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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2016/08/10
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おはよう! 岡田斗司夫です。
7月10日(日) ニコ生 岡田斗司夫ゼミ のハイライト動画です。
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3分動画「『風の谷のナウシカ』原作とアニメの違い 」
 動画はこちらから→https://www.youtube.com/embed/_nrIY_5XhrA
 (※3分動画は、3分では無い場合があります)

 文章はこちらに掲載しています↓
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 今日は、SF作家としての宮崎駿を語りたいと思います。

 アニメ版の『風の谷のナウシカ』と、原作版・漫画版のナウシカは、どれぐらい違うのか?
 この原作版が“歴史そのもの”だとすると、アニメ版は『真田丸』ぐらいなんですよ。

 面白くまとめてあるし、内容も変わらない。
 だけど『真田丸』だけを見てても、何も歴史は分からない。
 それと同じようなものですね。

 アニメ版のナウシカって、下手に出来が良すぎるんですよね。

 だから、みんなは原作版の面白さを知らないまま、気がすんじゃっている。
 僕は、そんな残念なものだと思ってるんですね。

 原作のナウシカの出来は、いいと思いますよ。
 構成もそうですし、作画もそうです。
 今になって見ても、あの時代にしてはベストなんじゃないですかね。

 僕は、ナウシカだったら、本当に映像を1分ごとに止めて解説できるぐらい語れます。
 それぐらい良いアニメだと思います。

 たとえば大ババ様の「その者、青き衣をまといて・・・」ってセリフがあるじゃないですか。
 アニメ版では、“ナウシカは伝説の存在で、人を助ける為に使わされた”みたいな表現ですよね。
 あれが原作版では、まったく違うんです。

 ラストシーンの近く。
 焼け焦げた大地の上。

 “墓所”といわれる科学文明が最後に隠されていた卵を割って、その体液を浴びたナウシカが立っている。
 それが夕日にあたって、たまたま金色の野原に見えるという。

 本当に人類の黄昏・終わる時期を描いているんですね。
 だから、希望も何もない。

 でも、おそらくナウシカの周りの人たちは、ナウシカの存在を“希望”と受け取る。
 だけど その時の人類の未来は、希望でも何でもないんだ。

 7巻を描いた時の宮崎駿は、かなり病んでいたんだ。
 というか「よくこれを描けたな」という所に達していたんですね。


 他にも“火の七日間”というのが、アニメに出てくるんです。
 巨神兵も、アニメでは巨大生物兵器として描かれていて、人類を滅ぼした悪の象徴として描かれている。

 「最終戦争で文明が頂点に達し、人類は戦争を始めてしまい、“火の七日間”で巨神兵が世界中を滅ぼした!」
 そんなふうにアニメでは描かれているんですよ。

 原作でも、“火の七日間”という伝説はあるんです。
 ところが、本当に“人類が戦争や巨神兵で殺し合った”という描写は無いんですね。
 そう伝わっているだけなんです。

 原作の中の言い伝えって、半分ぐらいが誤解やウソなんですよ。

 実際の人類は、そんな巨大兵器を使ってないんです。
 そうじゃなくて、慢性的な内戦でお互いに殺しあってた。

 そして、そのうち環境が汚染され尽くしちゃった。
 お互いに小規模な内戦とか兵器で人が住めない環境になって、滅びちゃった。
 というのが、現実に近いんですね。

 原作の中での巨神兵とは、裁定用の兵器なんです。
 人工知能の裁判官として作られたんですよね。

 巨神兵のプロトン砲とは、警官の持っている銃みたいなもの。
 問答無用で撃つのではなく、「それ以上こっちに来たら撃つぞ!」みたいな兵器だったんですよ。

 なのに、存在自体が忌み嫌われて、いつの間にか地球を滅ぼした事になってるわけですね。
 そういう意味で、意外なものが多いんです。

 ジブリの本によると、宮崎駿さんは映画のラストシーンでも、王蟲が迫ってきて、ナウシカが立っているラストシーンにしたかった。
 だけど高畑勲と鈴木敏夫が二人がかりで、「それでは映画としてのカタルシスにならないよ!」と止めたんだ。
 そして「それより、ナウシカが生き返ることにしよう」と言ったそうなんだ。

 それでナウシカを生き返らせたんだけど、本人は「あれで結局、宗教映画になっちゃったよ」って。
 でも、その宗教映画にしたおかげで、アニメ版のナウシカは大ヒットしたんだ。

 なので、みんなは いつまでも、ナウシカを“奇跡の物語”だと思ってる。
 そして、いまだに宮崎駿は、あんなラストにしちゃった事を後悔してる。

 アニメのナウシカは“人間”を描いたはずだった。
 なのに鈴木敏夫と高畑勲に口説かれて奇跡を入れちゃった。

 「俺が一番嫌いな宗教映画を作っちまったよ」と。

 みなさんは「ナウシカは奇跡のラストだ」と思ってますよね。
 「ナウシカの愛が世界を救った」みたいに思ってるじゃないですか。

 あれはもう宮崎駿からしたら「だから俺はイヤだと言ったんだ!ドッシン!ドッシン!」
 というような、ニュアンスだそうです。

 いい話ですね(笑)


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