沖縄防衛局がこのような強硬姿勢をとるのは官邸からの強い圧力があるためだ。菅義偉官房長官は、11月の沖縄県知事選が辺野古容認の仲井真弘多現知事と辺野古反対の翁長雄志現那覇市長との真っ向対決と...なる構図ができあがりつつある中で、早くも「仲井真劣勢」と伝えられていることに焦りまくっている。これを挽回するためにはどんな手練手管でも用いようということで、第1に、工事着手を急がせて、知事選投票日の前後までにはボーリング調査を完了して既成事実を築き「今さら翁長に投票しても後戻りできないんだからね」と県民を脅して基地負担軽減への切実な思いを萎えさせることを狙っている。県民の心をハンマーで打ち砕いて絶望の淵に蹴落とすかのような酷薄な心理作戦である。第2に、そうしておいて、仲井真には「普天間基地の早期(撤去ではなく)危険性除去」を言わせる。「辺野古建設反対を言っていては、いつまで経っても普天間の危険はなくなりませんよ」というところへ論点をズラすのである。第3に、それでもまだ不足で、仲井真は昨年12月の辺野古容認の条件として「普天間の5年以内の運用停止」を条件としていた。辺野古は今から建設して完成までに10年はかかる。そこで官邸は普天間のオスプレイを佐賀空港に「暫定移転」させようと古川康佐賀県知事を説得している。仲井真との約束を政府は誠意をもって実行していますよという形を作るためだ。
しかしこれは諸刃の剣だ。辺野古着工の実績作りを露骨に進めるほど、県民の心は萎えるどころかますます反発して翁長票が増えることになるかもしれない。オスプレイの佐賀移駐も、「何だ、佐賀に長期移駐できるんだったら辺野古は要らないじゃないか」という世論を掻き立てる可能性がある。無理を承知の菅の手練手管が全部裏目に出た時には安倍政権は窮地に陥る。(高野孟)
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(日刊ゲンダイ)