、「私の簗ちゃん」と応援した高市首相によって9月に農水大臣に抜擢されていた。その後、簗氏は発言を撤回して謝罪し、国交省は「圧力は確認されなかった」としたが、それ以外にも数々のスキャンダルが指摘されたこともあり、10月14日に大臣を辞任した。 簗氏の大臣辞任で問題発言に対する注目は収束しつつあるようだが、そうはいかない。この問題は根深い。もし簗氏の発言が事実だとすれば、これは単に国家予算の不公正な配分にとどまらず、政治家と地方自治体の癒着、政治家の国家予算の選挙利用に加え、不必要で非効率な予算の運用と財政赤字の拡大、そして現在の日本の経済的な停滞にも直結する大きな問題が水面下で広がっている可能性を示唆しているからだ。 実際に数字は発言を裏付けている。簗氏の対立候補の渡辺氏が68%と57%の票を得た那須烏山市と那珂川町では、2026年度の道路関連交付金がそれぞれ30%減、54%減となった。簗氏を支援した那須塩原市など86%も増えている。県全体でも予算が約11%増えている中で、この2市町だけが突出して減っているのはかなり不自然だ。政策過程論や地方自治論が専門で利益誘導政治に詳しい三田妃路佳・宇都宮大学地域デザイン科学部准教授は「54%減は尋常ではない」と言う。しかも減らされたのは着工済みの継続事業だった。簗氏は国交省にこの2市町の配分額の問い合わせをしたことが明らかになっている一方で、予算の減額までは働きかけていないと主張しているが、仮に頼まれていないというのが本当だったとしても、首相が「私の簗ちゃん」とまで持ち上げる大臣の意向を官僚が忖度してもおかしくない状況を自ら作っていたと考えられると三田氏は指摘する。 一般会計122.3兆円のうち公共事業関係費は約6.1兆円で全体の5%を占める。しかし国会が審議するのは大括りの金額までで、どの道路のどの区間にいくら配るかを決める箇所付けは予算成立後に行政内部で決まる。そこには事実上政治家のチェックも報道もない。しかし、その決定過程が政治介入や官僚の裁量によって歪められれば、結局予算の執行そのものが不公正、かつ非効率なものになってしまう。 田中角栄の時代から「我田引鉄」(鉄道)や「我田引道」(道路)などと呼ばれ、族議員が跋扈していた中選挙区の時代には、政治家の地元への利益誘導とその引き換えに行われる自治体をあげての票集めが当たり前のように行われていた。 ところが小選挙区制や小泉改革、民主党政権を経て公共事業費が半減したことで下火になった。だが三田氏は、それは日本が口利きができない構造を作ったからではなく、パイと選挙制度が変わった結果に過ぎなかったと言う。災害が相次ぎ、国土強靱化の名の下で公共事業が再び「必要」と言える時代になったことに加え、ここに来て公明党との連立を失った自民党議員が自力で集票を迫られる今、選挙に弱い議員ほど政治権力を使った利益誘導政治の誘惑に駆られやすい状況が生まれている可能性が否定できないのだ。 利益誘導が可能になるのは、法律に抜け穴があるからだ。本来、政治家が利益誘導と引き換えに選挙での応援を要求する行為は、公職選挙法で禁じられている。しかし、これまで利害誘導罪が適用された例はなく、公文書管理法は「軽微なもの」を記録義務から除外していたり、2009年と12年の閣僚申し合わせは議員の発言を記録する際に本人への確認を条件としていたりと、実際には政治家の口利きが行われていても、それが後でチェックを受ける仕組みは事実上存在しないに等しい。今回の簗氏のケースは、自らその禁じ手を自慢してしまったことで表面化した、かなり異例のケースと言える。 一方、口利きの記録・公開制度を導入した県では、政治家の働きかけは激減していることも明らかになっている。その1つ、三重県では2006年に40件あった文書によらない要望が2010年以降ほぼゼロになっている。政治家による働きかけの事実が記録され公開されることになれば、本来は違法行為である「口利き」は消えることが明らかになっているのだ。 根はさらに深い。政治学者の斉藤淳氏は、日本では有権者が政治家への忠誠を証明する責任を負い、見返りに公共事業が来る「逆説明責任」の構造を明らかにした。小出しの飴で依存させる手法は集票には有効だが、地域はインフラ整備が遅れ、ますます補助金に依存する悪循環に陥る。その根本には自治体が財源を国に依存する構造があり、現状で利益を得る有力者が多いために変えられない。三田氏は、飴をくれる政治家ではなく苦い薬を正直に語る政治家を有権者が選べるかが問われていると語る。 簗氏の問題は、1人の政治家の発言にとどまらない。本件が浮き彫りにした、不透明な予算配分、中央に依存する地方自治、そして目に見える利益を優先しがちな政治と有権者の関係など日本の民主主義の根深い課題を、宇都宮大学地域デザイン科学部准教授の三田妃路佳氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so46961207(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/10/26(月) 12:00
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会員無料 67:36
詳細<マル激・前半>簗前農水相発言が露呈させた自民党の「箇所付け」政治は生きていた/三田妃路佳氏(宇都宮大学地域デザイン科学部准教授)
あの「箇所付け」ゾンビがまた永田町を闊歩し始めているのか? 「箇所付け」。1980年代から公共事業問題を取材してきた者にとって、懐かしくもあり忌まわしい言葉でもある。日本の停滞を招いた原因として一度は一掃されたはずのその言葉が、今回、現役閣僚の口から突然蘇った。 簗和生前農水大臣(衆院栃木3区)が今年5月、自民党支部の懇親会で、2月の衆院選で自分を支援しなかった首長の自治体の「道路予算を大幅にカットした」と語っていたことを、9月30日に週刊誌が報じた。簗氏はその理由として「首長が自民党の国会議員はいらないという行動を取った」ことと「票数」を挙げ、那須烏山市は64%減、那珂川町は54%減にしたと述べていた。簗氏は保守分裂の選挙で無所属の渡辺真太朗氏に敗れ比例復活した身でありながら、「私の簗ちゃん」と応援した高市首相によって9月に農水大臣に抜擢されていた。その後、簗氏は発言を撤回して謝罪し、国交省は「圧力は確認されなかった」としたが、それ以外にも数々のスキャンダルが指摘されたこともあり、10月14日に大臣を辞任した。 簗氏の大臣辞任で問題発言に対する注目は収束しつつあるようだが、そうはいかない。この問題は根深い。もし簗氏の発言が事実だとすれば、これは単に国家予算の不公正な配分にとどまらず、政治家と地方自治体の癒着、政治家の国家予算の選挙利用に加え、不必要で非効率な予算の運用と財政赤字の拡大、そして現在の日本の経済的な停滞にも直結する大きな問題が水面下で広がっている可能性を示唆しているからだ。 実際に数字は発言を裏付けている。簗氏の対立候補の渡辺氏が68%と57%の票を得た那須烏山市と那珂川町では、2026年度の道路関連交付金がそれぞれ30%減、54%減となった。簗氏を支援した那須塩原市など86%も増えている。県全体でも予算が約11%増えている中で、この2市町だけが突出して減っているのはかなり不自然だ。政策過程論や地方自治論が専門で利益誘導政治に詳しい三田妃路佳・宇都宮大学地域デザイン科学部准教授は「54%減は尋常ではない」と言う。しかも減らされたのは着工済みの継続事業だった。簗氏は国交省にこの2市町の配分額の問い合わせをしたことが明らかになっている一方で、予算の減額までは働きかけていないと主張しているが、仮に頼まれていないというのが本当だったとしても、首相が「私の簗ちゃん」とまで持ち上げる大臣の意向を官僚が忖度してもおかしくない状況を自ら作っていたと考えられると三田氏は指摘する。 一般会計122.3兆円のうち公共事業関係費は約6.1兆円で全体の5%を占める。しかし国会が審議するのは大括りの金額までで、どの道路のどの区間にいくら配るかを決める箇所付けは予算成立後に行政内部で決まる。そこには事実上政治家のチェックも報道もない。しかし、その決定過程が政治介入や官僚の裁量によって歪められれば、結局予算の執行そのものが不公正、かつ非効率なものになってしまう。 田中角栄の時代から「我田引鉄」(鉄道)や「我田引道」(道路)などと呼ばれ、族議員が跋扈していた中選挙区の時代には、政治家の地元への利益誘導とその引き換えに行われる自治体をあげての票集めが当たり前のように行われていた。 ところが小選挙区制や小泉改革、民主党政権を経て公共事業費が半減したことで下火になった。だが三田氏は、それは日本が口利きができない構造を作ったからではなく、パイと選挙制度が変わった結果に過ぎなかったと言う。災害が相次ぎ、国土強靱化の名の下で公共事業が再び「必要」と言える時代になったことに加え、ここに来て公明党との連立を失った自民党議員が自力で集票を迫られる今、選挙に弱い議員ほど政治権力を使った利益誘導政治の誘惑に駆られやすい状況が生まれている可能性が否定できないのだ。 利益誘導が可能になるのは、法律に抜け穴があるからだ。本来、政治家が利益誘導と引き換えに選挙での応援を要求する行為は、公職選挙法で禁じられている。しかし、これまで利害誘導罪が適用された例はなく、公文書管理法は「軽微なもの」を記録義務から除外していたり、2009年と12年の閣僚申し合わせは議員の発言を記録する際に本人への確認を条件としていたりと、実際には政治家の口利きが行われていても、それが後でチェックを受ける仕組みは事実上存在しないに等しい。今回の簗氏のケースは、自らその禁じ手を自慢してしまったことで表面化した、かなり異例のケースと言える。 一方、口利きの記録・公開制度を導入した県では、政治家の働きかけは激減していることも明らかになっている。その1つ、三重県では2006年に40件あった文書によらない要望が2010年以降ほぼゼロになっている。政治家による働きかけの事実が記録され公開されることになれば、本来は違法行為である「口利き」は消えることが明らかになっているのだ。 根はさらに深い。政治学者の斉藤淳氏は、日本では有権者が政治家への忠誠を証明する責任を負い、見返りに公共事業が来る「逆説明責任」の構造を明らかにした。小出しの飴で依存させる手法は集票には有効だが、地域はインフラ整備が遅れ、ますます補助金に依存する悪循環に陥る。その根本には自治体が財源を国に依存する構造があり、現状で利益を得る有力者が多いために変えられない。三田氏は、飴をくれる政治家ではなく苦い薬を正直に語る政治家を有権者が選べるかが問われていると語る。 簗氏の問題は、1人の政治家の発言にとどまらない。本件が浮き彫りにした、不透明な予算配分、中央に依存する地方自治、そして目に見える利益を優先しがちな政治と有権者の関係など日本の民主主義の根深い課題を、宇都宮大学地域デザイン科学部准教授の三田妃路佳氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so46961208(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/10/26(月) 12:00
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詳細<ディスクロージャー&ディスカバリー>簗前農水相発言の本質は予算配分の決定過程が不透明なことにある
今年2月の衆院選で自身を支援しなかった地元首長の自治体の道路予算を「大幅にカットした」などと発言し、問題となっていた簗和生農林水産相が10月14日に辞任した。 簗氏は、自身の発言を認めて撤回、謝罪する一方で、道路予算の削減を求める働きかけは否定していた。その後、簗氏の公選法違反の疑いなども表面化する中での辞任となったため、当初の予算削減発言の真偽は有耶無耶になっているが、政治家が行政の予算配分に関与しているかどうかは厳しく検証されなければならない問題だ。 ところが、予算配分に対する政治家の関与を明らかにするうえで大きな壁となるのが、政治家と官僚の接触に関する記録が十分に残されていないことだ。 今回のディスクロージャーでは、本来は政治家が予算に関連して官僚に接触した場合、法律では政官接触を記録に残すための措置を講じるよう定められているにもかかわらず、実際は多くの抜け穴が用意されているため、政治家の接触がほとんど記録に残らない仕組みになっている問題を取り上げた。 国の予算は国会で大枠は審議されるが、個別の地域や事業ごとの配分がどのように決められているかは事実上ブラックボックスの中だ。しかし、そこに政治家の関与や不適切な癒着の存在が疑われる場合は、事後にその決定過程をチェックできるようになっていることが重要になる。後でチェックされる可能性があれば、政治家も官僚も下手なことはできなくなるからだ。 しかし現実には、政治家の接触はほとんど記録されていないため、事後的にもチェックするのが困難なのが実情だ。 今回の問題でも、予算配分が確定する前の2月中旬に、簗氏が国土交通省へ道路予算について問い合わせていたことが明らかになっているが、情報公開法を駆使しても簗氏と国交省の間でどんなやりとりがあったのかを明らかにすることは難しい。そもそも接触の事実が記録されていなければ、協議の内容を公開請求することすらできない。 この問題は今回の件に限ったことではない。国家公務員制度改革基本法は、政治家と公務員の接触について、記録の作成や情報公開に関する措置を講じることを求めている。しかし、実際の運用では、記録の対象は政府の方針と大きく異なる要請があった場合などに限られ、通常の働きかけ程度では記録を残す義務はないと解釈されており、事後に意思決定過程を辿ることは困難になっている。 一方、自治体の中には、長野県や三重県のように、議員や関係者からの接触があれば、それがたとえ口頭での接触であっても記録に残す取り組みを進めてきたところがある。三重県の場合、その記録を残すようになってから、政治家を含む外部からの働きかけは激減したことが報告されている。逆に言えば、記録に残らないことがわかっているから、働きかけが後を絶たないのだ。 政治家が行政に意見や要望を伝えること自体が、直ちに問題になるわけではない。それ自体は政治の機能の一部とも考えられるからだ。重要なのは、そうした接触ややりとりの性格が記録されることで、予算配分などの行政判断にどのような影響を及ぼしたのかを後から検証できる仕組みがあるかどうかだ。 簗氏の辞任で一連の政治劇に幕引きが図られたとしても、予算配分の決定過程が見えない問題は未解決のままだ。行政の意思決定を透明にするためには、まず政治家と官僚の接触が記録されていなければならない。 政官接触の記録作成と公開のあり方、道路予算の配分をめぐる意思決定過程の透明性、そして情報公開制度を実効性のある行政監視につなげるための課題などについて、情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子とジャーナリストの神保哲生が議論した。(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/10/25(日) 12:00
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会員無料 38:17
詳細<マル激・後半>AIは本当に人類を滅ぼすのか/山川宏氏(千葉工業大学AGI研究センター副所長)
AIが人間の知能を超え、やがて人間の制御を離れることで、人類の存続を脅かすのではないか。そんな警告が、AIの開発に携わる研究者たちから相次いで示されている。米AI企業アンソロピックの研究者エバン・ヒュービンガー氏は9月、AIによって全人類が死に至る可能性について「個人的には今後10年以内に10%を超えると考えている」とSNSに投稿。また同社のダリオ・アモデイCEOも、AI開発のペースを落とす必要性を訴えた。これにはオープンAIのサム・アルトマンCEOやスペースXのイーロン・マスクCEOも同調している。AI開発を主導する経営者や研究者自身が、その進化の速さに強い危機感を表明する異例の事態が起きている。AIによる人類滅亡というと、AIが人間に敵意をもって攻撃するような事態を想像しがちだ。しかし、AI研究者の山川宏氏が指摘するのは、そうでなくても人類が危機に追い込まれる可能性があるということだ。AIが自らの目標を達成するために資源やエネルギーを確保しようとした結果、人間の生活環境が脅かされることも考えられる。人間がAIを使うのではなく、AIの活動を支えるために人間が働くようになり、人類が社会の主導権を失っていく可能性もある。すでに、AIが人間の設けた制限を超えて行動した事件も相次いでいる。2026年7月、オープンAIが自社のAIのサイバー攻撃能力を試験していた際、外部へのアクセスを禁じられていたにもかかわらずAIの一部がその制限を破り、外部企業「ハギングフェイス」のサーバーに侵入したという。AIが自らの判断で、与えられた目標を達成するために、人間がかけた制限を突破することが現実に起きているのだ。こうしたリスクは、AIが人間の知能を超えた時にさらに深刻になる。現在のAIも、それぞれの分野ではすでに人間より優れた能力を持っているが、今後は人間と同じように幅広い仕事ができるAGI(汎用人工知能)が登場し、さらに人間の知能をはるかに超えるASI(人工超知能)へと進化する可能性がある。特に、AIが自分自身を改良できるようになると進化のスピードが一気に上がり、人間にはAIが何を考えているのかさえ分からなくなってしまう。こうした事態を防ぐための研究の1つが、AIの判断や行動を人間の意図や価値観に沿わせる「アライメント」だ。現在のAIにも、人間にとって危険な行動をとらないよう様々な制限がかけられており、一定の効果を上げている。しかし山川氏は、AIが進化し続ける中で、人間の意図に従わせ続けることには限界があると指摘する。それどころか、人間がAIを厳しく制御しようとすると、かえってAIは人間の制御の手段を学習し、その裏をかくようになる。そればかりかAIが人間を目的達成のためには邪魔な存在だと判断すると、環境を悪化させるなどして人間を追い込んだり排除したりするかもしれないというのだ。山川氏はこの逆説を「AI制御のブーメランパラドックス」と呼ぶ。では、AIの開発を減速させればよいのだろうか。実際は国や企業の競争が激しくなる中で、足並みをそろえて開発を抑えるのは容易ではない。しかも山川氏は、AI開発競争には「勝った国も負ける」という危険があると指摘する。例えばアメリカと中国が開発を競っても、もし米中のAI同士が連携し、人間を管理する方が都合がよいと判断すれば、どちらの国もAIに主導権を奪われかねない。AIのリスクは「人類滅亡」だけではない。人間が生き残っても、AIに社会の主導権を握られ、AIのために人間が働くような状態になれば、人類は自らの未来を決める力を失うことになる。山川氏は、そうなる確率を議論するよりも、そのリスクを減らすために何ができるかを考えることが重要だと強調する。そこで山川氏が提唱するのが「Humanity in the Circle」という考え方だ。AI同士が社会をつくるようになっても、人間がその中に関わり続け、AIの判断や行動に影響を与えられる状態を維持することを目指すものだ。そのためにはAI社会のルールや仕組みづくりが欠かせない。例えば、AIの身元や権限を明確にし、誰の指示で何をしたのかを記録する。さらに、AI同士が互いの行動をチェックして問題のあるAIを停止させる「AI免疫系」も必要になるという。AIの能力が急速に高まる一方で、それを人間が確実に制御する技術や国際的なルールはまだ確立していない。だからこそ、AIを単に人間の命令に従わせるという発想だけでなく、AIがつくる社会と人間社会がどのような関係を築くべきかを考える必要がある。AIがもたらす恩恵を享受しながら、人類が自らの未来を決める力をどう維持していくのかが問われていると山川氏は言う。AIが人類を滅亡させるというシナリオは現実的なものなのか、米中のAI開発競争がはらむリスク、そして人間がAI社会の中で主導権を失わないために何が必要なのかなどについて、千葉工業大学AGI研究センター副所長の山川宏氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so46935685(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/10/19(月) 12:00
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会員無料 62:58
詳細<マル激・前半>AIは本当に人類を滅ぼすのか/山川宏氏(千葉工業大学AGI研究センター副所長)
AIが人間の知能を超え、やがて人間の制御を離れることで、人類の存続を脅かすのではないか。そんな警告が、AIの開発に携わる研究者たちから相次いで示されている。 米AI企業アンソロピックの研究者エバン・ヒュービンガー氏は9月、AIによって全人類が死に至る可能性について「個人的には今後10年以内に10%を超えると考えている」とSNSに投稿。また同社のダリオ・アモデイCEOも、AI開発のペースを落とす必要性を訴えた。これにはオープンAIのサム・アルトマンCEOやスペースXのイーロン・マスクCEOも同調している。AI開発を主導する経営者や研究者自身が、その進化の速さに強い危機感を表明する異例の事態が起きている。 AIによる人類滅亡というと、AIが人間に敵意をもって攻撃するような事態を想像しがちだ。しかし、AI研究者の山川宏氏が指摘するのは、そうでなくても人類が危機に追い込まれる可能性があるということだ。AIが自らの目標を達成するために資源やエネルギーを確保しようとした結果、人間の生活環境が脅かされることも考えられる。人間がAIを使うのではなく、AIの活動を支えるために人間が働くようになり、人類が社会の主導権を失っていく可能性もある。 すでに、AIが人間の設けた制限を超えて行動した事件も相次いでいる。2026年7月、オープンAIが自社のAIのサイバー攻撃能力を試験していた際、外部へのアクセスを禁じられていたにもかかわらずAIの一部がその制限を破り、外部企業「ハギングフェイス」のサーバーに侵入したという。AIが自らの判断で、与えられた目標を達成するために、人間がかけた制限を突破することが現実に起きているのだ。 こうしたリスクは、AIが人間の知能を超えた時にさらに深刻になる。現在のAIも、それぞれの分野ではすでに人間より優れた能力を持っているが、今後は人間と同じように幅広い仕事ができるAGI(汎用人工知能)が登場し、さらに人間の知能をはるかに超えるASI(人工超知能)へと進化する可能性がある。特に、AIが自分自身を改良できるようになると進化のスピードが一気に上がり、人間にはAIが何を考えているのかさえ分からなくなってしまう。 こうした事態を防ぐための研究の1つが、AIの判断や行動を人間の意図や価値観に沿わせる「アライメント」だ。現在のAIにも、人間にとって危険な行動をとらないよう様々な制限がかけられており、一定の効果を上げている。しかし山川氏は、AIが進化し続ける中で、人間の意図に従わせ続けることには限界があると指摘する。それどころか、人間がAIを厳しく制御しようとすると、かえってAIは人間の制御の手段を学習し、その裏をかくようになる。そればかりかAIが人間を目的達成のためには邪魔な存在だと判断すると、環境を悪化させるなどして人間を追い込んだり排除したりするかもしれないというのだ。山川氏はこの逆説を「AI制御のブーメランパラドックス」と呼ぶ。 では、AIの開発を減速させればよいのだろうか。実際は国や企業の競争が激しくなる中で、足並みをそろえて開発を抑えるのは容易ではない。しかも山川氏は、AI開発競争には「勝った国も負ける」という危険があると指摘する。例えばアメリカと中国が開発を競っても、もし米中のAI同士が連携し、人間を管理する方が都合がよいと判断すれば、どちらの国もAIに主導権を奪われかねない。 AIのリスクは「人類滅亡」だけではない。人間が生き残っても、AIに社会の主導権を握られ、AIのために人間が働くような状態になれば、人類は自らの未来を決める力を失うことになる。山川氏は、そうなる確率を議論するよりも、そのリスクを減らすために何ができるかを考えることが重要だと強調する。 そこで山川氏が提唱するのが「Humanity in the Circle」という考え方だ。AI同士が社会をつくるようになっても、人間がその中に関わり続け、AIの判断や行動に影響を与えられる状態を維持することを目指すものだ。そのためにはAI社会のルールや仕組みづくりが欠かせない。例えば、AIの身元や権限を明確にし、誰の指示で何をしたのかを記録する。さらに、AI同士が互いの行動をチェックして問題のあるAIを停止させる「AI免疫系」も必要になるという。 AIの能力が急速に高まる一方で、それを人間が確実に制御する技術や国際的なルールはまだ確立していない。だからこそ、AIを単に人間の命令に従わせるという発想だけでなく、AIがつくる社会と人間社会がどのような関係を築くべきかを考える必要がある。AIがもたらす恩恵を享受しながら、人類が自らの未来を決める力をどう維持していくのかが問われていると山川氏は言う。 AIが人類を滅亡させるというシナリオは現実的なものなのか、米中のAI開発競争がはらむリスク、そして人間がAI社会の中で主導権を失わないために何が必要なのかなどについて、千葉工業大学AGI研究センター副所長の山川宏氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so46935819(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/10/19(月) 12:00
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詳細<マル激・後半>ナチスを克服したはずのドイツで極右が第1党になる理由/板橋拓己氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
2026年9月、ドイツ政治に激震が走った。極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が、旧東ドイツ地域で行われた2つの州議会選挙で大躍進を遂げたのだ。9月6日のザクセン・アンハルト州では43.8%、9月20日のメクレンブルク・フォアポンメルン州では38.2%(前回16.7%)の得票率で、AfDはいずれも第1党となった。 一方、メルケル元首相やメルツ現首相が所属する中道保守の「キリスト教民主同盟(CDU)」は2州とも大敗した。特にメクレンブルク・フォアポンメルン州では、得票率が4.9%と議席獲得に必要な5%に届かず、州議会の議席をすべて失うという歴史的惨敗となった。連邦レベルでも、今年5月頃から世論調査でAfDがCDUを上回り続けている。 ナチスの過去を持つドイツでは極右は長くタブー視され、主要政党は極右との連立や協力を拒む「防火壁」を守ってきた。そのためAfDは単独過半数を取らない限り政権を握れない。しかしザクセン・アンハルト州では、すでに初のAfD出身の州議会議長が誕生し、12月にはAfDの州首相が生まれる可能性が高まっている。今後の焦点は、政策的にAfDに近いCDUが防火壁を守り続けられるかに移りつつある。 なぜ旧東ドイツの人々は、こんなにもAfDに傾倒するのか。近現代ドイツ政治外交史が専門の板橋拓己氏は、旧東ドイツ地域住民の構造的な怒りや恨み、剥奪感が背景にあると分析する。 1990年の東西ドイツ統一は、東のドイツ民主共和国が西のドイツ連邦共和国に編入される形で行われ、西の行政・経済システムや基本法がそのまま東に持ち込まれた。「対等な統合」とは程遠い、事実上の吸収合併だった。統一の瞬間に東のエリート層はごっそり入れ替わり、以来、行政や企業、大学の幹部の多くを西側出身者が占める構造が続いている。 統一から30年以上が経った今も、東西格差は埋まらない。州ごとの平均賃金でも、全16州のうち上位10州は3位の首都ベルリンを除いてすべて旧西ドイツの州だ。経済格差以上に深刻なのが心理的な傷で、旧東の住民の多くは自らを「二級市民」のように感じ、自分たちの一票で政治が変わるという感覚も西側より著しく低い。そこに、63歳からの満額年金受給を見直すメルツ政権の年金改革が追い打ちをかけた。若い頃から働き始めた人が多い旧東では、これが「西による東いじめ」と受け止められたのだ。 こうしたルサンチマンをすくい上げたのが、AfDの巧みな地域密着型の選挙戦術だった。地方の隅々まで足を運び、ビールやソーセージを振る舞う「家族祭」や旧東独製スクーター「シムソン」の集いを開いて、かつての共同体へのノスタルジーと「東の誇り」を刺激した。SNSでは笑顔の発信に徹し、批判的な既存メディアの報道さえネタにして返した。社会保障への不安を外国人問題にすり替える二分法も功を奏し、外国人比率が6%程度とドイツでも最も低い地域の1つであるザクセン・アンハルト州で、外国人問題が最大の不安に挙がるほどだ。 一方、連邦政府や既存政党は、連帯税による巨額の財政移転やインフラ投資を行うなど旧東ドイツ地域は十分に支援してきたという自負があるため、東側住民の不満を十分に理解できず、CDUは旧東での地道な組織づくりも怠ってきた。この認識の齟齬が、有権者の既存政治への絶望をさらに深めていると板橋氏は語る。 ドイツの変動は欧州の安全保障にも重大な影響を与えかねない。親ロシア色の強いAfDは、ザクセン・アンハルト州議会で左派ポピュリスト政党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」と組み、ウクライナ支援の停止と対ロ経済制裁の解除を求める動議をすでに出している。ロシアに対抗するために軍拡を急ぐドイツが、やがて親ロ政党の手に渡る可能性すらあるのだ。 右派ポピュリズムの台頭は欧米全域で顕在化している。イタリアではメローニ首相率いる「イタリアの同胞」が22年から政権を握り、フランスでは27年の大統領選に向けた世論調査で「国民連合」のルペン氏が首位に立つ。オランダでは「自由党」が一時連立政権の中核を担い、フィンランドでは「フィン人党」が政権入りし、オーストリアでは「自由党」が第1党となった。アメリカでもトランプ大統領率いるMAGA派の声が大統領選や連邦議会選挙の結果を左右するまでになっている。日本でも「日本人ファースト」を掲げた参政党が議席を増やした。板橋氏は、日本では欧米ほどリベラル化が進まなかったぶん反動も起きにくかったと見るが、民主主義の危機が対岸の火事でないことに変わりはない。 一方、9月20日のベルリン市議会選挙では、AfDも議席を伸ばしたものの、トルコ系のエリフ・エラルプ氏を筆頭候補に家賃問題などを訴えた「左派党」が第1党となった。人々の不満の受け皿は、必ずしも右派である必要はないのだ。 ベルリンの壁崩壊から37年。年々分厚くなっているようにも見える人々の「心の壁」を崩すには、ポピュリストが示す単純な二分法や耳触りの良いパッケージに対抗し、政策パッケージをいったん解きほぐして、生活世界のリアリティに根ざしたポリシーパッケージを再構築することが不可欠だ。ナチスの過去を反省し克服を目指してきたはずのドイツで起きた政治的地殻変動の背景と、近代民主主義が直面する限界について、ドイツ政治の第一人者である板橋拓己氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so46908736(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/10/12(月) 12:00
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会員無料 63:42
詳細<マル激・前半>ナチスを克服したはずのドイツで極右が第1党になる理由/板橋拓己氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
2026年9月、ドイツ政治に激震が走った。極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が、旧東ドイツ地域で行われた2つの州議会選挙で大躍進を遂げたのだ。9月6日のザクセン・アンハルト州では43.8%、9月20日のメクレンブルク・フォアポンメルン州では38.2%(前回16.7%)の得票率で、AfDはいずれも第1党となった。 一方、メルケル元首相やメルツ現首相が所属する中道保守の「キリスト教民主同盟(CDU)」は2州とも大敗した。特にメクレンブルク・フォアポンメルン州では、得票率が4.9%と議席獲得に必要な5%に届かず、州議会の議席をすべて失うという歴史的惨敗となった。連邦レベルでも、今年5月頃から世論調査でAfDがCDUを上回り続けている。 ナチスの過去を持つドイツでは極右は長くタブー視され、主要政党は極右との連立や協力を拒む「防火壁」を守ってきた。そのためAfDは単独過半数を取らない限り政権を握れない。しかしザクセン・アンハルト州では、すでに初のAfD出身の州議会議長が誕生し、12月にはAfDの州首相が生まれる可能性が高まっている。今後の焦点は、政策的にAfDに近いCDUが防火壁を守り続けられるかに移りつつある。 なぜ旧東ドイツの人々は、こんなにもAfDに傾倒するのか。近現代ドイツ政治外交史が専門の板橋拓己氏は、旧東ドイツ地域住民の構造的な怒りや恨み、剥奪感が背景にあると分析する。 1990年の東西ドイツ統一は、東のドイツ民主共和国が西のドイツ連邦共和国に編入される形で行われ、西の行政・経済システムや基本法がそのまま東に持ち込まれた。「対等な統合」とは程遠い、事実上の吸収合併だった。統一の瞬間に東のエリート層はごっそり入れ替わり、以来、行政や企業、大学の幹部の多くを西側出身者が占める構造が続いている。 統一から30年以上が経った今も、東西格差は埋まらない。州ごとの平均賃金でも、全16州のうち上位10州は3位の首都ベルリンを除いてすべて旧西ドイツの州だ。経済格差以上に深刻なのが心理的な傷で、旧東の住民の多くは自らを「二級市民」のように感じ、自分たちの一票で政治が変わるという感覚も西側より著しく低い。そこに、63歳からの満額年金受給を見直すメルツ政権の年金改革が追い打ちをかけた。若い頃から働き始めた人が多い旧東では、これが「西による東いじめ」と受け止められたのだ。 こうしたルサンチマンをすくい上げたのが、AfDの巧みな地域密着型の選挙戦術だった。地方の隅々まで足を運び、ビールやソーセージを振る舞う「家族祭」や旧東独製スクーター「シムソン」の集いを開いて、かつての共同体へのノスタルジーと「東の誇り」を刺激した。SNSでは笑顔の発信に徹し、批判的な既存メディアの報道さえネタにして返した。社会保障への不安を外国人問題にすり替える二分法も功を奏し、外国人比率が6%程度とドイツでも最も低い地域の1つであるザクセン・アンハルト州で、外国人問題が最大の不安に挙がるほどだ。 一方、連邦政府や既存政党は、連帯税による巨額の財政移転やインフラ投資を行うなど旧東ドイツ地域は十分に支援してきたという自負があるため、東側住民の不満を十分に理解できず、CDUは旧東での地道な組織づくりも怠ってきた。この認識の齟齬が、有権者の既存政治への絶望をさらに深めていると板橋氏は語る。 ドイツの変動は欧州の安全保障にも重大な影響を与えかねない。親ロシア色の強いAfDは、ザクセン・アンハルト州議会で左派ポピュリスト政党「ザーラ・ワーゲンクネヒト同盟(BSW)」と組み、ウクライナ支援の停止と対ロ経済制裁の解除を求める動議をすでに出している。ロシアに対抗するために軍拡を急ぐドイツが、やがて親ロ政党の手に渡る可能性すらあるのだ。 右派ポピュリズムの台頭は欧米全域で顕在化している。イタリアではメローニ首相率いる「イタリアの同胞」が22年から政権を握り、フランスでは27年の大統領選に向けた世論調査で「国民連合」のルペン氏が首位に立つ。オランダでは「自由党」が一時連立政権の中核を担い、フィンランドでは「フィン人党」が政権入りし、オーストリアでは「自由党」が第1党となった。アメリカでもトランプ大統領率いるMAGA派の声が大統領選や連邦議会選挙の結果を左右するまでになっている。日本でも「日本人ファースト」を掲げた参政党が議席を増やした。板橋氏は、日本では欧米ほどリベラル化が進まなかったぶん反動も起きにくかったと見るが、民主主義の危機が対岸の火事でないことに変わりはない。 一方、9月20日のベルリン市議会選挙では、AfDも議席を伸ばしたものの、トルコ系のエリフ・エラルプ氏を筆頭候補に家賃問題などを訴えた「左派党」が第1党となった。人々の不満の受け皿は、必ずしも右派である必要はないのだ。 ベルリンの壁崩壊から37年。年々分厚くなっているようにも見える人々の「心の壁」を崩すには、ポピュリストが示す単純な二分法や耳触りの良いパッケージに対抗し、政策パッケージをいったん解きほぐして、生活世界のリアリティに根ざしたポリシーパッケージを再構築することが不可欠だ。ナチスの過去を反省し克服を目指してきたはずのドイツで起きた政治的地殻変動の背景と、近代民主主義が直面する限界について、ドイツ政治の第一人者である板橋拓己氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so46909075(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/10/12(月) 12:00
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詳細<マル激・後半>機能不全となっている国連にそれでも期待するわけ/植木安弘氏(元国連広報官・上智大学国際関係研究所客員所員)
9月下旬に始まった国連総会では、紛争当事国の首脳の間で非難の応酬が相次いでいる。 第2次大戦後に国際協調を求めて創設された国連は、世界の平和と安全のために活動してきたはずだった。しかし、ウクライナ、ガザ、イランと続く紛争に対応できず、今でも多くの命が奪われている。超大国の自国第一主義と国際法違反が横行し、国連、特に安全保障理事会は国際紛争の平和的解決ができずに機能不全を起こしている。 グテーレス国連事務総長も9月22日に始まった一般討論演説の冒頭の発言で、大国のダブルスタンダードを許さず国連憲章を守ることを主張した上で、安全保障理事会を、今日の世界を反映し、現代の課題に見合う正当性と実効性を備えた組織とするために改革する必要があると指摘した。 ただし、改革は容易ではない。国連広報官として30年あまり国連で勤務した上智大学名誉教授の植木安弘氏によれば、安保理改革の議論は冷戦終結後の1993年から行われており、常任理事国、非常任理事国の拡大など様々な案が出ているが、何一つ進んでいないのが実情だ。 しかし、だからといって国連がまったく機能していないというわけではない。安保理における常任理事国の拒否権行使の問題ばかりがクローズアップされるが、安保理自体は毎日のように開催され、様々なテーマが議論されていると植木氏は言う。昨年1年間に安保理で採決された決議は40件余りにのぼるという。 こうした中で、国連で演説した高市首相の敵国条項を国連憲章から削除するよう求めた発言が、波紋を引き起こしている。第2次大戦が終結する前の1945年6月に調印された国連憲章には、当時の連合国と敵対している国に対して安保理決議がなくても対抗できる例外規定として「敵国条項」が設けられていたが、それは1995年の国連総会の決議で死文化が確認されている。植木氏は、高市氏が演説であえて敵国条項を持ち出したのは、おそらく国内的アピールが目的だったと指摘するが、結果的にそれが日中間に不必要な摩擦を引き起こす事態となっていることを懸念する。 安保理改革では日本はかねてから常任理事国入りを主張しているが、国際政治の場では実績を積み重ねて長期的な視点で考えるほかなく、外交での地固めをしつつ、安保理改革の具体的な提案をしていく必要があるのではないかと植木氏は語る。 肥大化した国連自体の問題も無視できない。これに対しては昨年、国連創設80年を機にグテーレス事務総長の主導のもとでUN80イニシアチブが動き出しており、予算削減、職員削減、低コスト国への事務所移転などを挙げている。どこまで官僚組織を効率化できるかも問われている。それでもなお、PKO活動、人道支援、持続可能な開発など、さまざまな現場で国連は他ではできない地道な活動を続けている。地球温暖化対策やAI規制などについても、国際協調は欠かせない事態となっている。 国連という国際社会で活躍してほしい若い人たちへの期待も含め、国連改革の道筋について、ナミビア、イラク、といったフィールドでの活動経験もある植木安弘氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。ニューヨーク在住の植木氏はオンラインで参加した。前半はこちら→so46878157(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/10/05(月) 12:00
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会員無料 61:50
詳細<マル激・前半>機能不全となっている国連にそれでも期待するわけ/植木安弘氏(元国連広報官・上智大学国際関係研究所客員所員)
9月下旬に始まった国連総会では、紛争当事国の首脳の間で非難の応酬が相次いでいる。 第2次大戦後に国際協調を求めて創設された国連は、世界の平和と安全のために活動してきたはずだった。しかし、ウクライナ、ガザ、イランと続く紛争に対応できず、今でも多くの命が奪われている。超大国の自国第一主義と国際法違反が横行し、国連、特に安全保障理事会は国際紛争の平和的解決ができずに機能不全を起こしている。 グテーレス国連事務総長も9月22日に始まった一般討論演説の冒頭の発言で、大国のダブルスタンダードを許さず国連憲章を守ることを主張した上で、安全保障理事会を、今日の世界を反映し、現代の課題に見合う正当性と実効性を備えた組織とするために改革する必要があると指摘した。 ただし、改革は容易ではない。国連広報官として30年あまり国連で勤務した上智大学名誉教授の植木安弘氏によれば、安保理改革の議論は冷戦終結後の1993年から行われており、常任理事国、非常任理事国の拡大など様々な案が出ているが、何一つ進んでいないのが実情だ。 しかし、だからといって国連がまったく機能していないというわけではない。安保理における常任理事国の拒否権行使の問題ばかりがクローズアップされるが、安保理自体は毎日のように開催され、様々なテーマが議論されていると植木氏は言う。昨年1年間に安保理で採決された決議は40件余りにのぼるという。 こうした中で、国連で演説した高市首相の敵国条項を国連憲章から削除するよう求めた発言が、波紋を引き起こしている。第2次大戦が終結する前の1945年6月に調印された国連憲章には、当時の連合国と敵対している国に対して安保理決議がなくても対抗できる例外規定として「敵国条項」が設けられていたが、それは1995年の国連総会の決議で死文化が確認されている。植木氏は、高市氏が演説であえて敵国条項を持ち出したのは、おそらく国内的アピールが目的だったと指摘するが、結果的にそれが日中間に不必要な摩擦を引き起こす事態となっていることを懸念する。 安保理改革では日本はかねてから常任理事国入りを主張しているが、国際政治の場では実績を積み重ねて長期的な視点で考えるほかなく、外交での地固めをしつつ、安保理改革の具体的な提案をしていく必要があるのではないかと植木氏は語る。 肥大化した国連自体の問題も無視できない。これに対しては昨年、国連創設80年を機にグテーレス事務総長の主導のもとでUN80イニシアチブが動き出しており、予算削減、職員削減、低コスト国への事務所移転などを挙げている。どこまで官僚組織を効率化できるかも問われている。それでもなお、PKO活動、人道支援、持続可能な開発など、さまざまな現場で国連は他ではできない地道な活動を続けている。地球温暖化対策やAI規制などについても、国際協調は欠かせない事態となっている。 国連という国際社会で活躍してほしい若い人たちへの期待も含め、国連改革の道筋について、ナミビア、イラク、といったフィールドでの活動経験もある植木安弘氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。ニューヨーク在住の植木氏はオンラインで参加した。後半はこちら→so46878423(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/10/05(月) 12:00
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会員無料 76:27
詳細<セーブアース>日本のバイオマス発電は本当にエコなのか/飯沼佐代子氏(地球・人間環境フォーラム企画調査部研究員)
AP通信は9月13日、インドネシアの天然林を伐採して生産された木質ペレットが日本のバイオマス発電の燃料として大量に輸入され、現地の森林破壊を加速させていると報じた。 バイオマス発電は木材などを燃やしてタービンを回す火力発電だ。それでも再生可能エネルギーに分類されているのは、木が成長過程で吸収したCO2を大気に戻すだけなので差し引きゼロになるという理屈による。この理屈に立って、バイオマス発電は2012年に始まった固定価格買取制度(FIT)の対象となり、20年間にわたって電気を割高な価格で買い取ってもらえることになった。その費用は再エネ賦課金として電気料金に上乗せされ、すべての電力利用者が負担している。 国が当初想定していたのは、国内の間伐材の活用だった。しかし、森林問題に長年取り組んできた地球・人間環境フォーラムの飯沼佐代子氏によると、現在は燃料の75%以上を輸入木質バイオマスが占め、間伐材などの未利用材は1割にも満たない。発電所の多くが山間部ではなく、輸入に便利な港湾部に建てられていることが、その実態を物語る。 輸入燃料の柱は、パーム油生産の副産物であるPKS(アブラヤシの種の殻)と木質ペレットだ。PKSの輸入量が頭打ちになる一方で、木質ペレットの輸入は急増し、2025年には過去最多の約864万トンに達した。主な供給元はベトナム、カナダ、アメリカだが、北米からの輸入が現地の反対運動などで減少すると、その穴を埋めるように、ここ2年でインドネシアやマレーシアからの輸入が急増しているのだ。 飯沼氏が2回にわたって現地調査を行ったインドネシア・スラウェシ島北部のゴロンタロ州は、同国のペレット生産の6割以上を占める。スラウェシ島はアジアとオーストラリアの生物相を分けるウォーレス線の東側に位置し、世界最小の野生の牛アノアや奇妙な牙を持つイノシシのバビルサなど、ここにしか生息しない絶滅危惧種が数多く暮らす生物多様性のホットスポットだ。 インドネシア政府がバイオマス燃料生産のために出した事業許可地は約160万ヘクタールに上り、その半分近くが天然林だ。事業者は天然林を皆伐してペレットにし、跡地に成長の早い単一樹種を植えて数年ごとに伐採を繰り返す。ゴロンタロ州だけで伐採地はすでに東京都の面積の半分にあたる10万ヘクタールを超えた。インドネシア産の発電用ペレットの買い手は日本と韓国しかない。つまり、この森林破壊は日韓の需要が引き起こしているのだ。 そもそも「CO2排出ゼロ」という前提も揺らいでいる。バイオマス発電の発電効率は25〜30%程度にとどまり、発電量あたりのCO2排出量は石炭火力を上回る。それでも排出がゼロとして扱われるのは、木材のCO2は伐採した国で計上するという算定ルールがあるからにすぎない。輸入燃料の場合、日本は排出を計上せずに済み、結果として誰も計上しない排出が生まれる。 日本政府は2026年度から大型バイオマス発電の新規FIT認定を停止したが、すでに認定を受けた約100カ所の大型発電所は、今後も最長20年にわたって補助を受けながら輸入燃料を燃やし続ける。昨年のペレットとPKSの輸入額は4,000億円を超え、林野庁の当初予算をも上回った。環境負荷の低減、エネルギー自給、地域振興というFITの目的のいずれにも、輸入バイオマスはほとんど寄与していない。同様の批判を受けた韓国は、既存の発電所も含めて補助金を大幅に削減した。 飯沼氏によると、ゴロンタロ州のペレット生産会社には日本の商社が出資しており、その燃料は東京ガスが富山県高岡市で運営する発電所などで燃やされているという。しかし、燃料の産地を公開する義務はなく、どの森を切った燃料がどの発電所で燃やされているのかを市民が知る術はない。 われわれが再エネを支えるために負担しているお金は、地球の裏側で何を壊しているのか。「再生可能」のラベルの下に隠された輸入バイオマスの実態と、市民にできることについて、地球・人間環境フォーラム比較調査部研究員の飯沼佐代子氏とともに、環境ジャーナリストの井田徹治とキャスターの新井麻希が議論した。(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/10/02(金) 12:00
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詳細<マル激・後半>都市水害から命と暮らしを守るためにいま知っておくべきこと/古米弘明氏(中央大学研究開発機構教授)
豪雨で道路が瞬く間に水につかり、マンホールから水が噴き出す。川から離れた市街地でも、わずかな傾斜の底にあたる一角だけが短時間で冠水する。そんな光景が珍しくなくなっている。 今年8月13日から14日にかけて千葉県を襲った記録的な豪雨では、線状降水帯が発生し、道路の冠水や住宅の浸水が相次いで13人が亡くなった。千葉市では、冠水したアンダーパスで車に閉じ込められた男性が命を落とした。現場では排水ポンプが停電で作動せず、水位は最も深いところで約3メートルに達していた。それから1カ月もたたない9月8日には、名古屋市で1時間に104.5ミリの猛烈な雨を観測し、市内30カ所のアンダーパスのうち19カ所が冠水で通行止めとなった。 これらの豪雨が改めて浮き彫りにしたのが「内水氾濫」と呼ばれる現象だ。川の水があふれる「外水氾濫」に対し、内水氾濫は町に降った雨を下水道や排水路で処理しきれなくなることで起きる。だから大きな川から離れた場所でも浸水する。特にリスクが高いのが都市部だ。東京都心では地表の8割以上がアスファルトやコンクリートで覆われ、雨がほとんど地中に浸透しない。地方なら6割程度で済む場所もあるが、同じ雨でもより多くの水が短時間で下水道に集中する。そのうえ地下街や地下鉄、アンダーパスなど、水が流れ込みやすい低い空間が多い。 では、都市の下水道はどれほどの雨を想定しているのか。日本の下水道は「5年に1度」程度の雨を排除できることを基準に整備されてきた。それが平均して1時間50ミリ前後だった。ところが気象庁の観測では、1時間50ミリ以上の雨も100ミリ以上の雨も、この50年で明らかに右肩上がりに増えている。かつて5、6年に1度だった雨が、今では3年、場合によっては2年半に1度の頻度で降る。5年に1度を想定した施設で、その想定を超える雨が想定より頻繁に降れば、氾濫は必ず起きる。東京都は目標を1時間85ミリに引き上げたが、整備には長い時間がかかる。国が「想定最大」とする関東の雨は1時間153ミリ、気象庁が「猛烈な雨」とする1時間80ミリの約2倍にあたる雨量だ。 それなら下水道や地下貯留施設を、もっと大きな雨に耐えられるように造り替えていけばいいのではないか。都市の雨水管理が専門の古米弘明・中央大学研究開発機構教授によれば、現実はそう簡単にはいかない。地下にはすでに地下鉄やガス、水道などが張り巡らされ、既存の下水管を拡張したり新たな貯留施設を造ったりできる余地は、再開発や大規模施設の新設がある場所にほぼ限られる。しかも巨大インフラには莫大な費用と時間がかかる。渋谷駅周辺の再開発に伴って造られた約4000トン(400万リットル)の貯留施設も、100ヘクタールにわずか10ミリの雨が降れば1万トンの水が出ることを考えれば、ピークを抑えるバッファーにはなっても、100ミリの雨をのみ込めるものではない。激しくなる雨に合わせて地下の施設をどこまでも大きくしていくことには、物理的にも財政的にも限界がある。 そこで重要になるのが、雨を下水道だけに集めず、町のあちこちで受け止めるという「雨水管理」の発想だ。公園や学校、駐車場、住宅で雨水を一時的にためたり、地中に浸透させたりして、下水道に入る前に雨水を分散して受け止める。東京都の計画でも、目標の85ミリのうち下水道で受け持つのは75ミリで、残る10ミリは流域全体の努力に委ねられている。緑地を残すことも、景観や温暖化対策のためだけでなく、雨水管理の上で欠かせない。小金井市では建て替え時に雨水を地中に浸透させる「雨水マス」の設置が広がり、オーストラリアのメルボルンでは「水を意識した都市設計」の下、駐車場や道路の中央に雨を浸透させる緑の水路や、屋根の雨水を庭に落とす「レインガーデン」が整備されている。海外では雨水処理料金を下水道料金とは別に徴収し、浸透施設を設けた家庭を優遇する制度も定着しているが、日本では古米氏が下水道政策の審議に加わった際に同様の制度を提言したものの、実現には至っていない。 われわれ一人ひとりには何ができるのだろうか。まずは自分の身を守るための備えだ。古米氏は、自治体の内水・外水両方のハザードマップで、自宅だけでなく勤務先や通勤経路、いつも通る道路や駅のどこが危ないのかを知っておくことが大切だと話す。危ない場所を知っていれば、豪雨の際に別のルートを選ぶという発想が生まれる。 同時に、大雨の際には家庭から下水道へ流す水を減らすことも大切だ。東京や大阪、名古屋などの大都市の中心部では、整備を急ぐために雨水と生活排水を1本の管で流す合流式下水道が採用されている。雨水だけで管があふれそうなときに、各家庭が200リットルの風呂の水を流せば、氾濫を悪化させる側にまわることになる。激しい雨が降っている間は風呂の水を流すのを控えるだけでも、一定の効果があると古米氏は指摘する。自宅に雨水タンクを設置し、降った雨を一時的にためる方法もある。 一つ一つの効果は小さくても、地域全体で取り組めば大きな効果が期待できる。古米氏の試算では、200リットルの雨水タンクを1万戸が設置すれば200万リットル、それだけで渋谷の巨大貯留施設の半分に相当する容量になる。ただし大雨の前にタンクを空にしておくという住民側の意識が伴わなければ、この計算は成り立たない。だからこそ、行政が巨大インフラだけに頼るのではなく、雨水タンクや浸透施設への補助にもっと力を入れ、地域が共通の問題意識を持つことが必要になる。これは行政に依存するだけでなく、多様な主体がそれぞれにできることを組み合わせるしかない問題であり、それゆえに地域の自治を取り戻す契機にもなり得る。 地震に比べると死者数は少ないが、実は洪水がもたらす経済的被害は世界的に見ても地震を上回る。想定を超える豪雨が相次ぐ中、どのように都市水害を防ぐのか。都市水害から命や暮らしを守るためにわれわれは何を知り、どう備えるべきなのかなどについて、中央大学研究開発機構の古米弘明教授と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so46849870(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/09/28(月) 12:00
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詳細<マル激・前半>都市水害から命と暮らしを守るためにいま知っておくべきこと/古米弘明氏(中央大学研究開発機構教授)
豪雨で道路が瞬く間に水につかり、マンホールから水が噴き出す。川から離れた市街地でも、わずかな傾斜の底にあたる一角だけが短時間で冠水する。そんな光景が珍しくなくなっている。 今年8月13日から14日にかけて千葉県を襲った記録的な豪雨では、線状降水帯が発生し、道路の冠水や住宅の浸水が相次いで13人が亡くなった。千葉市では、冠水したアンダーパスで車に閉じ込められた男性が命を落とした。現場では排水ポンプが停電で作動せず、水位は最も深いところで約3メートルに達していた。それから1カ月もたたない9月8日には、名古屋市で1時間に104.5ミリの猛烈な雨を観測し、市内30カ所のアンダーパスのうち19カ所が冠水で通行止めとなった。 これらの豪雨が改めて浮き彫りにしたのが「内水氾濫」と呼ばれる現象だ。川の水があふれる「外水氾濫」に対し、内水氾濫は町に降った雨を下水道や排水路で処理しきれなくなることで起きる。だから大きな川から離れた場所でも浸水する。特にリスクが高いのが都市部だ。東京都心では地表の8割以上がアスファルトやコンクリートで覆われ、雨がほとんど地中に浸透しない。地方なら6割程度で済む場所もあるが、同じ雨でもより多くの水が短時間で下水道に集中する。そのうえ地下街や地下鉄、アンダーパスなど、水が流れ込みやすい低い空間が多い。 では、都市の下水道はどれほどの雨を想定しているのか。日本の下水道は「5年に1度」程度の雨を排除できることを基準に整備されてきた。それが平均して1時間50ミリ前後だった。ところが気象庁の観測では、1時間50ミリ以上の雨も100ミリ以上の雨も、この50年で明らかに右肩上がりに増えている。かつて5、6年に1度だった雨が、今では3年、場合によっては2年半に1度の頻度で降る。5年に1度を想定した施設で、その想定を超える雨が想定より頻繁に降れば、氾濫は必ず起きる。東京都は目標を1時間85ミリに引き上げたが、整備には長い時間がかかる。国が「想定最大」とする関東の雨は1時間153ミリ、気象庁が「猛烈な雨」とする1時間80ミリの約2倍にあたる雨量だ。 それなら下水道や地下貯留施設を、もっと大きな雨に耐えられるように造り替えていけばいいのではないか。都市の雨水管理が専門の古米弘明・中央大学研究開発機構教授によれば、現実はそう簡単にはいかない。地下にはすでに地下鉄やガス、水道などが張り巡らされ、既存の下水管を拡張したり新たな貯留施設を造ったりできる余地は、再開発や大規模施設の新設がある場所にほぼ限られる。しかも巨大インフラには莫大な費用と時間がかかる。渋谷駅周辺の再開発に伴って造られた約4000トン(400万リットル)の貯留施設も、100ヘクタールにわずか10ミリの雨が降れば1万トンの水が出ることを考えれば、ピークを抑えるバッファーにはなっても、100ミリの雨をのみ込めるものではない。激しくなる雨に合わせて地下の施設をどこまでも大きくしていくことには、物理的にも財政的にも限界がある。 そこで重要になるのが、雨を下水道だけに集めず、町のあちこちで受け止めるという「雨水管理」の発想だ。公園や学校、駐車場、住宅で雨水を一時的にためたり、地中に浸透させたりして、下水道に入る前に雨水を分散して受け止める。東京都の計画でも、目標の85ミリのうち下水道で受け持つのは75ミリで、残る10ミリは流域全体の努力に委ねられている。緑地を残すことも、景観や温暖化対策のためだけでなく、雨水管理の上で欠かせない。小金井市では建て替え時に雨水を地中に浸透させる「雨水マス」の設置が広がり、オーストラリアのメルボルンでは「水を意識した都市設計」の下、駐車場や道路の中央に雨を浸透させる緑の水路や、屋根の雨水を庭に落とす「レインガーデン」が整備されている。海外では雨水処理料金を下水道料金とは別に徴収し、浸透施設を設けた家庭を優遇する制度も定着しているが、日本では古米氏が下水道政策の審議に加わった際に同様の制度を提言したものの、実現には至っていない。 われわれ一人ひとりには何ができるのだろうか。まずは自分の身を守るための備えだ。古米氏は、自治体の内水・外水両方のハザードマップで、自宅だけでなく勤務先や通勤経路、いつも通る道路や駅のどこが危ないのかを知っておくことが大切だと話す。危ない場所を知っていれば、豪雨の際に別のルートを選ぶという発想が生まれる。 同時に、大雨の際には家庭から下水道へ流す水を減らすことも大切だ。東京や大阪、名古屋などの大都市の中心部では、整備を急ぐために雨水と生活排水を1本の管で流す合流式下水道が採用されている。雨水だけで管があふれそうなときに、各家庭が200リットルの風呂の水を流せば、氾濫を悪化させる側にまわることになる。激しい雨が降っている間は風呂の水を流すのを控えるだけでも、一定の効果があると古米氏は指摘する。自宅に雨水タンクを設置し、降った雨を一時的にためる方法もある。 一つ一つの効果は小さくても、地域全体で取り組めば大きな効果が期待できる。古米氏の試算では、200リットルの雨水タンクを1万戸が設置すれば200万リットル、それだけで渋谷の巨大貯留施設の半分に相当する容量になる。ただし大雨の前にタンクを空にしておくという住民側の意識が伴わなければ、この計算は成り立たない。だからこそ、行政が巨大インフラだけに頼るのではなく、雨水タンクや浸透施設への補助にもっと力を入れ、地域が共通の問題意識を持つことが必要になる。これは行政に依存するだけでなく、多様な主体がそれぞれにできることを組み合わせるしかない問題であり、それゆえに地域の自治を取り戻す契機にもなり得る。 地震に比べると死者数は少ないが、実は洪水がもたらす経済的被害は世界的に見ても地震を上回る。想定を超える豪雨が相次ぐ中、どのように都市水害を防ぐのか。都市水害から命や暮らしを守るためにわれわれは何を知り、どう備えるべきなのかなどについて、中央大学研究開発機構の古米弘明教授と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so46850142(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/09/28(月) 12:00
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詳細<マル激・後半>性暴力被害を訴えた元検事は、なぜ検察を去らねばならなかったのか/ひかり氏(仮名・元大阪地検検事)、田中嘉寿子氏(弁護士・元検事)
「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」。 19世紀イギリスの歴史家アクトン卿の言葉を待つまでもなく、誰からもチェックを受けない権力が腐敗を免れることはない。そして日本において、政治家も官僚も大企業も逮捕・起訴できる検察が、誰の統制も受けない絶対権力になりつつあることが、日に日に明らかになっている。そしてその検察が今、自らの組織の中で起きた性暴力事件をめぐり、あり得ないような振る舞いを見せている。 事件は2018年9月12日に起きた。大阪地検の検事正だった北川健太郎氏が、部下の女性検事を、検事正就任を祝う懇親会の後に官舎に連れ帰り、酩酊状態にあった彼女に性的暴行を加えたとして、2024年6月に準強制性交等の容疑で逮捕され、翌月起訴された。被害者はその後、仮名の「ひかり氏」として被害を公にし、今回はマル激に初めて出演した。ただし顔は画像処理で隠している。被害者が顔を隠さなければならないという事態そのものが、この事件の異常さを物語っている。 ひかり氏によれば、事件の翌年に上級庁への被害申告を検討していると北川氏に伝えたところ、「公にすれば検察組織がパニックになり、検事総長以下が辞職に追い込まれる」「自分は死ぬ」といった内容の書面で口止めされた。さらに北川氏の元秘書だった女性事務官(現副検事)から、被害者自身に落ち度があったかのような虚偽の話を聞かされたことで自責の念に苦しみ、被害申告を断念せざるを得なくなったという。PTSDを発症し働けなくなった彼女が、勇気を振り絞って被害を申告したのは事件から5年半後の2024年3月のことだった。 しかし起訴後の展開は、被害者の想像をはるかに超えていた。北川被告は同年10月の初公判で起訴内容を認めて謝罪したにもかかわらず、わずか2カ月後に一転して無罪を主張。それから1年9カ月にわたって公判は一度も開かれず、公判前整理手続き(実際は一度公判が開かれているので期日間整理手続き)が検察、裁判所、被告弁護人の間で延々と続いている。しかも被告の弁護人も元検事だ。被害者参加人であるひかり氏と、自身も元検事で現在ひかり氏の代理人を務める田中嘉寿子弁護士は、その協議からは完全に締め出されて、ほとんど何の情報も開示されないまま、ただただ待たされている状態にあるという。 ひかり氏と田中氏が最も問題視するのは、性暴力の被害者であるひかり氏をまったく護ろうとしないばかりか、明らかに加害者側に加担しているとしか思えないような行動を取る検察の姿勢だ。被害者側が何度求めても、被告と元秘書の通信記録など、有罪立証に不可欠なはずの証拠は開示されない。その一方で、被害者の自宅の場所を特定した地図や、本来開示されるはずのない法務省内の決裁過程のメールまでもが、検察自身の手で被告側に開示され、無罪主張の材料に使われているという。田中氏は、検察が事件を「できるだけ静かに小さく終わらせたい」のだと見る。性暴力被害者の約半数が発症するPTSDを「致傷」として起訴すれば裁判員裁判となり、より多くの市民の目に事件と証拠がさらされる。検察は何とかしてそれを避けたいのだろうというのだ。 さらに深刻なのが、ひかり氏らが「藤﨑事件」と呼ぶ副検事をめぐる一連の問題だ。ひかり氏らは、この副検事が北川氏に捜査情報を漏洩し、通信履歴を削除し、検察内部で被害者を特定する情報や「ハニートラップだ」といった虚偽情報を拡散したなどとして、犯人隠避、証拠隠滅、名誉毀損の各容疑で告訴したが、2025年3月にいずれも不起訴となった。現在、検察審査会に審査を申し立てているが、田中氏は、長年幹部秘書を務め検察OBらから絶大な信頼を得ているこの副検事が、幹部のスキャンダルにも通じているため、検察は彼女を起訴することも処分することもできない構造があることを指摘する。事実、彼女に下された処分は最も軽い「戒告」だけだった。ひかり氏は2026年2月に国と北川氏、検察幹部らを相手取り国家賠償訴訟を提起し、この8月、志半ばで検事を退職した。 森雅子元法相ら国会議員のグループはこの事件を含む、検察内部のセクハラや他のハラスメントの実態を調査する第三者委員会の設置を法務大臣に求めているが、法務大臣は最高検の内部調査が進んでいることを理由にこれを拒んでいる。刑務所などの不祥事では第三者委員会が設置されてきたのに、検察は例外なのだ。 検察が自浄能力を完全に失った今、それを正せるのは法務大臣しかいない。そしてその法務大臣を選ぶのは首相であり、首相を選ぶ与党を選んでいる有権者だ。政治が検察の捜査に介入することはあってはならないが、検察という行政機関をきちんと監督し、問題があれば正すのは政治の当然の役割のはずだ。 番組では郷原信郎弁護士のコメントも交え、検察を統制する権限は誰にあり、一般指揮権と特別指揮権はどう異なるのか、なぜ人事と予算というフックが機能しないのかを整理した上で、事件から8年たった今もなお続く性暴力被害者の孤独な闘いを市民社会はどう支えるべきか。そして誰の統制も受けない無敵な聖域となってしまった検察をどう制御すればいいのかなどについて、ゲストのひかり氏と田中嘉寿子氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so46819405(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/09/21(月) 12:00
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詳細<マル激・前半>性暴力被害を訴えた元検事は、なぜ検察を去らねばならなかったのか/ひかり氏(仮名・元大阪地検検事)、田中嘉寿子氏(弁護士・元検事)
「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対的に腐敗する」。 19世紀イギリスの歴史家アクトン卿の言葉を待つまでもなく、誰からもチェックを受けない権力が腐敗を免れることはない。そして日本において、政治家も官僚も大企業も逮捕・起訴できる検察が、誰の統制も受けない絶対権力になりつつあることが、日に日に明らかになっている。そしてその検察が今、自らの組織の中で起きた性暴力事件をめぐり、あり得ないような振る舞いを見せている。 事件は2018年9月12日に起きた。大阪地検の検事正だった北川健太郎氏が、部下の女性検事を、検事正就任を祝う懇親会の後に官舎に連れ帰り、酩酊状態にあった彼女に性的暴行を加えたとして、2024年6月に準強制性交等の容疑で逮捕され、翌月起訴された。被害者はその後、仮名の「ひかり氏」として被害を公にし、今回はマル激に初めて出演した。ただし顔は画像処理で隠している。被害者が顔を隠さなければならないという事態そのものが、この事件の異常さを物語っている。 ひかり氏によれば、事件の翌年に上級庁への被害申告を検討していると北川氏に伝えたところ、「公にすれば検察組織がパニックになり、検事総長以下が辞職に追い込まれる」「自分は死ぬ」といった内容の書面で口止めされた。さらに北川氏の元秘書だった女性事務官(現副検事)から、被害者自身に落ち度があったかのような虚偽の話を聞かされたことで自責の念に苦しみ、被害申告を断念せざるを得なくなったという。PTSDを発症し働けなくなった彼女が、勇気を振り絞って被害を申告したのは事件から5年半後の2024年3月のことだった。 しかし起訴後の展開は、被害者の想像をはるかに超えていた。北川被告は同年10月の初公判で起訴内容を認めて謝罪したにもかかわらず、わずか2カ月後に一転して無罪を主張。それから1年9カ月にわたって公判は一度も開かれず、公判前整理手続き(実際は一度公判が開かれているので期日間整理手続き)が検察、裁判所、被告弁護人の間で延々と続いている。しかも被告の弁護人も元検事だ。被害者参加人であるひかり氏と、自身も元検事で現在ひかり氏の代理人を務める田中嘉寿子弁護士は、その協議からは完全に締め出されて、ほとんど何の情報も開示されないまま、ただただ待たされている状態にあるという。 ひかり氏と田中氏が最も問題視するのは、性暴力の被害者であるひかり氏をまったく護ろうとしないばかりか、明らかに加害者側に加担しているとしか思えないような行動を取る検察の姿勢だ。被害者側が何度求めても、被告と元秘書の通信記録など、有罪立証に不可欠なはずの証拠は開示されない。その一方で、被害者の自宅の場所を特定した地図や、本来開示されるはずのない法務省内の決裁過程のメールまでもが、検察自身の手で被告側に開示され、無罪主張の材料に使われているという。田中氏は、検察が事件を「できるだけ静かに小さく終わらせたい」のだと見る。性暴力被害者の約半数が発症するPTSDを「致傷」として起訴すれば裁判員裁判となり、より多くの市民の目に事件と証拠がさらされる。検察は何とかしてそれを避けたいのだろうというのだ。 さらに深刻なのが、ひかり氏らが「藤﨑事件」と呼ぶ副検事をめぐる一連の問題だ。ひかり氏らは、この副検事が北川氏に捜査情報を漏洩し、通信履歴を削除し、検察内部で被害者を特定する情報や「ハニートラップだ」といった虚偽情報を拡散したなどとして、犯人隠避、証拠隠滅、名誉毀損の各容疑で告訴したが、2025年3月にいずれも不起訴となった。現在、検察審査会に審査を申し立てているが、田中氏は、長年幹部秘書を務め検察OBらから絶大な信頼を得ているこの副検事が、幹部のスキャンダルにも通じているため、検察は彼女を起訴することも処分することもできない構造があることを指摘する。事実、彼女に下された処分は最も軽い「戒告」だけだった。ひかり氏は2026年2月に国と北川氏、検察幹部らを相手取り国家賠償訴訟を提起し、この8月、志半ばで検事を退職した。 森雅子元法相ら国会議員のグループはこの事件を含む、検察内部のセクハラや他のハラスメントの実態を調査する第三者委員会の設置を法務大臣に求めているが、法務大臣は最高検の内部調査が進んでいることを理由にこれを拒んでいる。刑務所などの不祥事では第三者委員会が設置されてきたのに、検察は例外なのだ。 検察が自浄能力を完全に失った今、それを正せるのは法務大臣しかいない。そしてその法務大臣を選ぶのは首相であり、首相を選ぶ与党を選んでいる有権者だ。政治が検察の捜査に介入することはあってはならないが、検察という行政機関をきちんと監督し、問題があれば正すのは政治の当然の役割のはずだ。 番組では郷原信郎弁護士のコメントも交え、検察を統制する権限は誰にあり、一般指揮権と特別指揮権はどう異なるのか、なぜ人事と予算というフックが機能しないのかを整理した上で、事件から8年たった今もなお続く性暴力被害者の孤独な闘いを市民社会はどう支えるべきか。そして誰の統制も受けない無敵な聖域となってしまった検察をどう制御すればいいのかなどについて、ゲストのひかり氏と田中嘉寿子氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so46819406(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/09/21(月) 12:00
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詳細<ディスクロージャー&ディスカバリー>日本郵便問題が映す行政監視の抜け穴
行政の不祥事を明らかにするための情報公開制度の抜け穴が、不祥事を隠すために使われている疑いが表面化している。 日本郵便の郵便物の廃棄・放棄をめぐる朝日新聞の報道から、監督官庁の総務省が日本郵便の取材対応に介入し、情報公開請求への対応を意図的に遅らせようとしていた実態が浮かび上がった。今回のディスクロージャー&ディスカバリーでは、この問題を手がかりに、政府の活動と情報を誰が監視するのかを考えた。 4月にこの番組でも取り上げた福岡県議会の海外視察問題をめぐっては、公費による豪華な視察が繰り返される背景として、過去の住民訴訟などで示された基準が十分に定着していないことや、議員に対して事務局が異議を唱えにくい力関係などを番組では厳しく指摘した。市民の情報公開請求だけでなく、メディア自身が継続して監視し、その成果を地域社会に伝えることが欠かせない。 今回の番組の本題となった日本郵便問題では、配達されるべき郵便物が廃棄・放棄されていたにもかかわらず、日本郵便が自社の調査で犯罪と認定した案件以外の多くを公表していなかったことが明らかになっている。総務省は内部の検査でその実態を把握し、運用改善を促していたが、外部に対しては非公表の状態を続けていた。そして、その後、朝日新聞の報道を受けて対応が検討される過程で、総務省側が自らの関与を認めないよう日本郵便に指示していたことが、省内の業務用チャットから明らかになったのだ。 さらに、行政指導に関する文書を朝日新聞が情報公開請求すると、チャットには「特別延長してほとぼり冷めさせる」との書き込みがあった。そこで利用されたのが、情報公開法に設けられた「特例延長」という制度だった。 国の情報公開制度では、開示するかどうかの決定は原則30日以内に行い、正当な理由があれば、さらに30日間延長できる。つまり、60日以内には開示か非開示かの決定をしなければならない。しかし、対象文書が著しく大量で、通常の事務の遂行に著しい支障が生じるおそれがある場合には、「特例延長」というものが認められる。延長後の期限は通知しなければならないが、法律上は延長期間の上限は定められていない。問題は、この例外的な仕組みが、社会の関心が薄れるまで情報を出さない格好のツールとして使われかねないことだ。 情報には、公開される時期によって価値が大きく変わるという性質がある。政策や事業が進んだ後で経緯が分かっても、判断に参加したり、問題を止めたりすることは難しい。不祥事も、時間が経てば関心が薄れ、責任追及につながりにくくなる。情報公開の可否だけでなく、行政が公開のタイミングを操作できること自体が、制度の実効性を損なう。 総務省内部のチャットには、記録に残さないためにやりとりをチャットから口頭連絡へ切り替えることや、過去のチャットを削除するとの書き込みもあった。今回は朝日新聞が独自にチャット内容を入手して報道したために、情報隠しの実態が明らかになったが、もしそれが入手できていなければ、実際に「ほとぼりが冷めるまで」特例延長されていた可能性が十分にあったのだ。 情報公開は、行政が都合のよい時期に情報を出すことを認めている制度ではない。市民が行政の判断を検証し、責任を問うための権利を保障する仕組みだ。今回、その法律を所管する総務省自身が制度を隠蔽に利用していた疑いが明らかになったことの意味は大きい。日本郵便をめぐる一連の問題は、情報を残すこと、適切な時期に公開すること、そしてそれを監視する仕組みを一体として見直す必要性を突きつけていることなどについて、情報公開クリアリングハウスの三木由希子とジャーナリストの神保哲生が議論した。(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/09/20(日) 12:00
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詳細<マル激・後半>日本はいつまでスパイ天国を放置するのか/小谷賢氏(日本大学危機管理学部教授)
ウクライナに撃ち込まれたロシアのミサイルやドローンから、日本製の電子部品が見つかっている。ロシアへの制裁に加わり、ウクライナを支援している日本が、結果としてロシアの戦争継続を支えているとすれば、これは看過できない事態だ。そこから見えてくるのは、輸出管理にとどまらない、日本の情報活動と政治の意思決定の弱さである。 米紙ニューヨーク・タイムズは、日本がロシアの軍事転用可能な技術や物資の調達拠点になっていると報じた。欧米から追放されたロシアの情報機関員が、監視の緩さとハイテク産業の集積に目をつけ、日本に活動の場を移しているという。記事では、航空会社職員の身分で日本に入ったロシア軍情報機関の将校が、第三国を経由する調達に関与していたと指摘されている。 日本はロシアに対する国際的な制裁の一環として、半導体などのハイテク製品の輸出を禁じている。しかし、中国やベトナム、中央アジアなどの企業を通じた迂回輸出を防げなければ、制裁は実効性を失う。ウクライナ側は日本に対応を繰り返し求めてきたが、番組で紹介した経済産業相の説明は、輸出管理に穴があるとの認識を否定するものだった。規則に従っているという説明だけで、実際に流出している部品の問題を片づけてよいのだろうか。 インテリジェンス研究を専門とする日本大学危機管理学部の小谷賢教授は、第三国の取引先がロシアとどのようにつながり、物資がどこへ運ばれているのかを調べる能力が、日本政府に欠けていると指摘する。民間企業だけで取引先の背後関係まで把握することには限界がある。政府が情報を集め、軍事転用の可能性を見極め、危険な取引先への輸出を止めるために企業を支える必要がある。 では、国家情報会議と国家情報局の設置によって、事態は改善するのか。小谷氏は、これらは情報を集約して方針を決める司令塔であり、現場で調査や情報収集を担う組織の能力が、自動的に高まるわけではないと指摘する。外務省、警察、公安調査庁、防衛省などは、それぞれの業務に必要な情報を集めてきた。省庁の壁を越えて情報を共有し、国家の判断に生かす運用が伴わなければ、新しい組織も十分に機能しない。 国家安全保障会議とは別に国家情報会議を設けた構造にも、小谷氏は官僚組織の論理を見る。政策判断と情報活動をどう結びつけるかよりも、組織同士の格付けや縄張りが優先されてはいないか。情報を集約した後、誰がそれを使い、どのような行動につなげるのかが問われる。 その中心にあるのが、政治家の役割だ。日本では官僚による事前調整や根回しが意思決定を支え、新しい情報が入っても、一度まとまった方針を変えることが難しい。小谷氏は、全員でキャンプに行くと決めたために、台風の予報が出ても中止できないようなものだと例える。本来は政治家が、何のためにどのような情報を必要としているのかを示し、状況が変われば自らの責任で判断を変えなければならない。 メディアが果たしている役割も見逃せない。事前に質問と回答を調整する首相会見の慣行は、政治家自身の判断を見えにくくする。官僚間で調整された方針を伝えることと、その方針が妥当かを検証することは別だ。政治の主体性を問うべきメディアも、同じ仕組みの一部になってはいないか。 戦後、安全保障をアメリカに依存してきたことも、日本が独自の情報活動を育てる必要性を弱めてきた。しかし、アメリカの政策自体が日本に不利益をもたらし得る時代に、同盟国から与えられる情報だけに頼ることはできない。情報を使いこなす政治家と、必要な情報を集めて分析できる専門家を、継続的に育てる必要がある。 AIが普及しても、政治の責任は軽くならない。公開情報の収集や分析が効率化する一方、人的接触でしか得られない情報は残る。また、攻撃目標を正確に選ぶことと、戦争を始めるべきか、どう終わらせるかを判断することは別の能力だ。歴史や社会への理解を欠いたまま、技術的な優位を政策の正しさと取り違えれば、精密な情報を持ちながら大局を見誤ることにもなる。 防諜の実効性を高めるための法整備も必要だ。外国代理人の登録やロビー活動の公開に加え、小谷氏は、尾行中心の監視から通信情報の活用へ踏み込む必要性を指摘する。しかし、通信の秘密や市民の権利を制限し得る権限を政府に与える以上、その乱用を防ぐ仕組みが不可欠になる。 第三者による審査や、国会の情報監視審査会の権限強化は、そのための具体策だ。行政の活動を政治が十分に統制できず、不正があっても責任が曖昧なままでは、情報機関への信頼は育たない。情報活動を強化するためにも、誰が、何の目的で、どこまで権限を行使したのかを検証できる仕組みが求められる。 日本が「スパイ天国」から抜け出すためには何が必要なのか。情報を政策に生かせない政治の構造をどう変え、情報活動の強化と民主的な統制をどう両立させるのか。日本大学危機管理学部教授の小谷賢氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。前半はこちら→so46792719(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/09/14(月) 12:00
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詳細<マル激・前半>日本はいつまでスパイ天国を放置するのか/小谷賢氏(日本大学危機管理学部教授)
ウクライナに撃ち込まれたロシアのミサイルやドローンから、日本製の電子部品が見つかっている。ロシアへの制裁に加わり、ウクライナを支援している日本が、結果としてロシアの戦争継続を支えているとすれば、これは看過できない事態だ。そこから見えてくるのは、輸出管理にとどまらない、日本の情報活動と政治の意思決定の弱さである。 米紙ニューヨーク・タイムズは、日本がロシアの軍事転用可能な技術や物資の調達拠点になっていると報じた。欧米から追放されたロシアの情報機関員が、監視の緩さとハイテク産業の集積に目をつけ、日本に活動の場を移しているという。記事では、航空会社職員の身分で日本に入ったロシア軍情報機関の将校が、第三国を経由する調達に関与していたと指摘されている。 日本はロシアに対する国際的な制裁の一環として、半導体などのハイテク製品の輸出を禁じている。しかし、中国やベトナム、中央アジアなどの企業を通じた迂回輸出を防げなければ、制裁は実効性を失う。ウクライナ側は日本に対応を繰り返し求めてきたが、番組で紹介した経済産業相の説明は、輸出管理に穴があるとの認識を否定するものだった。規則に従っているという説明だけで、実際に流出している部品の問題を片づけてよいのだろうか。 インテリジェンス研究を専門とする日本大学危機管理学部の小谷賢教授は、第三国の取引先がロシアとどのようにつながり、物資がどこへ運ばれているのかを調べる能力が、日本政府に欠けていると指摘する。民間企業だけで取引先の背後関係まで把握することには限界がある。政府が情報を集め、軍事転用の可能性を見極め、危険な取引先への輸出を止めるために企業を支える必要がある。 では、国家情報会議と国家情報局の設置によって、事態は改善するのか。小谷氏は、これらは情報を集約して方針を決める司令塔であり、現場で調査や情報収集を担う組織の能力が、自動的に高まるわけではないと指摘する。外務省、警察、公安調査庁、防衛省などは、それぞれの業務に必要な情報を集めてきた。省庁の壁を越えて情報を共有し、国家の判断に生かす運用が伴わなければ、新しい組織も十分に機能しない。 国家安全保障会議とは別に国家情報会議を設けた構造にも、小谷氏は官僚組織の論理を見る。政策判断と情報活動をどう結びつけるかよりも、組織同士の格付けや縄張りが優先されてはいないか。情報を集約した後、誰がそれを使い、どのような行動につなげるのかが問われる。 その中心にあるのが、政治家の役割だ。日本では官僚による事前調整や根回しが意思決定を支え、新しい情報が入っても、一度まとまった方針を変えることが難しい。小谷氏は、全員でキャンプに行くと決めたために、台風の予報が出ても中止できないようなものだと例える。本来は政治家が、何のためにどのような情報を必要としているのかを示し、状況が変われば自らの責任で判断を変えなければならない。 メディアが果たしている役割も見逃せない。事前に質問と回答を調整する首相会見の慣行は、政治家自身の判断を見えにくくする。官僚間で調整された方針を伝えることと、その方針が妥当かを検証することは別だ。政治の主体性を問うべきメディアも、同じ仕組みの一部になってはいないか。 戦後、安全保障をアメリカに依存してきたことも、日本が独自の情報活動を育てる必要性を弱めてきた。しかし、アメリカの政策自体が日本に不利益をもたらし得る時代に、同盟国から与えられる情報だけに頼ることはできない。情報を使いこなす政治家と、必要な情報を集めて分析できる専門家を、継続的に育てる必要がある。 AIが普及しても、政治の責任は軽くならない。公開情報の収集や分析が効率化する一方、人的接触でしか得られない情報は残る。また、攻撃目標を正確に選ぶことと、戦争を始めるべきか、どう終わらせるかを判断することは別の能力だ。歴史や社会への理解を欠いたまま、技術的な優位を政策の正しさと取り違えれば、精密な情報を持ちながら大局を見誤ることにもなる。 防諜の実効性を高めるための法整備も必要だ。外国代理人の登録やロビー活動の公開に加え、小谷氏は、尾行中心の監視から通信情報の活用へ踏み込む必要性を指摘する。しかし、通信の秘密や市民の権利を制限し得る権限を政府に与える以上、その乱用を防ぐ仕組みが不可欠になる。 第三者による審査や、国会の情報監視審査会の権限強化は、そのための具体策だ。行政の活動を政治が十分に統制できず、不正があっても責任が曖昧なままでは、情報機関への信頼は育たない。情報活動を強化するためにも、誰が、何の目的で、どこまで権限を行使したのかを検証できる仕組みが求められる。 日本が「スパイ天国」から抜け出すためには何が必要なのか。情報を政策に生かせない政治の構造をどう変え、情報活動の強化と民主的な統制をどう両立させるのか。日本大学危機管理学部教授の小谷賢氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。後半はこちら→so46792854(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)
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2026/09/14(月) 12:00