<セーブアース>世界の潮流に逆行する日本のエネルギー政策の現状/高瀬香絵氏(自然エネルギー財団シニアマネージャー)
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第25回のセーブアースは、自然エネルギー財団シニアマネージャーの高瀬香絵氏をゲストに迎え、日本のエネルギー政策の現状と今後の展望を点検した。 政府は2021年に閣議決定された第6次エネルギー基本計画で、温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにするカーボンニュートラルを2050年までに達成することを目標に掲げ、そのために自然エネルギーの主流化と原発の再稼働、また省エネの拡大を推進する一方、火力発電はできる限り削減するとしている。具体的には、2019年時点で電源の18%を占めるに過ぎない再生可能エネルギーの比率を36~38%に、6%の原子力を20~22%に増やす一方で、火力発電の割合を石炭と石油と天然ガス合わせて76%から41%に削減するとしている。しかし高瀬氏はその実現は難しいと指摘する。 そもそも再生可能エネルギーの割合を36~38%にする目標は、世界的に見れば高い水準とはいえない。例えば日本と同じ島国のイギリスは、2023年時点で電力消費量の45%を自然エネルギー(太陽光、風力、地熱、バイオマス、水力)で賄っている。またイギリスは今年の9月で国内最後の石炭火力発電所が閉鎖するなど、脱炭素に向けて着実に歩みを進めている。 ところが日本は国際的に見ても高いとは言えないこの目標ですら、達成できるか危ぶまれているのだ。高瀬氏は、日本の再生可能エネルギー政策の問題は、10年前の「常識」に基づいて決められているところにあると指摘する。例えば、未だに自然エネルギーは変動するので不安定だという懸念が示されることがあるが、現在は蓄電池が安価になっているため、自然エネルギーでも天候の如何にかかわらず安定して電力を供給することが可能になっていると高瀬氏は言う。再生可能エネルギーを普及させていくためには、それをめぐる「常識」を上書きしていくことが必要だ。 一方、原発の比率を20~22%にまで増やすことも絶望的だ。そもそもこの数値は、2021年に閣議決定された2030年度に2013年度比で温室効果ガスを46%削減するという目標から逆算された数値であり、原発の稼働状況から導き出された数値ではない。自然エネルギー財団の専門家の分析では、再稼働や運転延長を最大限行ったとしても、原発の比率は15%が限界だという。また原発の建設は、計画から実現まで楽観的に見ても20年はかかってしまうため、電源構成に占める原発の割合を急速に増やすことは不可能だ。 G7では、2035年までに電力部門の全部ないし大部分を脱炭素化することで2022年に合意がなされている。しかし以上の状況を見れば、それを日本が実現することは非常に困難と言わざるをえない。世界的に企業がサプライチェーンや投融資先の温室効果ガスの排出量を参照する傾向が強まっている中では、再生可能エネルギーの導入が進まない日本製品が購入されにくくなったり、海外企業の工場の誘致が難しくなることが懸念されると高瀬氏は語る。温暖化対策のために、世界中が温室効果ガスの削減に向けて舵を切っていく中で、日本の政策は周回遅れとなってしまっている。しかもそのような日本の遅れが、日本を経済的に不利な状況に陥れてしまう可能性が否定できないのだ。 日本のエネルギー政策の現状について、自然エネルギー財団シニアマネージャーの高瀬香絵氏と環境ジャーナリストの井田徹治、キャスターの新井麻希が議論した。(本記事はインターネット放送局『ビデオニュース・ドットコム』の番組紹介です。詳しくは当該番組をご覧ください。)