3分動画「『風の谷のナウシカ』原作とアニメの違い 」
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今日は、SF作家としての宮崎駿を語りたいと思います。
アニメ版の『風の谷のナウシカ』と、原作版・漫画版のナウシカは、どれぐらい違うのか?
この原作版が“歴史そのもの”だとすると、アニメ版は『真田丸』ぐらいなんですよ。
面白くまとめてあるし、内容も変わらない。
だけど『真田丸』だけを見てても、何も歴史は分からない。
それと同じようなものですね。
アニメ版のナウシカって、下手に出来が良すぎるんですよね。
だから、みんなは原作版の面白さを知らないまま、気がすんじゃっている。
僕は、そんな残念なものだと思ってるんですね。
原作のナウシカの出来は、いいと思いますよ。
構成もそうですし、作画もそうです。
今になって見ても、あの時代にしてはベストなんじゃないですかね。
僕は、ナウシカだったら、本当に映像を1分ごとに止めて解説できるぐらい語れます。
それぐらい良いアニメだと思います。
たとえば大ババ様の「その者、青き衣をまといて・・・」ってセリフがあるじゃないですか。
アニメ版では、“ナウシカは伝説の存在で、人を助ける為に使わされた”みたいな表現ですよね。
あれが原作版では、まったく違うんです。
ラストシーンの近く。
焼け焦げた大地の上。
“墓所”といわれる科学文明が最後に隠されていた卵を割って、その体液を浴びたナウシカが立っている。
それが夕日にあたって、たまたま金色の野原に見えるという。
本当に人類の黄昏・終わる時期を描いているんですね。
だから、希望も何もない。
でも、おそらくナウシカの周りの人たちは、ナウシカの存在を“希望”と受け取る。
だけど その時の人類の未来は、希望でも何でもないんだ。
7巻を描いた時の宮崎駿は、かなり病んでいたんだ。
というか「よくこれを描けたな」という所に達していたんですね。
他にも“火の七日間”というのが、アニメに出てくるんです。
巨神兵も、アニメでは巨大生物兵器として描かれていて、人類を滅ぼした悪の象徴として描かれている。
「最終戦争で文明が頂点に達し、人類は戦争を始めてしまい、“火の七日間”で巨神兵が世界中を滅ぼした!」
そんなふうにアニメでは描かれているんですよ。
原作でも、“火の七日間”という伝説はあるんです。
ところが、本当に“人類が戦争や巨神兵で殺し合った”という描写は無いんですね。
そう伝わっているだけなんです。
原作の中の言い伝えって、半分ぐらいが誤解やウソなんですよ。
実際の人類は、そんな巨大兵器を使ってないんです。
そうじゃなくて、慢性的な内戦でお互いに殺しあってた。
そして、そのうち環境が汚染され尽くしちゃった。
お互いに小規模な内戦とか兵器で人が住めない環境になって、滅びちゃった。
というのが、現実に近いんですね。
原作の中での巨神兵とは、裁定用の兵器なんです。
人工知能の裁判官として作られたんですよね。
巨神兵のプロトン砲とは、警官の持っている銃みたいなもの。
問答無用で撃つのではなく、「それ以上こっちに来たら撃つぞ!」みたいな兵器だったんですよ。
なのに、存在自体が忌み嫌われて、いつの間にか地球を滅ぼした事になってるわけですね。
そういう意味で、意外なものが多いんです。
ジブリの本によると、宮崎駿さんは映画のラストシーンでも、王蟲が迫ってきて、ナウシカが立っているラストシーンにしたかった。
だけど高畑勲と鈴木敏夫が二人がかりで、「それでは映画としてのカタルシスにならないよ!」と止めたんだ。
そして「それより、ナウシカが生き返ることにしよう」と言ったそうなんだ。
それでナウシカを生き返らせたんだけど、本人は「あれで結局、宗教映画になっちゃったよ」って。
でも、その宗教映画にしたおかげで、アニメ版のナウシカは大ヒットしたんだ。
なので、みんなは いつまでも、ナウシカを“奇跡の物語”だと思ってる。
そして、いまだに宮崎駿は、あんなラストにしちゃった事を後悔してる。
アニメのナウシカは“人間”を描いたはずだった。
なのに鈴木敏夫と高畑勲に口説かれて奇跡を入れちゃった。
「俺が一番嫌いな宗教映画を作っちまったよ」と。
みなさんは「ナウシカは奇跡のラストだ」と思ってますよね。
「ナウシカの愛が世界を救った」みたいに思ってるじゃないですか。
あれはもう宮崎駿からしたら「だから俺はイヤだと言ったんだ!ドッシン!ドッシン!」
というような、ニュアンスだそうです。
いい話ですね(笑)
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