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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2016/07/22
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おはよう! 岡田斗司夫です。
今日は週刊アスキー『岡田斗司夫の ま、金ならあるし』の記事から、セレクトしてお届けします。

最初からの一気読みはこちらです→http://goo.gl/L10s6c

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◆岡田斗司夫の母vs税務署(15)


 暑かった夏、熱狂のSF大会は終わり、膨大な借金に困り果てた僕たちは、オープニングアニメを、わずか5分間のアニメを一万円以上で売ることにした。

 数日もしないうちに現金書留が届きだした。
 二通、三通と増えてゆき、ついには毎日数十通、届くようになる。

 アニメに否定的だった両親の態度は目に見えて変わった。
 別に両親が守銭奴だったわけではない。
 「自分たちにはわからないけど、価値を感じる人が多数いる」という証拠をはっきり認めたわけだ。

 まず、父が動いた。
 「斗司夫、このアニメは誰が作ったんや?」

 家をスタジオに使わせてもらい、金まで貸してもらった手前、黙ってるわけにもいかない。
 仕方なく「庵野、赤井、山賀の3人」と答える。
 「その3人は、それぞれ何をしたんや?」
 「作画全体は庵野くん、女の子は赤井君、演出は山賀くん」と答えた。

 父はしばらく考えて言った。
 「その3人は、おまえにとって宝や。絶対に手放すな」

 あまりの余計なお世話に、僕は返事もできなかった。 
 実行委員長の武田さんの母親は「友達は大事にしろ」といつも武田さんに言っている。
 しかし僕の父は「才能のある奴は大事にしろ」ときたもんだ!

 そう、父は才能のある人に目がなかった。
 売れない芸術家の作品をよく買っていた。
 奈良の彫刻師が一刀彫りで彫った実物大の鹿を買ったりしていた。
 後にその作家は人間国宝に指定されたと喜んでいた。

 父は自分が見込んだ才能に興味を持ったようだ。
 今度は三人を監視しはじめた。
 
 アニメ制作が終わって二ヶ月経っても、なぜか三人ともうちに住んでいたので、監視は簡単だった。
 「庵野くんは酒ばかり飲んでる。あかん。やめといた方がええ」
 父の会社が展示会に出品する時に山賀君に巨大な油絵を発注して「時間がかかるばっかりや。山賀君とは手を切れ」と言ってみたりもした。

 ついには母も監視に加わった。

 「赤井君はイヤなことがあると毛布かぶって寝てしまう。人間的に弱い子はここぞというときに逃げるから、手を切った方がいい」
 ええ加減にしてくれ!と僕が怒ると、今度は僕が留守中に庵野くんを酒に誘い、取り調べを開始した。

 「君はどれくらい才能があるんや?」という失礼きわまりない質問から、
 「アニメを仕事にして、やっていけるんか?」
 「斗司夫は、この世界に向いてると思うか?」
 「君は斗司夫の右腕になってくれ」等々、すごい質問のオンパレードだ。

 いっそ死んでしまった方がマシ、というくらい恥ずかしかった。
 なぜそんな誘いについて行ったのか?と詰め寄ると「タダ酒が飲めるからです」と、庵野君は胸を張って答えた。

 その後、赤井君が誘われているというのをきいて、全力で止めたのは言うまでもない。
 すっかり長くなってしまった。

 両親と税務署の戦い、続きはまたの機会に語ろう。次回から新シリーズで!


以上、『岡田斗司夫の ま、金ならあるし』よりお届けしました。